修行回に入る前に適度な会話をしようと思ったら必要以上に長くなったので、彼女達だけの話で投稿します。
注意
・原作(アプリ)やアニメなどとはキャラ設定(性格)が異なっています。解釈違いにはご容赦ください。
・捏造。
ー 前回のあらすじ ー
エル「どれだけ打っても軽々と取られた」
グラス「理不尽な守備〜」
エル「掠りもしなかった」
グラス「豪速球〜」
悟空(反省文なんて一言で終わっちまうよ………。どうやって三枚も書くんだ? 思ってもねぇ事を適当に書けってか?)
ーーーーーーー
まもなくホームルームが始まろうとする時、教室や廊下ではまだ談笑しているウマ娘はいた。
そもそもチャイムが始まる前に席について準備を始めるのはごく一部だ。
そして、彼女はその一部に当てはまる。
キング「ふわぁ………」
生理現象とはいえ、小さなあくびでも彼女にとっては油断の一言。
スカイ「おんやぁ? 大口開けて欠伸とは珍しいですねぇ、お嬢様」
教室に入って来たと同時に見てしまったセイウンスカイは、にまにまと口元を緩めながら彼女の机に顎を置いた。
やってしまった…と、彼女は分かりやすく眉間に皺を寄せる。 だがそれも一瞬の事で、気を引き締めるかのようにため息をついた。
キング「私、何回も言ったのよ。朝早くに出るのなら昨晩の内に準備をしなさいって」
スカイ「…………あー、何の事か一切分からないのに話の概要とオチが分かったわ」
キング「そしたらね。まずアラームをかけ忘れていたところから始まったのよ」
スカイ「出オチ!?」
キング「まさにゲートにも入ってない状態ね」
ふふ……、と儚げに笑う彼女がいた。微妙につまらない例えだからか、スカイは反応出来ない。
キング「…………それで、」
スカイ「これってさ。ウララが外出する準備をしないで寝ちゃった挙句に寝坊したって話でオーケー?」
キング「OK」
たまらずに話の全貌を明らかにすると彼女は頷いた。睡魔と戦っているせいか変に素直だ。
だが話をしていると、だんだん彼女の瞳に強い意志が込められてくる。
キング「おかげで朝練する元気を使い果たしてしまったわ。もう一度寝ようと思っても眠れないし」
スカイ「あぁ、それでゴロゴロしてたら時間が来ちゃったんだね」
キング「いえ、時間を無駄にするつもりはないから勉強していたわ」
スカイ「げっ…、まじか」
キング「貴女とは違うのよ」
スカイ「なんでこの流れで私を挑発すんの…?」
スカイは首をこてんと倒す。上目遣いのまん丸とした目はあざといにも程があるが、彼女はいつも通り鬱陶しそうにしている。
スカイ「というか、ウララが朝から外出って今日は学校に来ないの?」
キング「今日だけでなく明日もよ。外出というより外泊ね」
スカイ「はあ…!? なにそれ!」
キングの肩が跳ね上がる。 スカイが発した大きな声で教室中の注目を浴びて、数人のウマ娘が足を動かした。
キング「な、なによ、急に……」
スカイ「もっと早くに教えてよ!ウララがいなくてキングが部屋に一人って……。…………今日は私、泊まりに行くよ」
キング「!……ふふ。心配してくれているの? でも大丈夫よ。あの子は高知に遠征する事が何度もあったから、今更寂しくなんてーーーー」
スカイ「そんで明日の朝起こしてください! 着替えは自分でするからご飯の準備をお願いしまぁす!!」
キング「たった今から貴女の出禁が確定したわ。二度と敷居を跨がないでちょうだい」
次の時間で使用する教材を芦毛の頭に振り下ろす。 ひんっ、というわざとらしい悲鳴がした。
スペ「楽しそうですね!なんの話ですか?」
エル「どうせまたスカイがちょっかい出して怒られただけデェス」
満面な笑みを浮かべてやって来るスペシャルウィーク。その横で、おおよその流れを予想したエルコンドルパサーは、やれやれと言わんばかりにジェスチャーをした。
スカイ「心外だねぇ〜」
キング「そうね。この場面を見て楽しそうだと思われるのは心外だわ」
スカイ「え、そっち? 私はエルの返答をしたんだけど」
キング「貴女ねぇ………、スペさんを無視するのは良くないとあれ程言ってるのにまだ続けてるの?」
スペ「ぇ……」
蚊が鳴くようなとてつもなく小さな声がスペの口から溢れた。つい一秒前のにこやか顔から一転。感情に従って耳と尻尾は完全に垂れ下がった。
スカイ「あああああっ!!! こんなの信じないでよスペちゃん!」
スペ「でも……」
スカイ「でもじゃない! 今まで無視した事なんてなかったじゃん!」
落ち込む彼女の肩を掴んで説得にかかる。
エル「必死デスね、スカイ」
半笑い気味の声を聞いてイラッとしながらスカイは思う。
答えるまでもない。必死だ。
彼女はどこかウララに似た庇護欲を掻き立てられるような感じがするのだ。
からかった時に『何でそんな事言うんですかー!』とか言い返してくれたら悪ノリも出来るが、こうも落ち込まれては申し訳なさしかない。
スカイ「ほら、スペちゃん」
スカイはそっと彼女の手を取る。指と指が交互になるように繋ぐと、
スカイ「仲良し同士の繋ぎ方〜」
スペ「!…………えへへ」
照れくさそうに笑うスペを前にして、スカイは勝利を確信した。
スカイ(しゃあっ! 朝っぱらから難易度が高すぎだって!)
よしよしと頭を撫でると元通り。くすぐったそうに身を捩るスペを見ながら、今度はお説教のために口を開く。
スカイ「全くさぁ、お嬢様のは冗談に聞こえないんだから気をつけなって」
キング「…………、」
スカイ「あたかも実際にあった事を言ってるように聞こえるんだよねぇ。 もうちょいこう、わざとらしく言うとかさ」
キング「……………………反省、してるわ」
スカイ「いやまぁ、私は分かるからそこまで気にしなくても良いけどね? お嬢様なりに飛ばしたジョークだろうし」
キング「本当に、申し訳ないと思ってる。 スペさんには心の底から謝罪するわ………」
スカイ「え……、まさかキングまで落ち込んだ?」
喉の奥をこじ開けたような話し方。彼女らしからぬ震えた声。切羽詰まるような何かを感じてスカイは振り返る。
スカイ「…………………、あー」
忘れていたとスカイは思った。
横を見ると、スペはぽかんと口を開けて首を傾げている。
状況は至ってシンプルだった。
青ざめた表情のエルに、両手をあげているキング。
そして。
キングの首に定規を当てているグラスワンダー。
気のせいだろうか。ただのプラスチックである定規が、鋭利な刃物に見える。
恐らくキングは気のせいだと思わないだろう。
先程の緊迫感ある声色を出した原因がこれならば、きっと心臓がバクバクと鳴っているに違いない。
グラス「早朝から同期を手にかけたくはありませんが、致し方ないようですね」
キング「そ、んな事ないわよ? スペさんが許してくれたらーーーー」
グラス「私が許しません」
キング「…………………ちょっと、助けて」
切実な言葉が飛んで来た。
どんな逆境にも不敵な笑みと高笑いで応えていた彼女が、体面を捨てて言って来た。
キング「っていうかこんな事でスペさんが落ち込む訳ないでしょ! このキング、友達のキャパシティーくらい心得てるわ!!」
だが彼女は機転をきかせて窮地を脱する。 喉元に突きつけられた定規を跳ね除けた。
ジトーとした目を向ける相手は、やりすぎちゃったと言わんばかりに小さく舌を出している。
その様子をみて驚いたのはスカイだ。まさかあれが悪ノリした際の演技だなんて……と寒気を感じながら、大食い天然癒し系ドジっ子という属性に小悪魔を追加した。
エル「それで、話を戻しマスけど何かあったんデスか?」
キング「べつに。ただ、ウララさんが今日から外泊するのに準備不足で寝坊したってだけよ。そしたらこのヒトが朝を楽するために泊まりに来るって言うから断ったの」
エル「あぁ、やはりエルが言った通り。スカイがふざけて怒られたんデスね」
スカイ「いやいやぁ〜、だってぇ、一度で良いからウララみたいな生活したくない? 寝ぼけてる間に全部終わってるんだよ?」
エル「はっはーッ。それは体たらくってもんデェス!」
グラス「そうですねぇ〜。思いきって外に出てみたらどうですか? 早朝のお日様は気持ちが良いですよ」
スペ「うーん。気持ち良いのは分かるけど、布団から出るのが難しいんだよねぇ」
キング「スペさんも結構よね。朝が弱いの」
スペ「あはは……、分かっちゃう? たまに寝坊して時間ギリギリに登校してるもんね」
キング「それもあるけど、」
彼女はおもむろに携帯を取り出した。それが何らかの合図になったのか、グラスも同じように携帯を操作している。
キング「こんな写真見たら誰でも思うでしょ」
スペ「ん、写真…?」
彼女に続き、エルとスカイも身を乗り出す。その瞬間二人は、ぶはっ…! と勢いよく吹いた。
スペ「な、ななななっっっ…!!」
動揺を隠しきれないのは彼女だ。
まぶたを開きっぱなしで眼球が充血して赤くなろうとも、スペは画面を一点に見つめ、
スペ「なにこれぇええええ!!?」
強く叫んだ。
キング「何って……、"よだれを垂らしながらデカいにんじん抱き枕を噛んでいる寝坊寸前のスペさん"じゃない。本人だから心当たりあるでしょ?」
スペ「な、こっ、………はああああ!?」
キング「さすがにこれを見て、朝が強いとは思わないわ」
スペ「それ以前だよ! どこからこんな写真がっ……、いや、1人しかいないんだけども!」
グラス「ふふ、キングちゃんはやはりその写真をチョイスしましたか」
スペ「やはりって何!?」
キング「物的証拠にはピッタリだと思ってね。グラスさんは他にあるかしら?」
スペ「何で当たり前のように話が進んでるの!? 他にあって良い物じゃないんだよ!」
グラス「そう来ると思って準備していましたぁ〜」
スペ「私の声が誰にも届いてない!?」
スペの抵抗は虚しく、机には無慈悲にも携帯が置かれた。
その携帯を奪おうと一瞬の隙を狙って手を伸ばす。
しかし伸ばした手はスカイに掴まれ、直後にはエルに羽交い締めをされてしまう。
スペ「本気が過ぎる! ねぇ、どんな写真なのか分からないけど見ないでね? みんなの友達が全力でお願いしてるよ?」
スカイ「エールー。スペちゃんがなんか言ってる〜」
エル「友達の失態に蜜の味を感じるワタシ達には関係の無いことデェス!」
スペ「っ…………………もう、だめだ」
スペは以前スズカから聞いた事があった。
黄金世代と呼ばれる彼女達が、悟空に性格が悪いと思われているという、受け入れ難い事実を。
その時は 『そんなまさかぁ〜。皆さんとても良い方達ですよ?』 なんて言ったが、今まさに実感している。
スペ「性格わっっっる!! もうこんなの否定出来ないよ!」
スカイ「あーっ、スペちゃんが酷い事言ったぁー」
エル「言っておきマスけど類友ですからネ?」
スペ「うそ!そんなの信じないもんっ」
子供の癇癪のようにジタバタともがき続ける。そんなスペを力づくで抑えながら、エルは携帯画面を見ようとした。
しかしそれよりも気になる事があった。
先に画面を見ているキングとスカイの表情が無なのだ。 心なしか失望しているくらいまでに思える。
エル「?」
そこに映し出されているのは、スペシャルウィークの恥ずかしい写真ではなかったのか。
期待が薄れて新たな好奇心が宿る。
そうしてエルの目に飛び込んで来たのは、
エル「………………エンジェル?」
まるで天使。現実的に言うと赤ん坊のようなあどけない寝顔。純粋無垢を示せと言われたら間違いなくコレを差し出すくらいの写真。
にんじん抱き枕に寄せる頬が弾力を残しつつ形を変えている。 思わず突っついてみたい欲に駆られるが、それよりも本音がこぼれた。
エル「つ、つまらないデェス……」
可愛いとは思う。でも今は趣旨が違う。
キング「グラスさん。こちらが望んでいるのは朝が弱いスペさんの写真であって貴女のコレクションではないの」
スカイ「ジャンクフード食べたい時にフレンチのフルコース出された気分」
キング「ほら見なさい。このヒトが高級品アレルギーで胃もたれ起こしそうだわ。 心が温まる和やかな写真じゃなくて面白おかしい写真をよこしなさい」
グラス「ふふ、せっかちさんですねぇ〜。ちゃんと秘密があるというのに」
スペ(これは褒められてる、で良いのかな? 悪い気はしないけど全然喜べない……)
淡々と話を進める同期達を複雑な顔で見つめるスペ。しかし、実際のところ不満を垂らしている彼女達と同じ事を思っていた。
キング「では聞かせてもらいましょうか? その秘密とやらを」
グラス「良いでしょう。この爆睡スペちゃんはなんと、」
エル「なんと?」
スカイ「と?」
スペ「………、」
グラス「今すぐ寮を出ないと絶対に間に合わない時のスペちゃんでした!」
エル「……………ふーむ」
キング「つまり、遅刻確定なくせに安らかな顔して寝てるのが面白いって事よね」
グラス「はい」
スカイ「オチにしてはちょーっと、弱いかなぁ」
グラス「あら?」
エル「テンポが悪かったデスね。写真を見せたと同時に『朝寝坊中のスペちゃん!』とか言われたら、めちゃくちゃ良い顔で寝てて遅刻!とかで笑えたかも知れマセン」
グラス「なるほどぉ」
精進しなければ……などと意気込む彼女の隣で、一人のウマ娘は限界に達した。
スペ「オチとか笑いとかどーでも良いよっ!!!」
ビシャッッッ!!! と強烈な雷が落とされる。
スペ「こんなにとんでもない寝坊した日って私が先生に怒られて反省文書いたやつだよね!? なんで起こしてくれなかったの? なんで呑気に写真なんか撮ってるのーーーっ!!?」
キング「ウマ娘Sの証言によると、何度声をかけてもピクリともしなかったらしいわ」
グラス「そのせいで朝練にも行かず、時間ギリギリまで起こし続けたとの事です」
キング「このままだと自分も遅刻してしまうという焦り。なんでスペシャルウィークはこんなにも起きないのかという小さな怒り。それらによって写真に収める事を決意したみたいね」
スペ「ごめんなさい。スズカさん。ごめんなさい」
スカイ「うっわ……」
エル「これは、擁護できないデスね……」
心優しき同室の先輩を疑った罪悪感からスペは膝をついた。
スカイ「にしても二人はなんでその写真もらったの?」
グラス「"同室のあの子は手が掛かる"という議題でお茶会を開いていたんです。その時に」
エル「なっはっは! ウララもスペちゃんも自立が出来てマセンね! 赤子同然デェス!」
スカイ「こりゃあびっくり。マスクをつけた赤子がなんか言ってる」
エル「ーーッ、グラァス!! 今日こそ一言申しマスよ!」
キング「気付いたのね……」
グラス「あらあら。私に?何をでしょう」
エル「いつまでもワタシを甘くみていたら痛い目に合いマスよ?」
グラス「…………ふふ、楽しみです。せめて卒業する前までには思い知らせてくださいね?」
エル「良いんデス?そんな口をエルに利いても」
グラス「ええ」
エル「……………ふゥん」
交錯した視線に火花が散る。
それを冷ややかな目で見つめるのは、
スカイ「バチバチしてんね〜」
キング「全く、朝から元気だこと」
スカイ「………、この子もね」
いつから復活していたのか。
グラスの後ろには黒鹿毛のウマ娘が立っていた。
スペ「返り討ちにしちゃいましょう!グラスちゃん!」
グラス「スペちゃん!」
キング「………どうしてこうなったの? ふつうは秘密をバラしたグラスさんをやっつけるために、エルさんの味方をするんじゃないのかしら」
スペ「これは作戦です!」
スカイ「作戦?」
スペ「勝利の鍵を握るのは引き出しの数。どれだけ相手の不利を知っているのかという所にあります!」
キング「…………で?」
スペ「恐らく有利なのはグラスちゃんです!なのでまずは先程私の動きを止めたエルちゃんに罰を与えます!写真を見られたのはエルちゃんのせいですから!」
スカイ「それが理由でグラスちゃんと手を組むって………。性格の黒い部分が現れてるじゃん。もう類親友だよ、それ」
スペ「ふっふっふ。私とグラスちゃんが手を組めば無敵です。次はセイちゃんの番ですからね!」
キング「だから……。元凶がグラスさんで、原因を作ったのは貴女自身なのよ」
呆れ口調で言うも、戦場に立っている三人の耳には入っていない。
キングの肩に手を乗せて首を振るのはスカイ。もう放っておこう、という仕草にキングも頷いた。
エル「最後にもう一度だけ確認しマス」
グラス「後悔しないのか、という問答ならば不要です」
エル「………、」
グラス「申し訳ないのですが、スペちゃんはエルの敗北を望んでいます。 続けるようならこちらこそ容赦はしませんよ」
エル「…………分かりマシた。では、スペちゃん!」
スペ「へ…? わ、私ですか?」
グラス「?」
エル「スペちゃんは、グラスの激推しウマ娘を知っていマスか?」
グラス「……?」
スペ「グラスちゃんの? うーん、そういえば聞いたことないかな。………スズカさんとか、リギルの人達?」
エル「ノンノン」
違うと言い首を振る。
傍観者の二人は何か察したかのように『あー……』と呟いていた。
スペ「えー、誰だろう。足が速い子とか? グラスちゃんがファンになるようなウマ娘だし気になる! 教えて、エルちゃん!」
グラス(ファン…? 推し…?)
エル「もうすっごい推し活をしてるんデス。寝る時には枕元にぬいぐるみを置いて。壁にはポスター。 パジャマには自分で作った推しプリントのTシャツを着ているくらいに」
グラス「ッッッ!!!?」
スペ「 す、凄いね、グッズならともかく自作の物って……。もぉー、それくらい推しちゃうウマ娘がいるなら教えてよぉ! ライブするなら一緒に行くよ?」
エル「それはどうでショウ。現役のウマ娘デスから、やるとしたらウイニングライブくらいなので」
スペ「現役!? えーっ、もう降参!だれだれ?」
グラスの両肩に手を乗せて顔を近づけるスペ。
その時ふと、急激に肩が落ちた。
がくりと前のめりになるところを踏ん張って耐える。グラスは何故か足元にいた。
スペ「グラス、ちゃん…?」
何をしているのかと思えば先程自分もしたように、膝をついている。
自分との相違点をあげるなら、彼女の姿は正座だった。
それから徐々に前へ倒れていくと、ゴンッという音がした。
スペ「グラスちゃん!?」
額が床に当たる音。
驚愕を露わにして彼女の名を呼んだ。
そして、
グラス「私が間違っていました。許してください」
不退転の志を持つ彼女が、抗う事なく非を認めた。
エル「…………、」
スペ「どういう事!?そんなに言いたくなかったの?」
あたふたとしているのはスペシャルウィークただ一人。
いつの間にかセイウンスカイ、キングヘイローがグラスワンダーを支えていた。
キング「エルさん。やり過ぎよ」
エル「あらかた終わってから言われても……」
スカイ「ほら、グラスちゃん立って。この話は終わりにするから」
グラス「ぅ、ぅぅ……、私は、ただ、元気なスぺーーーー」
スカイ「あーーっはいはい!! 推しの元気な姿を見てると勇気がもらえるもんね! 分かってるから戻って来て。ここでぶっちゃけられるとこっちが気まずい……」
スペ(なんだか、悪い事した気分………)
罪悪感に苛まれる一方で、言葉では言い表せれない感情もある。
度々見かけるこの光景。
グラスワンダーが慌てふためき、面白半分かつどこか真剣な様子で宥める三人の姿。
仲間外れにされて寂しいのか。仲間外れにされるくらいグラスワンダーの事を知らないのが不満なのか。
どちらにしろスペの心に蠢いているのは、嫉妬という感情で間違いはないだろう。
キング「あ。そろそろチャイムが鳴る頃だし、本来の要件だけ伝えておくわ」
彼女がそう切り出すと先程までのカオスな空間は無くなり、まるでこれから初めて話すかのような新鮮さがあった。
スカイ「本来って、どこまで遡れば良いの?」
キング「貴女が話しかけてくる以前よ。元々私の方から声をかけるつもりだったのよ」
スペ「私達が来た時点で脱線してたんだね……」
キング「ええ。まさかここまでズレるとは思わなかったわ」
エル「それで?要件とは何デス?」
キング「想像はつくと思うけど、ウララさんがいないのは泊まりがけでトレーニングをしているからよ」
グラス「まぁ………、"あの人"ですよね?」
キング「そう。二人だけのトレーニングで山に行くと言っていたわ」
スカイ「げっ、まじか…。たぶん雪積もってるよ」
スペ「雪山の中でのトレーニング? 北海道にいたから分かるけど、一面真っ白で何も出来ないんじゃないかな…?」
キング「そこは考えても仕方ないわ。 なんせ私達との常識が違うのだから」
エル「うう……。エルも行きたかったデェス」
グラス「ふふ。機会があれば頼んでみましょうか」
キング「はい、脱線気味よ。最後まで聞きなさい」
スカイ「お嬢様が引っ張ってるんだよ。結論をどーぞ」
キング「………明日の夜。露天風呂に招待されているの」
エル・グラス・スカイ・スペ『…、ッ!!』
キング「行く人」
エル・グラス・スカイ・スペ『はーい!!!』
彼女達は渾身の力を使って手をあげた。
同時に、授業を開始するチャイムの音が鳴り響く。
これ以上にないほどの楽しみが出来た彼女達は、浮ついた足取りで席まで歩いた。
一方、その頃ーーーーー。
ここまで読んでくださった皆様。何となく察しているとは思いますが、私の好きなカップリングは"グラスペ"です。
それにしても、連載をサボっている間に色々な事が起きましたね。
・ドラゴンボールの新シリーズ。
・まさかのアーモンドアイ実装。
・ウマ娘シンデレラグレイのアニメ化。
怒涛のようにありまして、もう何年間も休んでいた気分です。