宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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翡翠の苦手なモノ 第六話 翡翠は飽きてきたようです

 

 

 巨大だが可愛さが一切ないぬいぐるみと共に空中に召喚された扉の中へと連れ去られたクリスは、首をコキコキ動かしながら周囲の様子をうかがう……あの可愛くないぬいぐるみに拉致されて連れて来られた この場所は、白い壁や床そして天井と他には何もない只の部屋のように見える。

 

 此処は『マジア・マゼンタ』こと花菱はるかの表層記憶をサーチした時に知った彼女達の敵である悪の組織(?)『エノルミータ』の構成員であるフリル一杯のロリっ娘『ネロ・アリス』が作りだす『ドールハウス』だろう……『マゼンタ』の記憶によれば、『ドールハウス』に捕らわれると訳の分からない状況に陥り、訳の分からない事になるという。

 

 『マゼンタ』自体が良く分かっていない故か、詳細はまるで分からないが、彼女の経験から推察する事は出来る……恐らく特殊な音波を使用するか視覚効果を用いて五感を狂わせて、混乱状態になった所で催眠誘導などを行うのだろう……大したモノだと思うが、そんなモノが『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』であるこの身に効くと思っているのだろうか……さて、ではこの部屋を砕いて外へ出る……前に、翡翠は先ほどから此方を警戒している同行者に挨拶しておこうと視線を向ける。

 

「……白だけの部屋っていうのも味気ないと思わないかい?」

「……何故、私を?」

 

 上空で乱入して来た悪の組織『エノルミータ』の構成員である『マジア・ベーゼ』と『レオパルト』と戦っている隙を付いて高高度から強襲をかけて来た巨大な可愛くないぬいぐるみに押し込まれて召喚された門に連れ込まれたが、丁度近くに居た頭に大きな二対の角を持つ『マジア・ベーゼ』の足を掴んで序とばかりに道連れにしたのだ。

 

「……いや。何か言いたそうに、聞きたそうにしていたからね」

「……『マジア・マゼンタ』をどうしたのです?」

 

 鞭のようなモノを構えてきつい視線を向けながら『マゼンタ』の行方を問い掛けて来る『マジア・ベーゼ』……努めて冷静になろうとしているようだが、此方を見据えながらも揺らぐ視線や鞭を持つ手に力がこもる様など、未知の相手である自分を警戒しながらも彼女は『マジア・マゼンタ』の安否を気にしているようだ……何故、敵対している相手をここまで気にするのだろう? アレか、彼女は永遠のライバルであり、彼女を倒すのは自分だとかいうノリか? これは少し突いてみた方が良さそう(面白そう)だ。 

 

「……えらく『マジア・マゼンタ』の事を気にしているようだけど、何故? 君達『エノルミータ』は彼女達『トレスマジア』と敵対しているのだろう? そんな“敵”である君が、何故『マゼンタ』の行方を――安否を気にするんだい?」

「――簡単な事ですよ」

 

 ――私達は『エノルミータ』。世界征服を掲げ、正義の魔法少女(ヒロイン)『トレスマジア』にとって(ベーゼ)となるモノ。

 

「――この街は、彼女達『トレスマジア』と我々『エノルミータ』が雌雄を決する場所。世界征服を掲げる我ら『エノルミータ』と、それを阻止するべく戦う正義の魔法少女『トレスマジア』の神聖なる決戦場—―そこに混ざった異物があなたです」

 

 その神聖な戦の場に乱入して場を引っ掻き回して、あげくに『マジア・マゼンタ』を攫うなど――

 

「――それは許されざる蛮行—―大罪です!」

「……ああ、そう…」

「――魔法少女とは神聖なる存在なのです! 全ての女の子の憧れ、女の子たちにあるべき姿を示す導き手、彼女たち魔法少女と戦うならば、それこそ彼女たちの輝きを増すような手法を用いるべき!」

「……さいですか…」

 

 彼女『マジア・ベーゼ』とやらの言葉があまりに薄っぺらすぎて、彼女の本音を引きずり出す為に残っていたケミカル物質を秘密裏に散布して、彼女が本音を語りやすい環境を整えてみれば……何故か魔法少女への熱い思いを語り出した。

 

「――魔法という力を得た彼女たちは、その力を持って凛として悪に立ち向かう――その雄姿は全ての女の子たちに憧憬の念を抱かせ――だからこそ、その凛とした表情を歪ませたい!」

「……はい?」

「悪と戦う魔法少女の姿は凛として美しい……だからこそ、その表情の奥にあるモノを引き出して、めちゃくちゃにしたいんです」

「……歪んでるねぇ…」

 

 ……さしものクリスも『マジア・ベーゼ』の本音にドン引きして美麗な顔を引き攣らせる……興味本位で『マジア・ベーゼ』の秘めたモノを引き出してみたが、予想の斜め上な本音が出て来てしまった事に乾いた笑いしかでなかった。

 

 


 

 

 『エノルミータ』の構成員である『ネロ・アリス』が創り出した『ドールハウス』の中にクリスと『マジア・ベーゼ』が捕らわれている間、外界では顔を青くした『レオパルト』が突然姿を消した『マジア・ベーゼ』の行方を必死になって探していた。

 

「――『ベーゼちゃん』何処!? 何処に行ったの『ベーゼちゃん』!?」

 

 キョロキョロと辺りを見回しながら『マジア・ベーゼ』を探す『レオパルト』……そんな彼女の傍に上空から舞い降りた『ネロ・アリス』が『レオパルト』の肩に手を置いて落ち着くように促す。

 

「――『アリス』!? 『ベーゼ』ちゃんが!?」

 

 だが大切な人が突然消えた事に動揺する『レオパルト』は到底落ち着ける筈もなく、隣に降りて来た『ネロ・アリス』に『マジア・ベーゼ』が消えた事を必死になって説明する『レオパルト』……動揺する彼女を無表情でみていた『ネロ・アリス』は、その右手を上げて一点を指す――幼い彼女が指す先には、彼女『ネロ・アリス』の能力で造られたドールハウスがあった。

 

「――ま、まさか あのクソ女! 『ベーゼ』ちゃんを“道連れ”にしやがったのか!?」

 

 高高度からの可愛くないぬいぐるみによる強襲を受けたクリスは、ドールハウスに連れ込まれる僅かな間に近くにいた『マジア・ベーゼ』を何らかの手段を用いて拘束してドールハウスへと道連れにしたのだと推察した『レオパルト』は忌々し気にギリギリと歯を噛み締めて剥き出しになった犬歯が彼女の怒りを現していた――あのクソ女、最初に会った時からロクでもない奴だと思っていたが、ここまで性格が悪かったとは。

 

 『ネロ・アリス』にとっととドールハウスを解除させてしまえば『マジア・ベーゼ』を解放する事が出来るのだが……そうなると、同時にあのウザいクソ女も解き放たれると言うのが気に入らない。

 

 ……なんとか『マジア・ベーゼ』だけ解放できないかと思案している時、地上から急速に此方に近付いて来る者達が居た……あのクソ女と戦っていた『サルファ』と『アズール』だ――至近距離まで近づいて来た後、険しい表情をした『サルファ』が噛みついて来た。

 

「――お前ら、何しに来てんねん! お呼びじゃないんや、引っ込んどれ!」

「……あん、『サルファ』か。今お前らにかまってる暇はねぇんだよ、邪魔すんじゃねぇよ!」

「……なんやて!」

 

 噛みついて来た相手が『マジア・サルファ』だと分かると適当にあしらい、それが『マジア・サルファ』をヒートアップさせて隣に居る『マジア・アズール』が冷静になるように声を掛けるが『マジア・サルファ』には届かないようだ……至近距離でにらみ合う『レオパルト』と『マジア・サルファ』だったが、突然ドールハウスの方向から途轍もない魔力を感じて同時にドールハウスへと視線を向けた。

 

「――な、なんや! この膨大な魔力は!?」

「――あのクソ女、魔力も扱えたのかよ!?」

 

 クリスと『マジア・ベーゼ』を閉じ込めているドールハウスが膨張していき、遂には内圧に耐え切れずに亀裂が入ると爆発するように崩壊する――粉々になった外壁が濛々とした煙になり、その中から二つの人影が飛び上がっていく。

 

「――『ベーゼ』ちゃん!?」

 

 先行する人影を追うように飛び上がる影――頭部に二対の大きな角を持ち、腰の部分より漆黒の翼を広げた人影が『マジア・ベーゼ』である事に気付いた「レオパルト」が歓喜の声を上げる。

 

 瓦礫の煙の中から飛び出した『マジア・ベーゼ』は、右手に持った騎馬鞭『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を振り被ると先行する白いボディスーツ目掛けて振り下ろした。

 

「――分かりますか、魔法少女とは尊い物—―“われわれ”悪役は彼女達と戦い、彼女達の魅力を引き出さなければいけない……なのに貴方は魔法少女たちを愚弄し、あまつさえ『マジア・マゼンタ』を拉致すると言う愚行を――許されざる大罪を犯した! だから貴方は罪を償わなければいけないんです」

 

 振り下ろした『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』より漆黒の刃のような魔力弾が撃ち出され、それは彼女が『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を振り下ろす度に数を増していき、無数の漆黒の刃が白いボディスーツを纏ったクリスへと殺到する。

 

「それは君の論理だろう? 何故私がそれに従わなければいけない」

 

 白いボディスーツに付いている蒼い結晶体が輝きを増すと、両腕の周囲の空間が歪んで迫り来る漆黒の刃を次々と砕いていく。

 

「――決まっているじゃないですか! 私達“悪役”は魔法少女を輝かせる為に存在しているんじゃないですか!」

「――誰が悪役だ、誰が」

「今までやって来た事を思い出してください!」

 

 迫り来る無数の魔力弾を砕いている隙を付いて『マジア・ベーゼ』はクリスの至近距離まで詰めると『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を振り被って彼女目掛けて勢い良く振り下ろし、クリスはプラズマを圧縮した即席の剣を作り出して振り下ろされた『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を受け止める。

 

 おかしい……プラズマを圧縮した剣で『マジア・ベーゼ』の攻撃を受け止めたクリスは鍔迫り合いを繰り広げながら彼女の鞭に視線を集中する……いくら魔力とやらで強化されているだろうとはいえ、ただの鞭が超高熱のプラズマを圧縮した剣と鍔迫り合いが出来るだろうか……それに今気付いたが、『マジア・ベーゼ』の顔に浮かんだ星の紋様はあんなに多かったっけ?

 

 


 

 

 突然爆発して粉々になったドールハウスから飛び出して来たクリスと、その後を追う黒い影が右手を大きく振り被って細長いモノを振り下ろす――それを輝くナニかで受け止めたクリスと鍔迫り合いを行い黒い影……頭部に二対の大きな角を持つ『マジア・ベーゼ』だ。

 

「……凄い、彼女と互角に渡り合っている」

 

 この街の平和を脅かす悪の組織『エノルミータ』との戦いの中で、彼女『マジア・ベーゼ』とは幾度となく戦いを繰り広げて来た……戦いと言うにはヘンな事をしてきたり、何を考えているのか良く分からない彼女だったが、今の彼女は自分たちを軽くあしらったクリスと名乗る女性と互角――いや、押しているように見える。

 

「ぐぬぬぬぅ……あのクソ女、『ベーゼ』ちゃんとあんなに楽しそうに……」

 

 なにやら『レオパルト』がバカな事を言って、隣に居る『ネロ・アリス』がやれやれと言った感じで肩を竦めている……だがそんな事はどうでもいい、アイツ等がヘンなのは何時もの事だ――問題なのは今目の前で起きている事だ。

 

「……凄い、『マジア・ベーゼ』の方が押している様に見えるわ」

 

 自分達を軽くあしらったクリスと名乗る女性と鍔迫り合いを繰り広げる『マジア・ベーゼ』の武器である黒色の鞭がジリジリと押しているように見える。

 

「……なんでアイツが戦ってんねん、それはウチら正義の味方『トレスマジア』の役目やろうに……」

 

 そんな呟くような声がして視線をそちらに向けると、そこには苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた『マジア・サルファ』の姿があった。

 

「……『サルファ』」

 

 

 魔力とやらで筋力が増大されているのか、彼女『マジア・ベーゼ』の持つ黒い鞭からの圧力が時間と共に強まっている様に感じるクリス……興味本位から薄っぺらい論理を掲げる『マジア・ベーゼ』に軽い気持ちでケミカル物質を使用して彼女の本心を引き出した結果……常人には理解しがたい心情だった。

 

 ケミカル物質のお陰で彼女の本音を引き出せたは良いが……どう反応すればいいのか判断に困るクリス。

 

 元々 この世界に来訪したのは、ただでさえ厄介な奴らの要する生体航宙艦『バイオ・シップ』どもが更に厄介な存在になる可能性が出て来て、それに対抗する術を求めて模索している中で出て来たのが魔法と呼ばれる未知の現象だった。

 

 ――魔法と呼ばれる現象に可能性を見出したクリスの実の姉の命令で、この未知の並行世界へと来訪して、魔法と呼ばれる未知の現象を操るチュウガクセイと呼ばれるローティーンの特殊性癖を持つ少女と戦っている訳だが。

 

 ……もう、良いんじゃないだろうか。

 

 クリス達の身を守る『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』を貫いて彼女の肉体に直接ダメージを与えるという驚愕の能力を見せた『マジア・マゼンタ』の身柄は確保しているし、成果としては十分だ……そろそろ幕引きとしようか――翠眼を細めて、クリスは獰猛な笑みを浮かべた。

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 マジア・ベーゼの態度に違和感を感じて、軽い気持でケミカル物質を使用して彼女の本音を引き出そうとしたら――予想の斜め上のモノがあふれて来て戸惑うクリス……昔から言いますよね『好奇心は猫をも殺す」と、まさに自業自得。

 書いている時間が殆ど取れず、続きが時間が掛かりそうですが、良かったら気長にお待ちくださいね。ではでは~。
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