宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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翡翠の苦手なモノ 第七話 翡翠は知性派を目指すようです(似合わない)

 

 

 クリスと鍔迫り合いをしている『マジア・ベーゼ』は『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を握る手に力を籠める……正義のヒロイン、全ての女の子の憧れである『トレスマギア』。まだ何の力も持って居なかったあのころから、正義の為に戦う彼女たちの姿に憧れ、妙な黒いぬいぐるみに目を付けられて……悪の組織に身を置いているが、これまで憧れて遠くから眺めているしかなかった『トレスマジア』を間近で見る機会が増えて――戦う凛々しい彼女たちの姿……その凛々しい表情をだけでなく、もっと色々な表情を見たい。

 

 そんな欲求が高まり、彼女たちとの戦いに向けて準備をしていた時に乱入してきたのが彼女 クリスだった……最初は新たな魔法少女の登場かと思ったが、彼女が語るのは自分の都合ばかりでありそれは正義の為に戦う魔法少女の在り方では無かった……それに彼女 クリスは可愛らしい顔立ちをしているが……どうも彼女との戦うのはヤル気が出なかった。

 

 『アリス』ちゃんのドールハウスの中に巻き添えにされた時から、妙に彼女の言葉も態度も薄っぺらいモノにしか見えなかった……ホント、何を言ってるんだろう この人は。とりあえずは、『トレスマジア』との戦いを台無しにしてくれたあの人には「ごめんなさい」をして貰おうじゃないか……

 

 『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を握る手に力が籠り、このまま押し切ろうとした時――クリスの服に散りばめられた宝石のようなモノが蒼い輝きを放つと共に、眩しさのあまり目を細めている隙を突かれてクリスの姿を見失ってしまった。

 

「……何処に行ったんです、まだ話は終わっていませんよ?」

 

 周囲を見回しながら彼女の姿を探す……向こうからちょっかいをかけて来たのだから これで逃走するとは考えにくいし、それでは興ざめも良い所だ……それにしても先ほどから妙に調子が良い。

 

 『ドールハウス』に連れ込まれた時はテンションがダダ下がりだったが、彼女と相対している内に徐々にテンションが上がり、飄々としている彼女に己が罪を自覚させて「ごめんなさい」とあやまらせようと『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』で攻め立てるが一瞬のスキを突かれて逃れられ、彼女を探していると少し離れた場所に彼女――クリスは立っていた。

 

 栗色の髪を風に靡かせながら体に密着した白いボディスーツに蒼い光を発する鉱物を付けたクリスは、その翠色の瞳で『マジア・ベーゼ』を見た後に少し離れた場所で様子をうかがっている『レオパルト』や『ネロ・アリス』、そして彼女達と口喧嘩をしていた『マジア・サルファ』と『マジア・アズール』を見渡した後に唇の端を上げた。

 

「……『マジア・ベーゼ』だっけ、中々楽しませてくれるじゃないか」

 

 『マジア・マゼンタ』の記憶によれば、涼しそうな軍服が『レオパルト』、フリルが付いたのが『ネロ・アリス』。そして『トレスマジア』の青いのが『マジア・アズール』と黄色いのが『マジア・サルファ』だったか……この場に居る者達を見回したクリスは、全員を幕引きに相応しい戦場へと招待するべく右手を高く掲げる。

 

「――『位相変換』(Wonderland)

 

 彼女の言葉が響くと共に周囲の光景が一篇する――再開発が計画されて更地にされているこの場所が、クリスを中心とした地点からその姿を変えていった……再開発事業に備えて平坦にされた土地が白い巨石が並ぶ見慣れない場所へと変貌していった。

 

「……なんや、コレ?」

「……景色が一変した、どうして? 何をされたの私たち」

「……どうせ、あのクソ女の悪趣味に決まっているじゃねぇか」

 

  上空に浮かびながら眼下の景色が一変した事に戸惑う『マジア・サルファ』と『マジア・アズール』、先ほどまで『サルファ』と口喧嘩をしていた『レオパルト』はこの状況を引き起こしたであろう元凶であるクリスに悪態を付きながら睨み据える。

 

「此処は世界の位相を少しズラした場所――『不思議の世界(Wonderland)』へようこそ」

 

 仰々しく一礼するクリス……芝居掛かったその仕草に自然と身構える『トレスマジア』の『アズール』と『サルファ』。『エノルミータ』の『レオパルト』と幼い顔に不満げな表情を浮かべる『ネロ・アリス』もまた『マジア・ベーゼ』と距離を取りながら対峙するクリスの一挙手一投足を油断なく見据えている。

 

「……私は『魔法』という未知の法則に裏付けされた技術を求めて この世界にやって来て、『マジア・マゼンタ』という可能性の原石を見つけた……今回君達の前に姿を現したのは、彼女以外にも原石となりえる者が居るかどうかを確かめる為……」

 

 『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』を持って未だ臨戦態勢の『マジア・ベーゼ』と合流した『レオパルト』と『ネロ・アリス』は『ベーゼ』と並び立つと目の前で妙に芝居がかった仕草を見せるクリスと名乗る女を睨み据える。

 

「……このままジャレているのも楽しいが、時間は有限でね――そろそろ“ギア”を上げようと思うんだ」

 

  ロンゴミニアド・キラボシ モード

 RHONGOMYNIAD・KIRABOSI MODE

 

 

 謡うように言葉を紡いだクリスは周囲の空間に干渉して思念の力で空間を圧縮して無数の空間の歪みを作り上げる――1つ1つは小さいが空間を圧縮しているが故に巻き込まれれば“唯では”済まず、本来の威力であれば空間上にある物質も歪められて崩壊する必滅の槍……だが未だ領域を解放せずに深紅ではなく翠色の瞳をしたまま展開した“それ”は、対象を原子崩壊へと導く本来の威力よりも格段に劣り、“それ”にブツかった所で虹色のブツを吐いて一週間くらい身体の節々が痛む位だ。

 

 しかし、その数が尋常ではない。本来、クリスの周囲に浮かぶ『ロンゴミニアド』の槍は数百くらいだが、空間の圧縮率を下げている故にその数は数千にまでおよぶ。

 

 ――さあ、輝きを見せておくれ。

 

 クリスの周囲に浮かぶ無数の歪みが射出されて、空中で対峙する『エノルミータ』の面々だけでなく少し離れた場所で事態の推移を見ていた『トレスマジア』の2人にも歪みが殺到する。

 

「――くっ!」

「――テメェの都合だけをほざいてんじゃねえよ!」

 

 叫びながら『レオパルト』は多数の銃を召喚して射出された無数の歪みを迎撃するが、すぐさまそれに倍する無数の歪みが射出されて『レオパルト』と『マジア・ベーゼ』そして『ネロ・アリス』を襲う――それに対して彼女達は持てる力を使って抗うが、如何せん襲い来る歪みの数が尋常ではない……幾つもの銃口を操って『レオパルト』は迫る歪みを迎撃し、『マジア・ベーゼ』も『支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)』から漆黒の魔力の刃を飛ばして『ネロ・アリス』も召喚した複数の巨大ぬいぐるみを操って迎撃しているが、襲って来る歪みの数が多く迎撃を抜けた歪みが三人の少女達を襲う。

 

「――!?」

「――『アリス』ちゃん!?」

 

 襲って来る歪みの一つが『ネロ・アリス』眼前に迫り、それに気付いた『マジア・ベーゼ』が『ネロ・リス』の前に出て庇う……『ネロ・アリス』を胸に抱きしめて彼女を庇いながら衝撃に備える『マジア・ベーゼ』だったが、何時までも衝撃が来ない事に訝し気にしている彼女の傍を歪んた空間が通り抜けていく。

 

「……?」

 

 どうやら空間の歪みは射出した後でも ある程度は彼女が制御出来るようだが、それにしても何故 彼女は歪みの軌道を変えたのか……まさか、幼い『アリス』ちゃんを気遣って?

 

 

 

 

「――くっ、来るわ!」

 

 クリスが生み出した無数の空間の歪みは、『エノルミータ』だけでなく少し離れた場所に居る『トレスマジア』にも襲い掛かり――迫り来る無数の歪みに緊張した声を出す『マジア・アズール』。

 

「――くっ、好き放題しくさってからに!」

 

 襲い来る無数の光弾を両手に召喚した巨大な手甲で迎え撃つ『マジア・サルファ』。大気中から取り出した水分を凝縮して作り出した大量の氷の剣を浮かべた『マジア・アズール』は、迫り来る歪んだ空間を迎撃するべく周囲に浮かぶ氷の剣を撃ち出して相殺するが、次々と歪んだ空間が撃ち出されて、その撃ち出されるスピードは相殺する氷の剣の形成速度を上回り、次第に氷の剣の迎撃を潜り抜けた歪んだ空間が『アズール』や『サルファ』の身体にヒットして、彼女達の着るコスチュームはその歪みに耐えられずに破れてその身体に痛々しい痣を残していく。

 

「――くっううう!?」

「――ううっ、負けてたまるかぁ!?」

 

 それでも闘志を失わずに彼女達はクリスの繰り出す歪んだ空間の群れに立ち浮かう……これを突破して少し離れた場所から高みの見物をしているあの女を倒し、連れ去られた大切な仲間である『マジア・マゼンタ』を取り戻さなければならないのだ――友達を助けられず、こんな所で立ち止まってなど居られないのだ。

 

 


 

 

 『トレスマジア』の2人と『エノルミータ』の面々をまとめて相手取ったクリスは、少し離れた場所で両手を組みながら静かに戦いの推移を見守っていたが、大量の『ロンゴミニアド』の槍を前に満身創痍、ボロボロの体を晒している。 

 

 『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』を抜くという奇跡を見せた『マジア・マゼンタ』の仲間である『トレスマジア』の2人に仕掛け――危機的状況に陥れば底力を――かつて事故により記憶を無くすと言うありえない状況に陥ったクリスを保護した宇宙戦艦『ヤマト』の人々が見せた絶望的な状況であっても決して折れず、あきらめずにもがき続けて――絶望的な状況を覆した。

 

 圧倒的な敵を前に敗北を予測したクリスの目の前で、抗い勝利を手繰り寄せた人々の底力――それに彼女は魅了され、その輝きを見たいと欲した。

 

 その後、あの能天気で性格の悪いプロフェッサー(暇な教授)に捕獲されたクリスは、積層亜空間の最上位――『水の回廊』のデーターを取るべく用意された『実験艦―02』に強制的に乗せられて未知の回廊へと向かい――予想だにしないアクシデントに見舞われ、見知らぬ世界へと迷い込んだ。

 

 見知らぬ世界において様々な経験をしたクリスは、その世界の人間と亜空間で起きたアクシデントで知り合った異界の最終兵器バスターマシン7号と共にムカつく姿をした無数の害獣どもと戦い、億を超える数の敵との絶望的なまでの戦いの中でも決して挫けずに抗った彼らが見せる命の煌めきは、宇宙戦艦『ヤマト』のクルー達が見せた輝きそのモノであった。

 

 ――だからこそ、この局部銀河群の中に存在する棒渦巻銀河の辺境宙域に位置する恒星系の第三惑星で彼女達と出会った時、クリスは戦う彼女達の中にもクリスを魅了した輝きがあるのかと期待した……だが結果は、目の前で満身創痍のボロボロになった少女達の姿……期待した輝きを見る事は叶わず、『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』を抜くと言う快挙を為した『マジア・マゼンタ』以外には、見るべきものが無いという有り様だ。

 

 ――さあ、これで終わりにしようとクリスは、未だ『トレスマジア』の2人と『エノルミータ』の面々の周囲に浮かぶ無数の空間の歪みを動かして一気に勝負を決めようとし――直後に『トレスマジア』の2人の傍に眩い光が現れて、その光が収まった時にはその場に一人の少女の姿があった……白とピンクのワンピースに身を包んだツインテールの少女は、ピンク色の槍を構えると目にも止まらぬ速さでそれを迫り来る無数の空間の歪みへと繰り出した。

 

「――はぁ! たたたたたたったたたた!!」

 

 襲い掛かって来る空間の歪みを絶妙な槍さばきで粉砕したピンク色衣装を着た少女は、ピンク色をした槍一本で無数の空間の歪みを捌き切ると宙にて大きく振り回した後――その切っ先をクリスへと向ける。

 

「――これ以上はやらせないよ、クリスちゃん!」

 

 

 突然の『マジア・マゼンタ』こと花菱はるか嬢の登場に、戸惑いながらも喜びを露にする青いのと黄色いのの二人……そんな三人を見ながらクリスは小さく口角を釣り上げた。

 

 ――ようやく、ようやく姿を現したか『マジア・マゼンタ』……ゲストとして登録する事で『探査艦―03』の制御権を与えたのだが、中々姿を現さないので何をしているのかと思っていたが ようやく主演が到着したようだ。

 

「……クリスちゃん、これ以上二人を傷つけるなら あたしが相手になるよ!」

 

 ピンク色の槍を構えながら凛々しくも宣言する『マジア・マゼンタ』……彼女の胸元に付けられた大きなリボンの中心には、『トレスマジア』達共通のハート形のペンダントがある――そしてその真下には、『マジア・マゼンタ』こと花菱はるかの前でこれ見よがしに見せていた蒼い結晶体『BLUE TOPAZ』がその存在を主張するかのように輝いている。

 

「……“ソレ”持って来たんだ」

「……クリスちゃんが言っていた……これまでに出会った人達が使った『魔法』を解析して再現出来る所だけを組み込んだ、この『BLUE TOPAZ(蒼炎の探究者)』……」

 

 訳の分からないまま襲われて、訳の分からないまま敵の船に拉致されて能天気にも談笑していた……そんな異常な状況下の中で、今思えば胡散臭い笑みを浮かべながら談笑する合間にこれ見よがしに見せていた『BLUE TOPAZ(蒼炎の探究者)』……分子レベルの情報集積回路の集合体である蒼い結晶体。

 

 クリス達がこれまでに出会った彼女達にとって未知の法則である『魔法』とよばれる現象を解析して再現出来た物を組み込んだ試作品……そんな代物が無造作に目に見える所に置かれていた事からも、何らかの思惑があるのは明白だったが『マジア・マゼンタ』単体ではクリスには勝てない……だから『マゼンタ』――花菱はるかは限りなくゼロに近い可能性に賭けたのだ。

 

「――勝負だよ、クリスちゃん!」

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 長らく時間が掛かり申し訳ありません。
 投稿するにあたって、次の話の道筋が見えた所で投稿する形を取ってっていたのですが、書く時間が殆ど取れず、このままでは二期の方が先に始まってしまいそうなので、投稿しました。

 プロットでは後1,2話で完結する予定ですので、気長にお待ち下さませ。
 では、次回辺りにこの小説に「魔法処女にあこがれて」のタグが付けれない理由が登場する予定です ではでは~。

 
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