宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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翡翠の苦手なモノ 第八話 翡翠はケリを付けるつもりです。

 

 

 都市部から少し離れた再開発区画でクリスと再び対峙した正義の魔法少女『トレスマジア』の内 『マジア・アズール』と『マジア・サルファ』は、仲間であり大切な友達でもある『マジア・マゼンタ』を取り戻す為に強大な力を持つクリスに戦いを挑んだが、圧倒的な彼女の力の前に敗北寸前にまで追い込まれてしまう――そんな時、突如として乱入してきたのが『トレスマジア』と幾度となくブツかってきた悪の組織『エノルミータ』の構成員『マジア・ベーゼ』と『レオパルト』そして『ネロ・アリス』の三人だった。

 

 双方協力するでもなく、それぞれがクリスに向けて戦いを挑んだが、それでも壁は高く、その拳はクリスには届くことなく、圧倒的な彼女の手札に押し潰されそうになったその時――眩い光と共に現れたのは、虜囚となっていた筈の『マジア・マゼンタ』であった。

 

 ――そして彼女は、手に持った彼女専用の槍『マゼンタ・スピアー』を持って迫り来る驚異の全てを捌いて、手に持った槍の切っ先をクリスへと向ける。

 

「――勝負だよ、クリスちゃん!」

 

 そう啖呵を切った彼女の胸元には『蒼炎の探究者(BLUE TOPAZ)』が青い輝きを放っていた。

 

 


 

 

 クリスとの戦いでボロボロになった身体が痛む中、それを押さえ込んだ『サルファ』と『アズール』は、上空で高速で動き回る二つの影を見上げていた。

 

「……『マゼンタ』」

 

 両手を組んで心配そうに見守る『アズール』……『マゼンタ』を取り戻す為に姿を現したクリスに戦いを挑み、その圧倒的な力の前には『魔法少女』の力は無力だった。

 

 なのに『マゼンタ』は自力で脱出して、圧倒的強者であるクリスを相手に戦いを繰り広げている……こちらの攻撃は届かず、ただ弄ばれるしかなかった相手に果敢に攻め立てていた……『マゼンタ』が無事だったことは喜ばしいが、クリス相手では援護攻撃すら通用するとは思えず……ただ、『マゼンタ』の無事を祈るしか出来なかった。

 

 無力感に苛まれる『マジア・アズール』……そして無力感に苛まれているのは彼女だけではなく、その隣で奥歯を噛み締めて苦々しげな表情を浮かべている『マジア・サルファ』も同様だった。

 

 大切な仲間である『マゼンタ』を取り戻す為に、再び姿を現したクリスに戦いを挑み……こちらの攻撃は一切通じず、ただ弄ばれるだけに終わった……情けない、これまで『正義の魔法少女』として街の平和を守る為に戦ってきたと言うのに、結局何もできずに、しかも取り戻そうとしていた『マゼンタ』に助けられる始末……何て無ざまな……こんなのは、ウチが理想とする『魔法少女』やない……『マジア・サルファ』はギリギリと奥歯を噛み締めた。

 

 


 

 

「――行くよ、クリスちゃん!」

 

 気合の声を上げた『マジア・マゼンタ』は、愛用の専用武装『マゼンタ・スピアー』を構えて一気に飛び出す――切っ先が向かうは、悠然とした態度で待ち構えるクリス――戦う覚悟を決めた『マゼンタ』の槍は神速の速さで目標を捉えようとするが、クリスは迫る槍の切っ先の前に軽く手を置いた。

 

「――なっ!?」

 

 防ぐ訳でもなく払うつもりでもなく、ただそこに置かれた手に触れただけで、槍を持つ『マゼンタ』はまるでとてつもなく固くて重たいものに接触したような衝撃を受け――『マゼンタ・スピアー』は手のカーブにそって目標に到達することなくいなされた。

 

 ――これって、クリスちゃんの『グラビティ・クリスタル(重力結晶)』の影響!? クリスと戦って捕まった後、宇宙に浮かんでいる大きな船に囚われていた割には割と自由に過ごさせてもらっており、おかしな薬(?)のせいでお気楽な性格になっていた『マゼンタ』は、大きな宇宙船で彼女と談笑していたのだ……相手の思惑に気付かぬままに。

 

 そんな、一見少女たちの他愛もない会話を繰り広げていると、ふと『マゼンタ』はクリスの纏う白地の服の所々に備え付けられた蒼い光を放つ結晶体について気になったようで、「そのアクセサリー、カッコいいね」と話題を振ると意外にもクリスは彼女の白い服に備え付けられている蒼い結晶――『グラビティ・クリスタル(重力結晶)』について教えてくれたのだ。

 

 いわく、宇宙にあるおっきな穴 ぶらっくぼーるの奥にある ちょうなんとかぶっしつとか言うモノを材料に作られた結晶であり、その結晶の力でクリスちゃんは普段の何倍もの力を発揮するんだとかなんとか――なら、それを打ち破るのみ。

 

「――負けないよ、クリスちゃん!」

 

 ……『マジア・マゼンタ』は意外と熱血なのかもしれない。

 彼女が操る槍――『マゼンタ・スピアー』を構えた『マゼンタ』は気合の声と共にクリスめがけて連続して繰り出される――その切っ先はこれまでの彼女が見せた槍裁きを超えて、もはや神速の速さで繰り出され――無数に繰り出される切っ先を、クリスは危なげなく手刀で弾いているように見えるが、彼女の手首に近い場所に備え付けられた蒼い結晶『グラビティ・クリスタル(重力結晶)』が激しい光を放っていた。

 

「……やるじゃん」

 

 凄まじい勢いで繰り出される『マゼンタ・スピアー』を捌きながら、クリスは唇の端を釣り上げて心底楽しげに笑う……こんなにも心が躍るのはいつ以来だろうか? 少し前に航宙艦や艦載機に変形機能を持たせてガチで殴り合う趣味人の楽園世界(パラダイス・ワールド)に共に迷い込んで、その世界において相棒である異世界の決戦兵器――麗しき義理の姉 ノノねぇと袂を分かって繰り広げた壮大な姉妹けんか……『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』である自分に匹敵する強大な戦闘力を有しながら、些細な事で落ち込んでいるかと思えば、意外と熱血な彼女との戦いは面白かった。

 

 ――いま目の前には、この惑星で言う所のチュウガクセイをやっている少女……ポヤポヤしているかと思えば、妙な所で熱血している、ノノねぇを彷彿とさせる同世代の女の子……このまま成長していけば、ノノねぇのようになるのだろうか? 妙な方向に思考がそれた――ならば、ここらで少し“ギア”を上げるか。

 

「――想像以上だよ、『マジア・マゼンタ(・・・・・・・・)』……それじゃあ、そろそろ本気で行こうか」

 

 ――振り落とされないようにね。そう言ったクリスの瞳が翠色から真紅に変わる。彼女の胸の奥にある“領域”より神秘のエネルギーを取り出す――それはクリスの身体全体を駆け巡り、彼女の能力を何倍にも増幅して、その影響で翠眼に真紅の光が宿り、苛烈な光を宿したクリスは『マジア・マゼンタ』に向けて右手をまっすぐに伸ばすと、その手に光が集まって光球を作り――クリスはそれを『マジア・マゼンタ』に向けて打ち出した。

 

 猛スピードで迫る光球を前に体を捻ることで躱す『マジア・マゼンタ』――だが、次に瞬間には無数の光球が『マジア・マゼンタ』に向けて打ち出されており、全てを躱す事は不可能だと判断した『マジア・マゼンタ』は愛用の武器『マゼンタ・スピアー』を構えて迫り来る無数の光球を撃ち落とした。

 

「……これに反応出来るんだ。いいね、最高だよ『マジア・マゼンタ』」

 

 にやりと笑うクリスの視線は、おもちゃのような槍で光球を捌き切った『マジア・マゼンタ』の胸元で輝く『BLUE TOPAZ(蒼炎の探究者)』へと向けられていた……思念波を飛ばしてリンクして稼働状態を確認すると、『BLUE TOPAZ』は組み込まれた魔法式である『身体強化魔法』を発動し、その『魔法』は『マジア・マゼンタ』の能力を大幅に強化しておもちゃのような槍で怒涛の攻撃を仕掛けてくる。

 

 あの『身体強化魔法』を得たのは、未知の法則が観測された並行宇宙への友人探査(お姉ぇ怒りの探査任務)の初期であった――その惑星に住まう原住民たちの中の、ほんの一握りの自称超越種ども……超常的な能力を持って原住民たちを支配する頂点(おバカさんたち)……身の程知らずにも戦いを挑んできたので、ちょっと頭を撫でてやったらすぐに総崩れになり、胸ぐらを掴んで少しおど――おはなしをして、彼らが操る力――『身体強化魔法』のノウハウを得たのだ。

 

 『身体強化魔法』は、『魔力』と呼ばれる未知のエネルギーを身体の中で循環させる事で、肉体の強度を上げて圧倒的な戦闘力を得る……とはいえ、その手法は古典的で他のエネルギーでも代用可能で、理解するのに比較的容易であった。

 

 『身体強化魔法』をもって大幅な能力UPを得ている『マジア・マゼンタ』――魔法式を稼働させているのは、彼女自身が持つ『魔力』とやらのデーターも順調に記録されているようだし、このまま彼女と踊って(戦って)いけば、良いデーターが取れるだろう。

 

「――どう、クリスちゃん! 降参するなら今のうちだよ!」

 

 『身体強化魔法』によって漲る力に酔っているのか、熱に浮かされたような表情を浮かべた『マゼンタ』が、己が優位を確信して幼い風貌に似合わない熱に潤んだ表情で宣言してくる……『身体強化魔法』による大幅な能力UPの弊害か、身体の内から湧き上がる熱に浮かされて注意力が散漫になっているようだ。

 

「……周りをよく見てみなよ、『マジア・マゼンタ(・・・・・・・・)』」

「……えっ? これは!?」

 

 にやりと笑ったクリスは『マゼンタ』に周囲をよく見るように促し、熱に浮かされているが元々素直な性格をしている『マジア・マゼンタ』はクリスの言葉に周囲を見回し――先ほどクリスが撃ち出した光球が拡散せずに、少し離れた場所に浮かんでいる……しかも、彼女が撃ち出した光球の数よりも明らかに多くの光球が『マジア・マゼンタ』の周囲を取り囲んでいた。

 

「――これは!?」

「先ほどバラまいた光球だけでなく、君のお友達とジャレていた時にもバラまいた光球にも供給していたんだよ、これもリサイク(布石)の一つかな、さぁ頑張って避けてね――光球乱舞(スターダスト)

「――ちょっ!?」

 

 にこやかな笑みを浮かべたクリスの無慈悲な宣告に顔を引きつらせる……文句の一つや二つを言おうとするも、その前に周囲に浮遊する光球の群れが動き出して、あわあわとしている『マセンタ』へと殺到する――慌てて回避するも、それを予想していたかのように避けた先に光球が殺到して、なんとか『マゼンタ・スピアー』で切り払う。

 

 だが切り払っても、切り払っても襲い来る光球の群れに何とか対処しながら「――クリスちゃんのいじわる!」などと可愛い事を叫んでいる『マジア・マゼンタ』に苦笑しながらも、その視線は彼女の胸元で蒼い輝きを放っている『BLUE TOPAZ(蒼炎の探究者)』へと向けられている――さぁ、光球乱舞(スターダスト)をどう避ける?

 

 彼女の胸元で輝く高密度集積回路『BLUE TOPAZ(蒼炎の探究者)』には、これまで接触した種族から得た『魔法』と呼ばれる技術を詰め込んでいる……クリスでは素質が無いのか発動しなかったが、予想通り『マジア・マゼンタ』は『身体強化魔法』を発動する事が出来た。

 

 『BLUE TOPAZ(蒼炎の探究者)』に搭載された記録装置(レコーダー)が、彼女『マゼンタ』の行動やエネルギーの流れをすべて記録してくれるから新たな発見も期待出来る。

 

 光球乱舞(スターダスト)の乱舞を避けていた『マジア・マゼンタ』だが、避けきれなくなったのか球状の障壁を張って防いでた……あれは魔法使いとは名ばかりの、砲撃をメインにしたバトル・スタイルを持つ種族が用いた『シールド魔法』だ……個人で運用出来るのは便利だと思うが、強度の方はお粗末だったが。

 

 さて、ここら辺で麗しき義理の姉に敬意を表して、彼女の得意技を披露しようとしますか、と上空へと飛翔しながら身体の内に力を込めて、余剰エネルギーが周囲の空間を歪ませながら『マゼンタ』と十分な距離を取る――溜め込んだ力が周囲に溢れ出しながら、クリスは蹴りの態勢を取ると一気に加速した――相手はチュウガクセイらしいから、本来の威力ではなく少し手加減をした代物だが、『マジア・マゼンタ』相手ならこれ位で良いだろう。

 

「――直伝(大ウソ)、い・な・ず・まっ、キィィィイイイク!!」

 

 


 

 

 勇猛果敢にも単独でクリス相手に勝負を挑んだ『マジア・マゼンタ』……これまで圧倒的な力を示したクリス相手に一歩も引かないほどの戦闘力を見せる。

 

「……凄いね、『マゼンタ』」

「……」

「……『サルファ』?」

「……なんでもあらへん」

 

 煮え切らない態度の『マジア・サルファ』に訝しげに眉を寄せる『マジア・アズール』。微妙な空気が流れる中、天空でひと際大きな音が鳴り響いて、二人は同時に空を見上げる――そこには無数の光の玉が溢れていた。

 

「――これはっ!?」

 

 無数の光の玉に圧倒され、思わず声を漏らした『アズール』は、無数の光の玉の中心に『マジア・マゼンタ』が居る事に気付いた。

 

「――逃げて! 『マゼンタ』!」

 

 ――光球乱舞(スターダスト)

 

 クリスの宣言と共に無数の光の玉が『マジア・マゼンタ』へと殺到する。

 

「――『マゼンタ』!?」

「――あかん、多数に無勢や!」

 

 

 殺到する光の玉を愛用の槍で往なしていく『マゼンタ』……だが多数に無勢の状況ゆえに、高速で移動しながら近づいてくる光の玉を槍で迎撃しながら囲まれないように立ち回っているが、次第に捌き切れなくなっているようだ……無数の光の玉が襲い掛かって来て、時折ひやりとする事がある――そんな中、クリスが次のリアクションを取る――上空へと飛んで距離を取ったクリスが周囲に放電を巻き起こしながら『マゼンタ』の頭上で次の攻撃の態勢に入った。

 

「――直伝、い・な・ず・まっ、キィィィイイイク!!」

 

 襲い掛かってくる光の玉に対処するだけで手一杯になっている『マジア・マゼンタ』目がけて急降下するクリス。

 

「「――『マゼンタ』!」」

 

 ――友達の危機に、二人は思わず飛び出した。

 

 




 御無沙汰しております、何とか生きているSOULです。

 まぁ、色々ありましたが、分かった事が一つ――この「翡翠が苦手なモノ」を完結させないかぎり、「ディソナンス」の最後を投稿できないという事が。

 現在、「翡翠の苦手なモノ」のラスト近くを書いておりますので、続きはそう遠くない内に投稿できそうな感じです。

 では、そう遠くない時期に。ではでは~。
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