宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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翡翠の苦手なモノ 第10話 そして翡翠は“天敵”と再会する 後編

 

 

 

 マジカル・トラァアアアンス!

 

 

 純白の羽に包まれた高田厚志の服が弾け飛び、強烈な輝きに包まれる……“お約束”なら荘厳な音楽が奏でられるはずだが、何故か大太鼓を叩きまくる汗だくの男達の幻想が見てくる。

 

 デン デェデン デンデンデン

 

 セーラー服をモチーフにした白い布が発達した大胸筋を包み、鍛え上げられた大臀筋を丈が全く足りてないスカートが包む。

 

 

 ――魔法少女 『プリティ・ベル』推・参!

 

【挿絵表示】

 

 

 ――そのビジュアルの、あまりのインパクトに、ガチンガチンに固まる『トレスマジア』の少女たちを尻目に、引きつった表情を浮かべるクリス。

 

「――さぁ、覚悟は良いかね悪戯娘」

「―-だ、誰が! 今度こそ目のモノ見せてやる、このエセ『魔法少女』めぇ!」

 

      ロンゴミニアド・ジェノサイド モード

 RHONGOMYNIAD・GENOCIDE MODE

 

 引きつった表情を浮かべたクリスの周囲に無数の空間の歪みが現れる――思念の力により空間を圧縮して無数の空間の歪みを作り上げられた――その数は数百――1つ1つは小さいが、空間を圧縮しているが故に巻き込まれれば“唯では”済まず、空間上にある あらゆる物質も歪められて崩壊する――正真正銘、本気の一撃だ。

 

「――くらえ! なんちゃって、魔法少女!」

 

 無数の必滅の槍が撃ち出されて、悠然と立つ魔法少女(笑)へと迫る。

 

「……相変わらず口の悪い娘だな」

 

 髭を生やした顔が苦笑いを浮かべると、魔法少女(笑)『プリティ・ベル』は半歩引いて、見事に仕上がった上腕二頭筋でポーズを取ると、横から胸の厚みを強調しながら迫り来るロンゴミニアドの槍を迎え撃つ。

 

 サイド・チェスト!!!

 

「――なんで、そんなポーズでロンゴミニアドを受けて、無傷なのっ!?」

 

 必滅の槍を受けても平然と立つ魔法少女(笑)『プリティ・ベル』のあまりの理不尽さに、頭を抱えて絶叫するクリス……そんなクリスに向けてさわやかな表情を浮かべた高田厚志こと『プリティ・ベル』は、はははっと笑いながら答える。

 

「説明しよう。これは『サイド・チェスト』、主に身体の厚みを強調するポージングだ」

「――誰も、そんな事は聞いてないわよっ!」

 

 再び頭を掻き毟りながら絶叫するクリス。

 

「――そして、これが――」

 

 正面を向いた魔法少女(エセ)『プリティ・ベル』は、胸板を張って両腕を上げる。

 

 

 ダブル・バイセップス!!!

 

 

「――みぎゃぁあぁああああ!?」

 

 眩いばかりの発光と共に、精神に強烈な衝撃を受けて のぞけるクリス……そんな冗談のような光景に乾いた笑いを浮かべる『トレスマジア』の三人。

 

「――これは『ダブル・バイセップス』、主に両腕の上腕二頭筋を強調するポージングだよ。そして、これが――」

 

 ポーズを取っていた両腕が後頭部で組まれて、より大きく、より強靭な筋肉が強調される。

 

 

 アドミナブル・アンド・サイ!!!

 

 

「――な、なんで、お腹から弾幕がでるのよぉ! しかも回転しながらぁあ!?」

「――わー! こっちにも飛んできた!?」

 

 頭の後ろで両腕を組んだままポーズを取る『プリティ・ベル』こと高田厚志 35歳。筋肉隆々の鍛え上げられた肉体を、まったく丈が合っていない衣装で包み、筋肉を強調するポーズを取りながら、見事に割れた腹筋から無数の“弾幕”をバラまいている。

 

 はははっと無駄に爽やかな笑顔を浮かべながら、無差別に弾幕をバラまいている魔法少女(偽)『プリティ・ベル』……必死な表情で弾幕を避けているクリスは、「――な、なんでお腹から弾幕が出てくるんだよぉ!」と文句を言いながらアクロバディクな避け方で弾幕を避ける。

 

「はははっ説明しよう、これは『アドミナブル・アンド・サイ』――主に腹筋と脚を強調するポージングだ」

「――んなことは、聞いてないわよっ!?」

 

 爽やかな笑顔で的外れな事を言う魔法少女(偽)に、噛み付くクリス……その周りでは無差別に飛んでくる弾幕に、泡を食ったような顔で逃げ惑う『トレスマジア』の面々……それ以降も様々なポージングの講釈を説明するエセ魔法少女『プリティ・ベル』こと高田厚志……

 

 様々なポージングに付いて講釈をたれる魔法少女(おっさん)から四方に放たれる弾幕に逃げ惑っていた『トレスマジア』とクリスは、窪みや大きな岩陰に隠れる事で一息付くことが出来たが、未だ弾幕は四方八方に着弾している。

 

「――もぅ! 何なのよ、あのおじさんはっ!?」

「……あんなに魔力弾を放つなんて、なんて魔力……というか、なんであんなカッコしているの?」

「さぁな、趣味なんと違います?」

 

 突然現れた“濃い”魔法少女(おっさん)の登場に困惑を隠せない『トレスマジア』……彼女たちから少し離れた岩陰に身を隠しているクリスは、ギリギリと歯軋りをしながら 真紅の瞳が段々と据わって来て思考が危険な方向へと向かっていた。

 

 ――あの、エセ魔法少女(おやじ)『プリティ・ベル』こと高田厚志と出会ったのは、未知の法則を求めての探査任務(おねぇ怒りの強制探査任務)でも初期に頃、未知のエネルギーを感知して降り立った地で出会ったのだ――筋肉隆々の巨体を小さな衣装で無理矢理包み、無駄に爽やかな笑みを浮かべた冗談のような存在に。

 

 最初にその存在に出会った時、クリスはそういう趣味なのかとジト目になっていたが――いざ戦ってみると、訳の分からない状況に陥ってしまった……一体何なんだ、アレは? 暑苦しいポージングのたびに、訳の分からない衝撃を受けて、対処法が分からず撤退するという屈辱を受けた。

 

「……こうなったら、『03(探査艦)』からの艦砲射撃で目にモノを見せてやる!」

 

 最初に出会った時に受けた屈辱を思い出し、真紅の瞳に危険な光が宿したクリスが静止軌道上で待機している『探査艦―03』に指示を出そうとした時、突然降り注いでいた弾幕の嵐が止んだ。

 

 ……?

 

 無差別に猛威を振るっていた魔法少女(偽)の攻撃が止んだ事に訝しげに眉を寄せたクリスは、岩陰から魔法少女(おっさん)の様子を伺う……彼女が見た光景は、片手を挙げて膝を折り、まるで祈りを捧げる敬虔な聖職者のようであった。

 

 ……まぁ、聖職者と言うにはインパクトがありすぎるが。

 

 


 

 

 クリスが盾にしている岩陰と別の場所に身を隠している『トレスマジア』の面々も、無差別にバラまかれている弾幕の嵐の対処に苦慮しているようだ……はははっと無駄に爽やかな笑顔を浮かべた魔法少女『プリティ・ベル』と名乗る分厚い筋肉を持つおじさんが現れ……しかもどうやらクリスと因縁浅からぬ様子。

 

 筋肉おじさんの登場に困惑していたクリスは、『アズール』や『サルファ』に向けた あの凶悪な槍を繰り出したが、筋肉おじさんは妙なポーズを取ると、その全てをはじき返したのだ。

 

「……なんかあのおじさん、クリスちゃんの知り合いみたいだけど……仲悪いのかなぁ?」

「……変人同士、お似合いなんじゃないどすか」

「……『サルファ』」

 

 あの二人の関係について考えていると、突然四方八方に降り注いでいた弾幕が途切れ、不審に思った『トレスマジア』の三人は恐る恐る岩陰から覗いて魔法少女(おっさん)の様子を伺う。

 

 ――少女たちの目に映ったのは、『プリティ・ベル』を名乗る彼が手を挙げて膝を折り、まるで祈りを捧げるような姿勢を取っている姿だった。

 

「……なにやっとんのや、あの変態は?」

「……『サルファ』、失礼だよ」

「……否定出来るんか、『マゼンタ』?」

「……」

「……『マゼンタ』それに『サルファ』も、気を付けた方が良いわ――あんな事をしでかした相手なのよ……何をするか分からないわ」

 

 魔法少女(偽)『プリティ・ベル』の意図が分からず(……誰が、分かるか)困惑する『トレスマジア』の三人――そして、『プリティ・ベル』(男)は膝を付いた状態からジャンプをすると、リズミカルに踊り出した。

 

 ズッダン! ズッダダン!

 

「――な、なんや。急に踊り出しよったでっ!?」

「――こ、このギターやドラムはどこから聞こえてくるの?」

 

 巨体に似合わずリズムに合わせて軽快なステップで踊る『プリティ・ベル』(おっさん)。ギターやドラムはどこから聞こえてくるのかと周囲を見回している『トレスマジア』の三人は、『プリティ・ベル』(筋肉)が持つ大きなベルとリボンと羽根の装飾がついたステッキより音楽が流れてきている事に気付いた。

 

「――あのステッキよ! ギターやドラムの音は、あのステッキから聞こえてくるのよっ!」

 

 『マジア・アズール』が指差したのは、『プリティ・ベル』と名乗る男性が持つ、可愛らしい装飾のされた――魔法のステッキと呼ぶべきモノであった。

 

 ――そして、軽快なステップを踏んでいた『プリティ・ベル』こと高田厚志の動きが止まり――静かなる姿から、一気に動へとシフトする。

 

 かむぉん えぶりわん!!!

 

「――えっ? えっ、えっぇええええ!?」

「――な、なんでウチら飛び出したんやぁ!?」

「――か、身体が勝手に!?」

 

 『プリティ・ベル』こと高田厚志の呼びかけに答えるように、岩陰から飛び出した『トレスマジア』の三人は、『プリティ・ベル』の横に並ぶと彼と同じように片手を伸ばしてポーズを取る……だがその顔は明らかに困惑しており、けっして自分の意思で姿を現した訳ではない事が分かる。

 

「――さぁ、リズムに合わせて、元気よく!」

 

 筋肉おやじの指示を受けて、リズミカルなステップを踏みながら軽快に踊る『トレスマジア』の三人……「な、なんでっ!?」「身体が勝手にっ?」「おっさん、ウチらになにしたんやっ!?」自分たちの意思に反して、身体が勝手にステップを踏みながら困惑に表情を白黒させていると、『プリティ・ベル』(マッスル)の向こう側に見覚えのある人影たちがおり、華麗なステップを踏んでいた。

 

「―-な、なにやってんのよ、『エノルミータ』!?」

「……いえっ。私たちも岩陰に隠れていたのですが、あの筋肉の人の声を聞いた途端に、身体が勝手に飛び出したんですよっ」

 

 『トレスマジア』の二人――『マジア・アズール』と『マジア・サルファ』同様に、『マジア・ベーゼ』たち『エノルミータ』の面々はクリスの放ったロンゴミニアドの飽和攻撃を避けていると、突然現れた筋肉隆々の大男――そんな“男”が煌びやかな魔法少女の衣装に身を包み、服の丈も全く足りずシュールな姿を晒した自称『魔法少女』を名乗る凶悪なビジュアルを持つ『プリティ・ベル』。

 

 そんな彼の呼ぶ声に、『マジア・ベーゼ』たちは自分でも分からない内に隠れていた場所から飛び出して、『プリティ・ベル』と共にダンスを踊り始めていたのだ。

 

 己が意思に反してリズミカルに踊る身体に、最初は困惑を浮かべていた『マジア・ベーゼ』だったが、次第に状況が呑み込めてきた。

 

「……あの筋肉……『プリティ・ベル』でしたか、彼が意図的に魔力弾をバラまいて周囲を魔力で満たして、何らかの魔法をまぎれこませたのでしょう……」

 

 ……そこら辺は、どうなのです?

 

 彼女の視線は隣で軽快なステップを踊る栗色の髪を持つ白い服を着た少女 クリスへと向けられ、決めポーズから再び軽快なダンスを踊っているクリスは『ベーゼ』の問い掛けに苦笑を浮かべたまま答える。

 

「……こっちは『魔法』と呼ばれる未知の技術の解析を始めたばかりでねぇ……前の時は、あの訳の分からないポージングでこちらの攻撃を弾くし、何重にも掛けている防壁を潜り抜けて精神に衝撃を与えてくれるし……」

 

 前回あの魔法少女(男)『プリティ・ベル』と戦った時には、あの訳の分からないポーズであらゆる攻撃を弾くし、絶対の防御を誇る『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』だけでなく、精神にも攻撃による汚染を防ぐ為に、脳にインプラントを設置して物理・精神ともに防壁を張っているのだが、どうやって防壁を抜けるのか分からないが、精神に多大な衝撃を受けて撤退へと追い込まれてしまった……後から考えたら、あのビジュアルに衝撃を受けたのではないかと考え――たまたま近くの宙域に居たカリンに話したら、鼻で笑われたのは苦い思い出だ。

 

 とはいえ、このまま際限なく踊らされると言う事はないだろうが、さきほどまで刃を交えていた『トレスマジア』の色とりどりな面々や、『エノルミータ』の涼しげな奴らと一緒に踊っているのは妙な気分だ。

 

 コイツ等と踊っていると、あの趣味人の楽園世界(パラダイス・ワールド)でノノねぇと暮らしていた喧騒の日々を思い出す……異世界の地球において決戦兵器とまで言われながらも、普通の女の子と変わらないメンタルを持つノノねぇと暮らしながら、妙に絡んでくるお隣のランカねぇちゃんや、そのランカの紹介で知り合った腹黒い二枚目のミシェルくんや、女性顔負けの美貌を持つアルトにいちゃん達を揶揄いながら、騒がしくも充実した日々を送ったものだ。

 

 リズムに乗って同じポーズが決まると笑みを浮かべてくる『マジア・マゼンタ』……そこから次のステップに移ると、目が合った黄色いのとか軍服姿の涼しげな奴が牙をむいて威嚇してくるので、鼻で笑ってやると悔しげに歯軋りしている。

 

 リズムに乗って踊り、動きがシンクロすると笑みを交わしながら次のステップへと移る……なんだろう、妙に楽しい。動きがシンクロするごとに自然と笑みが浮かんでくるクリス。

 

 ……なんか、もう おねぇ怒りの探査任務や、教授(プロフェッサー)の小馬鹿にした笑いなど、どうでもいい……怒り狂ったおねぇが恐ろしいが、この一体感の前には――もう、どーでもいい。

 

「おっけー!! みんな準備はいいかな!?」

 

 

 ――フィニッシュッ!!!

 

 

 それぞれが思い思いのポーズを取り……クリスはもう、どーにでもなれ、と思考を放棄した。

 

 


 

 

 西暦2204年 地球 加藤邸

 

「――で、その筋肉の人と踊った後、どうしたのよ?」

「……いや、なんかもう、どーでもよくなってね……筋肉――いや、『プリティ・ベル』高田厚志の仲裁で、迷惑をかけたお詫びに『トレスマジア』の三人に豪華な食事を用意した訳なんだ……ファミレスで」

「……アンタねぇ」

 

 詫びの品がファミレスか、と呆れたような表情を浮かべる真琴……だが翡翠はそんな真琴の反応が不満のようで、チュウガクセイという欠食児童どもは、メニューの中から高い順に頼んで貪り食いやがったのだ……特に黄色いのが。

 

「……それで、素朴な疑問なんだけど、支払いはどうしたのよ?」

「……そこはお馬さんに一点賭けで――」

「――翼の教育に悪いわぁああ!」

 

 ぽいっとばかりに家から追い出された翡翠は、後頭部をポリポリと掻きながら加藤邸を後にする……ガトランティス(戦狂いども)との戦いから復興を遂げているようだが、周囲を歩く地球人たちの顔にはどこか陰りのようなものが見える。

 

「……前途多難のようだね」

 

 人知れず嘆息していると、頭の中に聞きなれた思念が流れてくる……どうやら、楽しい楽しい休息時間は終わりのようだ――思念波通信に応答すると、感じ慣れた思念の声が響く。

 

『……なにごと?』

『――クリス、司令部より最優先指令です』

 

 『IMPERIAL(いにしえの帝国)』が放った自動蹂躙艦を退けた種族が居るというのだ。

 

『……ほう?』

 

 口角を釣り上げるクリス……この宇宙には兆を超える銀河があり、クリスたち『IMPERIAL(いにしえの帝国)』は天体規模の完全自立稼働の自動蹂躙艦を無数に放っていた――彼らの目的を阻害する可能性を持つ惑星に赴き、隷属か死かを選択させ――抗うもの全てを灰燼と化す――機械仕掛けの死を呼ぶ天体。

 

 そして今回、その自動蹂躙艦の侵攻を退けた種族が居るという。

 

 転送によって『探査艦―03』へと戻ったクリスは、己が半身である『アルテミス』の統合思念体『エテルナ』より詳細な情報を受け取って半月の笑みを浮かべる――天体規模の自動蹂躙艦をたった3人の原住民が退けたというのだ。

 

 ……『キンモク星』か。

 

 




 どうも、何とか生きてるSOULです。
 これにて『翡翠の苦手なモノ』も終了となります……彼女の苦手なモノーーそれは理不尽の権化――魔法少女(超兄貴)『プリティ・ベル』こと高田厚志だったのです。

 あらゆる攻撃を訳の分からないポーズで無効化され、訳の分からない攻撃に精神に多大なダメージを受けた……まぁ、これも翡翠の属性『悪』に影響を与えるのですが。

 今回、『プリティベル」のインパクトを伝える為に、やっつけ仕事ですが、挿絵などを上げました……下手なのは自覚してますので、ご容赦くださいね。

 --さあ、次は『ディソナンス」だ。
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