宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル 作:soul
宇宙戦艦『ヤマト」第一艦橋
メイン・パネルに映る彼女は、白を基調とした軍服のような服を着た金色の瞳と銀色の長い髪が特徴的な、整った容姿をしながらもまだ幼さの残こしていた。地球人にはありえない髪と瞳の色に異星人かと身構える『ヤマト』の乗組員達だったが、少女は小さく頭を下げた後に話し出した。
『皆さん、はじめまして。私は地球連合宇宙軍 戦艦『ナデシコC』の艦長 ホシノ少佐です』
……地球連合宇宙軍。なるほど、ピカード艦長もこういう気持ちだったのかと思い返す。今にして思えば、『エンタープライズ』との初接触の折に此方が所属を明かした際に妙な表情を浮かべていたな、と思い起こしながら沖田艦長は返答する。
「私が宇宙戦艦『ヤマト』の艦長 沖田十三だ」
そこでモニターの半分にピカード艦長の姿が映る――どうやら『エンタープライズ』も機能を回復したようだ。
『貴官も地球を名乗られるのか、私はジヤン=リック・ピカード。USS『エンタープライズE』の指揮官だ』
何やらため息を付きたそうな雰囲気を抑えて名乗るピカード艦長……どうやら『ヤマト』と『ナデシコ』を名乗る艦の登場は彼のストレスになっているようである。
『先程まで奪われていた機能は回復している。どうやら我々は貴艦に救われたようだ、感謝する』
「我々も感謝を伝えたい」
やはり『エンタープライズ』も『ヤマト』同様にハッキングを受けて機能を奪われていたようだ、もしナデシコが現れなければ二隻共『ボーグ』の手に落ちていただろう。ここは素直に感謝を示したい所であるが、当のナデシコのホシノ艦長は首を横に振る。
『礼にはおよびません、私達にも目的がありますので』
彼女の金色の瞳に一瞬光のノイズのようなモノが走ると「いい加減、姿を見せたらどうですか」と話す。誰に言っているのかと訝しんでいると、モニターに第三者の姿――先ほど『ボーグ』を名乗った黒づくめの男性の姿が映し出された。その男性を見たホシノ艦長の目がすっと細められたように感じた。
『やっと出てきましたね、アキトさん』
座った眼をしたホシノ艦長は平坦な声で黒づくめの男性に声をかける――どういう事だ、ホシノ艦長とあの男性は知り合いなのか? データー少佐の説明では、これまで『ボーグ』は色々な種族を同化してきていると言う。つまりホシノ艦長は同化された知人を救出に来たと言う事か? パネルに映し出された二人の関係性を考えながら沖田艦長は静かに事態の推移を見守る事にした。
『テンカワ・アキトという人間はもう居ない。“俺”は『ボーグ』だ』
『それは前に聞きました』
『既にテンカワ・アキトは同化され、人格は消失している』
「それはおかしい」
二人の会話にデーター少佐が異議を唱える。
「あなたは接触時より“俺”と呼称している。『ボーグ』に同化されたのなら集合意識にリンクされて“我々”と言うはずだ」
『――そうだな、『ボーグ』には個人という概念は基本的に存在しない』
データー少佐の説明にピカード艦長も同意する――以前データー少佐の話では、ピカード艦長は六年前の『ボーグ』侵攻の折に同化された経験を持つという。経験者であるピカードは黒づくめの男性―テンカワ・アキトを鋭い視線で見る。
『……なんと言われようが、“俺”は『ボーグ』だ』
『……そんな事はどうでも良いんです』
なおも『ボーグ』と言い募る男性に向けてホシノ艦長は座った眼のまま彼の言葉を止める。
『……アキトさん、私は怒っているんです。テンカワ・アキトは死んだだの、同化された、だとか』
……危機的状況だったはずだが会話を聞いていると痴話喧嘩にしか聞こえず、第一艦橋内に呆れたような雰囲気が流れ始める。そんな雰囲気の中をホシノ艦長とテンカワ・アキトの会話は続き、沖田艦長などは「若いな」などと微妙な感想を漏らす始末。
そしてホシノ艦長は座った眼のままテンカワ・アキトに告げる。
『……けど、私よりもっと貴方の事を心配している人がいますから』
彼女がそう告げた時『、エンタープライズE』のブリッジにて操舵を担当しているシオリ・エスタード少尉がこちらに近付いて来る船の存在に気付き、コン・コンソールからピカードへと報告する。
「サー、未確認の船が此方に向かって来ています。速度はワープ6」
「未確認?」
「未確認の船の発するワープサインの登録はありません」
この並行世界では、超光速航法には船体を亜空間で包むワープ航法が使用される。亜空間を発生させるワープ・コイルを起動するとニュートリノが放出されて、それをセンサーで感知してデーターベースに照合すれば登録されていればどの勢力の航宙艦であるかが分かるのだが、その登録がないと言う事は未知の勢力の航宙艦であると言う事だ……例えば先ほど突然現れた『ナデシコC』を名乗る航宙艦の所属する勢力とか。
ソレは光を伴って突如としてこの空間に出現した。
ワープ・フィールドより通常空間に復帰したのは巨大な船であった――そのスケールは巨大な『ボーグ・キューブ』に遜色ないほどの大きさを持つ航宙艦であり、『エンタープライズ』とは真逆に前に向けて三本のブレード状の構造体を突き出した形をしている。
全体が白い塗装で覆われたメイン構造体の側面にはワープ機関と思われる青白い光が輝いており、上下にほぼ同じ大きさの楕円形の構造物と合わせると航宙艦と言うより要塞艦と言うべきかもしれない程の巨体であるが、その設計思想はナデシコと通ずるものがあるように見受けられる。
そしてホシノ艦長の映像から別の人物へと映像が変わる――銀色の髪の少女から青い髪の女性へと。ホシノ艦長と同じく白を基調とした制服を身に纏い、長い青い髪を持つ女性が映し出されると、テンカワ・アキトと呼ばれる『ドローン』の動きが一瞬止まったように思える。
『……アキト』
『……』
『ゴメンね、アキト。アキトが大変な時に側に居なくて……これじゃ奥さん失格だね』
『……』
悲しげな表情を浮かべて悲痛な心情を伝える女性だったが、テンカワ・アキトは何の反応も示さない……彼の態度に第一艦橋内の、特に女性クルーから非難の視線が向けられる。
『……けど、それでアキトがグレたとしたら、そんな夫を正すのも妻の勤め!』
『 “俺”はテンカワ・アキトではない――』
『大丈夫! 私がアキトを真人間に戻してみせるわ。だって私たちは夫婦だもの!』
……完全に痴話喧嘩になってしまった。
「……『ボーグ・キューブ』が逃げ始めました」
コスモレーダー席の西条が投げやりな声で告げ、見ると巨大な『ボーグ・キューブ』が少しずつ遠ざかり始めていた。
『まってアキト!』
「――キューブの周囲に未知の粒子が発生しています」
技術支援席でキューブをモニターしていた森の報告と共に、巨大な『ボーグ・キューブ』が光に包まれてその姿を消した。後には『ヤマト』と『エンタープライズ』。そしてテンカワ・アキトという『ボーグ』と浅からぬ縁がある『ナデシコ』と大型不明艦の四隻が残された。
「……『ボーグ・キューブ』の反応消失」
「……保安部より連絡。拘束していた『ボーグ・ドローン』達も光に包まれて消え去ったとのこと」
最後は妙な雰囲気になったが、三隻もの『ボーグ・キューブ』に遭遇しながら二隻は撃破して、残る一隻は撤退していった……度重なる戦闘で艦体にはダメージが蓄積し、侵入したドローンによって乗組員にも被害が出ている。そう考えると、これ以上の戦闘の継続は困難だったろう。
「各部署は被害報告をまとめて報告せよ」
戦闘で被った被害状況を報告するように指示していると、後から出現した大型の不明艦より青い髪をした女性士官より通信が入る。
『初めまして、沖田艦長。私は地球連合宇宙軍『ナデシコD』の艦長 テンカワ・ユリカです――きゃ!』
『――艦長。アンタは仕事の関係で新婚旅行が先だったから、結婚届が受理される前に死亡扱いされてミスマルのままでしょうが』
『――あっ! ひどいですミナトさん』
……中々楽しい女性士官の様だ。見ると艦長を名乗る女性とミナトと呼ばれた女性が口論をしているようである。埓が明かないので一旦通信を切ろうかと考えていると、映像が変わって先ほどのホシノ艦長の姿が映し出された。
『お騒がせしました。見れば二隻とも艦体にかなりのダメージが見受けられます、近くに私達が拠点にしている施設がありますので、そちらで修理をされませんか?』
『エンタープライズ』ブリッジ
『お騒がせしました。見れば二隻とも艦体にかなりのダメージが見受けられます。近くに私達が拠点にしている施設がありますので、そちらで修理をされませんか?』
彼女が言うには放棄された宇宙基地を拠点として借りており、あの大型航宙艦を整備出来るだけの施設があるという。
確かに三隻もの『ボーグ・キューブ』と戦って艦体にもかなりのダメージを受けており、どこかの宇宙基地のドックにて修理しようとは考えていたが、素直にその提案を受けて良いものかピカードは悩んで通信の音声を一旦止める。
地球連合宇宙軍――『ヤマト』とは別組織に属する航宙艦二隻と遭遇するとは思ってもなく、ピカードはどう対処すべきか信頼するクルーに意見を求めた。
「どう思う、ナンバーワン」
「少なくとも『ボーグ』ではありませんし、こちらも艦体にかなりのダメージを追っていますので修理が必要です。そしてなにより今回遭遇した『ボーグ』は今までの『ボーグ』とは何かが違います」
「……その何かを彼女達が知っている可能性が高い、と言う訳か」
ライカー副長が感じた違和感――三隻目の『ボーグ・キューブ』は大量の粒子――ポース粒子を操って移動をするという、これまで確認されたことがない移動手段を持っており、ナデシコと呼ばれる航宙艦も同じ移動手段を持っているようだ。。
そして彼女達が拘ったテンカワ・アキトと呼ばれる『ドローン』の存在である――仮説だが、ポース粒子を用いた移動手段は彼女達の種族が用いるものであり、それを『ボーグ』が同化したのではないか? ならばその移動手段で移動できる距離とかかる時間を知る必要がある。
「カウンセラー、彼女からどういう感情が読み取れる?」
「……静かな湖のような穏やかさを感じます……彼女の提案からは悪意は感じません」
ベタゾイド人とのハーフであるディアナ・トロイはある程度相手の心を読む事が出来き、彼女の能力によって正体不明の生命体や異星人とのコンタクトなど何度も助けられてきた。
ここで彼女達との接触の機会を放棄する訳にはいかない……ならば後は『ヤマト』がどうするかだが、合流前に『ヤマト』はエンジントラブルを起こしていたのでどこかで修理する必要があるはずだ。
ピカードは音声を回復させるとホシノ艦長との話を再開する。
「ありがとう、ホシノ艦長。ご厚意に甘えてそちらで修理をさせていただきたい」
そしてピカードはメイン・ビューワーに映るもう一隻の艦長 沖田に視線を向ける。
「沖田艦長、我々は再び『ボーグ』が現れる可能性を考えて一刻も早く船を修理すべきだと考えるが、貴艦はどうされますか?」
『……我々もドックがある施設での修理が出来れば望ましいと考えています……再び『ボーグ』と戦う可能性がありますので』
「ではホシノ艦長、施設の座標を送っていただけますか」
『了解しま-――』
『わっかりました! 私がみなさんをお連れしましょう!』
『ちょっと、艦長! アンタ何を言って――』
『ノゼアちゃん、転移準備!』
『話を聞きなさい!』
『ほいほ~い・さー』
ホシノ艦長に了承の意を伝えて話に出てきた施設の座標を送るように伝えている途中に、突然ミスマル艦長が割り込んで来て話を進めてしまう……先程も口論していたミナトとかいう女性の反対を押し切って。
先ほどのテンカワ・アキトという『ボーグ』との会話でも思ったが、ミスマル艦長は自由奔放というか連邦の艦長には居ないタイプのようだ……何というか彼女を見ていると頭の痛い女性の事を思い出してしまう。
余談になるが『エンタープライズE』艦長ジャン・リック・ピカードには二人の“天敵”がおり、一人はQ連続体に属する全知全能を自称する男性型の『Q』と、ピカードが頭の痛い女性として思い浮かべた純血のベタゾイド人であるラクサナ・トロイである。
彼女ラクサナ・トロイは『エンタープライズE』のカウンセラー ディアナ・トロイの母親であり、娘であるディアナに逢う為に時折『エンタープライズ』を訪れているが……自由奔放な性格をしており、特にピカード艦長は彼女のターゲットにされて熱心なアタックを繰り広げては娘の手を焼かせているという、ピカード艦長は彼女に苦手意識を持っているのだ。
「――不明艦から周囲の空間に未知の素粒子が放射されて、周辺の物理現象に干渉しています……これは、周辺の空間を侵食しています」
戦術ステーションでモニターしていたウォーフが『ナデシコD』の船体から周辺の空間に向けて幾何学模様が広がり、瞬く間に周囲の空間を埋め尽くして『エンタープライズE』や『ヤマト』の存在する空間を覆い尽くした事を報告する。瞬く間に周囲の空間を覆い尽くした幾何学模様だったが、『エンタープライズE』の船体には影響が皆無だとの報告を受けたピカードは、ビューワーに映っているミスマル艦長にこの現象を起こした真意を問い掛ける。
「ミスマル艦長、この現象は?」
『ご心配には及びません、みなさんをお連れする為のフィールドを発生させるものです』
『――もうっ! イネスさんに怒られても知らないからね!』
どうやら『ナデシコD』では、まだ騒動が続いているようである。
とりあえずピカードは視線をホシノ艦長へと向ける……年齢は若いが、まだ彼女の方が話は通じるように感じたのだ。
『……あれは周囲にフィールドを張って対象物を転移させるものですので実害はありません』
ホシノ艦長の説明では転移に必要なフィールドを張る為の物だと言うが、鵜呑みには出来ない。ピカードは音声を止めると、ウォーフに周辺を覆う幾何学模様と『ナデシコD』をスキャンするように指示する。
そしてピカードは何食わぬ顔で音声を回復させると、ホシノ艦長に転移先についての情報――座標や施設の規模などの情報の提示を求めるが、ホシノ艦長が答える前にミスマル艦長の能天気な声が響いた。
『おっまたせしました! ではこれよりジャンプします』
「――幾何学模様は『エンタープライズ』や『ヤマト』を中心にフィールドを形成しています」
幾何学模様をモニターしていたウォーフよりの報告を受けたピカードは、ミスマル艦長の方へ視線を向ける――すると彼女の身体に光の線が幾重にも走って模様を描いていた。突然の変化に驚いていると、ウォーフから『エンタープライズ』の周囲の空間にポース粒子が発生しているとの報告を受ける。
「……これは」
「……さきほど『ボーグ・キューブ』が消えた際の」
周囲の空間の変化にピカードとライカーが驚いている時、ミスマル艦長の澄んだ声が響く。
『――ジャンプ』
彼女の澄んだ声が響くと同時に、幾何学模様の空間に包まれていた『エンタープライズE』と『ヤマト』は奇妙な感覚に襲われ、気が付くと通常空間へと出現した。
「
「艦内に影響はありません」
「艦体にも新たな損傷は認められません」
ピカード艦長の元に報告が上がる……どうやら今の転移は『エンタープライズE』の艦体に悪影響はないようだ。一息付いたピカードだったが、硬い表情を浮かべたライカー副長に呼ばれる。
「どうしたナンバーワン」
「……あれを」
ライカー副長の示す先――前方の空間を映したビューワーには巨大な構造物が映し出される。それは傘状の大型構造物と円筒状の構造物で構成された惑星連邦の大型宇宙基地であった。
「……地球の周回軌道を回っているスペースドックよりも大きいかもしれませんね、全長百キロはありそうですよ」
「ホシノ艦長は放棄されていたと言っていたな、ウォーフ現在位置は?」
「現在位置は連邦領域の外縁部、ジュレ星系より二十光年の位置になります」
「……そんな所に大型の基地が置かれているなんて聞いたことがないぞ」
「……妙ですね」
「ウォーフ、施設に異常はないか?」
「――センサーによれば外傷はありません。ただ動力は最小限で稼働しているようです」
惑星連邦の勢力圏は銀河系アルファ領域とベータ領域を合わせて八千光年におよび、ジュレ星系とは連邦領域の一番端に有って、『ボーグ』の勢力圏である銀河系の反対側デルタ領域と一番近い星系であった。そんな危険地帯にこれほど巨大な基地が置かれていたなど聞いた事はないし、それが放棄されたなど不可解にも程がある。
「ホシノ艦長に繋げ」
「アイ・サー」
程なくして『ナデシコC』のホシノ艦長がビューワーに映る。
『なんでしょう?』
「ホシノ艦長、ここが貴方の言っていた放棄された施設で間違いありませんか?」
『ええ、そうですけど』
「この施設は惑星連邦の大型ステーションですが、我々にはこの位置にステーションが建造された記録がありません。何か異常はありませんでしたか?」
『……いえ、内部にも入りましたが戦闘の後もありませんでした』
ホシノ艦長の返答にピカードは訝しげな表情を浮かべる……顎に手をやりしばらく考え込むと決断したのか再びホシノ艦長へ顔を向ける。
「ホシノ艦長。不審な点が多々ありますので、まずは調査をさせて欲しい」
『……わかりました、ご随意に』
そう言ってホシノ艦長は通信を切る。
そしてピカードはライカーに振り向くと、
「上陸班を編成して基地の内部を調査しろ」
「わかりました」
ライカーは立ち上がると保安部員とエンジニアとしてラ=フォージに招集をかけるとウォーフにも参加するように告げてブリッジから転送ルームへと向かう。ライカーとウォーフが艦内移動設備であるターボリフトに乗り込む姿を見送ったピカードは、ブリッジ・クルーに指示した後に艦長室へと入って行く。
ピカードの姿を見送ったカウンセラーのトロイは、戦闘後とは言え未知の勢力と相対しているこの状況で艦長室に籠るなど、普段の彼からは考えられずに猛烈な違和感として写った。
『エンタープライズE』 艦長室
艦長室へと入ったピカードは、暫く窓から見える星々を眺めていたが壁に設置されたレプリケーターに向かうと、音声入力でアールグレイを頼む――レプリケーターに記録された分子配列情報を基にアールグレイとそれを入れるティーカップが構築される。ティーカップを受け取るとそれに口を付けて気分を落ち着かせようとするが、いつもと違ってアールグレイの豊潤な香りは感じられず何の味もしなかった。
デスクにカップ置いたピカードはチェアーに座ると、難しい顔で暫く考えこんでいたが、出入口よりコールが鳴って誰かの来訪を告げる。ブリッジで何か問題でも起きたのかと考えたピカードは入室の許可を出す。
「入れ」
了承を受けて入室してきたのはディアナであった。
「どうしたカウンセラー、何か感じ取ったのか?」
「ええ、優秀な艦長が何か疑念を感じて思案しておられるようです」
問い掛けるピカードの言葉には若干の棘が含まれる。その棘を物ともせずに、しれっとした顔で答えるディアナ。E型艦の前身であるD型艦からの付き合いである彼女は、長期間の航海をする航宙艦でカウンセラーの任に就いて数多くのクルーの悩みをカウンセリングを行ってアドバイスをして来た――その中には艦長であるピカードも含まれていた。
今までにも彼女は様々な任務において的確なアドバイスを齎した――未知の種族や敵対的な種族と遭遇した際には、ベタゾイド星人とのハーフである彼女のテレパシー能力が事態の打開への大きな助けとなったのは事実であり、何より彼女は信頼のおける友人であった。
「何か気になる事でも有るのですか?」
「……先ほどの『ボーグ』艦を含めて三隻もの『ボーグ』と遭遇したというのに、私には“彼らの声”が聞こえてこなかった。『ボーグ』の第二次侵攻の折には確かに聞こえていたのに」
『ボーグ』のよる第一次侵攻の折に、ジャン・リュック=ピカードは、当時指揮していたE型艦の前身『エンタープライズD』から拉致されて、彼ら『ボーグ』の代弁者として同化された。
信頼する部下達に救出された後も『ボーグ』の影は彼の心に傷として残り、『ボーグ』第二次侵攻の折に彼は『ボーグ』の声を聞いて未だ集合意識とのリンクが切れていない事を理解したのだ。
その『ボーグ』の声が、今回まったく聞こえてこなかった。
複数の『ボーグ・キューブ』の存在。そして未知の技術によるシールドを突破する『ドローン』の侵入とメイン・システムの掌握という搦手の使用……今回の『ボーグ』は今までとは根本的な所で何かが違っていた。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
辛くも『ボーグ」を退けた『ヤマト」と『エンタープライズ」。
ナデシコの誘いを受けるも、目の前に現れたのはデータに無い宇宙基地。
一方『ヤマト」では首脳陣に詰問される翡翠は何を語るのか?
次回 第十六話 謎の宇宙基地。
では、また近いうちに。