宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

5 / 107
第三話 疑心暗鬼

 エンタープライズE ブリッジ


 

「沖田艦長、この宙域は我々連邦の勢力圏だ。即刻退去していただこう」

『待って欲しいピカード艦長、現在『ヤマト』は未知の現象に遭遇して混乱している。猶予をもらえないか?』

「……君達の船は随分な重武装ではないか、何との戦闘を想定して武装しているのか……そんな危険な船を野放しには出来ん」

 

 通信越しに睨み合うピカード艦長と沖田艦長。そんな緊迫した雰囲気に一石を投じたのは、データー少佐の「彼らは地球人の可能性があります」という言葉だった。

 

「どういう事だ、データー」

 

 一旦音声をカットするように指示したピカードは、厳しい表情のまま視線をデーター少佐に向ける。先程の『ヤマト』との会話の時もデーター少佐は、彼らが使用してる言語は以前地球の極東で使用されていた言語のようだと言っていた。そんなモノは調べればわかる筈だが、何を持って彼らが地球人だと思ったのか。

 

「記録によれば極東ニホンと呼ばれた地域で二十一世紀中頃まで使われていた独自言語を彼らは主言語として使用しているようです。ビューワーに映し出された『ヤマト』の設備にも日本語による表記が複数見受けられました」

 

 そんな細かい所まで偽装しているとは考えづらいし、偽装するなら広範囲で使用されている言語を使用した方が自然であるとデーター少佐は主張した……データー少佐の主張は『ヤマト』のクルーを地球に所縁のある者達であるとするには弱いが、可能性の全てを捨てきる事も出来ずに思案するピカード。そんなピカードにライカーが立ち上がると近付いて行く。

 

「艦長、このままではラチがあきません、私を『ヤマト』に派遣してください」

「ウィル」

 

 ライカーの申し出にピカードは彼を派遣した場合のリスクを考える。だがこのままでは進展がないのも事実、カウンセラートロイの言葉通りに彼らも混乱している様子。ならば副長を『ヤマト』に派遣して事態の打開を促すのも一手か……ライカーには常に転送収容出来るようロックして。

 

 考えをまとめたピカードは音声を回復させる。思わぬ乱入者に双方気まずい雰囲気が流れたが、意外にも話しだしたのは『ヤマト』の方だった。

 

『ピカード艦長。我々は現在アクシデントに見舞われ、少々混乱しています。お互い疑問に思う事もあるでしょうが、どうでしょう三時間後に会談の席を設けてみては?』

「では三時間後に此方からお伺いしましょう」

 

 通信を切るとピカードは振り返る。

 

「ブリーフィングを行うので、十五分後に上級士官は展望ラウンジに集合するように。私は艦長室に居る」

 

 そう指示した後にピカードはブリッジを退出して艦長室に入ると、備え付けのレプリケーターに紅茶を注文してデスクへと向かう。席に着いたピカードは一つため息を付いた後に紅茶に口をつけて、厄介な事になったと再びため息をついた。

 

 


 

 

 宇宙戦艦『ヤマト』第一艦橋

 

 『エンタープライズ』と名乗る船との通信を終えた沖田艦長は、艦長席に深く座り込むと大きく息を吐いた。バラン星宙域においてガミラスの大艦隊を相手に奇策を用いて突破したと思ったら『ヤマト』は天の川銀河に逆戻りしており、しかも目の前には地球に所縁を持つと思われる恒星間航行が可能な宇宙船が存在するという意味不明な状況は、歴戦の戦士である沖田十三と言えども多大なストレスとなっていた。

 

「艦長。いかがいたしますか?」

「メインスタッフは十分後に中央作戦室へ集合。今後について協議する」

 

 副長である真田の問い掛けにそう答えた沖田艦長は、艦長席のシステムを操作して第一艦橋の上部にある艦長室へと登っていく。それを見届けた後、真田は近くに居た古代へと声をかける。

 

「……古代。君は『ヤマト』が大マゼラン側のゲートに突入した後どこまで意識を保っていた?」

「……え」

 

 


 

 

 エンタープライズE 展望ラウンジ

 

 展望ラウンジ内は間接照明によって優しい光で照らされ、側面には大きめの窓が取り付けられており、特別なイベントや集まりがある時に使用されるスペースだが、今は上級士官が集まって不明艦『ヤマト』への対応が協議されている。

 艦長たるピカード大佐を始め、ライカー中佐とディアナ・トロイ中佐。そして医療部長のビバリー・クラッシャー中佐、科学士官データー少佐と戦術士官のウォーフ少佐、最後に機関部長ジョーディ・ラフォージ少佐がテーブルを囲んでいた。

 

「現状で『ヤマト』に付いて分かっている事は?」

「『ヤマト』の動力源ですが、計測したエネルギー値は驚異的な物です。これは既存のワープコアで生み出せるエネルギーを遥かに上回っており、未知の動力機関と言えます。しかも船体を構成する物質は我々には未知のものです。類似している物を上げれば硬化テクタイトが挙げられますが、未知の素粒子が含まれておりその強度は不明です」

 

 ピカードの問い掛けに、『ヤマト』の船体にスキャンを掛けていたラフォージ少佐が答えた。航宙艦の動力にはワープコア――反物質が一般的であり、周辺宙域に存在する星間国家でも反物質か、変わり種でマイクロブラックホールを動力源に使用しているくらいである。

 

「武装も強力ですね、あの目立つ砲塔部分から陽電子の反応を検出しています。『ヤマト』は陽電子砲で武装した純粋な戦闘艦です」

 

 淡々と語るデーター少佐。彼の言葉に集まっている士官達の表情が厳しくなる――外宇宙の驚異に対抗する為に連邦艦としては極めて強力な武装を積んでいるエンタープライズEであっても、その本質は科学調査船としての機能を有している探査艦であり、連邦内において純粋な戦闘艦としては護衛艦に分類されるディファイアント級や、最近就航したプロメテウス級のみである。そんな危険極まりない戦闘艦が連邦域に存在している……自然と視線が鋭くなるピカード。

 

「エンタープライズで対応は可能か?」

「問題ないでしょう。スキャンの結果、『ヤマト』の機動性はそんなに高くありません。こちらが機動力でかく乱すれば対処可能です」

 

 エンタープライズEを始めとする連邦航宙艦は慣性制御機能を持ち、その船体も構造維持フィールドで強化されているのでかなりの高速機動に耐えられる。スキャンした『ヤマト』の砲塔の構造から、旋回する間に照準から逃れる事は十分に可能と考えていた。

 

「先ほど宇宙艦隊司令部に事の次第を報告しておいたが、運の悪い事に付近の星エルディアン4で伝染病が発生して連邦艦はワクチンを運ぶ任務に従事しており、援軍の到着は時間が掛かるとの事だ」

「……それはタイミングが悪いですね」

 

 つまりエンタープライズE一隻で対処せよという事か、ピカードの話を聞いたライカーは伝染病発生のタイミングの悪さに顔を顰めた。

 

「そうなると『ヤマト』との会談次第だが、データー先ほど『ヤマト』で使用されている言語が以前地球で使用されていた物だと言っていたが?」

「はい、記録によれば『ヤマト』で使用されている言語や文字表記は二十一世紀に存在していた極東の一部で使用されていた言語で間違いありません」

「二十一世紀という事は?」

「ええ、第三次世界大戦により地球は壊滅状態となり、その際にその言語は一部を除いて廃れたはずです」

 

 惑星連邦でも航宙艦の艦名にヤマトやホンシュウなどと命名されている事があるが、主流とは言えなかった。

 

「つまり、わざわざ廃れた言語を使っていると言う事は地球に縁があるのか、あるいは……」

「それだけ詳細な情報を有しているのか、と言う事ですね」

 

 懸念を示すピカードの言葉をライカーが受け継ぐ。

 

「そこら辺もはっきりさせておく必要がありますね。では艦長、『ヤマト』へは私とデーターとウォーフで行きます」

「分かったナンバー1、常に転送収容出来るようロックしておく」

 

 『ヤマト』へ向かうのはライカーと使用されている言語の情報を持つデーター、そして護衛として屈強なクリンゴン人であるウォーフの三人を決まる。他に意見が無い事を確かめた後、ピカードは解散を命じた。

 

 


 

 

 エンタープライズE ブリッジ

 

 艦長席に座るピカードはメイン・ビューワーに映る『ヤマト』を見据える。あれから『ヤマト』に変化はなく、まもなく指定された三時間が近付いていた。

 

『ライカーより艦長へ。これよりシャトル発進します』

「十分に注意しろ」

『ライカー了解』

 

 準備が完了した事を告げて、ライカーはシャトルの操縦席に備え付けられたコンソールを操作して船体がふわりと宙に浮きあがる。船体後部に備え付けられたインパルス・エンジンに火が点り、シャトルは後部格納庫の発進口に張られたフォース・フィールドを抜けて漆黒の宇宙空間に進むと、スラスターで方向を変えてエンタープライズEの前方で停止している『ヤマト』へと向かう。

 

「『ヤマト』に変化が無いか監視を怠るな。ラフォージ、ライカー達を常にロックしろ」

 

 ブリッジクルーに注意を促すと、ピカードは異変があれば即座にライカー達を転送収容出来るようにシステムでロックするよう改めて指示する――厳戒態勢の中、ライカー達を乗せたシャトルは『ヤマト』へと近付いて行った。

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 突発的なアクシデントにより出会った二隻。お互いを警戒しながらも妥協点を探す二隻はどう行動するのか?

 ではまた近いうちに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。