宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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第五十九話 超常の対決

 『真空崩壊』――『Q』がその言葉を口にした瞬間、ピカードのみならず名指しされた『ヤマト』のクルー達や『ナデシコ』のクルー達の中でも相応の知識を持つ者達の表情が変わる。

 

「……『真空崩壊』、まさか本当に?」

「……馬鹿な、『ヤマト』が10の544億年に1回起きるかどうかと言われる『真空崩壊』の引き金になるなど」

 

 ある程度の知識を持つ者は『真空崩壊』の恐ろしさを理解して、引き起こされる破滅的な現象を想像して引き攣った表情を浮かべる中で、事の重大さを今一理解していないスバル・リョーコが頭の上にはてなマークを浮かべながら問い掛ける。

 

「……なあ、何だよその『真空崩壊』って、そんなにヤベェもんなのかよ?」

「……そうね、そのあたりを説明しましょ」

 

 良く分かっていないリョーコの問い掛けに、眉間を寄せていたイネスが持ち前の説明魂を刺激されて語りだした――『真空崩壊』それは二十世紀後半より場の量子論の仮説として提唱されたものである。ビックバンから生まれた宇宙は誕生当初は熱い火の玉だったが、エネルギーを放出して現在の宇宙は十分にエネルギーを放出して安定状態にあると考えられていた。

 だが二十一世紀初頭にヒッグス粒子の発見によって話が変わる。

 

「……ヒッグス粒子? なんだそりゃ、ボソン粒子の親戚か?」

「……簡単に言うと、ボソン粒子は素粒子同士の間で働く力を伝達するものであり、ヒッグス粒子とは素粒子に質量を与える働きがあるのよ」

 

 素粒子には物質を構成する物、力を伝える物、質量を与える物があり、物質に質量を与えていると言われているのがヒッグス粒子である。宇宙の真空にはヒッグス粒子が満ちており、その中を素粒子が動こうとすると、真空に満ちたヒッグス粒子の抵抗を受けることになった。これが素粒子の動きにくさ、すなわち質量となる。

 

「それがいわゆる質量と言われているモノの正体ね」

「……お、おう」

「そして真空中に満ちたヒッグス粒子をヒッグス場と呼ぶんだけど、詳しく調べてみるとヒッグス場の持つエネルギーは、当初予想された理論上のヒッグス場のエネルギーよりも実際のヒックス場のエネルギーの方が大きかったの」

 

 最初は理論上のヒッグス場のエネルギーの計算ミスか、実験過程で生じた誤差でないかと疑われたが、検証が進むにつれて答えはシンプルである事が分かった――現在のヒッグス場は理論上の安定した状態のエネルギーより高い状態にある事が。

 

「……それの何が悪いんだ?」

 

 そろそろ頭から煙を出しそうなリョーコを可哀そうなモノを見るような目で見ていたイネスは続きを話そうとするが、やれやれとばかりにため息を付いたルリが素早くイネスの説明を引き継ぐ。

 

「リョーコさん。ヒッグス場が最低以上のエネルギーを持つと言う事は、何時かはそのエネルギーを放出してより安定した真空状態になると言う事です――ナデシコに搭載されている相転移砲は、この理論を応用して限定的に空間を相転移させる事で敵を破壊しているんです」

「――へぇ……ちょっと待て。って事は」

 

 元の世界で月軌道にて猛威を振るった相転移砲の威力を思い出して、こめかみに一筋の汗を浮かべるリョーコ。

 

「そうよ、何らかのファクターによって余分なエネルギーを放出してこの宇宙が『真の真空』になる事を、現在の(偽り)の真空が壊れると言う事で『真空崩壊』と言うのよ」

「って事は、あの無茶苦茶な破壊力がそこら中でばら撒かれるって事か!? 大変じゃねえか!?」

 

 ようやく事態の深刻さに気付いたリョーコが慌て始めるが、そんな彼女を冷めた目で見ていたイネスは『真空崩壊』の本当の恐ろしさに付いて語り始める。

 

「……真空からエネルギーを取り出す、つまり相転移により膨大なエネルギーが放出されてあらゆるモノが焼き尽くされる」

 

 けど、本当の脅威はそこではないの。そう前置きをしたイネスは語り始める――『真空崩壊』の真の恐ろしさを。宇宙を満たすヒッグス場からエネルギーが放出されれば、宇宙規模で大混乱に陥る事は明白だが、真の脅威は“そこ”ではない。真の脅威とは、ヒッグス場のエネルギーが変化することにある。ヒッグス場のエネルギーが変化すると言う事は、全ての物質の質量が変化するのだ。

 

「さきほども言った通り、素粒子が動こうとすると、真空に満ちたヒッグス粒子の抵抗を受けることになる。これが素粒子の動きにくさ、すなわち質量ね――けど、ヒッグス場がエネルギーを放出して“変化”すると、物質を構成する素粒子の動きも変化して物質は原子核を保てなくなり、文字通り消滅するわ」

 

 『真空崩壊』の起こった後の世界では現在の物理法則は基本的に全て通じない。ヒッグス場のエネルギーが変化するということは、もはや宇宙の前提が変化するのと等しいのだ。

 

「……つまり『真空崩壊』が起こったら、宇宙は全く別の代物になるって事か」

「そうね。『真空崩壊』が起こると、星も、恒星も、銀河すら消えてなくなるわ」

 

 何時の間にか静まり返ったホールに、イネスとリョーコの会話がいやに響く……誰もが『真空崩壊』の危険性を認識して言葉を無くす中、高い所に座って顔色の悪い一同を見回した『Q』は、口角を少し上げる見下した表情のまま『ヤマト』のクルーに『罪』の認否を迫る。

 

「呪われし船『ヤマト』よ、己が罪を認めるか?」

「否、だ!」

 

 力強く否定したのは『ヤマト』の艦長である沖田十三宙将であった。『ヤマト』の最高責任者である沖田は毅然とした態度で一歩踏み出す。『ヤマト』は沖田達の地球を救う為に、放射能に汚染されて命の危機と隣り合わせな過酷な環境の中で希望をつなぐ船として建造された――その『ヤマト』が呪われた船呼ばわりされたのだ、黙っている訳にはいかなかった。

 

「我々の存在がこの世界に悪影響を与えると言うのなら、我々は去ろう……だが現時点において我々には帰る術はない、元の世界に帰る術が見つかるまで猶予をもらえないだろうか?」

 

 しかし『Q』は沖田の提案を一笑に付し、代わりに周囲に居る兵士達へと指示を出すと兵士達が一斉に武器を構える。

 

「……この方が早いと思うが?」

「『Q』! これはあまりに短絡的すぎるぞ」

 

 尊大な態度のまま嘲るように見下す『Q』の浅慮に抗議の声を上げるピカード艦長。だが『Q』は抗議の声をまるで取り合わず、銃口を向けられている『ヤマト』のクルーは、この空間に転移させられた際に携帯火器を全て取り上げられており、反撃する術もないまま睨み返すくらしか術を持たない……一触即発の空気の中、突然この空間内に拍手が響くと少女特有の愛嬌のある声が響く。

 

「――さっすが、艦長のおじいちゃん。かっくいい!」

 

 聞きなれた声に思わず振り向くが、そこには彼女の姿はない。あんな子供までこの狂った場所に来ているのかと表情を険しくした徳川が周囲を見回すが、見つけられずにいた所で、誰かの声が「上だ!」と叫んだので見上げると、ワシの形を象ったオブジェの上に座りながら拍手をしている翡翠と、その隣で呆れたような顔をしている同年代の少女の姿を見つける。

 

「――翡翠! なんでそんな危ない所へ!?」

 

 思わず声を掛けた徳川が「危ないから、動くな!」と心配の声を掛けるが、翡翠はそれに構わず飛び降りると、おもわず受け止めようとする徳川を尻目に、あっさりと着地する。

 

「――アンタは、なんて無茶をするのよ! これ以上ややこしくしない……で…」

 

 目の前に飛び降りて来た翡翠を叱る真琴だったが、振り向いた翡翠の瞳が真紅に染まっているのを見て気圧されたのか尻すぼみになる。今の翡翠は真紅の瞳のみならず、そこに居るだけで凄まじい存在感を纏うその姿は普段の子供らしさは鳴りを潜めて、そのギャップに途惑うクルー達は無言で歩いて行く翡翠から距離を取り、自然出来た道を進む翡翠は『Q』とやり合っていた沖田艦長の前に歩いて行って悪趣味な裁判官と対峙する。

 

「……お前は…そうか“あの娘”の異次元同位体か」

「あら、“こっちの世界の私”も知っているようね」

 

 美少女が増えて嬉しいだろう? と軽い口調でウィンクする翡翠に、「何やってんのよ、あのバカ娘は」と額を抑える真琴と御影。しかし当の『Q』は翡翠の軽口に乗るつもりはない様で、顔を顰めると刺々しい声で詰問する。

 

「……なるほどな、“何故”あの船がこの世界に来れたのかと思ったが、お前が居るなら納得だ」

「何を偉そうに。アンタたち高位生命体なら、世界への侵入を防ぐのは簡単だろうが――それと、私も巻き込まれた側だよ」

「……なに?」

「アンタが真面目にやらないから、どこぞの高位存在に付け込まれるのよ。コッチもいい迷惑だわ」

 

 複数の航宙艦から全てのクルーを気付かせずに拉致して一か所に集めるなどという超常の現象を引き起こし、ナデシコ勢や『エンタープライズ』のピカード艦長と言った彼を知る者達に緊張を強いる“超”生命体を相手にナチュラルにケンカを売る翡翠。

 

「……で、此方は帰る手段を見つけたら帰るって言っているのに。何が不満な訳?」

 

 不敵な笑みを浮かべて立つ翡翠の傍に小さな光が灯ると、それはどんどん大きくなって淡い光を放つオーブへと変訪していく。

 

「――あれは!?」

「……あの巨大戦艦が送り込んで来た発光体」

 

 ユリカ達が旧『ナデシコD』と共にこの並行世界に転移した際に初めて接触した巨大な異星人の船『ボーグ・キューブ』の圧倒的な攻撃力の前に劣勢に陥った時、時空を押し退けて突如出現した白銀の巨大な船は旧『ナデシコD』を大破させた三隻中の二隻の『ボーグ・キューブ』の攻撃を歯牙にも掛けずに逆に壊滅寸前にまで追い込んで撤退させた後に、当時は旧『ナデシコD』のシステムの奥深くに潜んでいた『ジャスパー』と謎の話をして、傷ついた彼らを放棄された宇宙基地へと導いて姿を消したあの白銀の船から送り込まれて来た発光体が、今再びその姿を現したのだ。

 

「『エテルナ』、準備はいいかな?」

『もちろん。『DAWN THE EKPYROTIC(夜明けの大火)』発動準備完了です』

 

 発光体の言った言葉の意味は分からないが、発光体は翡翠のサポートをしているのは一目瞭然であった。翡翠と発光体を不機嫌そうな表情で見ていた『Q』だったが、翡翠の言葉の意味を理解した途端に表情が怒りに染まる。

 

「――貴様! この宇宙を不安定にしたばかりか、宇宙そのものを消し去ろうというのか!?」

 

 超常の存在が露にする怒りは周囲の空間を歪ませて、傍に居る生物は原初の恐怖を呼び起こされて硬直するが、怒りの波動を一身に受ける翡翠は動じずに不敵な笑みを浮かべている。

 

「……何をそんなに怒っているの? 諸共消すって言われて抵抗しないとでも思ってたのか?」

 

 「だとしたら、おめでたいな」とにやりと嘲りながら嗤う。

 真紅の瞳は冷徹な晄を宿して口角を上げながら問い掛ける。

 

「――選べ、高位生命体。私達を素直に帰すか、それとも遊び場を無くすか」

 

 その物言いは『Q』の自尊心を刺激する――位階を昇れないような矮小な生命体が、小さな惑星の表面でしか生きられないような脆弱な生命体が、位階を昇った超存在である自分に、何という不遜、何という傲慢な態度か――自らの行いを鑑みることなく、『Q』は己の怒気を受けても目の前で不敵な笑みを崩さない少女を睨み――小柄な彼女の周囲の温度を急激に下げて氷の彫像へと変える。

 

「――翡翠!?」

 

 目の前で行われた惨劇に悲鳴のような声を上げる原田真琴――『ヤマト』いる間で翡翠と一番距離が近かった彼女は、目を見開いて氷の氷像と化した翡翠を見ている……見れば『ヤマト』の中でそれなりに彼女と近かった沖田艦長や徳川機関長などが驚きと嘆き――そして怒りの視線を『Q 』に向けるが彼にとっては取るに足りない事柄の様に不遜な態度を貫いて氷の彫像と化した翡翠を満足げに見ている――が、

 

「……まったく、これだから高位生命体は嫌なのよ。自分の言う事は正しい、言う事を聞いて当然だと思っている」

 

 氷の氷像と化した翡翠はまるで意に介さず、全身が凍り付けとなったまま悪態を吐く。それを聞いた『Q』は、今度は翡翠の周囲の温度を上げて自然発火による青白き炎によって彼女を包み込んだ。

 

それを見た真琴が声にならない悲鳴を上げるが、周囲のみを焼き尽くす業火でありながらも他の場所には一切影響を与えないと言う不自然な青白い炎に包まれたまま翡翠は振り返る。

 

「……心配しなくても大丈夫だよ、真琴ねえちゃん。この程度の温度変化、『SECOND・SKIN』を抜くなんて無いから」

「……へっ?」

 

 『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』――彼女の種族は長期間宇宙を旅する事が多く、過酷な環境を生き抜く為に生来の皮膚の上に薄い第二の皮膚とも言える防御システムを纏っている――形成素材については言葉を濁したが、食らいついた真田に根負けした翡翠が言うには、この宇宙由来の物質ではなく別の物理法則を持つ宇宙から採取された素材を使用していると言う――故に『ヤマト』と激突しても傷付かなかったのだ。

 

 呆けた声を上げる真琴に親切丁寧に説明していたが、記憶を失っている間に受けた精密検査でも感知できないほど薄く、血液検査の時には何らかの方法で誤魔化した……つまり今までの検査結果はまったく信用できず、『ヤマト』に居る間中“臨戦態勢”だった事を意味する――それに気付いた者は、見抜けなかった事に愕然としていた。

 

 説明している間も『Q』は指を鳴らして翡翠の存在を消そうと過去に干渉するが未だ果たせず、そんな『Q』を翡翠は冷たい表情を浮かべて「……無駄よ」とせせら笑う。

 

『『CAUSALITY・CANCELLER(因果律・キャンセラー)』によりその手法は無効だ』

 

 翡翠の傍に寄り添う発光体(オーブ)は、無駄な行為を続ける存在に向けて存在するだけで過去へも影響を与える高位生命体のように、『因果律』に干渉するシステムによって過去への干渉を撥ね退けるだけの力が此方にはあると豪語する。

 

「……で、どうする?」

 

 『Q』と対峙する翡翠の表情は普段の子供らしい雰囲気は鳴りをひそめ、何時かユリーシャと対峙した時の様に――それ以上に冷たく無機質な角度で口角が吊り上がり、見る者の背筋を凍らせるような真紅の瞳が冷徹な光を湛えて邪悪な笑みを浮かべている……彼女は本気なんだろうか? 自分達の要求を叶えなければこの宇宙を消滅させるなど、人が取る手段としては許される範疇を超えているだろう。

 

 対峙する二人を除いて、他のクルー達は事態の推移に着いていけないのか戸惑う表情を見せる中、睨み合う二人の内の一人が動きを見せる。

 

「ねぇ、『Q』。アンタもどうせ何万年も生きてるクチでしょう、年齢に見合った度量を見せて欲しいんだけど」

「……『Q』、彼らの望郷の念は本物だ。彼らの行動目的は終始一貫している、それは自分達の世界へと帰還して故郷を救うこと。帰らせてやれ」

 

 以外にも『エンタープライズ』のピカード艦長からの援護が来る……本音としては厄介な存在にはお帰り願おうと言った所か、彼の思惑を推察しながら翡翠は真紅の瞳を再び『Q』へと向ける。

 

「……好きにしろ」

 

 長く、ため息とも取れる吐息を吐きだした『Q』は憮然とした表情を浮かべて、じろりと翡翠やその後ろに居る『ヤマト』のクルーをねめつけて呟くと、周囲が強烈な光に包まれて次の瞬間に『ヤマト』の艦橋へと転移していた。

 

「……ここは、『ヤマト』か?」

「……戻ってこれたのか」

 

 艦橋から見える機械的な構造物を見ながら古代と島は、あのイカれた空間から『ヤマト』帰って来た事を実感して安堵のため息を付く。他の士官達も周囲を見回して自分達が『ヤマト』に帰って来た事を実感して安堵の息を付き、機関長の徳川などは「やれやれ、年寄りには辛いわい」と機関制御席に座って首をコキコキ言わしている。

 技術支援席に座った真田は、『Q』という遭遇した事もない超常の存在から解放された事に安堵の息を漏らす。緊張の連続から解放された事により肩の力を抜いた真田だったが、周辺のエネルギー値を計測していたシステムが異常を示すアラームを鳴らした事に気付いて視線を向ける。

 そこに表示された数値は『ヤマト』の周辺でよろしくない事が起きつつある事を示しており、他のシステムにより計測された状況を瞬時に理解した真田は、沖田艦長に警告を発した。

 

「艦長! 『ボーグ・キューブ』内のエネルギー値が異常に増大しています。各システムにエネルギーを供給するエネルギー伝導管が過剰なエネルギーを供給しており、このままでは『ボーグ・キューブ』のシステムがオーバーフローを起こします」

「……このままだと、どうなる?……」

「……いくら『キューブ』と言えども、内圧に耐えられずに崩壊するでしょう」

 

 沖田艦長と真田の会話を聞いていた『ヤマト』の乗組員達は驚愕の表情を浮かべ、それにより起こりうる未来を創造した時に乗組員の表情が驚愕から焦燥に包まれたモノに変わる――現在『ヤマト』は『ボーグ・キューブ』の内部に強行突入している状態であり、この巨大な『ボーグ・キューブ』が崩壊するような事態になれば内部にいる『ヤマト』もタタでは済まない事は容易に想像がついた。

 

「島! 直ぐに脱出だ」

「了解!」

 

 話を聞いていた古代の声に慌てた様子の島が主操縦席に座ると、備え付けられた『ヤマト』のスラスターを起動して全力で後退を始める。巨大な金属の塊とも言える『ボーグ・キューブ』内に突入した事により出来た道を遡るかのように突入口へ向けて全力後退をする『ヤマト』――それに呼応するかのように、オーバーロードしたエネルギー伝導管による爆発が『ボーグ・キューブ』内に広がる。

 

「まずいぞ! このままでは『ボーグ・キューブ』の崩壊に巻き込まれる」

「機関長!」

「分かっとる! 非常用出力解放! 補助エンジンの出力もフルスロットルじゃ!」

 

 島の要請に応えて徳川が機関制御席に備え付けられたワープ時非常出力用レバーすら操作して、波動エンジンの出力を一時的に上げる。波動エンジンには多大な負担を掛けるが、ここを乗り切れなければ『ヤマト』に明日は無い。

 

 過剰なエネルギー供給により内部構造の所々で爆発が起こり、構造材を吹き飛ばしながら『ヤマト』に迫っているのが第一艦橋から見える……このままでは内部崩壊に巻き込まれてしまう。操舵稈を握る島の額に汗がにじむ。誰もが祈る中、突撃により出来た破壊の隙間を逆噴射により戻る『ヤマト』の船体がようやく宇宙空間へと脱出する。

 

「――波動防壁最大出力!」

「了解、出力最大!」

 

 沖田艦長の命令を受けて太田が波動防壁の出力を限界まで上げたと同時に、『ボーグ』の艦の中でも強大な力を誇る『クラス4・戦略キューブ』の外壁に亀裂が入ると内部から爆発を起こして、壁の如き堅牢な巨体を粉々に粉砕して爆発消滅した。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 真空崩壊の解釈はこれで良いのか不安です……詳しい方がいらっしゃいましたらアドバイスなどもらえると嬉しいです。

 ついに最大の脅威『Q』から解放された『ヤマト』。キャラクターとしての翡翠の役割は『Q』と対峙する事だったんですよね……本来、超常の存在である『Q』ならば、見据えるか指を鳴らすだけで翡翠や『ヤマト』そのものを消し去る事など容易いのですが、わざわざ『ヤマト』だけでなく『ナデシコ』の乗員を集めて、『ナデシコ』には警告を、『ヤマト』にはクルーの精神を試す場を作った。

 例えその場で『ヤマト』のクルーを抹殺したり『ヤマト』自身を破壊しても、並行世界に迷い込んだ物質は残りますからね。そこへ乗り込んだ翡翠は「いいから、早く帰せよ」と催促する……今流行りの「ク〇ガキ」ですね翡翠は、ピンクの天使が分からせてくれるでしょう。(w

 『ボーグ・キューブ』をどうするか悩みましたが、生存させて『ナデシコ』勢と合流させるか考えましたが、後腐れなく爆発させる道を選択しました……惑星連邦に保護されて復帰の道も考えましたが、彼らの未来はあまり良くないと考えましたので。(『ドローン』になった彼らの人権はあまり尊重されないようなので)

 次回 第六十話 悲劇を終わらせるモノ
 最大の脅威を切り抜けた彼らは、残酷な現実に直面する。

 では、また近いうちに。
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