宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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第六十話 悲劇を終わらせるモノ

 

 宇宙戦艦『ヤマト』第一艦橋


 

 超常の存在である『Q』との接触という、とんでもない体験をした沖田艦長を始めとする『ヤマト』の乗組員達は紆余曲折の上になんとか『ヤマト』に戻る事が出来たが、事態は彼らに安堵の息を付く暇すら与えなかった。

 『ヤマト』が突撃して体内の奥深くまで潜り込んだ『クラス4・戦略キューブ』が暴走状態になって間もなく爆発する事が判明したのだ。

 

 急いで逆噴射をかけて『クラス4・戦略キューブ』からの脱出を図り、ようやく抜け出した『ヤマト』の前で『クラス4・戦略キューブ』の巨大な船体の所々で無数の爆発が起こり、まもなく爆発四散してしまう事が予想できる。

 

 沖田艦長の命令を受けて太田が波動防壁の出力を限界まで上げたと同時に、『ボーグ』の艦の中でも強大な力を誇る『クラス4・戦略キューブ』の外壁に亀裂が入ると内部から爆発を起こして、壁の如き堅牢な巨体を粉々に粉砕して爆発消滅した。

 

「……被害報告」

「……波動防壁のお陰で、船体のダメージは最小限に抑えられました」

「先ほどの無茶の所為でエネルギー・コンデンサーに異常が発生しており、波動エンジン自体も点検が必要ですじゃ」

 

 沖田艦長の問いに、技術支援席にて船体の状態をチェックした真田が答え、機関制御席にて波動エンジンの出力をチェックしていた徳川は難しい表情を浮かべながら時間がかかる旨を伝える。

 

「……そうか。他の『ボーグ・キューブ』の動きはどうか」

「周囲に『ボーグ・キューブ』の姿は確認出来ません。周囲に存在する残骸の量から推察すると他の『ボーグ・キューブ』も崩壊したものと思われます」

「他の『ボーグ・キューブ』も?」

「どういうことだ?」

 

 他の『ボーグ・キューブ』の動向を気にした沖田艦長の問いに、航路監視席にて近距離レーダーで周囲を走査した太田が敵の姿が確認出来ない事を告げると、周囲から戸惑いの声が聞こえる……この星雲にワープ・アウトした時に、目の前に迫る巨大な『ボーグ・キューブ』の後ろに複数の『ボーグ・キューブ』の姿を確認していたのに、今はその姿が確認出来ずに代わりに大量に破片が周囲に漂っているという。

 

 独立した航宙艦である複数の『ボーグ・キューブ』が同時に破壊されるなど、一体何があったのか眉間にシワを寄せながら考え込んでいた沖田艦長は、艦長席に備え付けられた艦内電話用端末からコールが鳴っている事に気付く。相手は佐渡先生のようだ……何か想定外の事が起こったのか? 端末を取って二、三話した沖田艦長は沈痛な表情を浮かべる。

 

「……艦長、何か問題でも?」

 

 表情の変化に気付いた真田が問い掛けると、艦内電話の端末を置いた沖田艦長が淡々とした声で答える。

 

「……先ほど、ミスマル艦長の夫テンカワ・アキト氏が亡くなったそうだ」

 

 


 

 

 時は少し遡る。

 

 宇宙戦艦『ヤマト』の乗組員999名の健康を管理する医療区画の中には人の気配が皆無であった……常駐している医官の姿も、医官をサポートする衛生士の姿すらもなく、他の区画と同様に無人でありながら、ただシステムだけが規則正しく動いていた。

 

 そんな、ただシステムだけが動いている空間に突然複数の光が輝いて瞬く間に消える……光が消えた後、そこには今まで存在していなかった人影が現れた。医療従事者を示す白い制服を着た佐渡酒造と、その補佐をするピンクの制服を着た原田真琴の二人であった。

 

「かぁー! 何じゃ、何じゃ!? 急に眩しくなったと思ったら、どこじゃここは? ってワシの職場じゃないか」

「……私達、私達あの狂った場所から帰って来れたんですね」

 

 突然光に包まれたかと思えば、『Q』を名乗る超常の存在が創り出した狂気の場所で、存在自体が罪だと断じられて危うく殺されかけたが、突然姿を現した翡翠の尽力により事なきを得た……得たのだが。

 

 見知らぬ少女と共に現れたかと思えば、お供に丸い光る玉を従えて訳の分からない事を言いながら、ノリノリで超常の存在に脅しをかけたのだ……記憶を無くしていた頃は普通の少女であったが、記憶を取り戻してからは、やる事成す事ハチャメチャでやりたい放題、目上の自分の扱いもぞんざいであり、コッチの気も知らないでどこかで騒動を巻き起こすイタズラ娘へと変貌したのだ。

 

「……何だ、もう『ヤマト』に帰されたのか……ナルシィの癖に根性がないなぁ」

 

 自分達と同様に『ヤマト』へと帰還していた翡翠が後頭部をポリポリと掻きながらボヤいている姿にイラっときた真琴は、無言で翡翠の背後に回るとこめかみ辺りに拳を当てる。

 

「――訳の分からない事を言いながら、あんな化け物にケンカを売って! 心配するこっちの身にもなってみなさい!」

「みぎゃあああぁあぁあ!?」

 

 こめかみを抉るように拳を動かす真琴……ピンクの天使により、悪は滅ぼされたであった。

 

 お仕置きと言うか、じゃれ合う二人を見て安堵の息を吐き出す佐渡……生物的特徴だけでなく、その精神構造も自分たち地球人とほとんど変わらないと思われていた翡翠であったが、あの『Q』を名乗る超常の存在と対峙している時の翡翠はまさしく自分たちとは違う――異星人である事を思い出させるものであった。真紅の瞳は苛烈な光を放ち、歪に吊り上がった口角は、超常の存在との対峙を心底楽しんでいる証拠だった……だが今は、地球人である真琴とじゃれ合う姿を見せている。

 

「……あの娘なりの歩み寄りなのかもしれないのぉ」

 

 まるで姉妹のようにじゃれ合う二人を生暖かい目で見ていた佐渡であったが、処置室から少し離れた病室の方から悲哀に満ちた悲しい声が聞こえて来る……『ボーグ・キューブ』内で保護した『ナデシコ』のミスマル・ユリカ艦長の声のようだ……どうやらあの場所からは元の場所に戻すだけで、それぞれの船に戻してくれた訳では無いようだ。

 

「……除っ引きならない事になっているようじゃのぅ」

 

 医療に従事していれば聞く事になる声に、佐渡は視線を伏せながらポツリと呟いた。

 


 

 病室の方から聞こえて来る悲しみを含んだ声に視線を伏せていた佐渡だったが、この医療区画を預かる医師として務めを果たすべく処置室を出て隣接する病室へと向かう。彼の後ろには、じゃれ合いの途中で気付いた真琴が続いて病室内へと入る……そこには彼らが予想していた通りの光景があった。

 

「――アキト! お願いだから眼を開けて! ……やっとアキトが手の届く所に居るのに、こんな終わり方なんて……そんなの無いようぅ」

 

 大粒の涙をぽろぽろ流しながら夫であるテンカワ・アキトに縋るユリカ。彼の眠るベッドの周りには『ナデシコ』のクルー達が沈痛な趣で物言わぬアキトと涙を流すユリカを見ている。

 

「……ちくしょう。俺はこんな光景を見る為に『ナデシコ』に乗ったんじゃねぇ」

 

 血の気もなくピクリとも動かないアキトと、それに縋りついて大粒の涙を流すユリカを見ながら、唇を噛み締めたスバル・リョーコはポツリと呟く。金色の瞳に涙を浮かべているルリが「……リョーコさん」と気遣が、リョーコは唇を噛み締めたままであった。

 

 そんな二人のやり取りを無表情で見ていたウリバタケは、視線をベッドの方に向ける……物言わぬアキトに縋りつくユリカ。そんなベッドの傍にはアキトが苦痛に苦しまぬようにと尽力したイネスが機械的に彼の身体に付けられた測定器を外していた。

 

「……こんな結末しかなかったのかよ」

「……誰かが言ってましたよ、この世は上手くいく事の方がめずらしいと」

 

 ウリバタケの呟きに、クルーの誰かが悔しそうに答える……嘆きの声を上げる『ナデシコ』のクルーの姿と、努めて無表情に徹しながら冷たくなったテンカワ・アキトの身体から測定器を外していくイネスの姿に全てを悟った佐渡は視線を下げると、沖田艦長に報告するべく処置室へと戻って行く。

 

 残された真琴はテンカワ・アキトの身体から測定器を外しているイネスに手伝いを申し出るべく悲しみに暮れる人々に囲まれたベッドへ一歩踏み出そうとした所で、何時の間にか傍に小さな人影がある事に気付いた。

 

「……翡翠?」

 

 翡翠は腕を組んで何やら考え事をしているようで、眉間にシワを寄せながら唸り声をあげている。こんな重たい空気の中で何を考えているのだろうか、このバカ娘は? 空気を読んで大人しくするように諭そうとしたその時、突然翡翠の眉間によっていたシワが消えたかと思うと「よし、決めた!」と頭の上に電球が灯ったかのように朗らかな表情を浮かべて拳を握る……その姿に思いっきり不安になった真琴は翡翠の肩に手を掛けてを止めようとするが、一瞬早く膝を軽く曲げた翡翠が飛び上がった事で空振りになる。

 

「――翡翠!?」

「ちょっと『ヤマト』のマスコット・ガールらしい事をして来るね」

 

 それほど力を入れたように見えなかったが、小柄な身体であるにしてもあり得ない程の跳躍力を見せた翡翠は、悲痛な表情を浮かべる『ナデシコ』のクルー達を飛び越えて、ふわりと音もなくテンカワ・アキトの遺体のあるベッドへと着地する。

 

「――どういうつもりなのかしら。彼の眠るベッドに仁王立ちするなんて、礼儀と言う物を知らないのかしら」

「――テメェなんつもりだ! そこをどきやがれぇ!」

 

 突然現れた無作法者に凍えるような視線を向けるイネスと、怒りを通り越して憎しみすら覚えるかのように叫ぶリョーコ。だが翡翠は、そんな二人に一瞥すらせずに、ゆっくりと右腕を引き絞ると腕自体が紫電を纏う。

 

「――やめて! 何をする気、これ以上アキトを壊さないで!」

 

 翡翠のしようとしている事に気付いたユリカが叫ぶが、翡翠はかまわず引き絞った右腕を振り下ろす――紫電を纏った拳が息絶えたテンカワ・アキトの胸板に触れた瞬間に衝撃波が周囲に居る人間を吹き飛ばした。

 

 突然襲った衝撃に身構える時間も無く衝撃波に吹き飛ばされた『ナデシコ』のクルー達が何とか身を起こしながらテンカワ・アキトの遺体が安置されたベッドの方へと目を向けると、そこには腕を振りぬいた状態の翡翠の姿があり、知人を、愛する者を亡くした悲しみに土足で踏み込むような真似をした翡翠に怒りの感情を向けて怒鳴ろうとしたその時、未だ取り外されていなかった測定器が反応を示した。

 

「――なっ!?」

 

 誰の言葉だろうか、驚きに目を開いて凝視するその先には、何の反応も示していなかった測定器が弱弱しいながらも心拍を拾っている光景であった。

 

「……そんな、あり得ないわ。心停止してからかなり経っているというのに」

「……心停止からの十分以上経つと蘇生の可能性は殆どない筈です……なのに何故…」

 

 主治医としてテンカワ・アキトの体調を見て来たイネス・フレサンジュは測定結果が表示されるモニターを凝視した後、彼が弱々しいながらも確かに自立呼吸を再開した事を確認して、その上で得意げにない胸を張るイタズラ娘(非常識)に視線を向けて「……何をしたの?」と問うと、ご丁寧にも説明してくれるようだ。

 

「ねえちゃん達は『ボーグ』を舐めすぎ。アイツらの技術――特に『ナノプローグ』は、取り除いても次から次へと沸いてくる“黒い悪魔”のようにしつこいんだよ」

 

 ふんぞり返るその姿にイラっとくるが、翡翠とか言う不可思議生物が言うには『ボーグ・ドローン』に改造された人間は極限状態でも活動が可能で、生身で宇宙空間をも活動の領域に出来るとの事だ。

 

「……つまり、アキトは死んでいなかったの?」

「死んだのは確かだと思うけど蘇生と言うか、再起動は可能だったと言う話」

 

 翡翠の説明を聞いても『ナデシコ』のクルー達は混乱するばかりであった。彼らの世界である二十三世紀の地球においても、死者の蘇生など夢のまた夢の技術なのだから。テンカワ・アキトが生き返った事を戸惑いつつも理解するにつれて『ナデシコ』のクルー達の間に喜びの声が上がるが、そんな彼らに向けて翡翠は残酷な事実を告げる。

 

「……確かにテンカワ・アキトは生き返った。だけど代償が無い訳ではないよ」

 

 翡翠によれば脳はもっともデリケートな器官であり、血流が停止した直後よりダメージを受け始めて、神経細胞やそれを繋ぐシナプスがどれほどのダメージを受けたか分からないと言う。

 

「佐渡せんせぇから聞いたけど、このにいちゃんは『ボーグ』に処置される前からナノマシンによって脳のダメージを受けているんでしょう? 神経細胞を繋ぐシナプスもどれだけダメージを受けたか……最悪、何も覚えていない可能性すらあるよ」

 

 ある意味死刑宣告よりも残酷な予想を告げられて言葉を失う『ナデシコ』クルー。そんな中でもミスマル・ユリカは微笑んだ。

 

「――アキトが生きている。それだけで十分だよ」

 

 その笑みはとても綺麗な笑みであった。

 

 


 

 

 『ヤマト』医療区画通路

 

 戸惑いながらもテンカワ・アキトの蘇生を喜ぶ『ナデシコ』のクルー達が喜ぶ病室にバイタルチェックを手伝うと言って病室に残った真琴を置いてドアから出た翡翠は、やる事はやり切ったと自画自賛しながら「むふんっ」と満足げに鼻を鳴らした後、病室と処置室を結ぶ通路を一歩踏み出す。

 

 この並行世界に転移させた『演出家』の正体もほぼ特定できたし、最近感じていた鬱陶しい視線を向けて来る『評論家』の干渉を退けて、後は自分達の世界に帰還して『演出家』に落とし前を付けさせるだけだ。

 

 にやりと笑いながら歩いていた翡翠は、いつの間にか周囲の景色が『ヤマト』の艦内通路のメカメカしい物から何もない白い空間へと変わった事に笑みを好戦的な物へと変える。

 

「……さて、位相をずらすなんて芸当が出来るとは、流石“骨董品”ね」

 

 見れば正面にミスマル・ユリカをダウンサイズしたかのような白い髪と金色の瞳を持つ少女が不機嫌そうな顔つきで仁王立ちしている……これは、帰る前に決着を付けようと言う事かな? と、笑みを深くしながら翡翠は両の手を軽く開いて即座に対処出来るようにして、瞳は緑色のままだが臨戦態勢へと移行する……さて、戦いのゴングを鳴らすかとこぶしを握った時に、目の前に立つ“骨董品”こと遺跡の『演算ユニット』――ソフィアは翡翠を見据えながら口を開いた。

 

「……何をした?」

「何をした? 漠然としていて何を指しているのか分からないなぁ?」

「とぼけるな! あの時、テンカワ・アキトは生命活動を停止していた。しかも、彼の体内にあった『ボーグ』の『ナノプローグ』も完全に機能を停止していた」

「……気の所為じゃね?」

「……『ナノプローグ』は完全に停止し、エネルギー値も完全にゼロを指していた――その状態から再起動など出来るはずがない」

「それはセンサーの誤作動だよ、きっと」

 

 おどけて肩を竦める翡翠の態度が気に入らなかったか、ソフィアは柳眉を逆立てて翡翠を詰問するが、当の翡翠はのらりくらりと躱す。そんな翡翠の態度にいら立ったソフィアは肩をいからせながら 至近距離まで近付いて、金色の瞳が翡翠の名前の由来である緑色の瞳を見据える。

 

「テンカワ・アキトを蘇生して、お前に何のメリットがある? 最初の時もそうだ。ユリカを目覚めさせる事にどんなメリットがあった? お前にユリカを救う理由は無かった筈だ――お前の存在はユリカ達に都合が良すぎる」

 

 お前は何を企んでいる、金色の瞳に冷徹な光を湛えながらソフィアは翡翠を睨め付ける。そんなソフィアの姿を見た翡翠は『こいつは主を守ろうとするわんこ、か』と呆れる……古代文明の遺産であるボゾン・ジャンプを成立させる為の演算を一挙に行っていた『演算ユニット』の癖に、肉の身体を持った途端に幼い容姿の身体に引っ張られているのかと思うくらいに稚拙な推論で対峙してくるのだから。

 

「……考えすぎだよ、アンタ」

 

 呆れたように苦笑いをしながら翡翠は、ソフィアの脇を通りながら歩き出す。

 

「――まて!」

 

 制止の声を掛けるが翡翠はそれに構わず右手を上げる。

 

 ――パチン。

 

 指を鳴らすと同時に周囲の空間が歪んで、周囲の光景が『ヤマト』の艦内へと変貌する。変化した周囲の光景を一瞥だけしたソフィアは、柳眉を逆立てて目の前の非常識な生物にさらなる追求をしようとする前に、翡翠はソフィアに背を向けたまま彼女の疑問に答え始める。

 

「……何故、テンカワ・アキトを助けたのか? それは『保険』だよ」

「……『保険』?」

 

 背を向けたまま立ち止まった翡翠は、纏う空気を危険なモノへと変貌させながらも話し始める。

 

「ろくでもない『演出家』に、このふざけた舞台の責任を取らせないとね」

 

 “保険は一杯掛けておいた方が良いでしょう?”と呟く翡翠に、険しい視線を向けながらソフィアは“ユリカ達を巻き込むつもりか”と非難するが、そんな言葉では翡翠は揺らがずにゆっくりと振り返る……その表情は普段の飄々な空気は鳴りを潜め、紅く染まった瞳は怒りの炎を燃やしていた。

 

「相手は亜空間に干渉できるような“バケモノ”よ、そんなバケモノを相手にするのなら、“手札”は多い方が良いだろ」

 

 そいつは、アンタ達を並行世界に転移せざるを得ない状況に持って行ったのかもしれないからね、と唇を歪めて笑う翡翠――何重にも安全策を取って跳躍実験に臨んだ彼女が、『ヤマト』という未知の船と衝突するなど本来はあり得ない事であり、実験が終了して通常空間に復帰する前に未知の船と接触するなど、数々のセンサーで見守られている中で未知の船の存在が見落とされる事など無い筈なのである。

 

 それと同じように、ミスマル・ユリカ率いるナデシコ勢も不測の事態に置かれた時に幾何学模様が広がってジャンプ・フィールドを形成して飛ぶと必ずこの並行世界に転移したと言う……ジャスパーも言っていたではないか。

 

『それは分からない。“何度”か試したけれど、必ずこの世界へと転移したから』

 

 時空間移動手段『ボソン・ジャンプ』の『演算ユニット』が他の並行世界の『演算ユニット』にデーターを送って実体化すると、必ずこの世界へと転移すると言う、何度も転移しても。

 

 つまり何者か――超常の存在の干渉により、この世界が舞台装置として選ばれた。

 

「ユリカ達の行動も、何者かの干渉を受けた結果だと?」

「『演出家』の手がどこまで伸びるか分からないからね」

 

 並行世界にまで演技指導に行ったとしても驚かないわ、と薄笑いを浮かべる翡翠――その、どこまでもヒトを食った態度が気に入らず、ソフィアは渋面を浮かべる。

 

「ふざけた『演出家』とやらと対峙する時の為に自分の手駒を集めようと言うのか、あのいけ好かない『評論家』と何が違う?」

 

 侮蔑を込めて吐き捨てるソフィアに向けて、翡翠は“にたり”と嗤う。

 

「……『評論家』などで済ます気はないわ――私が目指すのは『DEUS EX MACHINA(機械仕掛けの神)』よ」

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。
 
 『Q』の追求から逃れた『ヤマト』の艦内で起きた悲劇――しかし、それは翡翠の介入で最悪の事態だけは免れた。

 これで『ナデシコ』のストール―は終了です。
 翡翠の力を持つが故のある意味傲慢な行動も、これから対峙するであろう超常の存在との対決に向けての『保険』の意味でしかなかった。

 次回 第六十一話 別れの時
 全ての脅威は去った――。

 では、また近いうちに。

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