宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル 作:soul
その日、地球圏に一つの噂が流れた。地球を防衛する警戒網の一つである戦闘衛星が謎の爆発起こしたが、付近を航行していた輸送艦のクルーに緘口令が敷かれたと……そして漏れ聞こえた話では、戦闘衛星が爆発する前に誰もが知る“あの艦”が主砲を発射していた、と。
「……そんな馬鹿な、“あの艦”がそんな事をする筈がないだろう」
「――そうだよ、地球を救った英雄だぞ」
真実は未だ闇の中へ――。
反逆者の汚名を着ようとも自分達が信じる道を進む宇宙戦艦『ヤマト』は、地球圏を脱出して月軌道を越えて火星圏へと近付いていた。予想していた内惑星警備艦隊の追撃もなく、『ヤマト』の航海は怖い位に順調に進んでいた。
「……おかしい。ここまで何の妨害も無いなんて」
『ヤマト』の操舵を預かる島は、航宙艦隊司令部の命令を拒否して発進した『ヤマト』を拿捕するべく追撃してくる戦闘艦が皆無のこの状況を疑問に感じていた。本来なら反乱艦など、艦隊司令部の威信に掛けて追撃してくるだろう。
「……仮にも『ヤマト』は戦艦だからな。生半可な戦力では止められんと考えているんだろう」
だからこそ仕掛けて来る時には『ヤマト』を圧倒出来る戦力を整えて来るだろう、と真田は分析する……彼の分析を聞くまでもなく、この航海は困難な物になる事を覚悟していた『ヤマト』のクルーは、それでも自分達が信じる道を進む事を決めており、来るべき時に向けて『ヤマト』のポテンシャルを十全にするべく調整を行っていた。
小惑星宙域に侵入しようとする『ヤマト』へと元『ヤマト』航空隊の操る艦載機が合流して、仲間と再会した『ヤマト』クルー達が喜びに沸く一方で、ついにその時が訪れる――『ヤマト』の前に立ち塞がったのは、地球連邦航宙艦隊旗艦『アンドロメダ』――地球の『波動砲艦隊計画』に基づいて建造され、『ヤマト』よりも巨大な船体ながら自動化の促進により少ない人数の乗組員で運用が可能な最新鋭戦艦である。
『ヤマト』の三連装陽電子衝撃砲を発展させた40.6センチ三連装収束圧縮型衝撃波砲塔を4基搭載しており、『ヤマト』より口径は小さいながら圧縮した状態で砲撃する事で威力は同等以上、速射性に優れており、多数の火器に守られた堅牢な戦艦である。
そして『アンドロメダ』最大の特徴である艦首に搭載された『二連装拡散波動砲』は、単装である『ヤマト』の『波動砲』を遥かに上回る破壊力を有している――その圧倒的な戦闘能力が今『ヤマト』に向けられようとしていた。
木製軌道上で新造された地球連邦艦隊の演習を行っていた『アンドロメダ』に軍司令部より命令が下り、『アンドロメダ』は麾下の艦隊に待機を命じた後、『アンドロメダ』のみが前進を開始する。
「本艦はこれより単艦での追撃戦に移る! 攻撃目標――反乱艦『ヤマト』!」
艦長山南修の号令の下、宇宙戦艦『アンドロメダ』は地球連邦軍の哨戒網がキャッチした『ヤマト』の予測進路に向けて発進する……最新鋭の『アンドロメダ』のクルーに選ばれた優秀な宇宙戦士とはいえ、艦長からの命令――反乱艦『ヤマト』への追撃戦を行うと言うことが小さくない動揺を引き起こした。
「……反乱艦って、あの『ヤマト』と戦うのかよ」
「――仕方がないだろ。それが司令部の命令だ」
「――けど、『ヤマト』は地球を救った艦だぞ!」
「――だからこそ、これ以上『ヤマト』の名誉を汚させない為に戦うんだよ!」
『アンドロメダ』の艦内でも、『ヤマト』と戦う事に様々な意見が分かれて議論になる事があった――だがそれでも、『ヤマト』という強力な力がシビリアン・コントロールから逸脱して行動するのを止める為と自分を納得させながら任務に従事する。
――そしてその時が来た。
『アンドロメダ』のセンサーが小惑星帯を通過しようとする『ヤマト』を捕捉する。副長から報告を受けた山南艦長は『ヤマト』へと通信を繋ぐように指示する……ほどなくして『ヤマト』から応答があり、『ヤマト』第一艦橋に立つ今回の首謀者と目される元戦術長古代の姿が映し出された。
進路を変えて地球に向かう事を命じる山南に、古代は頷く事は無かった。宇宙に異変が起こっているにしても、その規模が分からず『ヤマト』単艦で対処できない時はどうするのか? 問い掛けながら戻る事を促す山南に古代は拒否する――災いが起こっているならば、『ヤマト』はそこへ向かわなければならない。それが『ヤマト』の使命であるかのように。
「……残念だ」
「――来るぞ! 第一種戦闘配備!」
『ヤマト』の状態は万全とは言えず、これほど強力な戦艦を――ましてや友軍である『アンドロメダ』と戦う事に躊躇するクルーもいたが、覚悟を決めて出航した以上は戻ると言う選択肢は無かった。
覚悟と知恵を屈指して抗う『ヤマト』と、新鋭艦の能力を遺憾なく発揮して追い詰める『アンドロメダ』――意地と面子がぶつかり合う。
「……アンタの息子はとんだ頑固もんだ、沖田さん」
『アンドロメダ』艦長山南修は、意地を通す『ヤマト』クルーの姿に先輩でもある前『ヤマト』艦長沖田の残していたモノが受け継がれている事を確認しながらも、頑固な所まで受け継がなくてもと苦笑する……そんな時に司令部より通信が入り『ヤマト』への追跡命令が中止された事が通達された。司令部の中にも『ヤマト』に好意的な物がおり、何より『ガミラス』地球大使バレルの尽力によるものであった。
惑星『テレザート』への航海を続ける宇宙戦艦『ヤマト』は、第11番惑星を制圧して地球へ直接攻撃をもくろむ『ガトランティス』を退け、瞬間物質移送機によって何もない空間に現れる大量のミサイルという、大マゼランの七色星団で受けた攻撃を思い起こさせる敵の攻撃を潜り抜けた今、センサーは他天体より持ち込まれた岩盤によって封印されようとしている惑星『テレザート』を感知していた。
厚い岩盤によって周囲からの侵入は不可能。唯一突入可能なのは、最後の岩盤の設置作業をしている所だが、その最後の岩盤の前には強力なミサイル艦隊と後方の開口部にはテレザート直掩艦隊が陣取り、強固な防衛線を築いている。
その防衛線を突破する為に、『ガミラス』戦役にて主力だったコスモファルコンの後継機―1式空間戦闘攻撃機コスモタイガーⅡと、『ヤマト』艦内で試作された二式機動甲冑による突入部隊が、戦闘機支援システムである『ワープ・ブースター』を使用して短距離ワープにて岩盤後方の直掩艦隊に奇襲を敢行し、続いてワープをした『ヤマト』による攻撃で混乱する直掩艦隊にダメージを与える作戦が敢行され、奇襲は見事に成功して敵は大混乱に陥った。
――だがここで、『ヤマト』艦内に燻っていた問題が表面化する。
滅亡の淵に立たされた事に恐怖した地球政府の高官達が力を求め、『イスカンダル』のスターシャ女王と『ヤマト』艦長沖田が交わした『波動砲』を封印すると言う約束は、個人的に交わされた口約束でしかなく地球の安全保障政策には何ら影響がないとされ、波動砲搭載艦による『波動砲艦隊構想』が実施された……それは先の大戦により総人口の7割を失った地球の苦肉の策であったのかもしれない。
しかし約束を交わしたその場に立ち会った『ヤマト』の乗組員達――特に戦術長として『ヤマト』に乗り込んでいた古代は、大切な人たちが交わした約束に拘って『波動砲』の引き金を引く事を躊躇していた。
思えば彼は実直な男なのかもしれない――新たな脅威が近付く中で戦力的に乏しい地球が『波動砲』に拘るならば、危機が去った後で『波動砲』を封印するという道もあっただろう。だが彼は――いや、『イスカンダル』への航海を経験した『ヤマト』のクルー達は『約束』に拘り、『テレザート』解放戦で敵ミサイル艦隊の前に危機的な状況に陥っていた――そんな彼らの呪縛を解く切っ掛けを与えたのは、途中から『ヤマト』に乗り込んだ空間騎兵隊隊長斎藤始と『ガミラス』地球駐留武官クラウス・キーマンであった。
『……馬鹿げた事さ、けどしょうがねぇ。理屈じゃねぇんだ、アイツは約束してるんだよ……大事な人との約束。だから代わりに――』
第11番惑星で救助されて惑星『テレザート』への航海に同行している外洋防衛師団司令官土方竜宙将に古代の代わりに『波動砲』の引き金を引くよう頼もうとした斎藤の要請を切って捨てたキーマンは、『ヤマト』に乗る全てのクルーに向けて語る。
『――これは『イスカンダル』に旅をしたものが等しく背負う十字架だ――自ら呪縛を解かない限り、『ヤマト』に未来は無い!』
キーマンの言葉に、『波動砲』の問題は古代一人の葛藤ではなく、『イスカンダル』に旅した『ヤマト』のクルー全てが背負うべき物であると自覚した「ヤマト」のクルーは行動でそれに応える。
『逃げ場のない、解決しようのない事なら背負っていくしかない。俺も、お前も――全員で撃つ』
『約束』を忘れた訳でない――だが、今は。覚悟を決めた『ヤマト』が放った『波動砲』の一閃は、強力なゴーランド・ミサイル艦隊を輝きの中に消し去った。
惑星『テレザート』は『ヤマト』の尽力によって『ガトランティス』より解放され、地表に降下した『ヤマト』は破壊された神殿都市テレザリアムの奥深くで『テレサ』に出会った。
『ガトランティス』も神殿都市の奥深くまで侵入したのか神殿内は至る所が破壊されており、内部に入った『ヤマト』の古代と真田そして空間騎兵隊隊長の斎藤の三名は、うす暗い通路を下って最深部へと足を踏み入れる。
そこは一面草花に覆われた場所であった。太陽の光も届かないこんな神殿都市の奥底が大量の植物に覆われている事に疑問を持つ古代に、同行している斎藤が示す先には何か樹脂の様な物で覆われた大きな球体の姿があった。
「……この中に『テレサ』が」
真田の呟きに呼応するかのように樹脂のような物で覆われた球体の上部の方から樹脂の様な物が光に変わりながら消えて行き、内部にあった発光体の光を浴びた周囲の植物が活力を取り戻して青く茂って行く。そんな変化に驚きを露にする『ヤマト』のクルー達の前で、発光体は一枚一枚まるでハスの花ビラが開くかのように解けて行って、中から長い金色の髪を持つ美しい女性の姿が現れた。
ひざまづいて祈りをささげている彼女は、青い瞳を開いてやって来た『ヤマト』のクルーを見つめる――その圧倒的な存在感を感じた『ヤマト』のクルーは、彼女こそが『コスモウェーブ』を放って『ヤマト』を呼び寄せた存在『テレサ』であると確信したのだ。
『私テレサ、テレザートのテレサ。――貴方がたは白色彗星をご存じですね、アレは遠い昔に古代アケーリアス人が遺したモノ。この宇宙に人間の種を蒔く一方で、彼らは安全装置を用意していました――蒔かれた種が悪しき進化を遂げた時、それらを残らず刈り取る為の装置』
『テレサ』は語る――全ての生命は存続する事を目的とする。だが『ガトランティス』は違う――彼らは滅びを司る“箱舟”を目覚めさせてしまった――この宇宙全ての人間を滅ぼすまで、その進撃は止まらないと。
『ガトランティス』の強大な力の前に戦う術を問い掛ける古代に『テレサ』は答える――これまで『ヤマト』が結んできた縁(えにし)が滅びの箱舟を止めるだろうと。
『――『ヤマト』とは“大いなる和(おおいなるわ)”。和とは縁によって結ばれた、命と命が生み出すフィールド。縁とは、異なる者同士を繋げる力――重力にも似た確かさで事象と事象を結び、次元の壁さえも越えて作用します。縁の力とは、あらゆる物理法則を越えたモノ――どれほど巨大な暴力を以てしても覆す事は出来ないのです。縁は育つ……時に痛みを伴いながら――彼もまた』
『テレサ』との会談の場に現れたのは、かつての『ガミラス』の指導者アベルト・デスラーであった。亜空間ゲート内での『ヤマト』との戦いの果てに乗艦であるデウスーラII世の爆沈と共に爆死したかに思われていたが、生き延びた彼は『ガトランティス』の客将として再び『ヤマト』の前に姿を現した。
だが彼の本当の目的は、寿命を迎えて滅びの道を進む惑星『ガミラス』から人民を脱出する為に必要な移住先を見つける事であり、その為に独裁制での極端な拡大政策、遊星爆弾による地球のガミラフォーミング化など彼は移住先を見つける為に奔走しており、今回『テレザート』に現れたのも『テレサ』の身柄を交渉材料に、『ガトランティス』に全ガミラス人が移住できる星を提供させる為であった。
『『テレザート』を解放する事を目的とする諸君らは、またしても私の敵という訳だ』
どうもお久しぶりです、しがない小説書きのSOULです。
今回第六十四話、六十五話をお送りしました。
とはいえ、以前ほどのスピードでUPは難しいので、次回は12/8の0時に投稿いたします。
話が完成すればUPスピードを上げますが、今しばらくお付き合い下さませ。
――では、次回。
テレザートへと向かう『ヤマト』の前に立ち塞がったのは旧デスラー体制を指示する『ガミラス』の軍勢。テレザートの上空で激しい戦いを繰り広げる『ヤマト』と『ガミラス』前に突如として現れた白銀の巨大戦艦――かの船は圧倒的な力で『ヤマト」と『ガミラス」双方を攻撃する。
第六十六話 悩む者 足掻く者
ではでは~。