宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル 作:soul
惑星『テレザート』衛星軌道
『テレザート』の地表では、神殿の周辺において『ヤマト』とアベルト・デスラーを信奉する旧ガミラス体制派の艦隊が睨み合いしている――そんな彼らの遥か頭上に、次元潜航にて誰にも感知されない巨大な白銀の船が居た――『IMPERIAL』所属殲滅型戦艦『アルテミス』。かの船を形作る流体金属の奥底にあるブリッジには、シートに座る栗色の髪を持つ少女が、翠眼に冷たい光を宿したまま眼下で睨み合う艦船群を冷めた表情で見ていた。
『照合完了、相手は大マゼランに勢力を持つ『ガミラス』帝国の艦隊のようです』
『エテルナ』の報告に反応一つ示さない少女『クリス』。念の為に照合させたが、『ヤマト』にて保護されていた時にデーターベースにて散々目にした船体をしている――そしてそれに対峙している戦艦をクリスも『エテルナ』も良く知っていた。
宇宙戦艦『ヤマト』――地球人類が総力を結集して建造した戦艦であり、並行世界からの帰還時には船体の中に招き入れた事もある馴染み深い艦であり、流体金属の中に招き入れた際に詳細なデーターを習得していたおかげで容易に現在位置を把握する事が出来たのだ。
『対峙する艦船群の下にある都市らしき構造物の最深部に強力な『思念波』の存在を確認出来ます――どうします?』
『――邪魔なモノはまとめて消し飛ば――』
冷めた表情のまま全てを破壊するように指示しようとしたクリスの脳裏に、『ヤマト』の艦内で出会った真琴や徳川の姿が脳裏に浮かんで言葉を止め、ふぅと小さなため息を付いた後に改めて命令を下した。
「眼下に存在する“全ての船”を制圧――高位存在へは私が直接行く」
宇宙戦艦『ヤマト』第一艦橋
『ヤマト』の眼前には、『ガミラス』の艦隊が対峙して睨み合いが続いている――平和条約を結んだ筈の『ガミラス』が何故立ち塞がるのか、疑問に思いながらも第一艦橋に居る『ガミラス』地球駐留武官クラウス・キーマンは、対峙する艦艇のカラーが親衛隊で用いられる青い船体をしている事に疑念をもった。
「この艦隊、もしや……」
「キーマン中尉。『ガミラス』艦隊の識別信号を君の持つデーターと照合してくれ」
「照合する」
『ヤマト』二代目艦長土方竜の要請を受けてキーマン中尉は『ヤマト』のシステムを使用して目の前の艦隊の所属を明らかにしようとする、全ての艦船の軍籍は抹消されており、恐らくは民主化に向かう本国政府に逆らって3年も宇宙をさ迷った生粋のデスラー派の艦隊であると推察する――それ故に平和条約締結後に設定された『ガミラス』と地球の同盟用無線回線の存在を知らず、システムに侵入された事にすら気付かない『ガミラス』艦隊の敵味方識別システムを書き換えて、『ヤマト』に乗艦する際に使用した彼の愛機『ガミラス』主力戦闘機ツヴァルケにて敵の防空圏を突破して、テレザリアムに降りた古代達と連絡を取る作戦が決行される。
戦闘態勢を取った宇宙戦艦『ヤマト』は、数で勝る『ガミラス』の艦隊に攻撃を仕掛けて、混戦の隙に『ヤマト』下部の格納庫より発進したキーマン搭乗の戦闘機ツヴァルケが激戦を繰り広げる戦場を疾走して、海面擦れ擦れを飛んでテレザリアムを目指す。
宇宙戦艦『ヤマト』第一艦橋
「ツヴァルケ海面に到達」
「――後方より大型戦艦!」
ツヴァルケが海面に到達した事を報告する相原にかぶせるかのように、レーダー手の西条より『ヤマト』後方より青い大型戦艦が接近する事を告げる――『ガトランティス』よりアベルト・デスラーに譲渡された大型戦艦ノイ・デウスーラが迫る――『ヤマト』の倍はあろうかという巨体で『ヤマト』を抑え込もうとするかのように押しかかるノイ・デウスーラに対して急速上昇を掛けて離脱を図る『ヤマト』――その時、上昇する『ヤマト』の遥か先の天空が泡立ち、巨大な影が現れた。
「取り舵一杯! 緊急回避!」
突如として現れた障害物に『ヤマト』の舵を預かる島が操舵稈を左に切り、何とか激突は避けられた。『ヤマト』を回頭させて現れた影を防壁に利用しようとした島であったが、現れた影の詳細を理解するにつれ驚愕の表情を浮かべた――それは巨大な鏡のようであった。まるで凪いだ海が空中に存在しているかのようなそれは仄かに輝く白銀の船であった。
「……『アルテミス』」
「……これが『アルテミス』か」
誰かの呟きを拾った土方艦長が目の前に広がる白銀の巨大戦艦を見ながら唸るように呟く……『ヤマト』が体験した『イスカンダル』への航海記録は彼も目を通しており、その中に『IMPERIAL』という未知の文明に属する白銀の巨大戦艦の事も記載されていたのだ。
惑星再生システムである『コスモリバース・システム』を受領する為に大マゼランにある『イスカンダル』への大航海の中継点であるバラン星において、圧倒的な『ガミラス』の大艦隊を前に奇策を用いて突破した『ヤマト』は、古代アケーリアス文明が遺した亜空間ネットワークの入り口である亜空間ゲートに突入する。
だが亜空間回廊に突入した『ヤマト』をアクシデントが襲って、彼らは並行世界へと迷い込んだ――『イスカンダル』への航海を再開する為に足掻き続けた彼らは、当時保護していた異星人の少女の尽力によって元の世界へと帰還する事が出来た――その時に『ヤマト』を並行世界間移動させたのが、件の白銀の船『アルテミス』だと言うが……果たして、この白銀の船は『アルテミス』なのだろうか?
『IMPERIAL』という未知の勢力に属する船が一隻とは考えにくい。戦う事を目的とした戦闘艦なら同型艦がいても不思議ではない……問題は“何を”しに現れたかだ。
「……相変わらず殆どのセンサーは感知出来ないが、目測で全長160キロ――以前に確認出来た規模と同じだが、これが『アルテミス』だと断定するにはデーター不足だ」
技術支援席にて各種センサーが計測不能の状態で、手に入るデーターだけでは目の前の船が『アルテミス』であるとは断言できないと真田は語る……誰もが突如現れた白銀の巨大戦艦の目的が分からない中で、突如現れた白銀の巨大戦艦に驚いて攻撃の手を緩めていた『ガミラス』の艦艇が白銀の巨大戦艦諸共『ヤマト』を沈めようと攻撃を再開した。
「『ガミラス』艦、攻撃を再開」
「一カ所に止まるな! 攻撃を回避しつつ反撃せよ」
島の絶妙な操舵によって辛うじて攻撃の直撃は受けていないが、いくら『ヤマト』とはいえ多数に無勢――反撃のチャンスを掴めずにいたが、それまで『ガミラス』の攻撃を黙って受け続けていた白銀の巨大戦艦に動きがあった――鏡のように凪いだ表面が波打ち、流体金属によって形成された透明な槍状なモノが複数浮かび上がると勢いよく射出されて、攻撃を仕掛ける『ガミラス』のみならず『ヤマト』にも襲い掛かった。
「巨大戦艦より飛翔体が複数射出される――『ガミラス』だけでなく、本艦にも複数接近中!」
レーダー手の西条が愕然とした表情で報告する――無意識の内にあの船が翡翠の乗る『アルテミス』ではないかと考えていた彼女は、『ヤマト』にも攻撃を仕掛けて来た白銀の巨大戦艦に裏切られたような気持になったのだ。
「――急速回避!」
土方艦長に命じられるまでもなく、島が操舵稈を操作して迫り来る無数の流体金属で出来た槍を避けるが、それでもいくつかの槍が『ヤマト』の船体に突き刺さる。
「第3、第7、第14区画に着弾――けれど爆発による二次被害は皆無!」
「――不発か?」
『ヤマト』の船体に複数の槍が突き刺さるが、突き刺さった槍は爆発するでもなく只突き刺さっただけに見えた――だが、あの『アルテミス』もしくはその同型艦の放った槍がただの槍である筈もない。幸い乗組員に被害は出ていない。周囲に居る乗組員や応急修理を担当する乗組員が槍を撤去する為に集まるが、未知の素材で作られている槍を分解排除出来ずに突き刺さった『ヤマト』の船体ごと排除するしかないという結論に達した時、槍に変化が起こる――槍の表面が変化して無数の半透明な触手に変貌すると周囲の壁に突き刺さって侵食を始めたのだ。
「――撤去作業中の乗組員より報告、着弾した槍が変形して周囲を侵食し始める!」
急変した事態に技術支援席で対応する真田は、これまでの経験から侵食してくる未知のプログラムを仮想空間に誘導して、メインフレームを強固な防壁で守りを固める――並行世界に迷い込んだ時に、強大な敵によりメインフレームにハッキングを受け、また一応は味方である筈の『アルテミス』に『ヤマト』の制御を奪われた苦い経験を二度もした真田は、地球帰還後も研究を続けて新型のファイヤーウォールを開発したが槍からの侵食を止める事は出来ずに、再び『ヤマト』は制御を奪われて『テレザート』の海に着水する。
見ればデスラー派の『ガミラス』艦も船体に複数の槍が着弾しており、ミサイルを多数装備した『ガミラス』の大型戦艦もそのまま『テレザート』の海に着水していた。
争いを続けていた『ヤマト』と『ガミラス』は、突如として現れた白銀の巨大戦艦に制圧されて『テレザート』の海に漂うしか出来なかった。
神殿都市テレザリアム 地下空間
『テレサ』の顕現する空間に姿を現したアベルト・デスラーは青く塗装された複数のニードルスレイブを護衛に伴い、古代達の前に姿を現す――『テレザート』を手中に収め、『テレサ』の身柄を『ガトランティス』との交渉材料にしようとするデスラーの思惑を阻止する為に戦闘を開始する――だがニードルスレイブの防御力は強固で、有効打を打てずに膠着状態に陥った時、絶妙な操縦テクニックで都市内の通路を飛んできた白いツヴァルケの登場により均衡が崩れて青いニードルスレイブを一掃する事に成功する。
着陸した白いツヴァルケのコックピットから降り立ったのは、『ガミラス』地球駐留武官クラウス・キーマンであった。だが彼の表情は斜に構えた何時もの表情ではなく、真剣な表情を浮かべていた
「……デスラー総統に伺いたい。貴方は何を求めてここに来たのか」
真剣な表情で問い掛ける彼にデスラーは逆に問う――貴様は誰か、と。
「我が名は『ランハルト・デスラー』」
クラウス・キーマンの正体がアベルト・デスラーの血族である事実に驚きを隠せない『ヤマト』のクルーを尻目に、キーマン中尉――ランハルト・デスラーは重ねて問う「『ガミラス』星がじきに滅ぶと言うのは事実か」と。
純潔の『ガミラス』人は『ガミラス』星を離れては長くは生きられない。特殊な環境下でしか生存出来ない『ガミラス』の臣民たちが移住できる星を用意するか、人工的に造ること。それこそがアベルト・デスラーが『ガトランティス』に求めるモノであった。
「そんな途方もない計画を実現する為に、貴方は宇宙に覇権を広げた……冷酷な独裁者と罵られながら」
「……遊星爆弾による環境の改造」
ランハルトにより語られる、ガミラス戦役の真の目的に驚きの声を上げる真田。それは彼だけでなく他の『ヤマト』のクルーも同様だった。遥か宇宙の彼方からやって来た『ガミラス』という侵略者の手により滅亡の淵に立たされた地球……だが侵略者である『ガミラス』もまた滅亡の淵に立たされていた――あの戦争は侵略戦争ではなく、生存競争だったのだ。
「……本当なのか。『ガミラス』を救う、その為に貴方は――」
「……知ってどうする? 今更それがなんだというのだ」
戸惑う古代の問い掛けにアベルト・デスラーは嗤う――今の自分は『ガミラス』の指導者という立場を失った……無力な神に祈るか、『ガトランティス』に取引を持ち掛けるしか出来ない……どちらも分が悪いが、それでも諦める事は出来ない。
アベルト・デスラーの覚悟を知った古代達が驚きから立ち直れないその時、一度は姿を消した『テレサ』が再び姿を現す。しかし彼女の視線は古代達やデスラーにではなく、この空間へと続く通路へと向けられていた。
「――ふたたび縁を結ぶべき者がやって来るようです」
その言葉を合図に、通路の先から硬い靴音が響いてくる。誰が来るのかとその場にいる者全ての視線が注がれる中、靴音はどんどん近付いて来て小さな人影が見えて来た……それは栗色の髪を持つ小柄な少女の姿をしていた。『ヤマト』で保護されていた頃より少し成長した肢体を白を基調としたボディスーツで覆い、所々に青く輝く結晶体を装備したその姿は別れた時と変わらない姿であった――ただ一点、真紅に輝くその瞳は苛烈な光を放ち、見る者全てを焼き尽くすかの如き強烈な怒りに満ちていた。
「……翡翠」
物理的な力を伴うような圧倒的な存在感を巻き散らしながら、一歩一歩ゆっくりと歩いて来たクリスは、掠れたような声で呼ぶ真田を一瞥する事無く超常の存在である『テレサ』を睨み据える。
「――望み通り来てやったぞ。満足か?」
どうも、しがない小説書きのSOULです。
現在最終局面を書いてますが、中々時間が取れなくて……更新スピードUPはもう少し時間が掛かるようです。こんなマイナーな小説でもお待ち頂いていらっしゃる方々、今しばらくお待ちくださいませ。
では、次回。母なる星を救う為に足掻き、裏切られた者。迷いながらも裏切りを選択する者。それぞれがそれぞれの思惑で動く中、彼らは何を選択するのか。
第六十七話 迷う者 足掻く者
更新は12/15になります。ではでは~。