宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル 作:soul
第六十八話
ノイ・デウスーラ艦内格納庫
愛機である『ガミラス』主力戦闘機ツヴァルケを前に、ランハルト・デスラーの脳裏には様々な事が思い起こされる……準備は全て整った。『テレサ』の力に近付いた『ヤマト』は無力化し、デスラー体制の復活を願う首謀者の特定も完了した。あと少しで任務が完了すると言う時に、彼の中に迷いが浮かんだ……本当にこのままで良いのか?
悩む彼は何時の間にかツヴァルケのコックビットに乗り込んでいた。そんな自分に驚きながらも、ランハルトはエンジンを起動するとツヴァルケをノイ・デウスーラから飛び立たたせて神殿都市の最深部へと向かう……全てを見通すという女神に会う為に。
神殿都市の通路を抜けて最深部へと到達したランハルトは、ツヴァルケから降り立つと樹脂に覆われた球体の前に立つ……この期に及んでも彼の中には迷いがあった。彼は任務を遂行する為に乗り込んだ艦を裏切り、デスラー体制を復活させようとする勢力に潜り込んだ――なのに今、自分はこうして『テレサ』の前に立っている。
「……『テレサ』……俺は分からなくなった。準備は整った、やるべき事は決まっている――でも!」
迷いを抱えた彼は女神に問う――何が最善なのか、自分が進むべき道は? 様々なモノを抱えて道に迷う若者に、女神は答える。
『何が最善かはあなた次第で変わります。考えた事ではなく、感じた事に従ってください――あなたも『大いなる和』の一部』
「……『大いなる和』」
『大いなる和』の一部……『ガミラス』の軍人としての使命ではなく、もっと大きなモノへの使命が自分にはある。そう考えたランハルト――クラウス・キーマンは、『ヤマト』に乗り込んでから出会った様々な人達の姿を思い浮かべ、銀に近い白い髪と強い意志を宿した赤い瞳が彼を見つめる。
『テレサ』の言葉で己の心が何を求めているのか理解したキーマンは、それに従って進もうと決意したその時、最深部であるこの場所に誰かが近付いて来る気配を感じて視線を向ける――やって来たのは、キーマンの叔父にあたるアベルト・デスラー総統であった。
『テレサ』の顕現する球体を覆う樹脂を前に、アベルトは語る――『ガミラス』民族を存続させる為に孤独な道を進んで来た自分は、彼女への思いを支えに生きて来た――あまねく宇宙に救済を、その崇高なる願いを成就させる為に『ガミラス』の旗の下に宇宙を統一して一大帝国を築く――そうすれば星同士の争いは無くなり、民族同士の諍いを調停する事により、宇宙から戦火が無くなる。
そう考えたアベルトは、拡大政策を取って好戦的な種族を平定しながら『ガミラス』民族が生きていける惑星を探して――そして見つけたのが『地球』だったのだ。
だが、『ガミラス』民族を移住させる為に根本から環境を作り変える筈だったその星に、彼女は救いに手を差し伸べた。
……アベルト・デスラーが歩んできた道に、彼女が出した答えがそれだった。そして『ガミラス』軍の上層部は滅びを恐れるあまり彼の不興を買う事を恐れて秘密裏に独自の道――『イスカンダル』が持つ超技術『コスモリバース・システム』を力づくで譲渡させて『ガミラス』星を再生する為に動き――彼、アベルト・デスラーは真の意味で孤独であった。そんな折に『ヤマト』の本土への侵攻があった。
「……あの時、私は“何を”滅ぼそうとしたのか」
デスラーの名を持つと言う事は、そういう孤独に身を置く事になる……視線を上げて遠くを見つめる彼の背中は、そう語っていた。
ノイ・デウスーラ格納庫
デスラーの名の重さを説いて覚悟を試すアベルトから逃げるように愛機であるツヴァルケに乗り込んだキーマンは、神殿都市から上空に待機するノイ・デウスーラへの格納庫へと戻った……彼の手には『ヤマト』の心臓部である『波動エンジン』に巣くう『反波動格子』の制御システムがあった。
幼い頃に母を無くしてどん底の様な生活から這い上がって来た彼は、血筋目当てに甘い甘言をする輩を利用しながら現在の地位を実力で手に入れた――すべては理想とする未来を手にする為に。
彼は秘匿回線を使用して通信を送る――全ては“この時”の為に。
――これで、全ての縁が整ったようです。
地球圏 月面『ガミラス』大使館
月面に建設された大使館施設の中で、高級官僚などの来客をもてなす為に高級感溢れる作りになっている在地球『ガミラス』大使の執務室には、巨大な『ガミラス』星のホログラムがシンボルとして設置されており、その下には在地球『ガミラス』大使のローレン・バレルが執務を行っている。
腹心の部下ともいえるクラウス・キーマンからの報告を受けたバレル大使は大きく息をつくと天を仰いだが、すぐさま姿勢を正すと執務室に備え付けられた本国とのホットラインを使用して呼び掛ける……数刻もしない内に相手の応答があった。執務室の机の上に、内務省長官に就任しているレドフ・ヒスのホログラムが立ち上がった。
「ヒス長官。たった今、キーマン中尉から連絡が入りました」
『――何か分かったか』
「デスラー体制復活を目論む政権の黒幕は――元親衛隊長官ハイドム・ギムレー」
「――ギムレー、生きていたのか!?」
「……保安情報局の威信にかけて、必ず検挙します」
宇宙戦艦『ヤマト』機関室
沈黙した『波動エンジン』を前に機関長である徳川彦左衛門は沈黙の原因を突き止めるべく、『波動エンジン』の起動手順を何度も行って『波動エンジン』のどの部分に不具合があるのかを調べようとしたが、起動しようにも『波動エンジン』はまったく反応せず、徳川は途方に暮れる……今まで起動システムに不具合は起こらず、この『テレザート』での戦いの折に突然停止したのだ。
『波動エンジン』の隅から隅まで故障した個所は無いか確認したが、『波動エンジン』に機械的な不具合は無く……何か、根本的な所に原因が有るようだった。
だが、それで諦める訳には行かない……今『ヤマト』は、かつて『ガミラス』を率いていたデスラー麾下の艦隊に包囲されて危機的状況にある。そんな中で心臓部である『波動エンジン』が謎の停止により、『ヤマト』の機能は失われて何も出来ない状態になっている……このままでは『ヤマト』は簡単に制圧されてしまうだろう。
今一度、最初の手順から始めて何とか『波動エンジン』を再起動させなければ――『波動エンジン』の制御盤へと向かった徳川が起動スイッチを入れようとしたその時、突然何の前触れもなく『波動エンジン』のフライホイールが回転を再開し始めた。
「……んっ――おおっ!?」
ノイ・デウスーラ捕虜収容施設
キーマン中尉の裏切りによって虜囚の身となった古代は、牢の中で出来るだけ体力を温存して脱出のチャンスを伺っていた。近くの牢には真田や空間騎兵の斎藤や永倉も捕まっており、頼みの『ヤマト』からの増援の気配はない……このデスラー総統が乗る航宙戦艦を守る複数の『ガミラス』艦の存在も予想され、『ヤマト』単艦での戦闘は不利であり一時撤退したのかもしれない……『ヤマト』がそう簡単に撃沈されたとは思えないし、希望がある以上諦める訳には行かなかった。
何時でも事態が変化しても良い様に感覚を研ぎ澄ましていた古代は牢の外で銃声がした事に気付き、続いて警備に付いていたガミロイド兵が倒れる音を聞いて状況を確認するべく牢の外の様子を窺う。
古代が見たものは銃を構えてガミロイド兵を倒したクラウス・キーマン中尉の姿であり、彼の手にしたコントローラーで牢のカギが開けられると、素早く牢から出た斎藤が怒りのままキーマン中尉に掴みかかった。
「――おい、どう言うつもりだ!?」
「――よせ、斎藤」
片手を挟んで制止した古代であったが、それでも聞いておかねばならない事があった――クラウス・キーマン中尉の真意を。彼が何かを目的に『ヤマト』に同行していたのは気付いていた。在地球『ガミラス』大使の特命を受けて乗り込んで来た彼の目的は、高位の存在である『テレサ』が存在するかどうかの確認と、彼女の力そのものだろうと言う事は予想が付いた。
「……俺は、俺達は、何を信じればいい?」
ランハルト・デスラーではなく、クラウス・キーマンとして信じて良いのか? そう問い掛ける古代にキーマン中尉は淡々と答える――何も信じるな、と。
「――潜入中の工作員の言葉に真実は無い」
「――潜入」
「『ガミラス』保安情報局内事部保安捜査官――それが、俺だ。」
俺を殺すなら後にしろ。そう言ってキーマン中尉は古代達と共にノイ・デウスーラ艦内からの脱出を図り、『波動エンジン』が復活した『ヤマト』もまたデスラー麾下の艦隊の包囲を破って脱出に成功した。不思議な事にデスラー麾下の艦隊は追撃してくる事もなく、古代達と合流した『ヤマト』は『テレザート』を離れて宇宙空間へと飛び立つ。
宇宙を航行する『ヤマト』を見送った『テレサ』は、彼らに願いを託して『門』である『テレザート』を閉じる。
「祈りは託された――我々は『ガトランティス』を阻止しなければならない、この宇宙に生きる全ての命の為に――進路反転! 両舷全速、『ヤマト』地球に向けて発進!」
宇宙戦艦『ヤマト』は地球に進路を向ける――強大な敵『ガトランティス』の滅びの野望を阻止する為に。
漆黒の宇宙空間を無人の野の如く進撃する巨大な白色彗星は、その身に宿す高速中性子と高圧なガスの嵐で形成されており、直径14万キロという巨大ガス惑星にすら匹敵する大質量が引き起こす超重力によって周囲の小惑星などを引き付けて粉々に粉砕しながら突き進む――目指すは、銀河系の辺境に位置するG型恒星系の第三惑星『地球』――小賢しくも『テレサ』のコスモウェーブを受け取り、『ガトランティス』を阻止すべく動く『ヤマト』の属する惑星。
小癪な真似をする地球人類を根絶やしにするべく進撃する白色彗星の前に、自身の超重力とは別の重力変動が現れる。
帝星『ガトランティス』大帝玉座の間
「前方の空間に重力変動を感知――何かがワープアウトします」
そこは『ガトランティス』の高官達が立ち、その高官達を見下ろす形で一際高い位置に備えられた玉座に座る大帝ズォーダーへと軍事総議長兼参謀総長であるラーゼラ―が報告すると、玉座にて瞳を閉じていたズォーダーは目を開けて前方に存在するモニターに視線を向ける――漆黒の宇宙が泡立ってワームホールを形成すると、中から巨大な物体が姿を現す。
仄かな白い光を放つ流体金属で形成された白銀の航宙艦――帝星『ガトランティス』に比べれば比較にならないほど小さな艦だが、蘇生体からの情報によれば、アレは太古のおとぎ話から現れた亡霊の船――邪悪なりし『古の帝国』の残照。
「……銀の悪魔」
「……宇宙に血と恐怖を巻き散らした『IMPERIAL』」
この宇宙に根強く残るおとぎ話――星々に現れては、死と破壊を振り撒く銀の悪魔――遥か昔におとぎ話の世界へと消えた『IMPERIAL』の船が目の前に現れた――ズォーダーは不敵にほほ笑む。この宇宙の全てに死という“愛”を平等に与えようと言う『ガトランティス』の前に太古の悪魔が現れた――これは我らの“愛”が試されているのだ。
「――叩き潰せ」
大帝ズォーダーの命を受けた帝星『ガトランティス』は速度を上げて、纏う高速中性子と圧縮されたガスの嵐で目の前の白銀の船を粉砕しようとする――対する白銀の船はその船体を構成する流体金属を変形させて艦首に相当する部分が変形を始める。
「――面白い! 受けて立とうぞ!」
リバィバル級殲滅型戦艦『アルテミス』ブリッジ
蒼い無機質な鉱物で形成されながらも仄かな温かみのある光を持つという、相反する物質で構成された『アルテミス』のブリッジに備え付けられたシートに座る翡翠ことクリス・エムは、目の前のウィンドウに映し出される白色彗星の白く渦巻く暴風の様な高速中性子と圧縮されたガスの嵐を厳しい目で見据えていた。
『――艦首発射形態への移行完了』
『アルテミス』の制御を司る統合思念体『エテルナ』の報告を聞いたクリスは、ウィンドウに映る巨大な白色彗星の姿を見据えながら命令を下す。
「ガンマ・レイ――発射」
クリスの号令の下、『アルテミス』の艦首発射口より強烈な輝きが放出されて白色彗星の表面に接触する――これまであらゆるモノを渦巻く中性子と高圧なガスそして超重力で粉砕してき白色彗星だったが、『アルテミス』が撃ち出した物は極光の輝きを放ちながら、その熱量はG型恒星が一生涯かけて放つエネルギーに匹敵し、それが断続的に放射されて白色彗星に叩き付けられる――それは大質量ブラックホールで起きるジェット噴流に匹敵する物で、あらゆる物質を引き裂き砕いて来た白色彗星を覆う高速中性子と高圧なガスの気流を吹き飛ばしていった。
どの位の時が経っただろうか? 時間としては数秒の事であろうが、『アルテミス』の放った「ガンマ・レイ」はその名の通りに電磁波の中で最もエネルギーが大きい領域に相当する強力なガンマ線が断続的に放出されて対象物を焼き尽くす死の光線により、白色彗星を覆っていたガスが吹き飛ばされて、ガスによって隠されていた物が見えて来る――それは天体規模の建造物であった。それは複数の惑星規模の鉤爪によって星を取り囲む巨大な牢獄を持ち、複数の鉤爪の上層には赤い複眼の様な物を持つ惑星の直径にも匹敵する超巨大構造物が此方を見下ろすように輝いていた……だが、そんな異様を前にしてもクリスは鼻で笑う。
「……意外に頑丈だな、『ガトランティス』」
彼女の眼には目の前の惑星規模の巨大構造物など入っておらず、『アルテミス』の各種センサーも巨大構造物ではなく、その周辺の探査に力を注いでいた……“目標”を見つけるために。だが、そんな彼女達の探査を邪魔する存在があった――帝星『ガトランティス』の前面に展開していたグリーンに統一された『ガトランティス』の戦闘艦群が動き出して、『アルテミス』を半包囲するや回転速射砲塔で攻撃を仕掛けたり、備え付けられたミサイルを発射して攻撃をしてくる。
『位相変換シールド正常に稼働中』
『アルテミス』周辺に張り巡らされたシールドが、あらゆる攻撃をこの世界に重なった位相の違う異なる世界へと逸らして無効化する。だが攻撃が効果を発揮しないこの状況でも攻撃の手を緩める所か攻撃の苛烈さは増し、複数の大型戦艦が共同で雷撃ビットを用いた攻撃『インフェルノ・カノーネ』を以て『アルテミス』を撃沈せんと攻撃を仕掛けるが、『インフェルノ・カノーネ』の強力なビームも位相変換シールドの前に空しく消えて行く。
「……鬱陶しいな」
『侵食魚雷装填――発射』
攻撃を仕掛けて来る『ガトランティス』の戦闘艦を煩わし気に見ているクリスの呟きに応えるように、『アルテミス』を構成する流体金属内で対象のシールドのエネルギーや装甲の構成物資をエネルギーに変換して破壊する侵食魚雷が形成されて射出され――半包囲を続ける『ガトランティス』の戦闘艦に襲い掛かかって破壊する。
襲い掛かって来る『ガトランティス』の戦闘艦を蹴散らしながらもセンサーで“目標”を探している『アルテミス』の統合思念体『エテルナ』はようやく“目標”を発見してクリスに報告する。
『――見つけました。“目標”は惑星規模艦の後方――燻っている高圧ガスの雲の中に潜んでいます』
「――跳躍ミサイル用意」
『――跳躍ミサイル座標入力――発射』
『アルテミス』の流体金属内で形成されたミサイルが立て続けて射出され、内包された短距離跳躍システムにより通常の亜空間へと突入して距離を相殺すると通常空間に復帰して燻っている高圧ガスへと襲い掛かる――物質・反物質反応により質量の全てをエネルギーへと変換して無数の爆発を引き起こした。
「……さて、“挨拶”は気に入ってくれたかな」
『……大喜びみたいですよ』
厳しい目で見つめるクリスの視線の先のウィンドウ内では、激しい爆発により高圧ガスの雲が搔き乱されて雲に隠れていたモノが姿を現した――その姿は細長いながらも全長は『アルテミス』を問題にしない程の大きさを持ち、四方に放熱板のような熱を帯びた翅の様な器官を備えた『破滅の獣』――しかも『獣』は一体だけでなく、ダウンサイズしたような小型といえど一キロはあろう物体が百は下らない数が従っていた。
「……ついに姿を現したな、『バイオ・シップ』」
『――しかも多数の眷属を持って……よっぽど環境が良かったんでしょうね』
けっと毒づいたクリスはウィンドウに映る『破滅の獣』――彼女の言葉を借りるなら、『バイオ・シップ』を睨み据える……鬱陶しいコスモウェーブの文句の一つでも言ってやろうと惑星『テレザート』に乗り込んだクリスは、対峙した高位存在『テレサ』より思いもよらぬ言葉を告げられる――この世の理に反した『破滅を謡う獣』の存在を。
――まさか、“奴ら”の『バイオ・シップ』がこの宇宙に侵入し、こんな辺境の局部銀河群の片隅で力を蓄えていたなど完全な盲点であった――ならば“奴”を倒すのは、これまで戦ってきた自分の役目――ああ、確かに。『テレサ』の言った事は正しい。“アレ”は確かに『破滅を謡う獣』だ。
戦意を高めるクリスが攻撃の命令を下す前に、『破滅を謡う獣』――一際巨大な『バイオ・シップ』の艦首に相当する部分に亀裂が入り、どんどん大きくなると上下に割れて開いて行く――それは『バイオ・シップ』の“口”であった――『バイオ・シップ』は大きく開けた口を『アルテミス』に向けると真空の宇宙を波打たせる“何か”を放出すると、直撃を受けた『アルテミス』を形作る流体金属を波打たせて、その衝撃は最深部にあるクリスの居るブリッジを揺らした。
「――くっ!?」
『……正面の大型『バイオ・シップ』の思念波の出力は通常の『バイオ・シップ』より170%以上に増幅されています、サイコ・シールドでは防ぎきれません』
「……小癪な真似を、全兵装攻撃用意! 叩き潰せ!」
流体金属内で侵食魚雷を生成した『アルテミス』は指向性ビーム砲を表層で展開して、魚雷を発射すると同時に無数の砲撃を敵『バイオ・シップ』へと撃ち込むが、周囲に展開する小型と言っても一キロを超える眷属たちに殆どを阻まれて、眷属の妨害を抜けた攻撃も巨大『バイオ・シップ』が周囲に展開する半透明なシールドに邪魔されて効果を発揮しなかった。
『敵『バイオ・シップ』のサイキック・シールドの強度も通常より50%増で攻撃の全てを阻まれました……どうしますか、外宇宙用の兵装を起動しますか?』
「――ストレンジ弾頭なんて使える訳ないだろう――空間破砕弾用意、ついでに『エンタープライズ』の『量子魚雷』をエミュレート、空間破砕弾と共に敵『バイオ・シップ』へ撃ち込め!」
『――了解。空間破砕弾頭を表層に展開、『量子魚雷』のエミュレート――おまけに『ナデシコ』の重力波圧縮システムも形成――攻撃を開始します』
並行世界にて接触した『エンタープライズ』と『ナデシコ』の攻撃システムを流体金属内で再現して生成した『アルテミス』は、かつてその並行世界への転移後に襲い掛かって来た『ボーグ・キューブ』を撃退した空間そのものを振動させて対象を崩壊させる光弾を表層面に展開して攻撃態勢を整える
『バイオ・シップ』――それはクリスの属する『IMPERIAL』と敵対する勢力が有する主力戦闘艦である。原料である流体金属を精製する事で規模を増すクリス達の白銀の戦闘艦と違い、エネルギーさえあれば無限に増殖する“生きた戦闘艦”である。『バイオ・シップ』の中枢には巨大な“脳”が存在しており、その巨大な脳により発せられる強力な思念波は物理空間にすら影響を及ぼし、空間を捻じ曲げて対象を粉砕する“超”能力と呼ばれる驚異的な戦闘力を有する、非常に厄介な相手なのである。
「――攻撃開始! 消し炭にしてやれ!」
どれほどの時間が経っただろうか――巨大惑星規模の質量を持つ帝星『ガトランティス』は、再び中性子とガスを纏うと進撃を再開する……無数の眷属が突き刺さり、輝きを失って黒く変色した『アルテミス』を尻目に。
『アルテミス』の差深部の構造物にも眷属の鋭利な船体が突き刺さり――ブリッジを貫いた眷属から伸びた肉の色を持つ触手が幾重にも伸ばされ、その触手は『アルテミス』ただ一人の人間であるクリスの身体を幾重にも貫いていた。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
頭の中にある閑話ももう少しで追い出せそうな感じなので、もう少しおまちくださいね。
世の中はもうすぐクリスマスですね(私には関係ないですが……)私からのクリスマス・プレゼントとして22話・23話・24話・25話を連続投稿しようと思います。
では、次回。太陽系外縁部に出没するガトランティスの影、それは彼らの太陽系侵攻が近い事を感じさせる。迎撃の準備を進める地球。そして地球へ急ぐ『ヤマト』の艦内で悪魔は嗤った。
第六十九話 忍び寄る悪意
では、23日0時にではでは~。