宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

74 / 107
閑話 after 8 years by parallel worlds

 

 宇宙――それは最後のフロンティア。

 そこには人類の想像を絶する未知の文明や、未だ見ぬ生命が待ち受けているに違いない――これは惑星連邦深宇宙探査艦USS『タイタン』が、優秀なクルーと共に人類未踏の地へ勇敢に航海した物語である。

 

 一人の天才科学者が作り上げた超光速航法ワープ技術の光は人類に可能性の光を灯し、異星人『バルカン』の探査艦の興味を引いて平和的な初接触(ファースト・コンタクト)を成功させ、第三次世界大戦を経験した人類は新たな友人と共に宇宙に進出して勢力をひろげて、西暦2161年に友好的な複数の種族と共に星間国家『惑星連邦』を設立し――以降200年以上の年月を深宇宙探査に費やして、銀河系アルファ宇宙域に一大星間国家を築き上げたのだ。

 


 

 

 連邦領域外縁部

 

 広大な領域を持つ天の川銀河系の中を一隻の航宙艦が航行している――NCC-80102 USSタイタン アルファ宇宙域からベータ宇宙域の中で8000光年という広大な領域を影響下に持つ惑星連邦という巨大星間国家に所属する艦隊登録番号を持つルナ級の深宇宙探査艦である。

 

 全長は454メートルと大型航宙艦と比べれば少し規模が小さいが、24世紀に就航した新鋭の航宙艦であり、艦を制御する艦橋やクルーの生活区画を持つ巨大な円盤部とその上部に設置されたセンサーポットにより高い探査能力を持ち、円盤部に直接繋がる第二船体には航行に不可欠なナビゲーション・ディフレクターと動力炉が設置されて、そこから伸びるパイロンには超光速航法に必要なワープナセルが装備されている。

 

 星と星との間の広大な星間領域を巡航速度のワープ6にて航行しているUSSタイタンは、銀河の中心である星の集まった領域バジルを横目に見ながら一路連邦外縁部へ向けて進んでいた――目指すは外縁部――アルファ宇宙域と反対側に広がるデルタ宇宙域の境目に位置するジュレ星系である。

 

 


 

 宇宙歴63136.9(2386年2月)

 USSタイタン ブリッジ

 

 機能的なデザインで統一されたタイタンのブリッジは壁に各パラメーターが表示されるモニターが複数装備されて専門の士官が任務に従事しており、正面にあるメインビューワーの前には艦の操舵を担当するコン・コンソールと、艦内システムの制御とセンサーシステムの操作を担当するオプス・コンソールが置かれ、ビューワーとコンソールの中間の所には新規格のホログラム通信システムが設置されている。

 

 そしてブリッジの中央にはUSSタイタンを指揮する艦長席が置かれており、そこには白い口髭を蓄えた男性が座って投影型ウィンドウに表示された報告書に目を通している。口髭だけでなく髪の毛にも白い物が混じっており、歴戦の艦隊士官である事を伺わせて顔に刻まれた複数のシワが様々な経験をしてきた証であった――彼の名はウィリアム・T・ライカー大佐 このUSSタイタンを指揮する艦長である。

 

「サー。まもなくデープ・スペース・13が見えてきます」

「――分かった。ホログラム通信システム起動、デープ・スペース・13を呼び出せ」

 

 ライカー艦長の指示を受けたオプス・コンソールの担当士官が通信システムを起動して呼び掛け、暫くして応答があった事を報告する――メインビューワーの前に設置されているホログラム投影システムに仄かな光が灯って人の姿を形作る――それは白を基調とした『ナデシコ』の制服であり、青く艶めく長い髪を持った女性の姿であった。タイタンのブリッジで投影された女性のホログラムは艦長であるライカーの姿を見つめると、にっこりと微笑む。

 

『久しぶりですね、ライカー艦長。デープ・スペース・13へようこそ』

「御無沙汰しております、テンカワ司令。本艦はまもなくデープ・スペース・13に到着します。滞在の許可を」

『もちろん、心から歓迎いたしますわ』

 

 ホログラム通信の相手は、デープ・スペース・13を根拠地として様々な活動を行っている『ナデシコ』部隊の司令官であるテンカワ・ユリカ司令であった――彼女達との出会いは、連邦領域の近くの星雲内で『トランスワープ・ハブ』を建造していた『ボーグ集合体』との戦いの中で、『ボーグ』に敵対する勢力として現れたのが『ナデシコ』部隊であった。しかも驚いた事に、彼ら『ナデシコ』はこの世界とは異なる並行世界からの転移者であり、『ボーグ』に同化された仲間を取り戻す為に戦いを挑んでいたのだ。

 

 対『ボーグ』の同盟を締結して共に戦い――そして見事に仲間を取り戻した『ナデシコ』は、この世界で生きて行く為に根拠地としていたデープ・スペース・13を整備して、デルタ宇宙域への監視と周辺宙域との中継点としての存在感を高めて小さいながらも無視できない勢力となっていた。

 

 


 

 USSタイタン ブリッジ

 

 連邦辺境宙域を順調に航海していたルナ級連邦艦USSタイタンの前方に巨大な構造物が見えて来る。400メートル級のタイタンを問題にしない程の規模を持つ巨大構造物は、上部に傘上に大きく張り出した構造物の中に大規模な航宙艦係留施設を持ち、それに動力炉や各種施設を内包した円形の構造物が接合しているという惑星連邦の宇宙基地の規格に沿った作りになっている。

 

 宇宙基地デープ・スペース・13からのガイド・ビーコンに沿って入港するべく接近するUSSタイタンを迎え入れ為に上部構造物に備え付けられている巨大な扉が左右にゆっくりと開いていく。

 

「デープ・スペース・13のグラウンド・ゲートの解放を確認」

「インパルスエンジン出力四分の一にて入港体制入ります」

 

 ライカー大佐がUSSタイタンの艦長に就任して8年になり、ブリッジにて従事する上級士官達とも気心のしれた間柄になっているとはいえ、ステーションへの入港は細心の注意を払う必要がある。センサーにより障害物がないか、軌道が逸れていないかなどを常時確認しながら航宙艦を操舵する操舵手は推進機関の出力を調整しながらゆっくりとデープ・スペース・13へと近付いていく。

 

『進路正常、そのまま係留施設へどうぞ……WELCOME HOME(おかえりなさい) TITAN』

 

 デープ・スペース・13の管制室で入港するUSSタイタンのサポートをしている馴染の顔――水色の髪をポニーテールにまとめて、生真面目な性格故かきつい印象を受ける表情を柔らかく微笑みながら金色の瞳を悪戯っぽく輝かせたアゥインが茶目っ気たっぷりに歓迎してくれる。

 

「――ありがとう、アゥイン。しばらく見ない間にキレイになったな」

『ありがとうございます、お世辞でも嬉しいです』

「――いやいや、本当さ」

「……ウィル?」

 

 馴染の顔を見て気が緩んだのだろう、美しく成長した娘ほどに年の離れた少女を褒めていると、隣からドスのきいた声が聞こえて反射的に姿勢を正すライカー艦長。横目で様子を窺えば、隣に設置されたシートに座っていたタイタンのカウンセラー ディアナが半目で見ていた。

 

「……知らなかったわ、貴方が“ロリコン”だったなんて」

「――待ってくれ、ディアナ! 酷い誤解だ!」

 

 悲しそうな表情を作りながら“夫の特殊性癖”を嘆く結婚8年目の奥様に慌てて、こんなのは社交辞令だろう、と弁明するライカー艦長……見ればタイタンのブリッジ要員は「またか」と呆れ、管制室から様子を見ていたアゥインも笑いをかみ殺していて、ちょっとしたジョークのつもりだったライカーは天を仰いでため息を付く。

 

「――アゥイン、こんな口が上手い男性を簡単に信用したら駄目よ」

「はい、ディアナさん」

 

 

 そんな“バカ”をやっていても優秀なクルーに運用されるUSSタイタンはデープ・スペース・13の巨大なグラウンド・ゲートを潜って内部に進入すると、中央部分にある円筒形の係留施設に接近して停止する――係留設備より外部電源ケーブルと生命維持に必要な空気と水の供給管そしてエアロックに繋げる連絡通路を一体化させたアンビリカル・アームが伸びてきてタイタンに接続される。

 

「アンビリカル・コネクト――外部動力より通電開始、主機関アイドリング状態へ移行します」

 

 オプス・コンソール担当の士官からの報告を受けたライカー艦長は頷くと、船体のチェックや物資の搬入作業の確認などの業務は副長に任せてカウンセラーであるディアナを伴ってデープ・スペース・13へと足を踏み入れる。

 

 並んで歩きながらライカー艦長は、デープ・スペース・13の内部通路を見てよく整備されているなと感心する。彼らは突然のアクシデントでこの世界へと迷い込んできた。しかも此方に来た2隻の航宙艦に乗っていた300名前後のクルーしかおらず、これだけの規模のステーションを運営するには人員不足も良い所である……だが、彼らには彼らの強みがあった。

 

 ちょうど通路の先から丸っこい胴体をイエローに塗装された自立型ドローンが通路の清掃をしながら此方に近付いており、自分達を認識すると通路の脇に避けて通行の妨げにならないようにする程度には自己判断が出来るようだ。

 

 伝え聞いた話では彼らの世界ではAI技術が進んでおり、AI開発に様々な制約がつく惑星連邦よりも先を行っているようだ……その証拠が、彼の乗る船を統括する『オモイカネ』と呼ばれるコンピューター・システムだろう。

 

 入港施設から出たライカー大佐とディアナの二人は、中心施設へと続く通路の前で妙齢の女性が立っている事に気付く、どうやら出迎えのようだ。年相応に成長した身体を白いナデシコの制服に包み、トレードマークであったツインテールを一つに束ねたホシノ・ルリ艦長は、久しぶりに会った友人との再会に柔らかい笑みを浮かべる。

 

「ようこそ、ライカー艦長そしてディアナさん。ユリカさんの所へ案内しますので、こちらへどうぞ」

 

 


 

 デープ・スペース・13基地内通路

 

 デープ・スペース・13内に設置されているプロムナード商業施設は、『ナデシコ』のクルーの発案で始まった。レンガを埋め込んだ遊歩道やレトロな街並みを再現し、暗黒の宇宙を旅する旅人や貿易商たちの心を癒す効果もあって中々の盛況ぶりを見せている。

 

 そんなプロムナードを眼下に眺めながら、ライカー大佐とディアナは案内役のルリと共にデープ・スペース・13の司令テンカワ・ユリカの待つ基地中枢部へと向かっていた。女性同士の気安さゆえかディアナとルリの会話は弾んでいるようで、男性であるライカーはそんな二人を見つめながら後に続いて歩いていた。

 

 先ほどのプロムナードを見るに宇宙基地の運営は上手く行っているようだ。『ナデシコ』のクルーだけではこの巨大なデープ・スペース・13の全てを稼働させるには人手が足りないが、それを先ほど見たバッタと呼ばれるコミカルな自立型機械を使って上手くカバーしているのだろう……そんな事を考えていると目的地へと到達したようだ、振り返ってライカーを待つ二人に軽く頷くと目的地である基地司令部へと足を踏み入れる――セキュリティ・チェックなどはこの通路を歩いている間に完了しているらしく、司令部内に入室しても誰も此方に振り返る事もなくそれぞれの仕事に従事している。見ればアオイ・ジュンやゴート・ホーリーなどの顔見知りもいて片手を上げて挨拶する。

 

 そうしている内にライカーとディアナはテンカワ・ユリカの待つ執務室の前に着き、中に声を掛けたルリと共に入室する。それなりの広さを持った執務室であり、棚に生花が飾られ目に見える範囲に置かれた小物などが女性らしい気遣いを感じさせる。

 そんな執務室にて仕事用デスクにて執務中だったテンカワ・ユリカは、今時珍しい紙で出来た資料の山に“埋もれて”いた。

 

「……何故、こんな大量の紙を?」

「……こうやって目に見えように仕事の量を示さないと、ユリカさんが脱走するからです」

「――ルリちゃ~ん、助けてぇ~~」

 

 あれから8年が経って30は超えている筈なのだが、金色の瞳を細めて説教をしているルリに愛想笑いをしているテンカワ・ユリカ司令はどう見てもあの頃と変わらぬ姿に見えるのは気のせいだろうか。

 

 

 ようやくというか、わざわざ紙に印刷されて置かれていた資料の山から引きずり出されたテンカワ・ユリカ司令に進められて座ったソファーの反対側には『ナデシコ』側としてユリカ司令と実働部隊の責任者であるホシノ・ルリが同席している。

 

「――こほんっ。改めまして、ようこそいらっしゃいました。」

 

 咳払いを一つして、何事もなかったかのように挨拶をするユリカ司令……隣に座るルリの冷たい視線を物ともせずに話を進めようとは、中々の胆力と言えば良いのか……最初に彼女達に出会った時から彼女は中々ユニークな人柄をしていたが、結婚して二児の母となった今でも変わらないのかもしれない。

 

 『ボーグ』が建設していた超光速大規模輸送用施設『トランスワープ・ハブ』を破壊して、惑星連邦を、ひいてはアルファ宇宙域そのものを『ボーグ』の魔の手から救った惑星連邦と『ナデシコ』の同盟軍は、助力してくれた別の世界からの来訪者である宇宙戦艦『ヤマト』が自らの世界へと帰還していく姿を見届けた後、傷ついた『ナデシコ』を彼らの拠点であるこの宇宙基地へと送り届けた……『トランスワープ・ハブ』を守る4隻もの『ボーグ・キューブ』を相手取っての戦闘は、三千メートル級の巨大航宙艦である『ナデシコD』といえども満身創痍ともいえる損傷具合で、ドックでの長期修理を受ける必要があった。

 

 連邦の宇宙艦隊司令部にて『ボーグ』との戦いの詳細な報告を求められた連邦航宙艦『エンタープライズE』がデープ・スペース・13を再び訪れることが出来たのは、1年以上経ってからであった……司令部に半ば拘束されるような勢いで説明の日々を終えた『エンタープライズE』であったが、司令部に滞在している間に連邦と緊張状態にあった『ロミュラン帝国』で政変が起きて、新たに発足した新体制より和平のための予備交渉を求められて、『エンタープライズE』は『ロミュラン帝国』の首都『ロミュラス』へと向かったが、それは『ロミュラン帝国』を支配する新たなリーダーが仕掛けた罠であり、『エンタープライズE』は罠を突破することが出来たが、大きな犠牲をも払った。

 

 その後、昇進により『エンタープライズE』の副長から『USSタイタン』の艦長へと就任したライカーは新たに和平交渉を行う為にロミュラン中立地帯へと向かい、その後に聞いた話では修復された『エンタープライズE』が改めてデープ・スペース・13を訪問して、同盟の再確認と宇宙基地デープ・スペース・13の貸与を確認したという。

 これは周囲に様々な脅威を抱える惑星連邦が、再建途中の宇宙艦隊では暗躍する『ボーグ』の脅威に対処出来ないと判断して、連邦外縁部に位置するデープ・スペース・13を間借りしている『ナデシコ』部隊を援助する事で、デルタ宇宙域から来るであろう脅威(『ボーグ』)に対する“鈴”としての機能を期待しての事だという。

 

 今回、『USSタイタン』が派遣されたのも、惑星連邦と『ナデシコ部隊』の同盟の再確認と、今後『ナデシコ』部隊がどう動くのか動向を探る事が目的であった……あまり気が乗らないが、これも任務ならば仕方がない。まずは軽い挨拶から始めて聞き出すか、とライカーが話を切り出そうとした時、執務室のドアが開くと険しい表情を浮かべた女性クルーが入って来た。

 

「大変です司令! デープ・スペース・13から50万キロの地点に未知の巨大物体を感知しました!」

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 舞台は並行世界、別の世界からの来訪者と共に『ボーグ集合体』の恐るべき陰謀を退けてから8年後。『ヤマト事変』の後もそれぞれの道を歩んでいた彼らは久方ぶりの再会を果たす――それは新たな異変の始まりであった。

 USS タイタンは諸説あり、どれが本編なのか判断が付かなかったので、至らない点があるかもしれませんが広い心でお許しくださいね。

 これは本編を書いている間にも頭の中で膨らんだ話を閑話として構成した話になります。
 次回 閑話2 Unknown ship は23年1月1日0時に更新予定です。
 
 ではでは~。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。