宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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閑話3 intruders

 

 デープ・スペース・13の居住施設内に造られた旅人や貿易商などを相手にするプロムナードで『ナデシコ』名物くっそ不味い焼きそばの露店を出していたジャスパーは、突然鳴り響く非常警報(RED ALER)を聞いて顔色を変えると、胸に付けた五つの花びらをあしらった『ナデシコ』部隊のコムバッチを起動して司令部に連絡を取り、現在デープ・スペース・13に未知の巨大物体が接近している事を知った。

 

 ……また無法者(アウトロー)を装ったどこかの星の特殊部隊か。

 

 『ボーグ』との戦いが終わった後、デープ・スペース・13に戻った『ナデシコ』部隊は微妙な立場に立たされていた。強大な『ボーグ集合体』と戦う為とはいえ、『ボソン・ジャンプ』を多用した影響で自然界ではありえない程のボース粒子の増大を感知した周辺種族は、現象の調査の為に探査艦を派遣して調査した結果、『ボソン・ジャンプ技術』を持つ『ナデシコ』という集団に行き着く。

 様々な惑星国家に狙われる事となった『ナデシコ』は、『エンタープライズE』のピカード艦長の仲介で彼の属する惑星連邦と交渉する席を設けて、彼等の援助を受ける事が出来た……とはいえ、それで手を退いてくれるような可愛げのあるような相手ではなく、時折 所属を隠した部隊の攻撃を受ける事がある。

 

 プロムナードを出たジャスパーは戦闘になる事を想定して、司令部近くのドローン制御室へと入るとドローン――バッタを戦闘起動させる。今でこそ人員不足の為の労働力としていたが、元は木蓮で使用されていた起動兵器。小型のバッタでは戦力にならないが、本来のサイズのバッタにこの世界に来てから得た技術による改修を加えた“バッタ改”ならば弾除けくらいにはなる筈だ。

 

 戦闘態勢へと移行を完了して防衛体制を構築していると、宇宙基地周辺に変化が起こる――見覚えのある白銀の巨大戦艦が形を変えて広がり、デープ・スペース・13全体を覆い隠す。100キロを超える巨大なデープ・スペース・13を隙間なく覆って白銀の球体を形成する未知の勢力にどう対処すべきか、先ほどからフェイザーアレイや魚雷ランチャーが攻撃を加えているが効果は乏しく、それにバッタ改が攻撃に加わっても効果はないように思える。

 

 そんな時に、ジャスパーの胸に付けたナデシコを象ったコムバッチが鳴り、ルリからジャスパーに司令部に来るように言われて小首を傾げる。何だろうか? そう思いながらもジャスパーは制御室でコンソールを操作しているアゥインや他のオペレーターに一言告げてから司令部へと向かった。

 

「……呼んだ、ルリ艦長?」

 

 この緊迫した状態で呼ぶのだから何か思惑があるのだろうと考えたジャスパーは司令部に入室すると、メインビューワーの前で固まっている一団 ユリカ司令と共にいるルリへと声を掛ける。するとユリカとルリだけでなく先ほど入港した『USSタイタン』のライカー艦長と奥さんのディアナの視線もジャスパーへと注がれてたじろいで一歩下がる。

 

「うっ……何、この状況」

「――ジャスパー、貴方に聞きたい事があります」

 

 ルリは一歩踏み出して、気圧されるジャスパーに詰め寄る。そしてルリはジャスパーに現状を説明して、旧『ナデシコD』であの『アルテミス』と初接触した際の事を問い掛ける。

 

「ジャスパー。貴方はあの時、初めて遭遇した筈の、あの『アルテミス』の事を知っていましたね? 教えてください、今このデープ・スペース・13を覆うあの白銀の球体は、恐らく『アルテミス』と同質な物――あの球体の事も知っているのではないですか?」

 

 問い掛けられたジャスパーは表情を消して自分を見つめるユリカ司令やライカー艦長とディアナそして目の前で金色の瞳をまっすぐに向けて来るルリを見回すと、深い――とても深くため息を吐く。今でこそ『ボーグ集合体』の脅威を退けてテンカワ・アキトを取り戻したが、その道筋を立てるまでに長い年月が掛かった。

 

「……分かったルリ艦長」

 

 


 

 

 表情を削げ落として、まるで人形のようになってしまったジャスパー。未来の『オモイカネ』によって過去へと送られた彼女は、テンカワ・アキトを救う為、『ナデシコ』のクルーを救う為に『ボーグ集合体』という強大な相手に挑み、敗北しては何度もやり直していたと言う……その事は彼女のトラウマになっており、おいそれとは触れられない事は分かっていたが、現状の脅威を払しょくする為に情報を得るには他に手が無いのも事実――故にユリカ司令とルリは、彼女の負担になる事が分かっていたが情報の開示を頼んだのだ。

 

「……とは言え、あの球体に付いては私も知らないわ……私が知っているのは、宇宙戦艦『ヤマト』にいた翡翠という“バケモノ”についてだけ」

 

 あの“バケモノ”と遭遇したのは、何度も繰り返したやり直しの中でも比較的新しい時だと言う――その時のユリカ達は今以上にテンカワ・アキトを奪還する事に固執しており、度重なる戦闘で機能不全を起こした『ナデシコD』を放棄して、「ナデシコC」単艦で三隻の『ボーグ・キューブ』を相手に激闘を切り広げていたが、戦力差が圧倒的に不利な『ナデシコC』は、『ボゾン・ジャンプ』を多用した一撃離脱戦法を持って『ボーグ・キューブ』にダメージを与える戦法を行っていた。だがA級ジャンパーであるユリカとイネスの消耗は激しく、このままでは敗北するのは時間の問題と思われた。

 

 そんな時、何度目かの『ボゾン・ジャンプ』にて離脱した『ナデシコC』の前に現れたのが宇宙戦艦『ヤマト』だった。当時初接触だった宇宙戦艦『ヤマト』の独特なフォルムに困惑した『ナデシコC』だったが、困惑から立ち直る隙も無く、ワープにて追撃して来た『ボーグ・キューブ』が出現して、『ナデシコC』をトラクタービームで捕獲しようとするも、『ナデシコC』の船体に表示されている艦名などから地球に類するモノであると知った宇宙戦艦『ヤマト』から援護射撃を受けて何とか離脱出来た『ナデシコC』。

 

 ――だが、『同化』の障害と判断された宇宙戦艦『ヤマト』は、『ボーグ・キューブ』から発射された光子魚雷の飽和攻撃の前に撃沈され、爆発四散してしまう――だが爆発が収まった宙域に一人の人影が存在していた。あれだけの爆発の中で傷一つ付かず、真空の宇宙空間の中で真紅の瞳を爛々と輝かせた小さな人影に、悪い夢でも見ているかのように映像を受け入れられない『ナデシコ』のクルー達の前で宇宙空間を凄まじいスピードで飛ぶと、今まで何度攻撃しても破れなかった『ボーグ・キューブ』のシールドを食い破って艦内に進入して、次の瞬間には巨大な『ボーグ・キューブ』は爆発四散してしまう。

 

 その恐るべき破壊力に驚愕する『ナデシコ』クルーを尻目に、次の『キューブ』に突撃した人影に思考が追い付かない内に二隻目の『ボーグ・キューブ』が爆発した所で、ミスマル・ユリカが全周波数を使用した通信で人影を制止しようとするが止まらず、三隻目の『ボーグ・キューブ』も爆発四散してしまう……崩れ落ちるユリカから、あの『ボーグ・キューブ』にテンカワ・アキトが居た事を知った『ナデシコ』クルーは、作戦の失敗――救助者が死亡した事により意気消沈する。

 ……だが惨劇はそれで終わりではなかった。三隻の『ボーグ・キューブ』を破壊した人影が『ナデシコC』へと振り返ると、その腕を高らかに掲げて強力なエネルギーを放射する球体を作ると、それを『ナデシコC』へ向けて撃ち出し――ディストーション・フィールドを物ともせずに『ナデシコC』の船体に直撃して破壊してしまう……消え去る寸前にジャスパーはデーターを過去へと送り込み逃れる事が出来たが使命は失敗。

 

 旧『ナデシコD』の奥底で目覚めたジャスパーは、『ボーグ集合体』の強大な力に『ナデシコ』だけでは対抗できず、最後に遭遇したあの特異なフォルムを持った航宙艦から、この星間空間を往来する高い技術力を持つ存在を知り、助力を求める事を第一にして行動して――彼らは、惑星連邦という一大星間国家が存在する事、別の並行世界から来訪した宇宙戦艦『ヤマト』の存在を知った……そして『ヤマト』に保護されている『翡翠』という異星人の少女の事も――あの時、三隻もの『ボーグ・キューブ』を瞬く間に撃破したあのシルエットと同質な存在を見つけたジャスパーは彼女の扱いは慎重にしなければと思う。

 

 『ボーグ集合体』という脅威に晒されていた惑星連邦の協力を取り付ける事は比較的容易だったが、元の世界へと帰還に固執する宇宙戦艦『ヤマト』の協力を得るのは容易ではなく、そこでジャスパーは一計を案じた――宇宙戦艦『ヤマト』が協力してくれないのなら、『ヤマト』の前に『ボーグ・キューブ』を誘導しようと――計画は成功して宇宙戦艦『ヤマト』の前に『ボーグ・キューブ』を誘導する事に成功したが『ボーグ』の力は強大で、『ナデシコC・D』と連邦艦『エンタープライズE』そして宇宙戦艦『ヤマト』の力を以てしても『ボーグ・キューブ』を制圧する事は難しく、まず『エンタープライズE』が破壊されて次に宇宙戦艦『ヤマト』が満身創痍になって撃沈寸前になった時――あの船は現れた。

 

 あらゆるセンサーを無効にする仄かに輝く流体金属で形成された白銀の船体と圧倒的な戦闘能力で、瞬く間に三隻の『ボーグ・キューブ』を蹴散らした『アルテミス』から『ナデシコC・D』に映像通信が入る……そこには『ヤマト』の制服ではなく、白いボディスーツに青い結晶体を所々にあしらえた真紅の瞳を爛々と輝かせた翡翠の姿。

 

『邪悪なりし『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の恐怖を司る、『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』を利用しようとした蛮勇を讃えて――死を与えてやろう』

 

 


 

 

「……そして何度目になるか分からない過去へデーターを送って覚醒した私は、翡翠に付いて調べ出した」

 

 翡翠は転移時のアクシデントによって宇宙戦艦『ヤマト』に保護された後も『ヤマト』に居座り、何か目的を持って現状に甘んじているようだが、その目的が分からない……だが分かった事も有る。

 あの巨大戦艦は翡翠を回収する事が目的でこの宇宙に来訪した事、翡翠は物理的な能力だけでなく精神世界でも圧倒的な能力を持つ事――事実、試しにミスマル・ユリカ艦長の容体を見せた所、アストラルサイドからの干渉を言い当てて、侵食する古代火星文明の演算ユニットの物言いに怒りを見せた翡翠の干渉によってユリカ艦長は演算ユニットの呪縛から解放され――ピンクの悪魔に率いられた『ボーグ』艦隊の前に敗北して振り出しに戻る。

 

「そうして何度かのやり直しで分かった事は、翡翠は自分に火の粉が降りかからない限りは、この世界ので出来事――『ボーグ集合体』の侵攻には不干渉だと言う事」

 

 そして『アルテミス』がこの世界にやって来るにはワームホールのような物を用いてやってくると言う事。

 

「ワームホールを開くという事は、大規模な亜空間変動が起こる事を意味する――ペルセウス腕の連星の青色巨星近くで三年前に大規模な亜空間変動の残照が残っていた事」

 

 ――最後に分かった事は、彼らは強大な力を持っているが“慎重”だと言う事。

 

「……どういう事?」

 

 問い掛けるユリカ司令に、話している内に吹っ切れたのか んふふっと不敵な笑みを浮かべたジャスパーは、たとえ圧倒的な優位に立とうと相手の動向は常に探っていると答えながら司令部の壁になっている部分に指を突き付けて断言する。

 

「――そう! 今も彼らは此方の動向を探っていると言う事――出て来なさい、居る事は分かっているわ!?」

 

 何もない壁相手に何をやっているんだ、とあきれ顔になる一同だったが、一同は驚愕の表情を浮かべる事になる――何もない筈の壁から細長い何かが出て来ると、それは数を増して十本の指の骨になると壁に押し当てて白いボディスーツと共に白い頭蓋骨も壁から浮き出してくる……完全に壁から現れた骸骨はカタカタと上顎骨と下顎骨を震わせて、骨だけゆえに声帯もないのに流暢に話始めた。

 

「カカカッ、良ク分カッタナ。ソレモ翡翠トカイウ奴ヲ観察シタ結果カ?」

 

 骸骨ゆえに表情は分からないが言葉の端から上機嫌である事が分かる……だが、声を掛けられた相手―ジャスパーは、指を突き付けた態勢のまま呆けたような表情を浮かべて呟くように答えた。

 

「……いや、カマかけただけだったんだけど……本当に出て来るとは」

 

 ガコンッと骸骨の下顎骨が落ちた。

 

 


 

 

 デープ・スペース・13周辺宙域

 

 並行世界へとやって来たクリスの乗る実験艦―02は、クロノトン魚雷を使用しての時間跳躍を行って2年前の世界へと転移し、懐かしい顔ぶれが居るであろうデープ・スペース・13を目指したが――今その宇宙基地は、白銀の球体に覆われていた。

 

「……ねぇ、此処ってデープ・スペース・13がある場所だよね?」

『――入力された座標に間違いが無ければ、その筈です』

 

 実験艦―02のブリッジでウィンドウに映される白銀の球体を睨みながらクリスが確認すると、実験艦の制御システムが淡々と答える……その物言いにムカついたクリスだったが、今はそれどころではないと気持ちを落ち着けて目の前の白銀の球体を改めて見つめる。

 

「……アレって、どう見ても『イシュ・チェル』だよね」

『……並行世界故に断言は出来ませんが、78%の確率でリバィバル級殲滅型戦艦『イシュ・チェル』と推定します』

「……何やってんだよ、骨格標本」

 

 並行世界ゆえに通じるか分からなかったが、自分のコードでアクセスしたら奇跡的に『イシュ・チェル』のシステムに入れたクリスは、かの船が何を目的にデープ・スペース・13を封鎖したのかを読み取って翠眼をジト目にして呟く……まったく余計な事をしてくれて、これで自分の目的に支障が出たらどうしてくれる、とジト目が座り始めるクリス――そして彼女は決断する。

 

「……敵味方識別信号は通じているな?」

『センサーに捕捉されていますが、攻撃が来ないので有効のようです』

「――よし、両舷全速、突っ込め!」

『――了解』

 

 クリスの号令の下、実験艦―02は白銀の球体に向けて移動を開始した。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。
 
 なんとか年末年始の激務を終えて少し調子を取り戻したので、予定を変更して閑話3をUPします。

 次こそは1/4の本編でお会いしましょう。ではでは~。
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