宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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第七十四話 美しくも愚かしいもの、それは――

 

 波動実験艦『銀河』の艦橋では、指揮AIから衝撃的な発言が飛び出していた――『ガトランティス』との戦いによって地球・『ガミラス』の戦力の半数が失われ、地球政府首脳部は『G計画』の発動を承認した。『ガトランティス』との泥沼の闘いを続けていけば、時間断層によって兵器は生産できるが人員の方は既に限界に来ている。それを打開する為のAIによる無人戦闘艦の開発だったが、それだけで戦争に勝てる筈もなく、これから先に人類はどんな選択をするか分からない……戦いを有利に進める為に人体の改造――手足を機械化したり、神経細胞を強化する事による反応速度の向上など、選択はエスカレートする事は確実であり、今のうちに正常な遺伝子を保存して――最悪の場合は、地球を脱出して新天地にて人類文明を復興させる――それが『G計画』である。だが、現時点の技術では人間を再生する事は困難であり、その為に『銀河』のクルーは女性で構成されている。

 

「……そこまで…そこまでしなきゃいけないのかよ!?」

 

 それだけの覚悟を見せる『銀河』のクルーに驚く島――人間という形に拘り、自らも部品としか見ない彼女たちが島には同じ人間とは思えなかった――そこに人としての尊厳は有るのか、思わずそう叫んだ島だったが、『銀河』のクルーの反応は冷淡だった。

 

「……恐怖を克服する為には自らが恐怖になるしかない。波動砲艦隊も、時間断層による軍拡も、それがガミラス戦争で滅びを経験した人類の結論……この残酷な世界で生きていくには人は弱すぎる」

 

 淡々とした口調で話す『銀河』の藤堂艦長……宇宙は生物が生きるには過酷な環境であり、深宇宙には『ガトランティス』以上の脅威が潜んでいるかもしれない。そんな過酷な世界で生きていくには脆弱な人間のままでは不可能に近い……そこには人間という生き物に対する絶望があった。

 

 誰もが言葉を失う中で、『銀河』の艦橋に都市帝国と戦っている山南の声が響いた。

 

『『アンドロメダ』より全艦優先通信――聞こえるか! 『ヤマト』発見! 一瞬だが光学的に捕捉した、あれは『ヤマト』だ!』

 

 その言葉に驚く藤堂艦長……『ヤマト』墜落の原因を知っている『銀河』のクルー達は、あの状況下でも『ヤマト』生き延びていた事に驚くと共に、かの船が16万8千光年という未知の航海を成し遂げて地球を救うという偉業を成し遂げた、奇跡を起こした船である事を思い出す。

 

『――『ヤマト』は生きている! だが彗星帝国の強大な重力に囚われている。『ヤマト』単独での脱出は困難だ。残存艦艇、聞こえて居たら、『ヤマト』の脱出の援護を』

 

 『ガトランティス』と戦いながらも『ヤマト』の援護を要請する山南の言葉に、『銀河』のクルーの異様なまでの覚悟に飲まれていた『ヤマト』のクルー達が息を吹き返す――各々の責務を思い出して、如何に『ヤマト』を救出するか議論を始める。

 

 『アンドロメダ』に乗る山南は、『ヤマト』救出の為に都市帝国の内部に存在する『重力源』を破壊する為に攻撃を仕掛けると言う……だが惑星サイズの都市帝国を支える『重力源』を『アンドロメダ』単艦で破壊するには攻撃力が不足し、敵の奥深くに存在する『重力源』を破壊する為に援軍を送るのは難しい……そんな中で立ち上がった真田は、艦長席に座る藤堂を見据える。

 

「艦長、意見具申。『銀河』の『コスモリバース』で増幅してやれば、『アンドロメダ』一隻の『波動砲』でも『重力源』にダメージが与えられるはずだ」

 

 真田の提案に躊躇いの表情を見せる藤堂艦長……『アンドロメダ』の『波動砲』を増幅する為に敵の真っただ中に飛び込むリスクを考えると、おいそれとは決断出来なかった。そんな中で『銀河』を制御する指揮AIが反論する。

 

「期待する効果を得るには『CRS』に負荷が掛かり過ぎる。不確実性の高い作戦の為に『コスモリバース・システム』を失う訳には――」

「――お前には聞いていない!」

 

 反論するAIを一喝する真田――そして視線を藤堂艦長に戻す。

 

「……艦長」

 

 


 

 

 宇宙戦艦『アンドロメダ改』艦橋

 

 彗星都市帝国の近辺で襲い来る敵を迎撃しながら二連装『波動砲』へとエネルギーを充填しながら、艦橋に一人座る山南は悲壮なる決意を固める。

 

「……多くの、多すぎる命が失われた…今更、責任を取れるモノではないが、せめて俺と『アンドロメダ』の命と引き換えに、戻って来てくれ『ヤマト』――」

『――山南。死んで取れる責任など無いぞ』

 

 命と引き換えにしても『ヤマト』だけは、と決意を固める山南に通信機から土方の声が聞こえて来る……崩壊する惑星からの脱出を図る『ヤマト』からも単艦で突撃を敢行する『アンドロメダ改』の姿が確認出来たのだろう。先ほどの優先通信は『ヤマト』も傍受しており、『アンドロメダ改』の山南艦長が何をしようとしているのか理解した『ヤマト』の土方艦長は、自らを犠牲にしても脱出を援護しようとしている『アンドロメダ改』に通信を繋いだ。

 

『山南――生きろ! 生きて恥を掛け、どんな屈辱にまみれても生き抜くんだ。人間は弱い、間違える――それがどうした、俺達は機械じゃないだ! 機械は恥を知らない、恥をかくのも、間違えるのも、全部人間の特権なんだ!』

 

 確かに人間は間違える。だが生きていれば、それを経験として蓄積して次へと生かすことが出来る。人類の歴史はトライ&エラーの連続だ。愚鈍に足掻き続けても、理想を夢見て挑戦を繰り返す。困難な道だろう、挫折して折れるかもしれない……だが挑戦をしたという事実は残り、それが後に続く者への指針になるかもしれない――そして人は理想を、夢を実現して来たのだ……機械のように効率を求めては決して到達出来ないモノを。

 

 波動実験艦『銀河』もまた決断する――人類という種を残す『G計画』の遂行を主張する指揮AIの判断を拒否して、敵の真っただ中で孤軍奮闘する『アンドロメダ改』の援護に向かう事を決める……この絶望的な状況下の中で『ヤマト』一隻を救出した所で戦局が変わるとは思えないが、それでも人類には『ヤマト』が――絶望に抗う人々には希望の象徴が必要だった。

 

「現時点を以て、指揮AIを更迭。本艦の指揮は私が取る――『銀河』、火星戦線へ!」

 

 

 白色彗星内の都市帝国への奇襲に失敗した地球防衛軍決死隊は、敵『ガトランティス』の反撃によって数を減らして残るは『アンドロメダ改』一隻を残すのみとなっていた……共に白色彗星内へとワープを敢行して攻撃を行った無人制御の『アンドロメダ・ブラック』達は敵の砲火によって撃沈され、せめて敵に一太刀と突撃を敢行する『アンドロメダ改』の艦橋で艦長たる山南は敵惑星からの脱出を図る宇宙戦艦『ヤマト』の姿を発見した。

 

 だが敵惑星から脱出はしたが、傷ついた『ヤマト』の推力では彗星帝国の放つ超重力圏からの脱出は困難であり、『ヤマト』の脱出を援護するべく敵彗星帝国の動力炉であろう『重力源』への攻撃を行うべく、無数の『ガトランティス』の艦艇の合間を縫って『重力源』を射程に収めようと『アンドロメダ改』は単艦で突撃する。

 

 そんな『アンドロメダ改』に敵艦隊の砲火が集中するが、改装時に増設された高機動ノズルを吹かして回避しながら敵艦隊の只中に切り込むが、進路上に現れた自滅型攻撃艦イーター1の単分子切断衝角が『アンドロメダ改』の艦橋を捉えて切断する――艦橋上部を切断された『アンドロメダ改』であったが、それでも機能に変調をおこさずに推力を維持して航行するタフさに、強化宇宙服をまとった山南も苦笑するしかなかった。

 

「――ふっ、お前もしぶといな『アンドロメダ』よ」

 

 単艦で文字通り孤軍奮闘していた『アンドロメダ改』だったが、そこへ覚悟を決めた『銀河』がワープアウトして、彼女の協力で増幅された二連装『波動砲』が敵『重力源』を捉えて、都市帝国の放つ超重力に乱れが生じる――超重力の乱れに隊列を乱した敵艦隊の隙を突いて、惑星からの離脱を図る『ヤマト』をロケットアンカーにて牽引した『アンドロメダ改』は、傷ついた身体ながらも推力を最大にして都市帝国から脱出を果たす。

 

 その光景は、『銀河』の艦載機射出カタパルトで待機していた加藤の眼にも映り、その眼からは涙があふれだしていた。

 

「……『ヤマト』……生きて…生きていてくれた」

 

 


 

 

 起死回生の策として、白色彗星の高圧ガスの渦の奥底に潜む都市帝国への直接攻撃は失敗に終わったが、その後に敵惑星からの脱出を図る宇宙戦艦『ヤマト』の姿を発見してその救出に成功したのだ……とは言え、船体に多大なダメージを負った『ヤマト』はこのままでは戦闘にはとても耐えらず、大規模な修理が必要な状態であった。

 

 幸いというか、近くにはヤマト級三番艦 波動実験艦『銀河』がおり、『ヤマト』の同型艦である彼女も『ヤマト』同様の武装を施されていたが、『ヤマト』より移設された惑星再生システム『コスモリバース』のブラックボックスの干渉により全ての武装が使用不能である現状もあって、『銀河』から使える部品を『ヤマト』に移植する事により早期に修理を完了できる事が出来た。

 

 火星近郊の地球・『ガミラス』の艦隊集結宙域では、『銀河』から装備の移譲が完了した『ヤマト』は静かに出撃の時を待っていた。

 

 

 宇宙戦艦『ヤマト』機関室

 

 同型艦である『銀河』から部品の譲渡を受けた『ヤマト』機関室は依然と同様に快調に機能しているように見えたが、姉妹艦とはいえ別の艦の部品を組み込んだ事による影響がないか『波動エンジン』前の機関出力計器盤を注視する機関長徳川に、『銀河』にて機関室の責任者をしていた山崎が近付いて行く……その表情はどこか暗かった。

 

「『銀河』から移し替える部品は全て移し替えました……一番欲しい部品はお前だ、とは言っては貰えんのですか」

「……連れてはいかんぞ」

「――おやっさん」

「――あの若造共に、まだまだ教えてやらにゃならん事があるだろう――良い“釜焚き”を育てろ、山崎」

 

 


 

 

 最後の戦いを挑むべく、火星近郊宙域から出撃する宇宙戦艦『ヤマト』――波動防壁を抜く『ガトランティス』の自滅型小型戦艦対策としてレーダーの大幅な索敵範囲の向上と対空装備を増設して出来うる限りの強化を行い、強大な『ガトランティス』の艦隊を退けて、木星サイズの人工天体である彗星都市帝国――古代アケーリアス文明が遺した悪しき進化を遂げた種族を刈り取る『滅びの箱舟』を止めなければならない。

 

 圧倒的な物量を誇る『ガトランティス』……だが、希望が無い訳では無い。白色彗星内に墜落しながらも奇跡的に生還した『ヤマト』より齎された情報――人造生命体である『全ガトランティス人』を死滅させる惑星『レムリア』の民が遺した最終兵器『ゴレム』。

 かのシステムを奪取もしくは破壊出来れば、全ての『ガトランティス』を停止させる事も可能――奪取すれば『ガトランティス』を降伏させる事も出来るかもしれない。

 

 

 宇宙戦艦『ヤマト』は火星圏より離脱する――進路は地球。

 白色彗星の地球到達を阻止する為に、地球へと急ぐ『ヤマト』の前に因縁の相手が立ち塞がった――1度は『ヤマト』に敗れて都市帝国の客将になりながらも、星の寿命を迎えた『ガミラス』を救う為に独自の道を行く元『ガミラス』帝国総統デスラー。

 

 『ガトランティス』大帝ズォーダーが求めた惑星『テレザート』に存在していた高位次元存在『テレサ』との門を材料に、『ガミラス』星を離れては長くは生きられない『全ガミラス』民族が移住できる惑星を用意または創造する事を要求しようとしたデスラーの思惑は、この宇宙から惑星『テレザート』が姿を隠した事によって一度は断念した。

 

 だが、デスラーの監視役として『ノイ・デウスーラ』に随伴していた『ガトランティス』のミルより、全『ガミラス』民族が移住できる惑星を用意する条件として『ヤマト』を倒す事を求められたデスラーは、『全ガミラス』民族を救う為に『ヤマト』に『デスラー砲』の照準を向ける。

 

(『ヤマト』、『大いなる和』……(けだ)し理想は美しい――だが、理想だけでは何も救えない。その理想に現実を変える力があると言うのなら、私を倒しに来い――ランハルト)

 

 覚悟を決めたデスラーの放った一撃は『ヤマト』を捉えたかに見えたが、事前に察知したキーマンの助言に従い緊急ワープを敢行した『ヤマト』は、『ノイ・デウスーラ』の至近距にワープアウトするとそのまま『ノイ・デウスーラ』の船体へと突撃を敢行して青い船体深くへとめり込んで行った。

 

『空間騎兵隊チームα、出撃準備! 総員乙武装、白兵戦に備えよ!』

 

 『ノイ・デウスーラ』の船体深くに突き刺さった状態の『ヤマト』。

 あまりに至近距離故に双方とも火砲の使用は出来ず、『ヤマト』側は艦内工場で増産した2式空間機動甲冑を纏った空間騎兵を中心に、『ノイ・デウスーラ』への突入部隊を編成して突入し、初手の『デスラー砲』以降は何の動きも見せなかった『ノイ・デウスーラ』側にも動きが見える――青い船体より『ガトランティス』カラーの自立型対人・対物無人兵器であるニードルスレイブが群雲の如く湧き出て、『ノイ・デウスーラ』の船体深くに突き刺さって逆に身動きが取れない『ヤマト』に襲い掛かって来る――このニードルスレイブが厄介なのは、小型機動兵器ゆえに的としては小さく迎撃が困難である事と、戦場にて猛威を振るう自滅型小型艦同様に波動防壁に干渉できるシステムが搭載されている所だろう。

 

 群雲の如く到来して波動防壁に干渉して穴を開けると、『ヤマト』艦内に侵入してくるニードルスレイブの大群。至る所で激しい戦いが繰り広げられ、戦いの最中に愛する人が蘇生体である事を知った女の悲痛な叫びや、『引き金』を引かぬ道を模索し続けた男の覚悟や、記憶を無くしながらも身を挺して愛していた男を救う女の姿に打たれて歩み寄ろうとした矢先に、人間の愚かしさにより永遠にその機会を失うなど、悲哀様々な出来事があった。

 

「……なんと…なんと、愚かな……」

 

 今目の前で、殺し合い以外の道を選択しようとしていた若い世代の歩み寄りが、永遠に閉ざされた事に表情を歪めるデスラー。救出に来た兵士達にとって、『ガトランティス』の士官など排除すべき敵でしかなかった……だがその行為により『ガトランティス』と地球と『ガミラス』は、最後の一人になるまで殺し合う道を選択するしかなくなった。

 

『ヤマト』の格納庫に収容されたミルの亡骸と対面した桂木透子は、かつて愛した男の代替わりクローンを己が子として慈しんだ記憶を持つが故に悲しみ涙を流す……帽子を脱いでその姿を黙って見届けた土方艦長は、基幹エレべーターで艦橋に戻る途中でこの戦いの行く末を予想して厳しい表情を浮かべる……神が与え給うたのかもしれない千載一遇の機会を、我々は逸してしまった。……この戦い、もう行き着く所まで行くしかあるまいな、と。

 

 失意に暮れる桂木透子の下に古代が訪れて、ミルの死を悼みながらも彼女に『ガトランティス』との戦いへの協力を要請する……引き金を引かぬ道を模索し続けた彼も、此処まで来た以上覚悟を決めたのだ。

 

「……綺麗事は言わない。どちらかが亡びるまで終わらない戦いになる……それでも彼が、若きズォーダーがくれた希望を、次へ繋ぐために――今は!」

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。




 では、次回。遂に地球圏に到達した白色彗星帝国。時間断層を手中に収める為に太陽を遮り、抵抗の意思をへし折ろうと降伏勧告を行う彗星帝国の前に姿を現す宇宙戦艦『ヤマト』。

 第七十五話 『トランジット波動砲』
 1月25日更新予定です。ではでは~。
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