宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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第七十九話 都市帝国内の攻防

 

 

 都市帝国の外壁に開いた大穴に突入したヤマトは、主砲やミサイルを乱射しながら立ち塞がる構造物を破壊して突き進んで――広大な空間へと出た。そこは赤い仄かな光に包まれた不思議な空間であった。空間の上下が赤く輝く霞の様なモノに覆われ、その赤い霞の中から無数のビルが突き出ているが、この空間には人が営みをしているような雰囲気はなかった。

 

「――未知の熱源感知……カラクラム級…ですが小さい……これは」

「――桂木透子の情報通り、ここは『ガトランティス』艦を生み出す母胎……」

 

 強化されて大型になった高次元微細レーダーで周囲を探査していた西城は敵艦の存在を察知したが、その規模が様々な事から本当にカラクラム級なのか自信を持てず、技術支援席で真田はセンサーから得た情報から解析図を作成しながら、事前に得た情報であるこの空間が『ガトランティス』の艦艇を建造する母胎であると結論付ける――『ガトランティス』を製造した惑星『レムリア』の記憶装置によれば、反乱を起こした人造兵士『ガトランティス』を率いたズォーダーは、卑劣な手段を使った『レムリア』人によって集結場所を察知されて鎮圧された……だが生き残ったズォーダーは、同じく生き残った『ガトランティス』を集めて『レムリア』を脱出し――古代アケーリアス文明が遺した、悪しき種を刈り取る為の遺産『滅びの箱舟』を目覚めさせて『レムリア』を滅ぼした。

 

 そして『ガトランティス』は『滅びの箱舟』を中心とした彗星都市帝国を建造して、“悪しき”知的生命体を滅ぼす旅を始める……高度に発展していた『レムリア』の技術と滅ぼした知的生命体から吸収した技術を用いて、『ガトランティス』はこの母胎に戦闘艦の設計データーを入力して、強力な戦闘艦による強大な軍事力を得たのだろう。

 

「――各システム、自動航法装置と連携始め」

 

 敵の生命線とも言える戦闘艦を建造……いや、もはや生み出す場所であるこの母胎に侵入した『ヤマト』を敵がそのままにしておく訳がない。その前に態勢を整える必要がある――彗星都市帝国に決戦を挑む前に何度も繰り返して決定した作戦通りに、自動航法室に備え付けられた生命維持装置にて常にバイタルをチェックされている桂木透子のコスモウェーブを増幅して、彗星都市帝国のシステムに介入して防衛システムを攪乱している間に大帝玉座の間に突入して最終兵器である『ゴレム』を奪取する。

 

 延長された高次元微細レーダーの表面に金色の幾何学模様が現れると、その光に導かれるように育成途中のカラクラム級が『ヤマト』の周囲に集い、守るかのように――いや、桂木透子のコスモウェーブの導きによって『ヤマト』を守る盾として付き従い、第一艦橋にある次元羅針盤が起動して進むべき進路を示した。

 

 

 都市帝国の最上階の大帝玉座の間にて『ヤマト』の行動を監視していた大帝ズォーダーは、『ヤマト』を守るように付き従うカラクラム級の姿を見て眉を寄せる。

 

「……コスモウェーブによる攪乱工作」

「……遮断出来ません。最上位のコードです……アレもまた白銀の巫女――この彗星都市を操る権限を持つ者です」

 

 『ヤマト』を中心としたカラクラム級の軍勢が母胎ともいえる空間の中にある一際大きな構造物に近付くと桂木透子のコスモウェーブに呼応して巨大な構造物は開いて、千年間開いた事のない門が現れる。それを見たズォーダーは彗星都市を操るサーベラーに門を閉じるように指示するが、記憶領域を制限された彼女では桂木透子のコスモウェーブの出力には及ばず、システムに拒否された。

 

「……人形では勝負にならんか――ラーゼラ―!」

 

 大帝ズォーダーは、配庁軍務総議長ラーゼラ―へと『ヤマト』の排除を命じ、それを受けたラーゼラ―陣頭指揮を執るべく大帝玉座の間を退室した。

 

 


 

 都市帝国周辺宙域

 

 都市帝国への突入を果たした宇宙戦艦『ヤマト』――たった1艦で惑星規模の敵の本拠地へと乗り込んだ『ヤマト』の戦いは想像を絶する過酷な戦いになるだろう――ならば我らのなすべき事は『ヤマト』の勝利を信じて彼女が帰るべき星『地球』を守る事だ。

 

 未だ無数の黒いゴストーク級を吐き出す都市帝国と、数を減らしたとはいえ1キロを超える規模を持つ大型生物『眷属』達から地球を守るべく奮戦する『ガミラス』艦隊は、途中から参戦してきた未知の勢力の航宙艦はひとまず無視して、まずは攻撃が通用する黒いゴストーク級を排除するべく攻撃を集中する。

 

 巨大な惑星規模の構造物である都市帝国の周辺宙域には、突然来訪した翡翠から齎された情報の中にあった『眷属』と呼ばれる大型生物兵器の大群が存在しており、敵意と共に表層の組織を硬化させた棘の様なモノを射出して連邦航宙艦を攻撃してくるが、その全てを防御シールドで防いだ。

 

 


 

 

 USSタイタン ブリッジ

 

 惑星連邦所属ルナ級航宙艦であるタイタンのブリッジ内は、RED ALERT(非常態勢)を示す赤い警戒灯が灯り、ウィリアム・T・ライカー艦長の下で優秀な士官達が担当する任務を遂行していた。艦隊登録番号NCC-80102 ルナ級の航宙艦であるUSSタイタンは、24世紀の並行世界において就役した航宙艦であり、全長は454メートルとギャラクシー級航宙艦の2/3ほどの大きさながら様々な外敵の存在に対応出来るように武装も豊富で、フェイザーアレイ6基、光子魚雷発射管6門、そして限られた航宙艦にしか搭載されていない量子魚雷を持ち、強力なディフレクター防御シールドを装備した戦闘艦であり、なによりも新型のトランスワープ技術『量子スリップストリーム』を持つ。

 

 これは、デルタ宇宙域に飛ばされた『USSヴォイジャー』により齎されたトランスワープ技術の一つで、ディフレクター盤により量子スリップストリームという亜空間の流れを航宙艦の前方に作り出し、その流れに押し流されるように怒濤のごとく滑走(光速の数十万倍以上)する。

 フィールドを前方に作りながら航行するのでスラスターで姿勢を変更するだけで自由に進路を制御出来る反面、フィールドを形成し続ける事は困難で、アルファ宇宙域への帰還を目指すヴォイジャーが試作段階の量子スリップストリームを使用したが結果は失敗し、あわや氷の惑星に激突しそうになったが短時間で1万光年を進んだこの技術はヴォイジャーが地球に帰還した後も研究は続けられてようやく完成した新技術であった。

 

 そんな最新鋭の装備を持つタイタンを含めた連邦航宙艦群だったが、彼らが相手取る大型生物『眷属』もまた並みの相手ではなかった――翡翠からの情報によれば、『眷属』とそれを統括する千キロを超える規模を持つ『バイオ・シップ』は彼女の属する勢力と長年敵対関係にあり、『バイオ・シップ』の体組織から形成される言わばクローン体のような物で、『バイオ・シップ』が存在する限り無限に沸いてくる〇〇ブ〇のような物だと嫌そうな顔で言っていた。

 

 強烈な放射線が渦巻く真空の宇宙を物ともしない強靭な船体を持ち、全長1キロにも及ぶ船体の表層を硬化させて槍として打ち出す機能や、生体ビーム発生器官や体内の熱を利用した対空用の高出力赤外線レーザーなど本当に生き物かと言いたくなるような武装を持ち、巨大な船体に見合う巨大な脳を用いて“超”能力としか言いようの無い『思念防壁』と言う一種のサイキック・シールドによりあらゆる障害を防ぎ、『思念咆哮』と呼ばれる口から発せられる衝撃波はあらゆる生物の活力――生体エネルギーを減衰させるというはた迷惑な生き物だと断じていた。

 

 ――そして、その親玉たる『バイオ・シップ』も同様の能力を持っており、奴から放たれる『思念咆哮』は惑星すら滅ぼす事から『破滅の謳』と呼ばれている、と――それは最早生物とは呼べず、悪意によって生命体を滅ぼす為に生み出された生物兵器でしかなかった。

 

「……ディアナ、大丈夫か?」

 

 USSタイタンのブリッジで艦長席に座り指揮を執っていたライカー艦長は、隣に座るカウンセラーのディアナを気遣う……彼の妻であり、地球人とベタゾイド人のハーフである彼女は生粋のベタゾイド人程ではないがテレパシー能力を持っており、彼女の能力によって未知の生物や種族の感情を読み取る事により任務の大きな助けとなった……だが、今回相手取っているのは悪意を形にしたような生物兵器であり、先ほどから『眷属』より『思念波』による咆哮が航宙艦に向けて放たれているが、翡翠より提供された情報により製作した『思念阻害フィールド』発生システムにより防がれている。だが、それでも航宙艦の中に居る人間の精神に影響があるようで、とりとめのない恐怖心の様なモノが湧き上がるが、任務に対する責務が彼らを冷静に行動させていた。しかし、ベタゾイド人のハーフである彼女は地球人である自分達より影響を受けている筈だ……今も彼女は両手で自分を抱き締めている。

 

「……アレから底知れない悪意を感じる――ウィル、あの生物はこの世界に残してはいけない。ここで全て倒さなきゃ……」

「……分かった、君は医務室で休んでいろ。後は我々がやる」

「――いいえ。最後まで見届けるわ」

「……無理はするなよ」

 

 本来なら直ぐにでも抱きしめたいが、戦闘中にそんな余裕が有る筈もなく。気遣いの声を掛けたライカー艦長はメイン・ビューワーに映る『眷属』達へと鋭い視線を向ける……今、出来る事は少しでも早く戦いを終わらせて、彼女を楽にしてやる事だ。

 

「――各艦に連絡。合図と共に『生体分子弾頭』の一斉射を行い、『眷属』達の数を減らす」

 

 

 

 『IMPERIAL』実験艦―02 ブリッジ

 

 群がる『眷属』どもを『生体分子弾頭』を搭載した空間魚雷で一掃した翡翠は、次なる獲物を探してセンサーで『眷属』どもの分布状況を確認する……惑星連邦や『ナデシコ』の航宙艦群はよく働いてくれて千を超える『眷属』どもも大分片付いて来た……中でも『ナデシコD』の多重攻撃モードで分離した艦による『生体分子弾頭』の飽和攻撃は効率よく『眷属』どもを倒している……デープ・スペース・13に接触し、彼らの協力を取り付けた時に提供した『バイオ・シップ』とその『眷属』の生体サンプルを解析して、USSタイタンのライカー艦長発案の光子魚雷を『生体分子弾頭』へと改造するという案は、『眷属』どもには有効だったようだ。

 

 デープ・スペース・13にて、所用にて運よく寄港していたUSSタイタンの技術者から提供された『生体分子弾頭』の設計図を、イネス・フレサンジュを筆頭とする『ナデシコ』の変態技術者集団がアレンジして、翡翠より提供された『眷属』の『思念防壁』を突破する技術『思念阻害フィールド』発生システムを小型化量産した時には、その理解力と行動力には舌を巻いた物だ……並行世界の技術『レプリケーター』により物質を分子変換して必要な素材を作り出し、『ナデシコ』の変態技術者と『ISF』により効率的に作業機械を動かす『マシン・チャイルド』……いや、もはや『チャイルド』という年ではなくなったISF強化体質のオペレーターの手腕によって、短期間で必要な数が揃った時には乾いた笑いしかでなかったが。

 

「――くたばれ、生ごみども」

 

 視界に入った『眷属』に『生体分子弾頭』を撃ち込んで仕留める。周囲を走査して出来た分布状況に変化が起こる――ライカー艦長率いる連邦航宙艦群が一斉攻撃を行い、かなりの数の『眷属』を葬り去ったようだ。

 

 対『眷属』戦は此方が有利な戦況になっており、問題はあの無駄にデカくなった『バイオ・シップ(親玉)』の方だが、流石の『アルテミス』も自身の十倍近い相手では苦戦しているようである。今も流体金属内で発生させた高圧電流を接触面から放電するなどという嫌がらせの様な攻撃をおこなっているが、あんなモノせいぜい表面を焦がす程度の効果しかないだろう。

 

 身を捻りながら『バイオ・シップ』の巨大な脳が生み出す思念波が物理的な力となり、自身に纏わりついて突き上げる邪魔なモノを排除しようとするも、惑星連邦に提供した『思念阻害フィールド』の正式版である『CAUSALITY・CANCELLER(因果律・キャンセラー)』により、『アルテミス』は自身に干渉する力を拒絶しながら高圧電流を流して、翡翠の乗る実験艦―02のライブラリーから転送された『生体分子弾頭』の詳細なデーターを用いて流体金属内で生成した『生体分子弾頭』を至近距離から『バイオ・シップ』目掛けて射出している。

 

 ……何故だろう、翡翠の眼には至近距離から攻撃を行って確実にダメージを与えている『アルテミス』の姿が、ぬふふっと笑いながら相手を甚振って楽しんでいるような姿にしか見えないのは……そういえば『エテルナ』の仮想人格の元となった人物はドSだったなぁと妙に納得してしまう翡翠。

 

 流石に鬱陶しくなったのか、表層に無数の槍を生成して射出すると起動が曲がって『アルテミス』に殺到するが、流体金属の中に形成した無数の粒子発生器で収束された指向性ビームが迫る槍を迎撃する。槍が効果を発揮しない事にいら立ったのか『バイオ・シップ』は周囲に槍を射出すると、その軌道を曲げて一点に集めると巨大な槍を形成する――その切っ先は『バイオ・シップ』自身に向けられていた。

 

「――まさか!? 離れろ『エテルナ』!」

 

 周辺宙域で高みの見物と洒落こんでいた翡翠だったが、『バイオ・シップ』の意図に気付いて『アルテミス』の統括思念体『エテルナ』に通信を送るが、一歩遅かった。念動力によって加速した巨大な槍は一気に『バイオ・シップ』の船体に突き刺さると、勢いのまま『バイオ・シップ』の船体を突き破って反対側に位置する『アルテミス』へと襲い掛かった。

 

 『バイオ・シップ』の分厚い船体を突き抜けた巨大な槍は少しも勢いが減る事なくそのまま『アルテミス』の流体金属で形成された船体に突き刺さり、激突の衝撃で『アルテミス』は流体金属を巻き散らしながら『バイオ・シップ』から吹き飛ばされる。

 

「……あちゃ~、調子に乗るから」

 

 自身を構成する流体金属の何%かを失いながら『バイオ・シップ』から吹き飛ばされる迂闊な相棒に呆れたような顔をした翡翠だったが、相棒を吹き飛ばした『バイオ・シップ』が体勢を立て直しながら艦首を此方に向けて大きく“口”を開いたのを見て一転焦りの表情を見せる――『バイオ・シップ(生ごみ)』め、アレをやる気か!

 

「――実験艦―02より広域通信! 全艦防御シールドを最大展開しつつ、奴に攻撃を――『謳わせる』な!」

 

 焦りの表情を浮かべた翡翠は、実験艦に搭載された全ての武装を使って『バイオ・シップ』に攻撃を仕掛けつつ、広域通信を起動すると連邦艦や『ナデシコ』だけでなく、『ガトランティス』を相手取る『ガミラス』とかいう艦隊にも警告を発する――『眷属』達を掃討しつつあった連邦のライカー艦長や『ナデシコ』のユリカ艦長などは、“あの”翡翠が焦りを見せるような事態が起きていると知り、即座に反応してシールドを最大出力で展開すると『バイオ・シップ』に対して攻撃を集中させたが、事情を知らぬ『ガミラス』の艦隊は黒いゴストーク級を相手に戦う事に集中しており反応は薄かった。

 

 翡翠や連邦艦そして『ナデシコ』の分離艦が攻撃を仕掛けるが、千キロを超える『バイオ・シップ』が張る『思念防壁』は堅牢であり、表面組織も強固なのか『眷属』相手には有効であった『生体分子弾頭』も『バイオ・シップ』相手ではそれほどの効果を発揮せず、態勢を立て直して艦首を此方に向けて大きく開いた口より放たれた咆哮は、直撃を受けた連邦艦や『ナデシコ』そして『ガミラス』の艦隊のみならず、宇宙そのものを侵すおぞましい感覚を広げていった。

 

 


 

 

 都市帝国内部

 

 都市帝国内部に突入した宇宙戦艦『ヤマト』は、桂木透子の協力によって放つコスモウェーブに操られた生育途中のカラクラム級戦艦を引き連れて都市帝国の中枢である大帝玉座の間を目指す――そこにある全ての『ガトランティス』を停止させる『ゴレム』の奪取を目指して。

 

 敵の迎撃も激しい物になるだろう。艦載機群と空間騎兵の全てを出撃させた『ヤマト』は、桂木透子のコスモウェーブに支配されたカラクラム級戦艦を従えて上層への門へと向かう――そしてやはり高次元微細レーダーにて周囲を探査していた西城が接近してくる物体群を感知する。それは都市帝国周辺で猛威を振るっていた黒いゴストーク級の大群であった。『ヤマト』迎撃の為に送られて来たであろう黒いゴストーク級のコントロールを奪うべく桂木透子はコスモウェーブを放つが、黒いゴストーク級は強固な精神支配で操られており、彼女の力では黒いゴストーク級の支配を奪う事は出来ず、黒いゴストークは搭載されているミサイルを射出して無数のミサイルがカラクラム級を破壊しながら『ヤマト』を襲い、持てる武器の全てを使用して迎撃する『ヤマト』であったが、飛来するミサイルの全てを迎撃する事は敵わず次々と被弾する。

 

「損傷報告」

「――このままじゃ、船が」

 

 被弾による激しい振動の中で真田の問い掛けに緊迫した声で答える島。対空砲火が全力稼働して迎撃しているが、周囲に展開して『ヤマト』を守っているカラクラム級の隙間を縫うようにすり抜けた大量のミサイルが『ヤマト』の船体を傷つけ、このまま被弾し続ければ都市帝国の中枢に辿り着く前に『ヤマト』は力尽きてしまうかもしれない。

 

「我々の狙いは『ゴレム』だとズォーダーは知っている……殺るか、殺られるか、最初から分かりきっている事だ」

 

 敵の激しい攻撃に晒されて思わず弱音のような声が出る中で、艦長席に座る土方は敵も必死なのだと説く――『ヤマト』が大帝玉座の間に到達して『ゴレム』を奪取すれば、それは全『ガトランティス』人の生殺与奪を握られるに等しい――だからこそ彼らも死力を尽くして『ヤマト』を葬ろうと攻撃を仕掛けて来るのだ。

 

 


 

 

 宇宙戦艦『ヤマト』医療区画

 

 前『ガミラス』総統デスラーとの対決の折に負傷した森雪が目を覚ました時、そこは喧騒に包まれていた。『ガトランティス』の猛攻に次々に被弾して破壊された区画が多数あり、血らだけの負傷者が運ばれてきて医療区画だけでは負傷者を寝かすベッドが満床になり、廊下にまで負傷者が横たわるベッドが並んでおり森雪の眼にはベッドから力無く垂れ下がる血まみれの腕がみえる。

 

 その光景にショックを受ける森雪。今の彼女にとって宇宙戦艦ヤマトは見知らぬ只の戦艦でしかない……『波動エンジン』が停止した事により都市帝国へと落下した『ヤマト』の艦内で脱出するクルーのサポートをしていた彼女は、ミルの死により気力を無くして死を望む桂木透子を避難させようとした際に負傷して、『ヤマト』で過ごした日々の記憶を失っていた。

 

 それでも次々と運び込まれる負傷者と廊下に溢れる死者を見て、彼女は大切な“何か”が失われていく感覚に全身を震わせていた……『ガトランティス』との開戦は、彼らが襲ってくる以上は避けられない物ではあった。

 だが何故宇宙戦艦ヤマトはたった1隻で都市帝国の中枢に突撃しなければならないのか? 失った記憶を取り戻せないかと見せられた『ヤマト』の航海の記録の中にあった、全てを見通す女神『テレサ』の呼びかけに答えた事が全ての始まりではないだろうか――通じるかは分からない。それでも森雪は女神に問いかけずにはいられなかった。

 

 ――『テレサ』。そこにいるなら、教えて欲しい。この苦しみに意味はありますか、流された血に見合う何かが人の一生にはありますか。

 

 これ以上『ヤマト』を先に行かせまいと黒いゴストーク級――無人仕様のゴストーク=ジェノサイドスレイブや、自滅型攻撃艦イーターⅠの大群が『ヤマト』に向けて大量のミサイルと砲撃を加えて、『波動防壁中和システム』を持つイーターⅠが『ヤマト』の船体に突き刺さる――それは艦内で『ヤマト』の機能を維持しようとするクルー達を巻き込み、機関室では二度と『波動エンジン』を停止させてなるものかと命を掛けて調整する機関部のクルーがその命をを燃やし尽くし、最後まで調整を続けていた徳川も機関出力計器盤に手を掛けて崩れ落ちそうになる身体を必死に引き上げて、艦内通話機に近付く。

 

『……エンジン出力制御ならず…しかし、航行に支障な…し……』

「――徳川機関長! 機関長!!」

 

 迫り来るミサイル群を必死の表情で回避する島は、通話機から息も絶え絶えに報告してくる徳川の安否を心配して名を呼び続けるが返答は無く、長年『ヤマト』で苦楽を共にした彼の死を悟った島と古代は呆然とした表情を浮かべた。

 

 一人で生まれて、一人で死んでいくなら、私達は何故出会うのですか。私達はたくさんの物を失ってきました。家族も、仲間も、愛する人との思いでさえも……もう、無くしたくない――もう、奪わないで!

 

 彼女の願いも空しく、なおも大量のミサイルが『ヤマト』に降り注ぎ、楼閣のようにそびえる『ヤマト』の中枢たる第一艦橋付近にも着弾して、凄まじい爆発の中で艦長席に座る土方艦長の上のシャフトが崩れ落ちて、構造物に圧し潰される土方艦長。

 

「――艦長! しっかりして下さい――佐渡先生を!」

「……良い、騒ぐな……アレを見ろ」

 

 息も絶え絶えながら土方艦長は第一艦橋から見える、『ヤマト』を守るように付き従いながらもただ前進を続けるカラクラム級戦艦を指差す――桂木透子のコスモウェーブの支配下にあるあの戦艦群をもっと有機的に動かして『ヤマト』と航空隊を守りつつ、機を見て一気にゲートへ飛び込んで敵中枢へと迫れと。

 

「……古代。次の艦長は君だ……未来を…掴…め……」

 

 死亡した土方に悲痛な顔で沈黙する艦橋クルー。土方艦長の死を悼んだ古代は、彼の残した言葉を噛み締めて決意を胸に宣言する。

 

「……未来を……土方前艦長の命令を決行する!」

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 いまだ惑星規模の都市帝国にはその規模に見合う戦力が残っており、そこへ一隻で突入した宇宙戦艦ヤマト……その代償が、これまで苦楽を共にした仲間達の犠牲……つらいなぁ。

 次回 第八十話 絶望の果てに

 2月22日更新予定です。ではでは~。
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