宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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ATTENTION! 今回はかなりオリジナル要素が濃いめです。苦手な方はご注意を。


第八十一話 破滅の獣の最後

 

 

 都市帝国 大帝玉座の間

 

「――ここまでだ、人間どもよ」

 

 地球と『ガトランティス』の戦争を終結させるべく惑星規模の都市帝国へと単艦で突入した宇宙戦艦『ヤマト』は、多大な犠牲を払いながらも分厚い防衛線を突破して都市帝国の中枢へと肉薄――突入部隊の中から二人 古代と航空隊の山本玲が遂に大帝玉座の間へと到達した……だが此処は敵の本拠地。突入した古代達を迎えたのは多数のニードルスレイブと、巨大な円柱の上から古代達を見下ろす『ガトランティス』の大帝ズォーダー。

 

 突入して来た古代と山本を半包囲した多数のニードルスレイブは腕に装備された三連装ニードルガンを構えて射出する。撃ち出された杭を避けた古代達は、腰に下げていた南部97式拳銃を構えて反撃するが、多数の無勢で次第に追い込まれて逃げ場がなくなっていくが、その時に入り口の扉が吹き飛ばされて続いて繰り出された攻撃が近付くニードルスレイブを破壊する。それは共に突入した空間騎兵の駆る二式空間機動甲冑が近付くニードルスレイブをけん制しながら、操縦者の斎藤と永倉が叫ぶ。

 

「――すまねぇ、遅れた!」

「ゴレムの制圧を、早く!」

 

 空間騎兵の乱入で戦局は混戦となり、側近であるガイデーンの進言を受けたズォーダーはその場を後にするべく振り返ると、そこには先回りして退路を塞いだ古代が銃を片手に立ち塞がっていた。

 

「……勝負は決した、とでも言うつもりか」

 

 銃を向けられていても、大帝たるズォーダーは尊大な態度を崩さずに不敵な態度で古代に問い掛ける。だが古代は構えた銃を下して冷静に話し合いの可能性について語り掛ける……貴方達も人間なら武器ではなく言葉で主張すべきだと、それが知性であると。だが、その言葉はズォーダーには癇に障ったようで、眉をピクリと動かして嗤う……愛する者達を人間に奪われたズォーダーは、己が人工生命体である事を肯定している……愛を謳いながら容易く他者を貶め、命を奪う人間を彼は心の底から憎んでいるのだから。

 

 それでも古代は言葉を紡ぐ――歩み寄り手を携えたかもしれなかった若きズォーダーである彼の、ミルの決断は間違いではなかったと証明する為にも。

 

「……貴方の未来が教えてくれた」

「……その未来は…死んだ」

 

  ……しかし古代の言葉はズォーダーには届かない――千年の絶望は、その程度の言葉で晴れるモノではないのだから。――その時、攻防の中で二式空間機動甲冑の攻撃に破壊されたニードルスレイブの三連装ニードルガンが誤作動を起こして照準もままならぬまま杭をばら撒き、その一本が大帝ズォーダーへと迫り――ズォーダーを押し退けたガイデーンの身体を貫いた……口から大量の血を吐き出して崩れ落ちるガイデーンの身体を支えるも、それが致命傷である事は明白であり、彼の象徴とも言える仮面が剥がれ落ちる……その素顔は、年齢を重ねたズォーダーそのものであり、息も絶え絶えな彼は、それでも“大帝”を気付かう。

 

「……無事…じゃの……」

 

 その言葉を残して絶命するガイデーン。彼の死に大帝ズォーダーの眼は見開かれる――愛する女を失い、未来の象徴たる若きズォーダーを失い、今自分を導いてくれた先代のズォーダーを失った……今、彼は本当の意味で“孤独”となったのだ。

 

「……認めよう…我らもまた人間」

 

 血まみれの結末に絶句する古代の前で立ち上がったズォーダーは、業から逃れられない人間に絶望し、孤独な世界を憎悪する。絶望の海に溺れ、他者を踏みつけても己の欲望を満たす人間に怒りを抱き、『ガトランティス』の中でも特別なタイプ・ズォーダーただ一人の生き残りである大帝ズォーダーは全てを憎む。

 

 ガイデーンの亡骸を床に安置したズォーダーの表情は絶望に染まっていたが、立ち上がって大剣を抜いて振り上げた時にはその表情は全て対しての憎しみに染まっていた。

 

「―――まて!」

 

 怒りと憎しみを込めて振り下ろされた大剣は床に突き刺さり、それが長き眠りに付いていた最終兵器『ゴレム』を目覚めさせた――赤い光が迸り、全『ガトランティス』を滅ぼす歌を奏で始める。

 

 


 

 

 都市帝国 周辺空間

 

 この世の理に反した獣である巨大『バイオ・シップ』の咆哮――あらゆる生命体へ死を紡ぐ呪いを大出力の思念波に乗せて放たれる思念の咆哮――『破滅の謳』が宇宙を伝播し、周辺宙域にて『バイオ・シップ』の眷属どもや『ガトランティス』の艦隊と戦っていた惑星連邦と『ナデシコ』の連合艦隊や、地球を守って『ガトランティス』と戦っていた『ガミラス』の艦隊はまともに『破滅の謳』を食らい、『思念波対応防御フィールド』を展開していた連邦艦や『ナデシコD』は辛うじて防いだが、それ以外のシールドー―例え『波動防壁』であろうとも、思念波という形のないモノ相手では分が悪く、まともに食らった『ガミラス』の艦隊は目に見えて動きが悪くなっていた。

 

 

 『ナデシコD』α艦 艦橋

 

 『バイオ・シップ』の『破滅の謳』を食らった影響で、α艦を運用するクルーの大半が失神したり心神喪失の状態でまともに戦える者はほとんど居なかった。そんな混乱するブリッジに現れた翡翠は、艦橋内を見回した後に、娘であるソフィアに支えられるようにして立つテンカワ・ユリカに気付いて意外そうな顔をする。

 

「――おや、無事のようだねユリカ司令」

「……翡翠ちゃん、無事だったんだね」

 

 支えられ、気だるそうではあるが己の足で立ったユリカは翡翠が無事である事を確認し、二人は周囲の惨状に目を向けて「……やられちゃったね」「あんなにデカくなった生ごみの『思念咆哮』をくらったんだから。仕方がないさ」と揃って嘆息する……視線は自然とメイン・ビューワーに映る連邦艦隊へと向かい、動きは悪くなったが流石に数々の任務に従事する故に強靭な肉体と精神を持つ連邦士官達が運用する連邦艦隊は、襲い掛かって来る眷属どもを相手に大立ち回りを演じている。

 

 連邦の方は問題ないようだが、『バイオ・シップ』の『破滅の謳』をまともに食らった『ガミラス』とかいう艦隊の方は、無人艦故に全く影響のない『ガトランティス』の黒い艦隊の自爆攻撃によって次々と破壊されている……流石に『ヤマト』の地球を守る為に戦って来た『ガミラス』とやらの艦隊を見捨てるのも目覚めが悪い……翡翠は大きくため息を付いた。

 

「――『エテルナ』」

『――なんですかクリス。いま粗大ゴミを片付けるのに忙しいのですが?』

「『エテルナ』、粗大ごみ相手に遊んでいる所を悪いんだけど、あの『ガミラス』とかいう艦隊に襲い掛かっている『ガトランティス』の黒いのを叩き潰してくれ」

『……いま、良い所なんですが』

「――大丈夫、アンタが黒いのを叩き潰す時間は稼ぐから」

 

 翡翠が呼び掛けると このα艦のブリッジに光が灯って、あの白銀の巨大戦艦のドローンと予想される光球が出現したが、話の内容から視線を連邦艦隊の闘いから少し離れた場所で戦っている白銀の巨大戦艦と、それよりも更に巨大な身体を持つ『バイオ・シップ』へと向ける……双方とも目まぐるしく位置を入れ替えながら激しい砲火を応酬している。

 

『……仕方ないですね』

 

 どうやら交渉は成立したようだ。『バイオ・シップ』と激しい応酬を繰り広げていた白銀の巨大戦艦は翡翠の要請に応えてコースを変更して、『思念咆哮』の影響で満足な反撃も出来ずに宇宙を漂う『ガミラス』艦隊を嬲るように撃沈していく「ガトランティス」の黒いゴストーク・ジェノサイドスレイブへ向けて流体金属内で生成した光弾――攻撃対象のシールドや装甲を攻撃エネルギーに変換して破壊する侵食魚雷を撃ち出して次々と撃沈していく。

 それを確認した後に、翡翠はユリカを支えるソフィアへと視線を向けて「出番だぞ、『残念ユニット』」と声を掛けた。

 

「誰が『残念ユニット』だ……それで、何をしろと?」

 

 こんな性格破断者の言う事など聞きたくは無いが、あの生物のカテゴリーから逸脱した巨大な『バイオ・シップ』の咆哮……確か『思念咆哮』と言ったか、あの魂を震わせる悪意の塊を一度受けただけで この有り様だ――もしもう一度、同じ攻撃を受ければユリカの身体が持たないかもしれない……憮然とした表情で問い返したソフィアに翡翠はにやりと嗤った。

 

 


 

 

 『バイオ・シップ』より放たれた『思念咆哮』によりダメージを受けながらも、『USSタイタン』を始めとした惑星連邦宇宙艦隊は即座に立て直して襲い来る眷属の攻撃を回避しながら改造型光子魚雷『生体分子弾頭』を発射して、確実に数を減らしていく……だが、同じように『思念波対応防御フィールド』を装備して確実に『バイオ・シップ』の『思念咆哮』を防いだ筈の『ナデシコD』は、連邦艦に比べてクルーが大打撃を受けて機能不全に陥っていた。

 

 同じ『思念波対応防御フィールド』を装備しているのに、何故これ程の差が出るのか……元々『ナデシコ』のクルー達は『ボゾン・ジャンプ』の事故で惑星連邦が存在する世界へと転移した経緯を持ち、もしかしたらその辺りの事が関係しているのかもしれない。

 全長三千メートルを超える巨体を四つに分離して、縦横無尽に活躍していた分離艦が機能不全に陥った事により攻撃力不足となって眷属達を駆逐する速度が落ちたが、連邦艦が分離艦の抜けた穴をカバーするように動いてスピードは落ちたが着実に眷属達の数を減らしていた。

 

 

 『ナデシコD』α艦 艦橋

 

 『ナデシコD』の円盤上層部が分離したα艦のブリッジ内は『バイオ・シップ』の『思念咆哮』の影響により、ブリッジに居たクルーの殆どが精神に負荷が掛かって激しい虚脱感を感じて身動きが取れない者や中には失神した者もおり、とても戦闘に耐えられるような状態ではなかった。

 

 そんな中で影響を受けていないソフィアと『実験艦―02』から転送されて来た翡翠がブリッジの中央に立ち、『バイオ・シップ』の『思念咆哮』の影響から辛うじて回復し始めたユリカとルリと共に最後の確認を行っていた。

 

「……『バイオ・シップ』の攻撃の影響から回復するには未だ時間が掛かりそうです――それでまた先ほどの攻撃を受ければ、今度こそ全滅しかねません」

「――周りの残状を見れば分かるよ。その前に『バイオ・シップ』の息の根を止めるか、最悪 『破滅の謳』を謳わせないようにする……その為には、『演算ユニット』――いや、ソフィア。アンタの協力が必要だ」

「……何をする気だ?」

「――簡単な事だ、私を『バイオ・シップ』まで跳ばしてくれれば良い」

 

 翡翠によれば、翡翠達『IMPERIAL』と『バイオ・シップ』を要する勢力は長年敵対関係にあり、これまでにも幾度となく『バイオ・シップ』の艦隊と戦ってきた。その戦いの中で様々な戦術や新技術を用いて来た――故に『バイオ・シップ』側も様々な防御手段を持ち、転送や空間跳躍によるショート・ワープなどの手段は無効とされる……だが『ボゾン・ジャンプ』の原理――レトロスペクトに変換して過去へと送られて、『演算ユニット』によって未来の指定された場所へと送り返す……そんな気の遠くなるような壮大な馬鹿げたシステムなど、想定している者など殆どいない――当然、『バイオ・シップ』の防御システムも対応していない可能性が高い。

 

「――あんな巨大な生き物相手に、たった一人で乗り込むなんて無茶だよ! 何人か護衛を――それこそ、このα艦ごと『ボゾン・ジャンプ』すれば――」

「……いいや、生体兵器である『バイオ・シップ』には近接武装や体内には免疫システムが存在するから、この船ごと乗り込んでも返り討ちに遭うだけだ」

 

 ――それに、単独の方が身軽でいい。

 

 にたりと嗤う翡翠の表情は血を望み破壊を齎す邪悪の化身――宇宙戦艦『ヤマト』の中で、人と触れ合い可能性という光を見た事で軟化はしていたが、それでもその(さが)は邪悪なる『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の力の象徴――恐怖を司る『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』の一人である。

 

 


 

 

 地球を守るべく現れた宇宙戦艦『ヤマト』や『ガミラス』艦隊の尽力により、白色彗星を構成する高速中性子と高圧ガスの分厚い層を剥ぎ取られて、『ガトランティス』の本拠地である惑星規模の人工構造物 都市帝国も惑星を取り込む爪状の巨大構造物『プラネット・キャプチャー』をへし折られるなど相応のダメージを受けたが、中枢たる上部構造物は未だ健在であり、『ガトランティス』の地球侵攻を阻止するべく宇宙戦艦『ヤマト』はたった一隻で惑星規模の都市帝国内部へと突入した。

 

 周囲に群がる『ガトランティス』の艦隊を押し留めるべく、戦士の誇りに掛けて立ち塞がる『ガミラス』艦隊を尻目に、この世の理から外れた『破滅の獣』と呼ばれる『バイオ・シップ』は、忌々しい白銀の船から受けた嫌がらせの様な攻撃で受けたダメージを回復する為に都市帝国周辺宙域で停止していた……偉大なる存在に連なる彼もしくは彼女を煩わせる忌々しい白銀の船を振り落として切り札たる『思念咆哮』を繰り出した結果、周囲でうるさく飛び回る小舟どもの動きが目に見えて悪くなるが、その程度の威力しか出せなかった己に歯噛みしながら、今度こそ全てを滅ぼすべく力を溜めていた……そんな彼もしくは彼女の超感覚に引っかかるモノがあった――何か、とてつもない何かが、『思念防壁』を抜けて彼もしくは彼女の船体に現れたようなおぞましい感覚……彼もしくは彼女は感覚器官を船体の表面へと向けた。

 

 

 『バイオ・シップ』の全長は千キロと惑星規模の都市帝国に比べるまでもないが、航宙艦としてはそれなりの規模を持つ。生命を即死させるような強烈な放射線が飛び交う宇宙空間を物ともしない強靭な外骨格を持つ『バイオ・シップ』の表面に光が集まり――1人の人影を形作る――翠眼を真紅に染めた、白いボディスーツに青い結晶を散りばめた翡翠だ。

 

 真空の宇宙空間に生身で立っているように見えるが彼女の身体は『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』に覆われており、生来の皮膚の上を覆う薄い膜が凶悪な放射線から彼女の身体を完璧にまもっていた――そして翡翠は『バイオ・シップ』の表面でにやりと笑う。

 

『――技を借りるよ、ノノねぇ!』

 

 並行世界から『ヤマト』と帰還した後、翡翠は待ち構えていた“プロフェッサー”に捕獲されて、休む暇なく新たな亜空間跳躍実験にほうり込まれ――件の人物と衝突事故を起こして失敗……改良型実験艦は爆発四散して、翡翠は原因となった人物をチクチクと追い込みつつ、救助が来るまでの間を休暇として洒落こんでいたのだ……もっとも、彼女達が通った道を通って“とんでもない”輩もやって来たが。

 

 『バイオ・シップ』の表面から飛び上がった翡翠は白いボディスーツに備え付けられた青い結晶体に意識を集中し、それに呼応するかのように青い結晶体は激しい光を放ち――翡翠の周囲の空間を歪めて見せかけの質量を増大させる――十分な距離を取った翡翠は、彼女がよくやった様に身体中の力を一点に集中する。

 

『――い・な・ず・ま――キッ――クッ!!』

 

 掛かるベクトルを操作して猛スピードで落下した翡翠の蹴りは『バイオ・シップ』の硬い外骨格を蹴り砕いて、その内部の肉を抉りながら加速して、最奥に潜む『バイオ・シップ』の動力炉かねた制御頭脳のある空間まで蹴り進み、遂に動力炉をかねた巨大な脳と対面する――それは見上げるほどに巨大な脳であった。全長千キロを超える巨体に見合うだけの、一キロを超えるほどの巨大な脳の前では人一人など“点”でしかなかった――だがその“点”は周囲を侵食して、『破滅の獣』に滅びを齎す者。

 

『――『エテルナ』、サポート!』

《YES・Ma'am》

 

 巨大な脳を前に翡翠は思念波によって己が半身へと呼び掛け――都市帝国周辺で機能不全を起こしている『ガミラス』艦隊に襲い掛かっていたゴストーク=ジェノサイドスレイブを駆逐しているリバィバル級殲滅型戦艦『アルテミス』へと届き――彼女は己が半身たるクリスの求めに応じて、最深部に存在する八つの異なる法則を持つ世界の圧縮中性子星が回転速度を上げて『Octagon・Reactor(オクタゴン・リアクター)』より膨大なエネルギーがクリス――翡翠へと注がれる。

 

 己が半身のサポートを受けた翡翠は、周囲の空間に干渉して思念の力で空間を圧縮して無数の空間の歪みを作り上げる――その数は数百――1つ1つは小さいが、空間を圧縮しているが故に巻き込まれれば“唯では”済まず、空間上にある物質も歪められて崩壊する。

 

   ロンゴミニアド・ジェノサイド モード

 RHONGOMYNIAD・GENOCIDE MODE

 

『――この前は丁重な歓迎を有難う、こいつはお礼だ――遠慮なく受け取れ!』

 

 真紅の瞳に苛烈な光を浮かべて獰猛な笑みを浮かべた翡翠は、以前に相対した時に受けた手痛い敗北の雪辱を晴らすべく、周囲に広がる無数の空間の歪みが気合と共に発射されて、目の前に広がるピンク色をした壁に向けて殺到する――対する巨大脳の前に思念波による『思念防壁』が張られて攻撃を防ごうとするが、それを許さずとばかりに思念の力により空間を歪めた無数の槍が激突する。

 

 拒絶の意思が空間にすら伝播して何物も寄せ付けない思念の壁になり、強力な重力源ではなく思念の力により時空を歪ませた、貫くという意思が思念の壁『思念防壁』とぶつかる――それは言わば、拒んで防ぐという意思と貫いてなぎ倒すという意思のぶつかり合い。

 

 意思と意思とがぶつかりあい、拮抗した鍔迫り合いとなる……全長千キロを超える巨体に見合う出力を持つ『バイオ・シップ』の全てを制御する巨大な脳の拒絶の意思を、己が半身のサポートを受けた翡翠の貫きなぎ倒すという意思が激突し――雪辱に燃える翡翠の強い意志は『思念防壁』を砕き、無数の空間の歪みが殺意の槍となって巨大な脳の表面に到達し――脳細胞を歪めて引き裂き、抉って捩じる。

 

 本来、脳組織というものは痛みを感じる機能は備わっていないが、極限にまで歪められた空間に接触した事によりえぐり取られる自身の脳細胞を知覚した『バイオ・シップ』は巨大な口を限界まで開いて思念波による絶叫をあげる……それは己が抉られ削られていく事への恐怖……彼もしくは彼女は自身が消えて行く感覚に初めて恐怖した。

 

『――『エテルナ』来い!』

 

 無数の歪みの槍を受けてボロボロになった巨大な脳の前で翡翠は己が半身を呼び――それを受けた『エテルナ』は、自身の身体たる『アルテミス』の進路をもだえ苦しむ『バイオ・シップ』へと向ける。

 

『――第二段亜空間跳躍、跳べ! 『エテルナ』!』

 

 『アルテミス』の船体を構成する流体金属の輝きが激しさを増し、最大戦速のまま『アルテミス』はもだえ苦しむ『バイオ・シップ』の巨体に激突し――流体金属内で複数の渦運動が起こると周囲の物質が電荷を帯び始め、『アルテミス』の艦首方向から青白い光が走ると一瞬で艦尾方向へと流れて行き、『アルテミス』の船体の輝きが激しさを増す事に加速して『バイオ・シップ』の巨体ごと突き進み――大出力により一気に光速を突破して亜空間へと消えて行った。

 

 


 

 

 『ナデシコD』α艦 ブリッジ

 

 『バイオ・シップ』の『思念咆哮』である『破滅の謳』の影響により衰弱していたクルー達も何とか動けるようになりα艦も本来の性能を取り戻して、周囲に居る眷属たちへ攻撃を続ける連邦艦隊に加勢してその全てを葬り去る事に成功したが、突然苦しみ出した『バイオ・シップ』に向けて突撃を敢行した『アルテミス』が『バイオ・シップ』共々ワープに入った事に困惑していた。

 

『……ダメです、ルリ姉さま。『アルテミス』の痕跡をトレースできません』

『……どうやら、私達の知るワープとは似て非なるモノのようで、まったくダメです』

 

 他の分離艦にて船体を制御しているアウィンとノゼアは、突然苦しみ出した『バイオ・シップ』に猛スピードで激突してそのままワープに入った『アルテミス』の痕跡を探査していたが、あらゆるセンサーを使用して探査するがまったく痕跡を辿れない事に気落ちしながらも、α艦にて指揮を執るルリに報告をしていた。

 

「……そうですか」

 

 『バイオ・シップ』共々光の中に消えた『アルテミス』の探索を行ったが、結果は予想通り芳しくは無かった……此方を遥かに超えるだろう技術によって建造されたであろう あのトンデモ戦艦と傍若無人を絵に描いたような翡翠のコンビがやる事なのだから、心配するだけ無駄のような気がするが戦いの行方は把握しておきたい所だ……そんな時、第一階層で都市帝国を監視していたクルーより緊急の報告が入った。

 

『――ルリ艦長! 巨大構造物の動力炉に発光現象が発生!』

 

 ――メイン・ビューワーに映すと、惑星規模の巨大構造物の下部構造物の動力炉から無気味な光が放たれていた。

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 翡翠の要請を受けた『アルテミス』は、『バイオシップ』のどてっ腹に突撃をカマして本来の武装を使用しても問題のない空間――ボイドへと跳び、見事仕留めました……これにて『バイオシップ』事変も終了となります……後は『ヤマト」の決着のみです。


 では次回、第82話 愛の戦士たち前編

 3月1日に更新予定です。ではでは~。
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