宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル   作:soul

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蛇足編
翡翠の苦手なモノ 第一話 魔法少女も飛べば翡翠に当たる


 

 宇宙を席巻する巨大な白色彗星の中から姿を現す無数の戦闘艦を要する戦闘種族ガトランティスの脅威は、局部銀河群に属する銀河系の辺境にまで迫り――惑星サイズの白色彗星は辺境に位置する太陽系内へと侵攻すると第三惑星 地球に無条件降伏するように促した――だが、ガトランティスの暴挙を止めるべく多くの戦士が死力を尽くして抗い、中でも宇宙戦艦『ヤマト』は白色彗星に潜んでいたガトランティスの拠点である帝星ガトランティスへと突入し、見事地球を守り抜いたのだ。

 

 ――しかし、ガトランティスとの戦争で地球が受けた傷は大きく、無数の艦艇と多くの人材を失った……それでも生き残った人々は、明日を信じて力強く生きていた。

 

 その日、元宇宙戦艦『ヤマト』の乗組員だった加藤真琴は一人息子である翼と共に食材の買い出しの為に街へと出かけていた。ガトランティスとの激しい戦いの中で最愛の夫である加藤三郎を失ったが、それでも彼女は愛しい息子を心の拠り所に今日を生きていた。

 

「今日も良い天気で気持ちがいいね、翼」

「――うん!」

 

 こんなにも空は晴れ渡り、愛しい息子と共に歩く真琴は心が充足して幸福感を感じている……私にはこの子が居る。この子と共に生きて行けるだけで幸せを感じている……この幸せが何時までも続けば良い。

 

「――ねぇ、ママ」

 

 そんな拙い事を考えていると翼の呼ぶ声が聞こえて意識を向けると、翼は少し先にある公園を指さしていた……どうやら、公園で遊びたいようだ。

 

「……そうだね。時間はあるし、遊ぼうか?」

「――うん!」

 

 公園に設置されたベンチに腰掛けて一息入れる真琴。

 休息を取りながらも彼女の視線は息子の姿を見守っている……小さな公園のようだが、繁華街の近くに有るという立地条件が良いのか小さな公園なのにそれなりの数の親子連れが思い思いに過ごしているようだ……見れば翼も先に公園で遊んでいた子供と仲良くなって一緒に遊んでいるようだ……仲良くなった子供と笑顔で駆けっこをしている翼の姿が微笑ましい。

 

 そんな麗らかな何でもない平和な日々を享受していた真琴は、不意に背後に気配を感じて振り向く――そこには栗色の髪をウルフカットで揃えた翠眼の少女がどんよりとした雰囲気を纏って立っていた。

 

「……翡翠?」

 

 それは嘗て滅亡に淵に陥った地球を救う為に建造された宇宙戦艦『ヤマト』が遥か彼方の大マゼラン星雲にある救いの星イスカンダルへと向かう大航海の途中で保護した異星人の少女であった。

 

 袖の長いカジュアルなTシャツにダメージ・ジーンズという地球の一般的でありふれた服装を着た彼女は異星人である事を感じさせない程に違和感なく周囲に溶け込んでいたが、なんというか普段の活発さを感じさせず妙に疲れ切った雰囲気を纏っていた。

 

「――ど、どうしたの翡翠?」

「――真琴ねぇちゃん、ぐ・や・じ・い・よぉぉお!」

 

 翠眼に涙を貯めた翡翠はそう言いながら真琴の胸に飛び込んできて彼女は困惑した……『ヤマト』で保護していた頃は保護者兼お目付け役として翡翠と一番多く接しており、その所為でこの不可思議娘(翡翠)のハチャメチャぶりを間近で見て来た――『ボーグ』とかいうサイバネティックス・ゾンビを相手に縦横無尽の活躍を見せて、『Q』と呼ばれる存在と相対した時は超常の力を持つ存在相手に一歩も引かない胆力を見せた……その翡翠が普通の子供のように感情を露にしてべそをかいている……まぁ、半べそをかきながら人の服で鼻水を拭いていた不埒者には鉄拳を落としたが。

 

 閑話休題

 

 突然のリトル台風(翡翠)の襲来に最初は驚いた真琴だったが、翡翠は『ヤマト』に居た頃から何かしら騒動を起こしていた事もあり、進歩の無い奴だと嘆息しながらも据わった目をしながらグチグチと文字通り愚痴を吐いている腐れ縁娘(翡翠)を翼と二人で何とか家まで引っ張って来て、リビングのテーブルの前に座らせた。

 

 ……暖かい飲み物を用意した真琴はお盆に人数分の飲み物置いてキッチンからリビングへと向かうと、何やら騒々しい声が聞こえて来る……見ると翡翠に擽られた翼が きゃっきゃと騒ぎながらも反撃とばかりに翡翠を擽り返していた……息子も成長したなぁと、うんうんと頷く真琴……翼の将来が心配である。

 

「……で、一体何があったのよ?」

 

 とりあえず擽り合戦をしている二人を引き離した真琴は、用意した飲み物を一口飲んだ後で目の前で不貞腐れている翡翠に問い掛けると、それが呼び水になったのか翡翠はなぜこんなにやさぐれているのかに付いて話し始めた。

 

 


 

 

 全てを見通す女神と称される高位存在である『テレサ』から古代アケーリアス文明の遺産の力を振るって宇宙を席捲する彗星帝国『ガトランティス』と、その陰に潜むこの世の理から外れたモノ、 翡翠の宿敵であり けっして相容れない“奴ら”が用いる巨大な生体航宙艦『バイオ・シップ』の情報を得た翡翠は、単身で挑み――手痛い敗北を期した。

 

 古代アケーリアス文明の遺産である滅びの箱舟を押さえたガトランティスの無尽蔵な戦力と想像以上に肥大化した『バイオ・シップ』の脅威の前に翡翠が取った行動は以前に縁の出来た並行世界の勢力を援軍として呼び込み――勝利を得る事が出来た。

 

 ――だが『破滅の獣』との戦いは、翡翠に大きな懸念を抱かせる事になった……今回戦った『バイオ・シップ』はこれまで相手にして来た『バイオ・シップ』よりもはるかに巨大であり、その肥大した船体は内宇宙用に制限されていたとはいえリバィバル級殲滅型戦艦である『アルテミス』の攻撃でも仕留める事が出来なかった。

 

 もし――もしも、“奴ら”が擁する全ての『バイオ・シップ』どもが『破滅の獣』のように肥大化する可能性があるとしたら……“奴ら”との戦いはより厳しいモノになるだろう。

 

 ならば全ての『バイオ・シップ』に肥大化する可能性があると想定して、対策を練るべきだろう――そうと決めた翡翠の行動は迅速だった。

 

 どうせ趣味の研究しかしていないだろうプロフェッサーを抱き込んで、リバィバル級の強化プランを練り始め――そんな翡翠にプロフェッサーは一つのプランを示した。

 

「……だからって、何で私が放浪の旅に出なきゃならないんだよ」

 

 プロフェッサーが用意した探査任務に特化した航宙艦―『探査艦―03』のブリッジで翡翠は艦長席に座りながら一人 嘆息する……こうなったのも、面白がって『探査艦―03』を用立ててニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべるプロフェッサーと、『バイオ・シップ』の肥大化の可能性をレポートにして送ったと言うのに人手が足りないからと彼女を担当者へと祭り上げた理不尽の権化たる実の姉の所為であった。

 

「……このままバックレてやろうか……けど、お姉ぇの事だから逃げたら地獄の果てまで追いかけて来そうだし」

 

 唇を尖らせながら不穏な事を計画する翡翠であったが、彼女よりも強大な能力を持つ姉相手に逃げ切れるとはとても思えず肩を落として落ち込む……プロフェッサー一人でも厄介なのに、姉まで加わると手に負えない もはや災厄となる……今回 翡翠に与えられた任務は、最近発見された異なる世界 並行宇宙において観測された未知なる現象の解明――これまでの物理法則を逸脱した現象を起こすメカニズムを解析してリバィバル級を始めとした流体金属の船体に含有されているナノマシンに応用すれば船体の強度を増す事も可能となる。

 

 超空間『バルク』に浮かぶ並行宇宙は文字通り無数にあり、希少資源やこれまで知りえなかった性質を持つ素材や法則を求めて、翡翠の乗る『実験艦』の原型でもある無人探査艦群による調査は行われているが、相手は無数の並行宇宙……いつ終わるのか、現在何処まで調査が終わったのかは見当も付かない。

 

 そんな中で新たな発見があり、彼女達が知る法則を越えた未知の現象と、それを操る知的生命体の存在が確認されたのだ。

 

 しかも その現象は一つではなく複数の並行宇宙において確認され、無数の並行宇宙には未だ彼女達が知りえない法則がある事を物語っていた――そんな現象が確認された、もしくは有望な並行宇宙には有人の探査艦が調査に向かうが、無数の並行宇宙相手では常に人手が足りず……そんな阿鼻叫喚な所に能天気に厄介な事案を持って行った翡翠は彼女の姉の怒りを買い――姉権限で並行宇宙の友人探査に組み込まれたのだ。

 

 ……姉による怒りの任命に逃げ出す事もかなわず(逃げた所で姉の旧友である修行僧と共に即座に捕獲される運命であった)ぼやきながらも探査任務をこなす翡翠は幾つもの並行宇宙へと赴いて未知の現象を操る現地生命体を監査するも、様々な事があって中々彼女の目的に適う存在と接触する事が出来なかったのだ。

 

 ……そして今 翡翠の前に何個目かの生命体が居住可能な惑星があった。

 

「あれが問題の惑星か……」

 

 この並行世界の局部銀河に相当する棒渦巻銀河の辺境宙域に位置する恒星系の第三惑星……しかし青い輝きを放つ惑星の光に反比例して翡翠の気分はどん底であった。

 

「……あの惑星で未知の法則によって導き出される力――現地では『魔法』と呼ばれているか……」

 

 『魔法』――宇宙の大原則である物理法則では説明できない現象を引き起こす神秘の力……だが、翡翠にとって『魔法』は鬼門のようなモノであった。

 

「……やれやれ、こうしていても仕方がない……お仕事をしますかね」

 

 


 

 

 第1話 魔法少女も飛べば翡翠に当たる

 

 

 私たちの町には――魔法少女がいる。

 

 最近街に現れる異形なるモノ――強靭な肉体を持ち、常人を遥かに凌駕する力で街に災いを齎す埒外の怪物。世界征服を企む悪の組織『エノルミータ』と戦う正義の魔法少女達『トレスマジア』の活躍によって街の平和は守られていた。

 

 悪の組織の怪人と戦う彼女達三人の姿は人々に勇気を与え、彼女達の凛々しく凛とした姿は多くの少女達の憧れとなっていた――しかし光が輝けば、その分 闇は濃くなる。

 

 街並みから少し離れた場所、再開発が決まって更地にされた場所に複数の人影があった――頭部に大きな二本の角状の突起物とコウモリと星の意匠が施されたチョーカーまでは良いが、それ以外の露出が激しい少女と、グリーンの軍服をモチーフにしたこれまた露出が激しい衣装を纏った少女と、彼女達に比べれば幼い風貌のアリス風のドレスを着こんだ少女が黒い素材に星をあしらった人形を抱えながら空中に浮かぶ三人の人影を見上げている。

 

「……おやおや、貴方達を招待した覚えはないんですがね」

「こんな所で何をやっているの、『エノルミータ』! 悪い事は、魔法少女『トレスマジア』が許さないよ!」

 

 頭部に二本の大きな角状の突起物を持つ悪の組織『エノルミータ』の構成員『マジア・ベーゼ』の軽口に反応せずに上空に居る三人の煌びやかな衣装を纏った少女の一人である『マジア・マゼンタ』が宣言するが、地上から魔法少女達『トレスマギア』を見上げながら『マジア・ベーゼ』とその隣に立つ軍服のような装いの少女『レオパルト』はクスクス半笑いを浮かべている。

 

「クスクス、ずいぶんと戦意が旺盛な事で……やっぱり魔法少女はそうでなくては」

 

 傍から見れば相手を煽っている様しか見えない『マジア・ベーゼ』達の態度に、『トレスマギア』の一人であるウェーブのかかった長い髪と黄色の衣装を纏った『マジア・サルファ』が透き通るような笑みを浮かべる。

 

「……御託はええねん――そろそろ白黒つけたらぁ!」

 

 彼女の魔力が高まると右腕全体が雷光を纏い、それを覆う巨大な手甲が具現化する――右手を覆う巨大な手甲を引き絞ると一気に加速して『マジア・ベーゼ』達へと向かって行き、それに続く形で魔力で生み出した槍を構えた『マジア・マゼンタ』と大気中の水分を凍らせて作った氷剣を構えた『マジア・アズール』がそれに続く。

 

「――洒落臭い、返り討ちにしてやんよ」

 

 『マジア・ベーゼ』の隣に立つ『レオパルト』が口元を隠していた手を『トレスマギア』達に向けるとその手には小さな二連装の拳銃が握られており――『トレスマギア』達に照準を合わせると彼女の周囲の空間が歪んで無数の巨大な銃口が姿を現して迫り来る『トレスマギア』を迎撃せんとしたその時――両者の間に光が現れ――光が収まった時、あまりの眩さに動きを止めた『トレスマギア』と『エノルミータ』両陣営の間に一人の人影が空中に浮かんでいた。

 

 肩まで伸びた栗色の髪をウルフカットに整え、白を基調としたボディスーツの所々に蒼い結晶体を散りばめた幼さの残る少女が光と共に姿を現してそのまま空中を浮遊している。

 

 光と共に突然姿を現した謎の少女は、空中に浮遊しながら閉じていた瞼を開いて翠色の瞳で周囲を警戒する『トレスマギア』や地上に謎の少女の出方を伺っている『エノルミータ』を見回すと笑みを浮かべた。

 

「やあ、楽しそうにジャレっている所に失礼」

「……だれ?」

「私はクリス。魔法と呼ばれる力に興味があってね――さぁ、()ろうか」

 

 突然現れた見知らぬ少女に戸惑いながらも問い掛けた『マジア・マゼンタ』に向けて少女は透き通るような笑みを浮かべてそう宣言した。

 

 

 





 どうもお久しぶりです。しがない小説書きのSOULです。

 現在。マクロスF 迷い子たちのディソナンスを書いているのですが、仕事が激務でストレスが溜まりまくった結果、こんなモノが出来てしまいました。

 まぁ、今回は短いのでお付き合いください。

 次回 第二話 気を付けろ、翡翠は急には止まらない

 のんびり書こうと思ってますので、気長にお待ち下さませ。ではでは~。
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