宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル 作:soul
都市が放つ人工の光から離れた場所、再開発が決まって更地にされた何もない空間に真円を描く月が照らし出すは魔法と呼ばれる不思議な力を使って悪と戦う三人の魔法少女『トレスマギア』と、自らを悪と称する敵対者『エノルミータ』構成員の三人の少女――そして光と共に姿を現した異物、クリスと名乗った謎の少女は空中に浮遊しながら透き通るような……まるで表面上は笑っているかのような作り物じみた笑みを浮かべている。
「……突然現れて何を言ってるんや、頭大丈夫か あんさんは?」
訝し気に眉を寄せた『マギア・サルファ』がクリスと名乗った不審な少女に不信感丸出しで問い掛けるが、当のクリスは笑みを浮かべるだけで何も答えずに右手を高く掲げると彼女の周囲に無数の光球が出現した事にこの場に居る何人かの顔色が変わる。
「――さあ、
にこやかに笑いながら人を食ったようなセリフを吐きながらクリスは無数の光球に指示を送り、待機状態であった無数の光球は指示に従って輝きを増すと――周囲に向けて無差別にエネルギー弾をバラまき始めた。
「――な、何でやめてよ!?」
「……くっ、これは…」
「――二人とも、ウチの後ろに!」
突然現れて意味不明な事を言った後、クリスと名乗った少女の周囲に浮かぶ無数の光球から乱雑に撃ち出されるエネルギー弾を避けながら、戸惑う『マジア・マゼンタ』や『マジア・アズール』を背後に庇う『マジア・サルファ』が障壁を展開して襲い掛かって来る光弾を防いた。
――そして無数の光球から放たれるエネルギー弾は、地上に居る『マジア・ベーゼ』や『レオパルト』にも降り注いでいた。
「はぁわわわ!?」
「――『ベーゼ』ちゃん!?」
上空から降り注ぐ無数のエネルギー弾に泡を食ってオロオロと回避する『マジア・ベーゼ』を背後に庇った『レオパルト』は手に持った二連装の拳銃をエネルギー弾に向けると彼女の周囲の空間が歪んで大量の銃口が顕現して発砲――降り注ぐエネルギー弾と接触して無数の爆発を起こした。
「……中々手数が多いじゃないか お嬢さん、君も『魔法少女』かな?」
「……突然現れて舐めた事をしてくれんじゃねぇの、ギッタンギッタンにしてやんよ!」
獰猛な笑みを浮かべた『レオパルト』は飛翔し、空中に浮かぶ白いボディスーツを着込んだクリスと名乗る少女へと向かいながら手に持った二連装の拳銃の引き金を絞り――『レオパルト』の周囲に再び大型の銃口が大量に出現すると発砲――無数の巨大な銃弾がクリスと名乗る少女へと向けて殺到して大爆発を起こした。
「けっ、ザマァみやがれ」
無防備に大量の銃弾を受けて爆炎に消えた慮
「……面白い手品だが、これくらいじゃダメージを受けてあげる事は出来ないな――せめてこれくらいの手数を見せてくれないとね」
空中に悠然と佇むクリスはにやりと笑うと、周囲に浮かぶ無数の光球からこれまで以上のエネルギー弾が撃ち出され――空中に居る『レオパルト』や地上で見上げている『マジア・ベーゼ』のみならず少し離れた空中で事態の推移を見ていた『トレスマギア』の三人にも襲い掛かる。
「――『レオ』ちゃん!?」
「――くっ!?」
「――こっちにも来た!?」
それぞれが襲い来るエネルギー弾を回避していくが、エネルギーの弾幕は執拗に『トレスマギア』の三人と『エノルミータ』の二人を追尾して、回避しても弾幕は尽きる事を知らなかった。
そんな光景を少し離れた場所から見ているアリス風のドレスを纏った『ネロアリス』に抱えられた黒い人形――特徴的な二つの長い耳と長い袖を持つ黒い猫の人形のような『エノルミータ』の構成員をサポートする彼もしくは彼女は『マジア・ベーゼ』や『レオパルト』だけでなく『トレスマギア』の三人を嬲るように攻撃を加えている栗色の髪の少女を見ながら目を細めた。
「……何なんだアイツは。新たな魔法少女……ではないな、操る力に魔力は感じられない」
悪の組織のサポートをしている黒い猫の人形のような姿をしている『ヴェナリータ』は、自分を抱える『ネロアリス』に視線を向けると彼女は頷いて己の力を行使した。
地上に強力な未知のエネルギー反応を感じたクリスは地上に視線を向けると そこにはいつの間にか一軒の洋風な建物が存在しており、事前に『トレスマギア』と呼ばれる少女たちと『エノルミータ』と呼ばれる少女たちが対峙している場所の詳細なスキャンをしてその場所に他の者や建造物がない事を確認していた翡翠は一瞬眉を寄せるが、今相手にしているのは『魔法』と呼ばれる未知の現象を引き起こす存在であり、話に聞く『魔法』と呼ばれる未知の現象を引き起こす相手ならば何もない場所に建造物を作り出すなど造作もない事なのだろうと納得する。
「……さて、これからどうする気なのだろうね――おや?」
ようやく調査対象である『魔法』らしい現象を確認した事で興味を引かれた翡翠の隙を突いた形で至近距離に顕現したのは人間よりも一回り大きなぬいぐるみだった……何故ぬいぐるみ? 戦いに不釣り合いな可愛らしい(かは疑問だが)ぬいぐるみは反撃せずに様子を見ていたクリスを抱き抱えるとそのまま地上の洋風の建物の中へと飛び込んで行った。
「――よっしゃ、ナイスだ 『アリス』!」
その光景を見ていた『レオパルト』が喝采を上げ、クリスが洋館内へと連れ込まれた影響からか大量のエネルギー弾をバラまいていた光球たちは機能を停止して周囲に静寂が戻り、必死にエネルギー弾を避けていた『トレスマギア』の三人や『マジア・ベーゼ』も ほっと一息つく。
「……終わったの?」
「……どうやら『ネロアリス』が彼女を『ドールハウス』に閉じ込めたみたいね」
周囲にエネルギー弾が現れなくなった事で一息付いた『マジア・マゼンダ』に氷剣で捌いていた『マジア・アズール』が剣で捌きながら見た光景を説明していると、少し離れた場所でエネルギー弾を防いでいた『マジア・サルファ』も合流してきた。
「……結局何なんやアイツは? 見た所『エノルミータ』の奴らにも攻撃を加えよったようやし、仲間割れかいな?」
突然現れて攻撃を加えて来たクリスと名乗った正体不明の少女に付いて推測する『マジア・サルファ』……しかしクリスのような好戦的な存在の噂など聞いた事もないし、彼女のした事と言えば突然攻撃を仕掛けて来ただけでその目的すらも分からない……彼女の正体について様々な予想を立てて議論するも、結局何も分からなかった。
戦闘空間に突如現れた洋館の中に捕らわれたクリスは、興味深そうに周囲を見回していた……戦闘の最中にこれだけの建築物を顕現させるたけでなく、外部の様子を感知出来なくなった事から位相をズラしたのかそれとも別の手段を用いたのか、何にせよ先ほど戦った軍服姿の下半身が涼しそうな少女が召喚する大口径の銃口など、アレは明らかにこの空間とは別の空間から姿を現していた。
「……何にせよ、閉じ込められたと言う事か」
中々小癪な事をしてくれるじゃないか、クリスの持つ超感覚も封じられて外の様子も近く出来ず、母艦である『実験艦―03』とのリンクも途切れている……どうやらこの洋館の中は外の世界と完全に隔離されているようだ――言うなれば、この洋館は外の世界とのかかわりを断つ結界といった所か。
「……しかし、この程度の結界で私を閉じ込め様だなんて舐められたモノだ」
あの空中に居たヒラヒラした衣装を纏った奴らか、地上に居た えらく涼しげな衣装の奴らのどれかの仕業だろうが――この程度の結界でこの私を――『
歩幅を開いて四肢に力を籠め――白いボディスーツの散りばめられた蒼い結晶体が輝きを増してクリスを中心に紫電が走る――全身に力が漲り――クリスはそれを一気に解放した。
「――はぁああああああ!」
悪の組織『エノルミータ』の気配を察知した魔法少女『トレスマギア』は、気配を辿って再開発が予定されている空き地へと赴き――『エノルミータ』の構成員である『マジア・ベーゼ』と『レオパルト』そして最近姿を現した『ネロアリス』を発見した『トレスマギア』の『マジア・マゼンタ』と『マジア・アズール』そして『マジア・サルファ』は悪を倒すべく攻撃を仕掛けようとした時に姿を現したクリスと名乗る見知らぬ少女の攻撃を受けた。
無数の強力なエネルギー弾の弾幕の前に防戦一方になったが、今は『エノルミータ』の『ネロアリス』の能力で作られた洋館の中にクリスを閉じ込めた事により小康状態となった。
「……結局何なんやアイツは? 見た所『エノルミータ』の奴らにも攻撃を加えよったようやし、仲間割れかいな?」
『マゼンタ』達と合流した『サルファ』は訳が分からない事を言いながら攻撃を仕掛けて来たクリスと名乗るはた迷惑な女の正体を推察する……あの行動のハチャメチャ具合から『エノルミータ』の一味かと思ったが『レオパルト』は本気で攻撃を加えていたし、今も『ネロアリス』は古い洋館を作り出してクリスを閉じ込めている……つまり『エノルミータ』にとっても彼女は敵と言う事になるのか。
クリスと名乗る未知の敵に対して『トレスマギア』の三人で考察していた時、突然空気が変わった――密度を増したかのように、まるで空気の粘度が増したかのように、『トレスマギア』の三人の周囲の空気が重苦しいモノに変わる。
「……な、なに? 周りの雰囲気が変わったような…」
「――洋館だ、『ネロアリス』が作った洋館の中から何かが溢れ出しているんだ……」
「……何やこれは? 魔力とも違う……あのクリスとかいう女の仕業かいな……」
『トレスマギア』の三人の目は、地上に建つ『ネロアリス』によって造られた洋館へと向けられた。
『エノルミータ』の構成員である『ネロアリス』の能力であるドールハウスを使って結界を作って、相手の認識を阻害して望んだシチュエーションを生み出す能力である……言わば洋館に捕らわれた時点で相手は文字通りかごの中の鳥なのだ。
「――やるじゃねぇか、『アリス』!?」
「――すごいよ、『アリス』ちゃん!」
突然襲ってきた不埒者《クリス》をドールハウスに閉じ込めた事により、『ネロアリス』の下に『マジア・ベーゼ』と『レオパルド』が集まってそれぞれが『ネロアリス』を労っていたが、『ネロアリス』に抱えられている黒い人形『ヴェナリータ』はドールハウスから目を離さずに三人に向けて警告が出した。
「……どうやら、そう簡単にはいかないようだ――来るよ」
『ヴェナリータ』の警告を受けて三人の視線がドールハウスへと向いた時に周囲に強烈なプレッシャーが放たれて、それは空間そのものにすら影響を与えて突風となって『エノルミータ』の三人を襲う。
『……くっ!?』
『――『ベーゼ』ちゃん、ドールハウスが!?』
突風に晒されていた『マジア・ベーゼ』が『レオパルト』の声に視線を向けると、ドールハウスの外壁に亀裂が入るのを見て眉を寄せる――まさか、アリスちゃんの結界でも押さえられないの?
『――はあぁああああ!!』
壁に入った亀裂を驚愕の目で見ていた『マジア・ベーゼ』の耳が裂帛の気合の声を捉えると共に壁に亀裂が入ったドールハウスアが一回り大きくなったかと思うと、内部圧力に耐えられずに破砕して周囲に破片を巻き散らした。
「――くっ!?」
爆風が収まった後に『マジア・ベーゼ』が見たモノは、深紅の瞳を爛々と輝かせるクリスと名乗った少女の姿だった……力づくでドールハウスの結界を破ったのか……だが『ベーゼ』は首を傾げる――今もそうだが、彼女からは魔力を全く感じないのだ。
「……やっぱり、彼女は魔法少女ではないの?」
『マジア・ベーゼ』の疑問の声に答える事無く ゆっくりと歩き始めたクリスは、吹き飛ばされたドールハウスの前で呆然としている『ネロアリス』の前に立った。
「――何をする気!? 『アリス』ちゃん逃げて!」
叫ぶ『ベーゼ』を尻目に右手を上げたクリスはドールハウスが破壊されたショックで呆然としている『ネロアリス』の頭に右手を置いた。
「……中々面白かったけど、あの程度じゃ捕まってあげられないなぁ~」
ポンポンと『ネロアリス』の頭を軽く叩いた後、クリスは『マジア・ベーゼ』や『レオパルト』に視線を向けて「――さぁ、君達はどんな魔法を見せてくれるのかな?」と心底楽しそうに笑って一気に加速――足首の力だけで一足飛びに『レオパルト』に肉薄――予想以上の機敏さに顔を顰めた『レオパルト』は右手に持った二連装の拳銃の銃口をクリスへと向け――銃口はクリスの眉間を至近距離で狙った。
「――ぶっ飛べ!」
ほぼゼロ距離で引き金を引いて連装銃より銃弾が撃ち出されるが、まるで引き金を引くタイミングが分かっていたかのようにクリスは回避して『レオパルト』の軍服の腹部にそっと手を置く。
「残念 当たらないんだな、これが」
「――かはっ!?」
「――『レオ』ちゃん!?」
腹部に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされる『レオパルド』。
ゴロゴロと転がる彼女を心配した『ベーゼ』が駆け寄って助け起こそうとするが、その前に体を起こした『レオパルト』が憎々し気に ゆっくりと近付いて来るクリスを睨む。
「……やってくれたじゃねぇか……殺す、ぜってぇ殺す……」
睨み据える「レオパルト」と『マジア・ベーゼ』の前に立ったクリスは、にやりと笑みを浮かべた。
「……もう少し遊んであげても良いんだけど、他の子が暇そうにしているからね――また
にやりと怖気の走る笑みを残してクリスは飛翔してその場から飛び立ち……後には憎々し気に睨む『レオパルト』と困惑した表情を浮かべる『マジア・ベーゼ』が残された。
どうもしがない小説書きのSOULです。
最初に明記しておきます――この話は6割がギャグ、3・5割が勢い、0・5割のシリアスでお送りいたします。
それにしても翡翠の悪役ぶりが際立つ話でした……魔法少女達も気の毒に。
それと、にぼし蔵さま誤字報告ありがとうございます。
今はあまり時間が取れませんが、少しづつでも修正していきます。
次回 第三話 厄介な事は、大体 翡翠の所為 気長にお待ちくださねぇ~。