潮田 渚の姉は楯の乙女   作:SAKULA

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メインストーリー、面白いなあ……。契った……!ありがとうございます……。
もうすぐ舞台も始まりますし、ドキドキですね。


8話 藍というリリィ

ある日のこと、私、藍、瑤様、千香瑠様は射撃場にて訓練をしていた。

 

「ふー、全部ど真ん中とはいかなかったけど、だいたいはど真ん中はいけたかな。」

 

「ええ、とっても上手よ。美湖ちゃん。」

 

「ありがとうございます、千香瑠様。それにしても、千香瑠様はすごいですね。ほぼど真ん中じゃないですか!」

 

千香瑠様の射撃は正確だ。

なんなら、私や瑤様よりも上手いし、エレンスゲでもトップクラスといえるだろう。

千香瑠様は、エレンスゲで初めて百合ヶ丘の次期獲得候補リスト入りしたリリィ。

それに、あの御台場迎撃戦に参加したものすごい経歴の持ち主。

この迎撃戦は、1年生だけで民間人を避難しないといけないにも関わらず、戦死者は0人。

まさに伝説!これが去年の出来事だなんて信じられない。

 

「うん、千香瑠のはほぼ的の中心を射抜いてる。」

 

「千香瑠すごーい。」

 

「皆さん……褒めてくれてありがとうございます。……訓練の時は結構上手くいくんだけどね。」

 

訓練の時……か。千香瑠様は本番に弱いタイプなのかな?

あんなに射撃が上手いならもっと自信を持ってもいいと思うけど、なにか理由があるのかな?

 

仲良くなったといえど、人には言えないことだってある。

……私も、実際にあるし。

 

「今日の射撃訓練、結構みんな上達しましたよね。藍も最初はバラけていたけど、最後は真ん中に集まってきたし。」

 

「えへへー、らん、がんばったよ。えらい?」

 

「うん、えらいえらい。」

 

私は藍の頭を優しく撫でる。

うん、可愛い。

 

「そろそろ控え室に戻らない?」

 

「そうですね、瑤様。」

 

射撃訓練を終え、私たちは控え室に戻ることに。

ヘルヴォルの控え室では、一葉と恋花様がなにかを相談していた。おそらくだけど、訓練の内容とかだろう。

 

「射撃訓練、やってきたよ。」

 

「ただいま。」

 

「ふふ、3人ともすっごく上手でしたよ。」

 

「千香瑠こそ、すごい射撃の腕。びっくりした。」

 

「そうなんですよ!千香瑠様、かっこよかったです。」

 

訓練だけ見ると、千香瑠様はエレンスゲでもトップクラスだ。序列だって、私よりも上のはず。

 

「……訓練のときくらいうまく、本番でも動けたらいいんですけど。」

 

千香瑠様、やっぱり本番に弱いタイプなのかな。こういうのは、無理に聞かない方がいいけど。

 

「………。」

 

ん?恋花様、黙っているけどシミュレーションで千香瑠様のことで気になるところでもあったのかな?

 

「お疲れ様です、皆様。ちょうど今、戦闘シミュレーションの結果を受けて、今後の課題を考えていたところなんです。」

 

「複雑な作戦行動はあたしたちで担当して、藍がシンプルに動けるフォーメーションを状況別に組み直そうと思ってさ。」

 

「なるほど……。いいですね、それ。」

 

「うん。いい考え……わたしが、藍が分かりやすくなるように、フォーメーションをまとめてみる。」

 

瑤様がまとめてくれるんだ!これはすごく助かる!

 

「あ、それは助かるわー。瑤、ありがとう!」

 

「この動物さんクッキーのように……。

『オペレーションどんぐりさん』とか、『オペレーションアヒルさん』とかかわいい名前も考えてみる。」

 

「かわいい!覚えやすいですね!」

 

「え……それ、なに、戦場で叫び合う気なの?」

 

あれ?不評?

私はかわいいし、覚えやすいから結構好きなんだけどなぁ……。オペレーションどんぐりさん、オペレーションアヒルさん。

 

「あ、それいい。かわいい。」

 

「ふふ、私のクッキーがヒントになるなんて光栄だわ!」

 

「よし、それでいきましょう!!」

 

「さんせーい!」

 

恋花様は、不評みたいだけど、他のみんなには好評みたい。瑤様の案、すごく素敵だし!

 

「みんな、ノリノリだな!」

 

「うー……でも、またべんきょーするの?」

 

「藍ちゃんは、お勉強きらい?」

 

「敵を倒すのに、お勉強いらないよ。

だだだー、って走って、ばーんってやっつけて、どんどん楽しくなってくる。でも、色々考えて戦おうとすると頭の中がごちゃごちゃしてくるし、大変になっちゃうよ。」

 

自分のセンスに頼るスタイルか……そういうリリィもいるけど、結構危ないよね。

 

「被害を最小限に抑えるために必要なことよ。」

 

「ひがい?」

 

「そうだよ、藍。私たちはヘルヴォル。たくさんのモノを守る戦いをするの。」

 

「美湖の言う通りだよ。藍や、周りの人が傷つかないように。」

 

「傷?らん、そういうの平気だよ。」

 

「え?」

 

傷つくのが………平気………?

 

「死ぬのも怖くないよ?らん、えらい?」

 

「…………。」

 

私もだけど、一葉も恋花様たちも思わず黙り込んでしまった。

死ぬのが……怖くない……?本当に……?

 

「あれ?みんな、どうしたの?」

 

「……ううん、なんでも……。」

 

「じゃあ、らん、もう少しダンスの練習してくる。今ね、新しいダンスを覚えるんだ。」

 

「ああ……うん。じゃあ、そうね。行ってらっしゃい。」

 

「今度見せてあげるね。」

 

「ええ、楽しみにしてるわ。」

 

「いってくる!」

 

藍は笑顔で、控え室を去っていく。無邪気な子供のように……。

 

「……行っちゃった、わね。」

 

「……死ぬのが怖くないって、強がりで言ってるようにはみえなかった……。」

 

「……彼女、座学はほかの生徒と一緒に受けていないそうです。

なんでも、知識がまだ、義務教育修了レベルにないとかで一一。

 

ある企業が経営する保護施設で育った、ということですが一一。

それ以上のことはなにも。」

 

「本当に……?」

 

「え……?」

 

藍のこと、私は調べたし、一葉とも少しだけ話したことがある。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━回想

 

「かーずは。」

 

「美湖?どうしたの?」

 

「まーた、教導官に呼び出されたの?」

 

「ええ、まあ。」

 

もごもごとする一葉。かなり、重要なことか……。

だとすると、可能性が高いのは……。

 

「藍のこと?」

 

「え?」

 

「やっぱり、そうなんだね。私も藍のこと気になったからちょっと調べたの。シークレットも結構あったけどね。」

 

「………うん。」

 

「生まれながらの強化リリィ……。退治の頃から実験対象って反吐が出る。G.E.H.E.N.A.がこんなことまでやっていたなんて……。」

 

まさにマッドサイエンティスト……。好奇心の暴走なんて、言えたもんじゃない。

私たちリリィをなんだと思っているのか……。

 

「藍は、保護施設で育ったみたいだけど……その保護施設は……。」

 

「アウニャメンディシステマス社……でしょ?」

 

「多分……。」

 

アウニャメンディシステマス社は、エレンスゲの運営に関わっている。

藍がいた施設はここの可能性が高い。

 

「このこと、先輩たちには?」

 

「話すつもり……。」

 

「そっか……。私にもできることがあったら教えてね。」

 

「もちろんだよ。」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

…………藍は、生まれた時から地獄のような扱いをされている。本人は、何も知らない、気づいていない。

 

「……。」

 

「一葉?」

 

「あ、いえ、なんでもないです。その、藍のことなんですが。」

 

「……ま、いいよ。そのうちで。誰にだって複雑な背景のひとつやふたつはあるよ。

あたしたちだって……。」

 

「……。」

 

複雑な……背景……。そう、だよね……。

 

「……私、ちょっと行ってきます。」

 

「千香瑠様?」

 

「大丈夫。少し、お話してくるだけ。」

 

「あの、千香瑠様……!私も行きます。」

 

「いいわよ、一緒に行きましょう、美湖ちゃん。」

 

私と千香瑠様は、藍のところへと向かった。

藍は、外で楽しくダンスの練習をしていた。本当に無邪気だ。

それを見た千香瑠様は拍手をする。

 

「上手上手。」

 

「藍、上達したね。」

 

「あ、千香瑠。美湖。」

 

「そのステップできるようになったのね。」

 

「うん、たくさんたくさん、練習したから。それに、美湖のアドバイスすごくよかったから。」

 

「本当?それは嬉しいな。」

 

笑顔が眩しいなぁ、本当に。無垢で怖いものがない。だからこそ、不安になってしまう。

 

「ダンス、楽しい?」

 

「うん。」

 

「……ヘルヴォルに入って、よかった?」

 

「うん!」

 

「そっか。それはどうして?」

 

「えっとね、戦いのないときはいつも退屈だなーって思ってたけど。みんなといると、いろんな楽しいことを教えてくれて、楽しいことがいっぱいになったから。だから、入ってよかった。」

 

「……戦いは、楽しい?」

 

「うん、すっごく。どかーん、ばしーんって、いっちばん楽しい。」

 

ヘルヴォルの時と同じくらい楽しそうだ話す藍。

それでも、藍にとっては戦いの方が楽しいんだ。

 

「「……。」」

 

「千香瑠と美湖は違うの?どうして、悲しそうな顔をするの?」

 

「……私は、戦うのを楽しいと思ったことがないから。藍ちゃんが羨ましくて、ちょっと怖いの。」

 

「私もだよ。戦いは、私にとっては怖いもの。友達が、仲間がいなくなるかもしれない……。そう思うと……ね。」

 

「こわい?千香瑠、藍のこと、怖いの?嫌い……?美湖も、藍のこと、怖い?嫌い?」

 

「ううん、そうじゃないよ。大好き。」

 

「私も。藍のこと、怖くないし、大好きだよ。だって、こんなに可愛いだもん。」

 

藍を不安にさせないように優しく頭を撫でる。

……私の大切な友達。大好きな仲間だ。

 

「ヘルヴォルの人たち、みんな好きよ。一葉ちゃんの正しさや、美湖ちゃんの前向きなところ、恋花さんの気遣いや、瑤さんの芯の強さ、藍ちゃんの純粋さ。すごく素敵だと思う。美しいと思うの。

だから、誰にも、もちろん藍ちゃんにも、死んでほしくなくて一一。」

 

目の前でそう言われると、なんか恥ずかしいんだよね……。でも、千香瑠様は私たちのこと、ちゃんと見てるんだ。

だから、こうやってみんなの好きなところがスラスラと出てくるんだ。

 

「千香瑠様の優しさ、とても素敵ですよ。」

 

「ふふ、ありがとう、美湖ちゃん。」

 

みんな、ヘルヴォルに必要なんだ。一葉が選んだこのメンバー。

欠けてはいけない、大切な人たち。

 

「私は、誰にも、もちろん藍ちゃんにも、死んでほしくなくて一一。だから、あのね、藍ちゃん。

 

死ぬのが怖くないなんて、言っちゃダメ。藍ちゃんが死ぬの、私は怖いよ。死んじゃったらとっても悲しくなるから。私たちは……いつ死んでもおかしくないんだから。だからこそ、ちゃんと、死ぬのを、怖がらないとダメなんだと思う。」

 

「千香瑠様……。」

 

「……千香瑠、なんで泣いてるの?」

 

「………ごめん、私も、わからない。……。」

 

「泣かないで、千香瑠。よしよししてあげるから……。」

 

「うん……ありがとう……。」

 

そして………数日が経過した。

ヒュージが現れ、私たちは出撃していた。

 

「ヘルヴォル!目標地点に現着しました!」

 

「1時方向に複数のミドル級ヒュージ発見!」

 

「ヘルヴォル各位、事前の作戦計画に基づいて展開します。

藍、くれぐれも突出した行動は控えるように。」

 

一葉が藍が暴れないように注意をする。

 

「うん!しないよ!藍が死んじゃうと、千香瑠が泣いちゃうから。なるべく死なないようにする!」

 

なるべく……か。でも、少しは分かったのかな。そうだと嬉しいな。

 

「ん?泣く?」

 

「あ!えーと、こちらの話。気にしないで?」

 

「そうですよ。今はヒュージに集中ですよ。先輩方。」

 

「皆様、『オペレーションあひるさん』のご用意を。」

 

「「「「了解!!」」」」

 

「……これを恥ずかしいと思うあたしがどうかしてんのかな……。いや、ない!絶対おかしいのはあたしじゃない!」

 

恋花様、何か言ってるけどスルーしよう。

オペレーションあひるさんの準備をしないとだし。

 

「恋花。」

 

「はいはい分かってますよ。『オペレーションあひるさん』恋花、了解!」

 

「では、リリィとしての誇りを胸に一一」

 

「ヘルヴォル、しゅつげーーーき!!」

 

あ、一葉の命令、藍に取られた。

その後、オペレーションあひるさんが機能して、無事に戦闘は終了した。




御台場迎撃戦、いつか舞台化してほしいなぁ……。難しそうだけど……。電ホビ様にて、連載されてましたので、気になる方はぜひ、読んでみてください。

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