死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~   作:生おろしのレンコン

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幻想入り
初めてで最後の死


 

「....あぁ...仕事....辞めたいなぁ...」

 

交差点を渡りながら、一人の男がぽつりと言葉を漏らす。綺麗に整えたスーツを着こなし、眠そうな目でもあり、魚の死んだ様な眼をした男である。彼は労働基準法と言う法律、ルールを守れていない職場で働いていた。辞めようにも転職先が無い、そもそも自分を雇ってくれる場所が考え付かない、と諦めていた。そんなブラックな職場でもキビキビと働き、真面目に仕事を終わらせていく。日々集中力が退化していくような感覚に見舞われながらも少ない給料の為に働いた。だが、もう限界だったのだろう。

 

「...ぁ..?..身体が..動かな......」

 

溜まっていた疲れが最悪のタイミングで襲いかかる。疲労で全身の力が抜け、交差点の真ん中で膝を着き、ゆっくりと地面に倒れていく。周りから見ればその男は奇行に走る馬鹿の様に見えるが、彼の身体はその役割を放棄する。身体が浮くような感覚、幾年の疲れが吹き飛ぶ様な眠りへとついてしまう......。

 

 

...幾ら寝ていたのだろう。彼の感覚からすれば一日二日は寝ていた様に感じる。

 

「...いててて...俺...いつの間にか寝てた.....って....ここ何処...」

 

長い様な眠りから目覚めた男は周りに彼岸花の咲く道に戸惑いを隠せない。最後の記憶は交差点、ましてや都会に近い街のため、こんな花の咲く道は無いはずだった。寝ぼけた頭が一気に覚醒し、綺麗に咲いた彼岸花の道を歩き始める。

 

「こんな綺麗な道があったなんて...にわかには信じられないな。踏み荒らさないように気を付けないと...自然に少し申し訳ないや...」

 

誰も居ない道を歩きながら、独り言を呟く。

歩き始めて体感10分ほど、いきなり彼岸花の道が途切れ、大きい川に繋がった。

 

「ふぅ...ようやく花畑を抜けたか。でも抜けたら抜けたで大きな川か...。ここどんだけ広いんだよ....」

 

あまりの広大さに驚きながら、川を眺める。見た限り流れは速めで、泳げそうにも見えない。何処か橋がないか川を見渡していると、不意に背後から声が聞こえる。

 

「どうやら...死者のようだね。...あ〜ぁ、仕事をしないと行けないじゃないか」

 

男がその声に驚き、後ろを勢いよく振り返る。するとそこには、赤い瞳と赤髪のツインテールが特徴的な着物の様なロングスカートを着て、腰巻を巻いた女性が立っていた。手には背丈程の大鎌を持っており、世間一般的な「死神」を体現している様だ。

 

「あ...貴方は..?いや、その前にここが何処か分かりますか?ここに迷ってしまって....早く家に帰って仕事に行かないと...」

 

驚いて少し身体が固まっていたが、勇気を振り絞り、彼女に問いかける。すると彼女は川の方に歩き、背を向けながらその問いに答える。

 

「あたいは小野塚小町、ここの船頭をしてる死神さ。取り敢えず着いてきな、そうすれば全部わかるから」

 

「し...死神...!?...ど...どういう事だ...??」

 

折角働いていた頭が死神の一言に混乱してしまう。だが、此処でうだうだしても仕方が無いため、渋々小町の後を着いていく。

 

川沿いを歩き、桟橋の前で小町は立ち止まる。それに合わせ、男も足を止める。

 

「さ、早く三途の川を渡ろうか。閻魔様がお待ちしてるよ」

 

小町が桟橋に停められた小さい舟に乗り込み、男に対して乗るよう手招きする。もう何が何だか分からない男は考える事を放棄して揺れる舟に乗る。

 

「無言のまま渡るのもなんだし...少しあたいと喋りながら暇を潰そうよ。あんたの質問にも答えるからさ」

 

舟を桟橋からだし、川をゆっくりと横断し始めた辺りで無言に耐えきれなかったのか、小町が暇を潰すため、と言い話し始める。

 

「先ずはさっき聞かれた質問に答えよっか。此処は何処かについてだけど...大体分かってきたんじゃないか?だからもう元の世界には戻る事は無いと思った方が良いよ。強い未練を残すと...ちょっと辛いからね」

 

男はその言葉を聞き、何処か嬉しい様な、寂しい様な感覚に襲われる。もうあんな生活をしなくていい、だけれど何処か物悲しく感じたようだ。

 

「此処は死後の世界...俺は死んでしまって、これから閻魔様とやらに裁かれに行くんですよね。吹っ切れたら良いんでしょうけど...どうにも未練が残るもんですねぇ....」

 

男は今も尚、仕事の事が頭から離れていなかった。彼が働いていたブラックな職場は嫌いとは言えど、長年働き、同僚と頭を働かせて過ごした日々が忘れられなかった。だが、今考えてたとて取り戻せるものでは無い。この気持ちを紛らわせる為に小町とたわいも無い話を続けてしまう。

 

はて、何十分舟に揺られただろうか。あの渡れないと思っていた三途の川をこんな短い時間で渡りきってしまった。小町の船頭には天晴れの一言に尽きる。そんなくだらない事を考えながら、男は舟を降り、川辺へと足をつける。

 

「さぁ、その先に閻魔様が居るから..くれぐれも粗相の無いようにね。最悪..地獄行きにされてしまうかも...」

 

小町がからかうように次への道を示してくれる。男はお礼をひとつ述べ、裁かれる怖さを噛み締めながら、最後の道を歩いていく。




そう言えば、人間が死神になるって良いんですかね....まぁ、幻想郷に常識は通じないって事で良いですね!()
さて、次回は遂に死神へと転職する様です!
お楽しみに!
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