死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~ 作:生おろしのレンコン
寄り道
「...死ぬ前の身体と違って...軽い身体って便利だなぁ...」
博麗神社までの道でそう呟きながら、ミコトは散歩気分で歩いていた。
日は丁度真上、真昼間で暖かい日差しに当てられて気分も上がっていたのだろう。
と、そんな中、ミコトの鼻を突くような臭いが漂ってくる。
「..んだこの臭い...くさい..訳じゃないけど、明らかに植物やらの臭いじゃ無いよなぁ....」
嗅いだことのある臭い、魚臭いと言われればそうとも感じる、また鉄が錆びたような臭いもあった。
本来なら気にかける様な事では無い気もしたが、まだ日は余裕あるため、好奇心に誘われてしまった。
博麗神社への道から外れ、鬱蒼と生い茂る森の中へ足を踏み入れる。
段々と臭いが強くなるのを感じ、本能的にその方向に向かう。
恐らくあと数歩歩いた所に元があると思えば、何か音も聞こえてきた。
水の滴るような、そんな音だった。そこで、ミコトはこの臭いは何なのか思い出す事が出来た。
「これ..血の匂いか。獣か何か死んでるだけだったかなぁ...。無駄足だったか.....いや、せめて何が死んでるかだけでも...」
せっかくここまで来たのだからと、その死体を拝見しに行く事にした。
高い草を足で退かし、鹿か猪か、心を躍らせながら顔を前に向けると、到底信じ難い空間が広がっていた。
その場所は真っ赤に染め上がり、地面には紅い水たまりが出来ている。
肝心の死体は完全に骨になっていたが、それが何かは一目瞭然。それは少し身長の低い人間の骨だった。見るからに子供、未発達の頭蓋骨が見て取れた。
周りにはこの骨に付いていたであろう肉が飛び散っている。
突然の光景に、ミコトは嗚咽が漏れ出る。
人の死体なんて見た事が無い。この世界では当たり前かもしれないが、普通に住んでいれば見る事はそうそう無い。
「な..何でここに死体が...」
一度心を落ち着かせ、気持ち悪さを堪えながら考える。と言っても、直ぐにその原因が分かることになる。
「あらら..好奇心に負けちゃうからそんな思いをするんだよ」
ふと後ろから聞こえた声に驚いた。
反射的に振り返り、その声の主である少女と対峙する。
最初に目に入ったのは黄色の髪に紅いリボンだった。次に特徴的だったのは手に持っていた物、ぶよぶよした赤茶色の塊、肉片だ。
それを見た瞬間に、ミコトは後ずさる。が、その少女はそれに合わせて歩き、話しかける。
「貴方は人間じゃないよね....。でも今お腹すいてて...だから、一口だけ頂戴!」
笑顔でそう言った少女は、目にも見えぬほどの速さでミコトの喉元目掛けて腕を突き出してくる。
だが、ミコトは身体を後ろに反らせ、後ろに下がりながら攻撃を避ける。
それを繰り返しながらミコトは話しかける。
「ちょ..ちょっと話を聞いてくれ!特に君には危害を加えないし..ご飯なら奢ってやるから!一旦辞めてくれ!」
「それじゃダメ...今は貴方を食べたい気分なの!」
そう言って、ずっと避け続けるミコトに痺れを切らしたのか、少女は地面を強く蹴り、ミコトの鳩尾に拳を入れる。
その少女からは到底出ないであろう力に、ミコトは一瞬声を漏らすが、フランの蹴りと比べたら遥かにマシだった。
だが、一瞬の怯みを少女が見逃すことは無く、ミコトに飛び付いて地面に伏せられる。
少女はミコトの上に馬乗りの状態で跨り、両手を掴んで封じてくる。
「妖怪とも人間とも取れる貴方の身体はどんな味がするのかなぁ...」
耳元でそう囁かれた瞬間、肩に激しい痛みが走る。
その痛みは噛まれている..というより、肉を喰われる、抉られる痛みだった。
歯を食いしばり、その痛みに耐えるのに必死だった。次喰われたら確実に意識が飛ぶと思い、腕に力を入れて抜け出そうとしても、少女の力はミコトよりも上であった。
「抜け出そうとしても無駄無駄〜、力を入れると肉が固くて食べにくいから..脱力して?」
「..誰がそんな事を......まだ抜け出せるチャンスは...あるだろ!」
そう言うが、力で勝てないのは確信していた。だが、力を手に入れる方法はある。
自身の能力だ。予想では他人の血を取り入れればいいはず。
その予想が外れ無いことを祈りながら、大きく口を開け、その少女の肩に噛み付く。
ミコトの口に、血の味が染み渡る。依然として噛み付いてくる少女の血を、自身の血肉にするべく、少量だが飲み込んだ.....。