死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~ 作:生おろしのレンコン
日が傾き、夕焼けとなって地上をオレンジ色に染め上げる頃、ミコトは森の中から博麗神社へ向かっていた。
神社前の階段を上り、立派な鳥居と本殿が見えた。
鳥居の下をくぐり、博麗霊夢と言われる人物はどこか探していると、背後から何かを突き付けられる感覚がし、声が聞こえてくる。
「妖怪がここに何の用?変な事言うようなら消し飛ばすわよ」
ミコトは後ろの人物が博麗霊夢である事がすぐに理解出来た。殺気の量が桁違いで強く、妖怪に対して「殺す」事を躊躇わない様に感じる。
両手を軽く上げ、ミコトは答える。
「えっと..慧音さんから博麗霊夢と言う方に会ってこいと言われ...少し遅くなりましたが、無事ここに来た次第です...」
それを言うと、突きつけられていた物が無くなり、手を下げてもいいと言われた。
ミコトは言われた通りに両手を下げ、霊夢の姿を確認する為に振り返る。
そこには袖の無い紅白の巫女装束に身を包み、赤色の大きなリボンが特徴的な少女が立っていた。
手には御祓い棒らしき物を持っており、先程はこれを突き付けられていたらしい。
すると、霊夢は面倒臭そうな表情で話し始めた。
「慧音から来たのなら少しは信用しても良さそうだけれど、私と会って何をするつもり?」
「...そう言えば何をしに会いに来たんでしょうか...」
「私に聞かれても困るわよ」
そう言えば何をするかまでは言われてなかった気がして、ミコトは首を傾げる。その間も、霊夢はミコトの事をまじまじと見つめ、まだ怪しんでいる様だった。
すると、いきなり霊夢がミコトの左手を手に取った。
「貴方..左手の小指は?真新しい傷のように見えるけど...しかも歯型が..」
ミコトはそう言われ、嘘を交えながら答える。
道中、興味本位で森に入り、ルーミアに襲われたが、小指だけで勘弁してもらった、大分ざっくりとしているが、戦闘のことは伏せたい為、嘘がバレないのを祈っていた。
だが、霊夢は軽く頷くも、少し引っかかっているようだった。
「経緯はある程度分かったわ。でも、あのルーミアが小指だけで勘弁とはねぇ....」
「.....私が行った時には一人食べられた後でしたので...恐らくお腹が空いていなかったのでは...」
何とか辻褄を繋げ、霊夢は納得したようだった。
「そう...それは運が良かったわね。あの人喰いは森に迷い込んだ人物を無差別に襲うのよ。一応、私の目の届く範囲に居る時は大丈夫なのだけれど、遠くは流石に把握出来ないわ」
ため息をついた霊夢は面倒臭そうな表情を見せる。
そして、何処から取り出したのか、一枚の札を気の生い茂る場所へ投げると、誰かに当たったのか、声が聞こえてきた。
「そこに居るのはわかってるわ...出てきなさい!」
霊夢がそう呼びかけると、茂みの中から見覚えしかない少女、ルーミアが姿を現した。
ルーミアの姿を確認すると、霊夢は意外そうな顔をしていた。
「なによ...ルーミアだったのね。コソコソと影から見てるだなんて、貴方らしくないじゃない」
「..だからって札をほぼ全力で投げるなんて酷い...あれ妖怪からしたら凄く痛いのに..」
ルーミアはその痛みのせいか、少し涙目になってるように見えた。
そして、ルーミアが小走りで駆け寄ってきたかと思うと、ミコトの片腕に両腕を絡ませてきた。
ルーミアは特になんとも思っていないようだが、ミコトとそれを見ていた霊夢は驚きのあまり声を失ってしまう。
ミコトに関しては、前世でも女性と触れ合う機会は少なかった為、腕に巻き付かれ、初めての感覚に混乱していた。
「ルーミア..一体何をしているの...」
「何をって...マーキングよ、マーキング」
「マーキングねぇ...変な意味じゃないと良いけど..」
面倒くさいのが増えたと言わんばかりに、霊夢は目を細めてミコトとルーミアを交互に見る。
流石にミコトはこの状態に耐えきれなかったのか、ルーミアに話しかける。
「ちょ..ちょっと腕を離してくれないかな...。別に嫌ってわけじゃ無いんだけど...気まずいからさ..」
そういうと、ルーミアは不服そうにミコトの腕を離す。その代わり、手を握ってきた。
ミコトも、これぐらいならと緊張してしまっているが、許す事にした。
だが、霊夢が少し苛ついた表情で語りかけてくる。
「...貴方、もうする事ないなら帰りなさい。私も暇じゃないの。帰りはルーミアに喰われないように気を付けるのよ」
「あ..わかりました。今日は忙しい中対応頂き..有難うございました..」
ミコトは霊夢に対し軽く礼をし、神社を後にする事にした。
勿論、横には自分の手を握るルーミアがいる状態で...