死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~   作:生おろしのレンコン

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全力の氷と巫女

揺れが収まった後、ミコトの身体を冷気が包んでいた。

その冷気の粒一つ一つが太陽光を遮り、辺り一帯は霧のようだった。

ミコトは立ち止まり周りを見ようとするが、霧のせいで何も見えない、聞こえるのは逃げている人々の声ぐらいだ。

どちらが人里か、森かも分からずに立ち尽くすしか無かった。

 

「参ったな...こうも早く異変とやらに巻き込まれるとは...」

 

どうにかして逃げるか、この霧を退かすか考えていると、また爆発音が聞こえてくる。

すると、その爆発のせいか強風が吹き込んできた。だが、そのお陰で辺りを包んでいた霧は嘘のように飛ばされ、視界は良好になった。

しかし、目の前の光景はいつも通りではなく、異常そのもの。

 

森のどんな木よりも高く、見上げる程の氷の柱、それがそびえ立っていた。

それを口を開けて眺めていると、上から見知った人物が降りてきた。

 

「貴方は..昨日会ったわよね...。まぁいいわ、取り敢えずここから離れなさい、今回は被害を出さずに鎮めるのは難しいもの」

 

目の前の巫女、霊夢はそう言った。

ミコトも頷き、ここは任せるべきと一歩後ろに下がった瞬間、何かがミコトの頬を掠めた。

何が飛んできたのか分からなかったが、飛んできた方向を反射的に見る。それは霊夢も同じで、手には札を持ち、臨戦態勢を取っていた。

 

そして、二人の視線の先には氷の羽を持った少女、その周りには少女の背丈より大きい氷が幾つも浮いていた。

すると、浮いていた氷が全て飛んでくる。霊夢は受けきれないと判断し、空を飛び、ミコトは訳の分からないまま、反射神経に全てを任せ避け続ける。

ミコトが避けきった事を確認した霊夢は、札と何処から取り出したか針を少女に勢いよく投げる。

 

だが、その攻撃が通る事は無く、凍り付いた札と針が地面へと落ちる。

その後、少女が手を振り上げ、また辺りが冷気に包まれていく。

その冷気のせいで音さえも遮られ、一瞬無音になったかと思うと、また大きな爆発音が響く。いや、爆発と言うよりこれこそ地面自体が揺れる音と言った方が良い。

 

段々と冷気が薄れ、周りが見えるようになったが、その瞬間に逃げられない事に気付いた。

少女を中心として、高い氷の壁が立っていたからだ。

登って越えようとも表面が滑って登りきれない、こうなってしまえば霊夢に迷惑を掛けないよう避け続けるしか無い。

と思ったが、どうやら少女はミコトに対してあまり関心が無いらしく、霊夢の事ばかり狙っていた。

それは都合が良いと思い、そそくさと物陰に隠れる。

 

「何も出来ないなら..変なことしない方が良いからな....終わるまで待とう..」

 

上空から聞こえる戦闘音を聞きながら、終わる事を切に願うのだった。

 

 

一方、ミコトの事を気にかけていた霊夢は、物陰に隠れたミコトを見て一安心していた。

戦えないなら隠れるか逃げて欲しいと思っていた為だ。

だが、気にかける心配が無くなってしまえば、本気を出しても問題は無い。

 

「全く..頭が冷えきってる馬鹿はこうでもしないと目を覚まさないのかしらね...」

 

互いに互角と言える弾幕の撃ち合いだったが、段々と霊夢の出力が増えていく。

だが、本気を出していなかったのは、お互い様だった。

 

霊夢の弾幕が少女の弾幕を完全に打ち消し、少女に直撃したと思えば、氷が全てを包み込み、砕け散った。

その氷の破片は地面へと煌めかせながら落ちていく。

少女に対しての間接攻撃は全て凍らされて無力化される。

ならばどうするか、近づいて不可避の攻撃をくらわせるしか無くなってくる。

 

霊夢は一息着いたあとに、一直線で少女に突っ込む。

目の前から迫る弾幕を小さな動作で避け、少女が目と鼻の先といったところで、勘が働き、左に直角に曲がる。

すると、上から隕石の様に氷の塊が降ってきた。勿論、そのまま地面へと落ち、小さなクレーターを作り上げた。

 

「...えらく器用な事できるようになったじゃない...」

 

そう言って霊夢は引き続き近付こうと繰り返す。だが、その度に邪魔され被弾覚悟でなければ近づけなかった。

かと言って、被弾してしまうと一発、身体の至る所が折れてしまうだろう。

 

そんなことをしながら何十分も経ち、どちらも決定打に欠けていた。

流石の霊夢もこれ以上は体力が持たなくなっていく。

 

「..早く決めたいのに...厄介な奴ね..!」

 

さっきから誤魔化し程度に札で陣を作るも、全て見破られ破壊される。

彼女の近くに近付こうものなら、至近距離で氷の塊が降り注ぐ。この氷さえ対策出来れば良いが、その場で作られる高火力の塊に霊夢は為す術が無かった。

 

だが、離れていればその氷も降っては来ない。恐らく制限があると安心していたのだが...それが少女の狙いだったようだ。

 

少女が手を振り上げた瞬間、霊夢の背中に強い衝撃が走る。

互いに攻撃手段は出し切っていたと勝手に思っていた。しかし、必殺技は残していたのだろう、それは霊夢も同じだ。

だが、あまりにも予想外、範囲の制限なんて最初から無かった。

 

霊夢の掠れた視界には遥か遠くまで降り注ぐ塊が見えていた。

無尽蔵に、どこまでも、その大きな氷は地面を凍らせていく。

墜落していく霊夢に止めを刺すように、追加の塊が狙いを定める。

もう駄目だと、霊夢は力の入らない身体を重力に身を任せたのだが、その瞬間に助けの手が入る。

 

その助けは氷が当たる前に霊夢を抱え、少女から離れるように逃げる。

そして、その助けを入れた少女は霊夢に語りかける。

 

「霊夢が負けるだなんて珍しい事もあるもんだね。でも、相手が相手だししょうが無いか」

 

そうルーミアは笑顔を見せる。

だが、体制的に上を向いているから気付いた。

また氷の塊が真上にあると、しかしルーミアは避けようともしない。

霊夢が声を出そうとした時、氷が弾け飛んだ。

そして、ルーミアはさらに語り続ける。

 

「そんなに心配しなくても良いって、強力な助っ人を呼んできたんだから」

 

ルーミアの闇と誰かの闇が交わる。

それは大きな帳となり、太陽を遮り、妖怪のテリトリーとなる。

その中を漂う闇を、まるで足場のように飛んでくる男が一人、顔は闇に覆われ、服装は黒い衣を纏う。

巫女からすれば、誰かなんてのは一目瞭然だったが、ここは気付いてない振りをしよう。

 

そして今度こそは、あの少女を倒すと、巫女は一度決意をする..。

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