死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~ 作:生おろしのレンコン
今、ミコトは太陽さえも遮る程の空間で霊夢、ルーミアと並ぶ。
何故そんな事になっているのか、それは霊夢が氷の少女と戦っている最中にあった。
...霊夢が戦い始めて数分、物陰から眺めていたが、明らかに自分じゃどうしようも出来ない状態なのは理解していた。
一瞬、自身の能力について考えていたが、あれは一人では扱う事が出来ない。そして、隠岐奈に言われた「不完全な状態」。この二つから使う事が億劫だった。
何とか霊夢が勝って欲しいところだが、見ている限り拮抗していた。
互いに有効打も無く、対策も無い。そんな状況と見て取れた。
と、いきなり服の裾を引っ張られる感覚、何だろうかと見てみると、そこにはルーミアが立っていた。
ルーミアは心配そうな表情をしていた。
ミコトはルーミアに対し言葉が出ず、何か喋ろうとしたが、ルーミアが先に話し始める。
「...霊夢と...チルノを助けて..」
ルーミアはそれだけ言って黙りこくってしまった。
霊夢とチルノとやらを助けて欲しい、との事だが、十中八九チルノとは霊夢と戦っている少女だろう。
だが、1つ疑問があった。
「..助けると言っても、どうやって..?」
たとえ助けるとここで言っても、その手段がない。
ルーミアがミコトに助けを求めている時点で一人ではどうにも出来ないのだろう。だが、ミコト一人居ても変わらない。
そんな事を考えていると、ルーミアが口を開く。
「わ..私を倒した時の...あの力を使って..欲しい...」
そう言われた時、ミコトの頭に痛みが走る。
あの時、ルーミアを倒した能力は完全に操れていなかった。
記憶すらなく、気が付いたら全てが片付いていた。
唯一覚えている事としたら、能力使用直前に苦しんでいた事、炎に包まれ、精神を蝕まれた事だった。
出来れば、二度と使いたくは無い。だが、確かに能力を使えば、霊夢の力になれるかもしれない。
そうならば、迷う必要は無かった。
「...分かった。ルーミア、もし俺が勝手な行動したなら、止めてくれよ」
そう言うと、ルーミアは頷く。そして、ミコトの口に腕を近づける。
ミコトは一瞬躊躇したが、ゆっくりとルーミアの腕を噛み、血肉を得ようとする。勿論、噛まれる側は痛いもので、ルーミアは顔をしかめる。
数秒すると、ミコトの背中から黒い炎が燃え始める。
とても熱い、それはもう皮膚が爛れそうなほど、しかし倒れる訳にも行かない。
ふらつく足取りを無理やり抑え、拳を握って痛みに耐える。
そうしていると、ルーミアが顔に手を添え、心配そうな顔つきで、ミコトを見つめてくる。
「まともに..他人に触れられたことは何時ぶりだったか...尚更、倒れる訳には行かないな..」
重く伸し掛る炎を纏いながら、歯を食いしばり、拳を振り上げて地面に振り下ろす。
心の迷いを全て吐き出す気持ちで、地面を強く叩く。
すると、嘘のように身体が軽くなっていく。
身体を包んでいた炎が腕へと集まっていき、そのまま地面へと消えていく。
だが、今度は顔に闇がまとわりついてくる。しかし、苦しくは無い。逆に身体の調子が良くなっていく感覚があった。
「..ミコト、大丈夫?」
そうルーミアが語りかけてくる。大丈夫だと答えたかったが、声が出なかった。
やむを得ないため、頷きで肯定の意を示す。
ふと、霊夢の方に二人とも目線をやると、霊夢が背後から迫る氷に飛ばされていたところだった。
「...ミコト!私が霊夢を飛んで助けるから、サポートは任せるよ!」
そう言ってルーミアは高く飛び上がり霊夢を抱え、追撃を避け、さらにルーミアを狙った氷を、ミコトが咄嗟に作り出した闇で破壊した。
..ここまでが、今までの出来事である。
状況ははっきり言って最悪に近い。ミコトはルーミアの姿を扱いきれず、霊夢は一撃を貰っていたからだ。
しかし、霊夢は戦闘慣れしていたためか、自身の身体を捻り、致命傷は避けており、戦闘は続けられそうだった。
「二人ともありがとう、危うく巫女としての役割を失敗するところだったわ」
そう霊夢は言い、ルーミアの手から降りる。
そして、また何処からか大幣を取り出す。ルーミアも準備は出来ているようで、こちらに視線を向けてくる。
ミコトは声を出せないため、コミュニケーションが取りにくいが、軽く頷いて見せる。
三人ともチルノの方を向き、チルノもまた三人を見つめる。
ミコトからすれば初対面だが、チルノの目は冷酷で、冷えきっていた。
全員が弾幕を展開し、ミコトも慣れないながら闇で無理やり弾幕を作り出す。
果たして闇でダメージが入るのかどうかは分からないが、氷を破壊出来たのだから大丈夫と信じ、激しくも直ぐに決着がつく二戦目が始まるのだった...。