死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~ 作:生おろしのレンコン
3対1の硬直した弾幕の撃ち合いで先手を打ったのはチルノだった。
鋭く尖り、小さい針のような弾幕を飛ばしてきた。
その速さと細さからまるで弾丸と何一つ変わらない、むしろこの弾幕の方が威力はありそうだった。
だが、霊夢もルーミアも弾幕の避けには慣れているのか、チルノに近付きながら簡単だと言わんばかりに軽く避けていく。
ミコトは不慣れであるが、持ち前の動体視力と能力で強化された身体を使って避け続けた。
ある程度近づいた辺りでチルノは攻撃の手を変え、大きな塊を降らせ始める。
しかし、これにも霊夢は当たる気配が無かった。
恐らく、先程の戦いで避け方を見つけたのだろう。針に糸通す様な精密な飛行でぐんぐんと距離を詰めて行く。
すると、霊夢はいきなり立ち止まり、ミコトとルーミアにこう叫ぶ。
「アンタ達!攻撃のサポートは任せたわよ!」
そう言うと、霊夢の周りに様々な色の弾幕が出現する。
ミコトとルーミアは互いに遠くから顔を見合わせたが、考えていた事は同じで、霊夢より前へ飛び、チルノへと近づいて行く。
案の定、チルノは近づく二人を狙い始めた。
その間も霊夢は弾幕を作り続ける。虹色に光るその弾幕は霊夢の周りを浮遊し、大きくなり続ける。
と、浮遊していた弾幕が少し前に進み始めた。
霊夢の前へと弾幕が集まり、激しい光を出し始める。
「これで頭を冷ましなさい..チルノ!..夢想封印!」
そう霊夢が叫ぶと、弾幕がチルノへと一直線に伸びる。
瞬きをする間にチルノに着弾していた。
傍から見ていればその威力は絶大で、花火のような轟音に光、あまりの眩しさに直視するのも億劫になる。
数秒程すると、光が段々と引き、その中から下に落ちるチルノが現れた。
頭を地面に向け、落下していく。それを見ていたルーミアは霊夢を助けた時のようにキャッチする。
既にチルノは気を失い、全身から力が抜けていた。
これで一件落着...の筈だったのだが...霊夢がいきなり叫び始めた。
「ルーミア!危ない!」
その瞬間、ルーミアの頭上から氷の塊が降ってきた。
だが、ミコトがその塊を拳で砕く。
「あ..ありがとう...」
ルーミアはミコトと霊夢を見て礼を言う。だが、二人はどういたしまして、等と言える余裕は無かった。
霊夢も、ミコトも空を見上げ言葉を失っていたのだ。
そこにあったのは、ここら一帯を穴だらけにすると言わんばかりの氷の塊達、一つ一つが殺傷力の高い大きさをしていた。
何故こんな塊が降ってきているのか、それは十中八九チルノの自爆用だったのだろう。
負けた場合、多くを巻き込めるように予め空に氷を浮かせておく。最悪不意打ちの攻撃にも使えたのだろう。霊夢に一撃入れた時のように...。
だが、考えている暇は無い。今はこの氷をどうするかだ。
幸いな事に、一つ砕くのにそう力は使わない。
それに加え、人里の人間は避難していたため、守るのはルーミアとチルノだけでいい。
霊夢は弾幕で、ミコトはその拳で、落ちてくる多くの氷を壊していく。
大体ミコトが二、三十砕いた辺りで氷は全て降りきったようだった。辺りには氷の破片が多く散らばり、幾つかは溶けていた。
長いようで短かったチルノとの戦いはここで終幕となった。
ミコトは肩の力を抜き、ため息をつく。
霊夢とルーミアも疲れきり、脱力していたようだった。
辺りを包んでいた闇の帳も晴れ、日光がミコト達を照らしつける。
まるで三人を祝福するかのような暖かさに包まれていたが、ミコトだけ悪寒を感じていた。
誰かから見られているような、監視されているような、そんな感覚。何かあった時のために能力は使用したままにしておきたいが、それだと喋る事が出来ないため、二人には伝えず、確認しに行く事にした。
二人を置いて視線を気配の感じる方へ歩く。
家と家の間に入ったところで、その正体と思わしき物があった。
それは般若の面、何故こんなところに落ちているのか。全く分からなかったが、回収していた方が良いだろうと思い、手で触れると、まるで拒否するかのように割れてしまった。
決して力を入れすぎたなどは無い、自然に割れたのだ。
何が何だか分からないが、取り敢えず霊夢達の場所へ戻ろうと思い、振り返るとそこには見知った顔が居た。
「やぁ、上手く仕事をこなしているようで先輩として安心してるよ」
そう小町は話しかけて来た。
ミコトも言葉を返す為、能力を解除するために闇の仮面を外す。
「それでも、仕事は順調とは言えませんが..私なりに頑張りますよ」
「私も映姫様から話は聞いてるよ。謎の襲撃が起こってるんだってね。お陰で仕事が増え...えっと..幻想郷は不穏になるから困ったもんだ。...さて、お話はここまでにして早く二人のとこに戻りなよ。私は私でやる事があるからさ」
小町はへらへらとした笑顔をミコトに見せ、早く行くように仕草をする。
ミコトもその笑顔に返すように笑顔を作り、元来た道を戻っていく。
ミコトが見えなくなった事を確認した小町は、ゆっくりと持っていた鎌を横にし、ひと呼吸置いた後に空気を薙ぐ。
すると、小町はその場から消え、目的の場所へと移動する。
「おっと...当てるつもりで縮めたはずなんだけれど...流石に気付かれてたか」
小町の鎌は壁へと突き刺さり、そのすぐ近くに人影があった。
鎌を引き抜いた小町は、その人物と対面する。
「何を目的かは知らないが..映姫様からの命令なんでね、さっさとお縄についてもらうよ。..とは言っても、知っている人物を相手するのはやや心に来るもんだ。なるべく手短に..ね?面霊気、秦こころさん?」