死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~   作:生おろしのレンコン

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幻想へと還る死神

風すらも吹かない静かな空間に二人の人物が立っている。一人は椅子に座り、笑みを見せる男、もう一人はその笑みを見つめている閻魔が居た。すると閻魔は軽く頷き、口を開く。

 

「本当に...それでいいんですね?」

 

と、聞き返してくる。だが、やっぱり辞めます、など言うはずもなく、男は頷き、肯定の意を示す。

 

「思っていた以上の返事で安心しました。少し悩むと思っていたのですが、まさか即答してくるとは..。では、まず貴方には身体を与えないといけません...それは紫さんに用意して貰うとして...それまでにある程度仕事を教えておいた方が良いですね。後は任せましたよ、小町」

 

「はい、わかりましたよ..映姫様」

 

閻魔がそう話した後、隣から少し怠そうな返事が聞こえてくる。その方向に振り向くと、ここまで案内してくれた死神、小町が立っていた。いつの間にか隣にいた事にやや困惑してしまい、固まっていると小町が声をかけてくる。

 

「さ、仕事の説明をしてあげるから、こっちに着いてきな」

 

そう言って小町は男が入ってきた場所から外に出ていく。男も正気を取り戻し、急いで小町に着いていこうと歩き出す、その瞬間、閻魔が何か呟いた様な気がした、とても小さな声で、微かに聞き取れても意味が分からなかった。

 

「まさか.......が.....どって...るとは...」

 

その言葉を気にしながらも、遅れては迷惑になる為、閻魔のいる間から男も離れていく。

 

間からある程度離れた大きな木が生えている場所に男と小町がいた。どうやら此処で仕事説明をする様だ。

 

「さて、お前さんも死神になったんだから...改めて自己紹介しようか、あたいは小野塚小町、三途の川の船頭が主な仕事さ。一応、お前さんの上司になるから、よろしくな」

 

「えぇ、よろしくお願いします。私は....私の名前は....あ...あれ?」

 

自己紹介をしなければいけないのだが、何故か自分の名前が分からない。まるでそこの記憶だけがすっぽりと抜けたかのように頑張っても思い出せなくなっていた。頭を抱えて思い出そうとしていると、小町は声を掛けてくれる。

 

「もしかして...名前を忘れちまったのか?」

 

頷くことしか出来なかった。だが、名前を忘れる程度ならいいのだが、段々と生前の記憶が薄れている気がしていた。死んだ影響なのだろうが、少し寂しい感じがしてしまう。

 

「ん〜...名前が無いと呼びにくいけど...あたいが決めていいものなのか...」

 

どうやら小町が名前を自分に付けてくれるらしい。

 

「そうですね...取り敢えず、仮で名前が欲しいです。そうしないと不便でしょうし..」

 

「本当に良いのか...?だったら、そうだなぁ...折角死神になったんだし、死神らしく[命]と書いて[ミコト]とかどうだ?命を刈り取りに行く訳だしさ」

 

小町は少し悩んだ素振りを見せて、至って安直に決めたようだが、自分にはとてもあっている、そんな気がした。

 

「命ですか...中々良いですね。それでは、私の名前はミコト...よろしくお願いします!」

 

ようやくしっかりと自己紹介が出来たと二人とも安堵し、ようやく本題である仕事説明へと入る。

 

「さ、ミコトの仕事だけど、簡単に言えば、幻想郷の監視..及び管理をして欲しいって事だね、何処かが止まるだけでもサイクルが回らなくなったり、変に利用されて幻想郷全体を巻き込む異変が起きたりするから、それを事前に阻止出来るようにするのが仕事内容、この仕事は初めてにしては難しいと思うけど...映姫様からの命令だから、頑張ってね」

 

幻想郷と言う聞きなれない言葉があったが、それはこれから行くであろう職場として考え、仕事の説明を受ける。少し大雑把な説明な気もするが、ある程度理解出来た為、良しとしておいた。

 

「さて、百聞は一見にしかず..とも言うから、実際に行ってみたいけど、そう言えば肉体が無かったんだった...。調達まで待たないと..」

 

小町がそう呟くと同時に、大きな木の横からいきなり人が現れた。髪は金髪でドレスの様な服を着ていた。その女は謎の空間から身体を出し、こちらを見て語りかけてくる。

 

「貴方が新しく死神になるとか言う人かしら?肉体を持ってきたから、少しこっちにいらっしゃい」

 

そう言うとその人物は謎の空間へと戻っていく。手招きをされ、こっちに来い、と言われた為、小町と共にその空間へと入る。

その空間は何とも言えない雰囲気が漂い、至る所に目がある、その目は絵などでは無く、ぎょろぎょろと動き続けていた。

 

「な..何ですか...此処は..少し気持ち悪く感じますが...」

 

奇妙な空間に耐えきれず、後ずさりしてしまう。だが、小町はそんな空間でも気にしていないかの如く歩いていくため、気持ち悪さを抑えながら着いていく。しばらく進んでいると、いきなり小町が立ち止まり、それに合わせて自分も立ち止まる。すると金髪の女が話し始めた。

 

「では、今から貴方に身体をあげます。その身体は妖怪のモノなので貴方が慣れるのに時間はかかるでしょうけど、それ以外は至って問題は無いから、安心してね」

 

そう言いながら此方へと近づいてくる。腕を伸ばせば届く程の距離になった後、本当に身体を受け取るのか、と確認を取られるが、もちろん受け取るに決まっていた。するとその金髪の女は軽く頷き、

 

「なら、少しの間眠ってて貰うわね」

 

その一言を聞いた瞬間、いきなり全身に力が入らなくなっていく。死んだ時とほぼ同じ感覚だった。次に目を覚ます時には、身体が手に入っていると信じて、その感覚に身を任せ、眠りへとついていく。

 

 

何分程たっただろうか、意識がぼんやりと戻っていく。だが、身体を動かそうにも上手く力が入らない。仕方が無いため、辺りを軽く見回す、そこは何処かの家の中だとは分かったが、知らない部屋だった。恐らく肉体に移したあと、ここに移動させたのだろう。そんな事を考えていると襖がゆっくりと開くのが見えた。

 

「あら、もう起きたのかしら。案外早かったわね」

 

そこに居たのは肉体をくれた金髪の女だった。かろうじて首は動かせる為、女の方を向く。無言で金髪の女を見つめる。

 

「...もしかしてだけど..喋れないの?」

 

こくりと頷き、肯定の意を示す。起きた時から舌が回らず、慣れるまで時間がかかるのはこういう事か、と一人納得した。

 

「まぁいいわ..私の自己紹介をしておきたいだけだもの。私は八雲紫、貴方のことは映姫と小町から聞いてるわ。これから幻想郷で住む者同士、仲良くしましょ?」

 

そう言って微笑みかけてくる。こちらからも動かしにくい表情を無理やり動かし、笑みを作る。紫はそれを見た後、邪魔にならないようにか開けた襖からゆっくりと出ていった。

 

....大体一時間ほどたったぐらいでようやく身体を動かせる様になった。身体が酷い筋肉痛で包まれているような感覚だが、慣れてしまえばそんな事は無い、と抑え込む。このまま襖に手をかけ、紫の元に向かおうと思ったが、横に全身鏡があった事に気づき、折角だから...と覗き込む。

 

「..これは....中々に格好良い身体だな...」

 

その全身鏡にうつった自分の姿は、身体の基礎が出来ているが、そんなにゴツゴツしていない、逆にすらっとしており、前の自分と比べると信じられないくらい美化されている事に驚いてしまった。こんな身体をくれるなんて良いのだろうかと思いながらも、痛む身体を抑えながら紫の元に向かっていく。

 

襖を開けると、そこには小町、閻魔、紫が椅子に座り、話し合っていた。

 

「あ、ミコト!ようやく動けるようになったか!」

 

いち早く小町が気づき声をかけてくる。それに反応して他二人も話を辞め、こっちに振り向く。すると、閻魔が口を開く。

 

「ミコトさん、身体は大丈夫ですか?痛むようでしたら、もう少し休んでても良いんですよ」

 

心配してかそう言葉を掛けてくれる。大丈夫ですよ、と一言返し、会釈する。閻魔はそうですか、と言いさらに言葉を並べる。

 

「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。私は四季映姫・ヤマザナドゥ、ヤマザナドゥは職業名なので四季映姫の方で呼んでください。小町と同じく、映姫様とでも呼んでもらえれば結構ですよ。改めて、よろしくお願いしますね」

 

「こ..こちらこそ...よろしくお願いします...!」

 

まだ上手く回らない舌を何とか動かし、返事を返す。その言葉を聞いた映姫は席を立ち、仕事が残っているので、と言って出ていった。それを三人で見届ける。完全に足音が聞こえなくなった辺りで紫が話し始める。

 

「さ、ミコトも起きた事ですし、ミコトの住むところを決めに行きましょうか」

 

そう言って紫も立ち上がる。小町も同じく立ち上がり、外へと歩いていく。ミコトも遅れないよう、その後を着いていく。自分の働く場所、幻想郷はどのような場所なのか、不安と期待を込めながら、明るい外へと一歩を踏み出していく。




いや〜気まぐれ投稿とはいえ相当日数空いてしまいました。しかも日を跨いでの執筆だったんで誤字があるかも...そこら辺は大目に見て下さい...
さて、ようやく身体を手に入れて幻想郷へと入り込んだミコト!次回は人里に失礼する様ですよ?お楽しみに!
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