死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~ 作:生おろしのレンコン
陽射しがさんさんと降り注ぐ外で、ミコトが一番最初に思った事は、「綺麗」だった。死ぬ前の世界とは違う、自然が溢れ、草原と空、それに川、それぞれがミコトにとって新鮮で、気持ちがスカッとする様な、晴れ晴れした気分に包まれる。そんな事を感じていると、紫がまた話しかけてくる。
「ほら、私が人里に案内してあげるから..こっちに来なさい」
そう言って、また気持ち悪い空間を開ける。あまり入りたくは無いが、ここで迷惑をかける訳には行かない為、小町の後ろを着いて入る事にした。だが、あまり歩く事無く、紫は出口を作ってくれた。
「ここから先は二人で行ってて頂戴。私は霊夢に話してくるから。あと、変な事を起こさないようにね。対処がちょっと面倒臭いから」
それだけ言って紫は別の穴へと消えていった。小町は開けてくれている出口へと歩き始め、それを追いかける。
あの空間から出ると、そこは路地裏のようだった。そこから、光の射す方へ歩き、表道に出る。道には沢山の家や店、さらに人が行き交い、活気溢れる場所だった。しかし、その人達は和服を着ており、洋服を着てる人物は一人として居なかった。少し疑問に思い、小町に尋ねてみると、
「ん〜..なんて言えば良いんだろう...。強いて言えば、外の世界..ミコトのいた世界とは、技術も文明も劣ってる..って所かな」
それを聞いて納得出来た。この家の造りや道の敷き方から見て、せいぜい明治になる前辺りだと予想出来た。あまり歴史とかは強くないが、それほどだろうとは考えられる、そんな造りだった。
「それより、小町さん。ここから何処に行くんですか?ずっとここに立ち止まってちゃ通行人の迷惑ですし...」
そう小町に尋ねる。小町は少し辺りを見回した後、その問いに答える。
「いや、ミコトの家を探そうかなって..ミコトの仕事はここに関係するものだからね。人里に住んだ方が色々楽だろう?」
そう言うと、小町は道を歩き出す。慌ててミコトも着いていくが、まだ慣れない体の為、慌てながらもゆっくりと歩く。
歩いて数分、小町は一つの家..いや、寺子屋の前で止まった。ゆっくりと扉を開け、まるで自分の家のようにズカズカと進んでいく。そして、部屋の前で立ち止まり、軽くノックする。
「あぁ..開いてるから。入っていいぞ」
部屋の中から返事が帰ってきた。それを確認すると小町が部屋の扉を開け、一人の姿が現れた。その人は青混じりの長い銀髪、頭にはまた特徴的な帽子を被っていた。その頂きには赤いリボンが着いている。その女性は小町を見た後、話し始める。
「おやおや、死神さんがここに来るのは珍しいね。それに、横にいるその男は...成程、訳ありって感じだね」
一目見るだけでこちらの事情を見透かしたように話してきた。すると、小町は畳の上にあぐらをかいて座り、その横でミコトは正座する。それを女性が確認すると、
「さて、先ずは私の自己紹介をしよう。私は上白沢 慧音、この寺子屋の教師をしている。見た目からは分からないだろうが..一応妖怪だ。半分人間、半分白沢の半獣だ。とは言っても..よく分からないかな。狼人間とでも思っておいてくれ」
「お..狼人間ですか..。取り敢えずこっちの自己紹介を..」
と、ミコトが自己紹介しようとするが、
「いや、自己紹介は良いよ。君の事は知っている、いまさっき紫さんから軽く聞かせてもらったからね。ミコト君、幻想入りしたばかりってね、そして閻魔様の下で働く事になったって事も、しっかり聞いているよ」
慧音がそう言うと、小町は小さい声で
「全く..あの人はどこまで裏で手を回すのが大好きなんだか..」
と呟き、大きなため息をついていた。ミコトと慧音はそれを尻目に話を進める。
「取り敢えず、ミコト君の住む家との事だけど...ここら付近で空いている家が無いのよね...。あるはあるのだけれど..必要最低限しか揃ってないし、狭いし..貴方の身体には向かないわね..」
「別に..その不便な家でも寝る事さえ出来れば良いのですが..」
「ダメですよ、家というのは自身の身体を癒す場所でもあります。不便と言うだけで身体は疲れるものなのです。せめて家ぐらいは快適にしないと..とは言いますが、そこしか空いている家が....」
慧音は少し腕を組み、唸った後、何かを思い付いたかのように声を上げ、
「そうだ!ここに住めば良いですよ!私もここに住んでますし、十分な広さもあります!快適性も保証出来ますから」
と、そんな事を言い始めた。勿論、これをいきなり言われた側は困惑する人が多いだろう。ミコトもその一人だが、ミコトの隣は困惑どころか納得しているようで、
「..確かに、安全性と信頼性どちらも高水準で素晴らしい...ミコトもそれで良いだろう?」
「け..慧音さんがいいと言うのなら...それでも良いですけど..」
こうなってくると、有難さより申し訳なさが勝ってきてしまう。だが、慧音は笑顔で了承してくれるようだ。ミコトは心から感謝するしか無かった...。
数時間後、ミコトの荷物を寺子屋、もとい慧音宅に持ち込み終わる。空いていた一室に箪笥や布団を運び、自室を完成させた。僅かな達成感を一人感じていると、襖越しに慧音の声が聞こえてきた。
「ミコト君、今日はきっと疲れただろう?風呂を沸かしておいたから、入って早めに寝るといい。後は私に任せるといいさ」
慧音の言う通り、ミコトは慣れない体で動き、激しい筋肉痛に襲われながらも運び込みを続けたせいで疲れきっていた。今は慧音の言う通りに、疲れた身体を癒す為に、まだ早い時間に就寝する。
それと同時刻、紅い館の地下奥深くの一部屋にて、爆発に近い音が鳴り響く。生憎、硬い石造りの為、音は響くも、地上へは聞こえない。揺れも紅茶の水面を軽く揺らす程度だ。何が起きたか、気付かれなかった。いや、気付かれたとしても手遅れだった。
そう、地下の部屋に大きな穴が空き、地上へと繋がってしまった.....。
導入はこんな所で終わりですね。衣食住を手に入れたミコト、落ち着いた生活をしたかっただけなのに...可哀想..
さて、次回は早速ミコトに仕事が出来てしまうそうですよ...頑張れミコト!