死神に転職して幻想入りしました ~東方死転職~ 作:生おろしのレンコン
炎が燃え盛る建物に囲まれた空間に、四つの人影がある。蝙蝠の羽を持つ人物は倒れ、動けそうに無い。色とりどりの結晶がついた羽を持つ少女は炎の剣を握り、正面に立つ二人を眺める。
残り二人の片方はボロボロのメイド服姿に、銀のナイフを握る。
もう一人は、鬼の面を被り、青い炎の剣を握った。
鬼の面をつけた人物、ミコトは自分の中から溢れ出る力に身を任せ、青い炎が大きくなっていく。
メイド服の少女、咲夜も覚悟を決めたのか深く呼吸し、目の前に立つ少女、フランを見つめる。
数秒の間、二人と一人は硬直状態のまま睨み合った。
先に動いたのは、フランだった。
片手を振り上げ、数多くの光の玉を出現させる。それが迫り来るが、咲夜は一つ一つを確実に見極め、避けていく。それに対しミコトは剣を横になぎ、相殺していく。
そして、ミコトは一通り相殺し終わると、強い力で地面を蹴った。
大きく土埃が舞い、衝撃が地面を伝う。残像を残す程の速さで、フランの懐に入り込み、勢いのまま膝蹴りをいれる。
地面の抉れる音、弾幕が地面にぶつかる音、そして殴られる際の鈍い音が重なって響いた。
頑丈な吸血鬼といえど、勢いに乗せた力任せの攻撃となると、怯むどころの話では無かった。
約30mほど吹き飛び、呼吸が一瞬止まる。止まりどころのない弾幕もピタリと止まる。フランが次に呼吸する時には、昨夜がナイフを振り上げていた。
「妹様、お許しください」
昨夜がそう囁くと、フランの左肩に銀のナイフを突き立てる。致命傷は避ける為、血管が少なく、臓器もない、更に後遺症を軽く抑えられる肩を狙った。
動きを止める為なら、脚や腹部を指すべきなのだが、吸血鬼に銀は弱点、純度が高ければ尚..だ。
直ぐにフランは苦しみだし、暴れ始める。爪で咲夜を引っ掻き、足をばたつかせ、どかそうとするが頑なに咲夜は退かない。
銀のナイフを握り、フランの片腕を抑えていた。
次第にフランの動きは鈍くなり、呼吸も苦しそうになっていく。
咲夜も汗を流し、引っかかれた部位から血も流れる。
鬼の面をつけたミコトはそれを黙って眺めていた。案外簡単に終わったな、と思いつつ、咲夜たちに背を向け、歩き出す。
自分とは思えない力に、何故か使えた能力、何故紫はこの事を知っていたのかと考え、倒れていた蝙蝠の羽を持つ少女に近づく。
息を確認し、傷を軽く見る。弾幕は背中で受けたようで、致命傷は避けていた。だが、服が破け見るに堪えないので、自分の着ている少し破けた上着をかける。
後は火の手が届かない場所まで運んでやる。
一通り終わると、どっと疲れが押し寄せてくる。人気の無い路地にまで歩き、鬼の面を外す。大きく息を吐き、上を向く。
すると、背後から何か木製の音が響いた。反射的にその方向を向くと、何かが落ちていた。
よく見てみると、二つに割れたお面。恐らくだが、苦難の面だった。
何故こんなところにと近づいた時、身体に激痛が走った。
全身が何かに貫かれる様な痛みに襲われる。声にならない声をあげ、膝から崩れ落ちる。
痛みのあまり、頭の中で何かが切れるような感覚に陥り、意識が飛んでしまうのだった...