ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
超便利政治ユニット、シルヴィア。原作では文化も国民性もまるで違う3か国の侵略統治をさらっとこなした上で本国から足引っ張られるのを振り払いつつ未来の反抗の為に物資をちょろまかしながら侵略部隊の前線指揮官や軍師の仕事まで兼ねて、その一方で催眠調教でぐちゅられと無茶苦茶な激務を振られていたのにまるでけろっとしていたお姫様である。
多分政治ステだけ見ればロキ坊ちゃまやそのお兄ちゃんを超えてVBシリーズ最強候補。なお破滅ルート。
要するに今回の話は、ORSがSUGEEってよりは単なる公式チートの話だったりする。
一気呵成の反乱により国奪りを成し遂げたティア達。
部下諸共構わずの自爆騒ぎで完全にトップとしての求心力を失ったテュポーンは、逆転は最早不可能と悟ったのか意外に大人しく従っていた。―――アスタに自爆機能と国家運営データベースへのアクセス機能をオミットされること、ザハークの産卵母体になることも含めて。
というか機械らしいというべきか何なのか、数日スパンで産めてすぐさま成長し並の魔族を凌駕する個体になるという魔神の眷属の性質を認識すると、むしろ表面上は一党の誰よりもノリノリで産卵交尾に励んでいる。国を治めていた者の視点としては、手軽に増える生産力なり戦力なりというのは相当に垂涎のシステムであり、現実に労働者や兵士が取れる畑なら食いつきたくなるのは権力の座から転げ落ちても簡単に抜ける感覚ではなかったらしい。
一方で権力を奪った側のティアとアスタは、妙に意気投合してエンジョイしている魔神と機竜と裏腹に、政庁の執務室で新体制の統治に悪戦苦闘………は、実を言うとそこまでしていなかった。
「はい。これがデルピュネ国軍の構成と掌握状況の資料。これが地方の代表者達とやり取りする書簡や草稿。これが生産部門の体制見直しの原案。各地の治安状況に経済流通状況。傷病者向けセーフティネットを始めとした新規福祉政策の枠組みと、そのプロパガンダ計画等々。優先度や重要度はともかく緊急性は後ろの方はそんなに高くないから、把握できるペースで読み込んでくださいね。質問にもすぐ答えられるよう、大丈夫ならしばらく私もこの部屋で作業してますけどいいですか?」
「シルヴィア……あなた、女神?」
「ティア姫?その例えはあまり洒落になってないのですが……」
「やー、シルヴィが書類仕事得意なのは知ってたけど、まさかここまでとはねー」
シルヴィアが一晩でやってくれました。
勿論比喩表現ではあるがティアの体感からすれば本当にそう言いたくなるくらいにするすると話を進めてくれる。
自爆騒ぎの音声を国中に垂れ流したりその後の演説を用意していたように、テュポーンの性格を読んで勝つまではおろか勝った後も見越して事前準備をしていたというのが実際のところなのだろうが。
「でも、どこまで仕込んでいたの?」
ハメ殺すような形になっただけで難敵には違いなかったとはいえ、国を奪ろうというのに勝つことばかりに気を取られてその後の視点に欠けていた。至らなさを痛烈に反省し、そして完璧にフォローしてくれたシルヴィアに改めて感謝するティア。
だがいくら政変の混乱を最低限にするよう動いたとはいえ、その手回しは完璧過ぎた。また現状の自分達はクーデター政権なのだから従わない勢力は当然国内に出てくる筈なのだがそういった気配も今のところないのは偶然な訳がなく、彼女の働きを明確にする意味でもアスタは問い質す。
対するシルヴィアは、どこかばつの悪そうに苦笑しながら告白した。
「仕込んでいた……と言えば仕込んでいたのですが、これは今回の為の動きっていう訳じゃないんです」
「どういうこと?」
「実際はずっと前からテュポーンの圧政に対する反乱の機運は高まっていました。特に直接神竜族の脅威に曝されていない地方では『神竜軍に対抗する為だから国民が我慢するのは仕方ない』って言い分に効果がなくなりますからね、国内情勢が落ち着いていたのは単に機を伺ってただけです」
「そうなのね。確かに、それも当然かしら……」
テュポーンの統治に慈悲はなく容赦なく搾り取るだけ搾り取る類のものではあったが、機械である彼女に言わせれば無駄を全て削り取っただけ。逆に言えば働いてさえいれば必要最低限の生活の保障はされるし、国境のすぐ西に『魔族は皆殺しにしろ』が教義の神竜族が居てそいつらから身を守る為に国のリソースを集中する必要がある、とくれば諦め八割で納得する者だって多かった――――情報量の多い都市部や前線に近い地域では、だが。
神竜族の脅威を身近に感じることのない地方では当然不満の割合が跳ね上がっていたのを、実際に物資の運搬で現地を飛び回っていたシルヴィアは肌で実感している。
「ですので、ベヒモスで行き来する際に各地のそういった勢力には元々話を通してました」
「待って。それ私聞いてない」
そこから唐突に爆弾をぶち込まれた二人の眼が点になる。
「アスタさんが知ってたら態度でテュポーンに気取られるでしょうし、そこはすみませんが私の一存ということで動いていました。
ただ実際反乱が起きた場合、現地に何度も出入りしているベヒモスはどんな形であれ巻き込まれる確率が高い。そうでなくてもテュポーンに真っ先に関与を疑われる。もういっそこちらから主導権を握るしかなかったんですよ、『私達が各地の同志達との紐帯となる。軽挙は控え、来る日まで力を温存するように』と」
「あ……」
「あの演説を私の名前でやったのも、神竜族であるティア姫の名前を伏せる以外に彼らに伝える意味もありました。『貴女達と繋がりがあるこのシルヴィアがテュポーンを倒した一味です。だからこの混乱で変に暴発はしないでくださいね』、と」
そのまま理路整然とし……ているように思えるシルヴィアの弁舌に聞き入ってしまう二人。だが、ただ感心するよりも前にその陥穽に気付いたのはアスタだった。
「待ってシルヴィ。もしかしてだけど――――ティアが来なかったら、もしかして私がその首謀者の席に座ってた?」
「………はい、そこそこ大きな可能性としては。魔導列車ベヒモスのリーダーはアスタさんですし、こうやってこそこそ小賢しい動きをする女がトップになるより収まりはいいですから」
言い訳はしません、とばかりに頭を深く下げるシルヴィア。それを向けられた鉄の魔女は、知らぬ内に自分を神輿にしようとしていた謀略姫に対して。
「アスタっ、シルヴィアは別に―――」
ティアが咄嗟にシルヴィアを庇おうとするのに被さるタイミングで。
緩い笑みを浮かべ、ため息一つで許した。
「はぁ。そこそこ長い付き合いなのに、こんな子だとは思わなかったわ。
でも許したげる。貴女なりにベヒモスのことを考えてたんでしょう、本来リーダーの私が気を付けないといけなかった分まで。可愛い妹分の頑張りを認められないアスタお姉さんじゃないわよ」
「アスタさん……!ありがとうございますっ」
「…………良かったわね、シルヴィア」
誰に対しても慈愛溢れて優しく迎え入れてくれる医務室の癒術師、そして自分よりもよっぽどそれらしいベヒモスのお姫様―――そんなアスタのシルヴィア像が破られてもなお、この程度で裏切られたと恨むような関係ではないと。
幼い頃ティアがシルヴィアを棄ててから今日に至るまでの年月の、決して短くない時間を共有した二人の絆が垣間見えるやり取りだった。心温まる一幕だった。
『だからティアはそれを笑顔で祝福した』。
それはそれとして、冷えた―――もとい、冷静な思考で話題を戻す。
「その動きがこうして 私 の 助けになっているのだから、私からは感謝しかないわ。
けれどその反乱勢力、今後どう付き合っていくのがいいのかしら?」
「はい。野心がないということはないでしょうが、彼らの大義はテュポーンの圧政からの解放です。自分達の生活が改善した、と目に見えて分かれば目標は達成されたことになりますから、ひとまずはそれで落ち着くでしょう」
「ひとまずは、なのね?」
「私達の弱みは正統性がないことです。魔神様のご威光にあやかって『魔神解放戦線』なんて名乗ってみましたが、彼はほぼ御伽噺の住人。どこまで効果があることか」
「本人の戦闘能力と眷属を生み出す能力は凄いけど、普段の態度は女好きのチンピラ丸出しってのもねえ……今もムムルかテュポーンあたりとよろしくヤってるんでしょうし」
テュポーンという魔族屈指の実力者を倒したといっても今のティア達は、「どこの誰とも分からぬ風来坊が王様をやっつけて、なんか自分が代わりの王様って言ってる」程度の存在でしかない。まして言うまでもないことなので三人ともわざわざ口には出さないが、大将が戦争相手である神竜族幹部の娘ティアであることも発覚すれば当然大きなマイナスに働く。
歯向かおうと思えばいくらでも歯向かう口実が作れるのだ。
「正統性、か。……あのね」
「―――だからこそ、そんなものは全て吹き飛ばすだけの餌をぶら下げましょう」
思うところがあったのか、躊躇いがちに何かを告白しようとするアスタを遮って謀略姫が策を打ち出す。
「例えば先ほど言ったような傷病者向けセーフティネット。これは怪我や病気で働けなくなった国民に対し、これまで『お前はもう役立たずだから渇いて死ね』となっていたところを生きていける分だけの手当を保障する仕組みです。当然これは直接生産性の向上には結びつきませんが、『いざとなった時でも国は自分達を見捨てない』と民に思わせれば帰属意識と政治の安定に寄与します」
「これまで『正統性』を持っていたテュポーンは、そのあたりを完全に切り捨てていた。発想すらなかったのかもしれない。だから私達はあえて逆の方向を掲げようってことね?」
「他にも色々考えていますが、そうした『民の生活』を考えた施策を数日おきに通信網で派手に喧伝しましょう。
実際は制度上の欠点や財源の問題もありすぐには実行に移せない『絵に描いたお菓子』も多いですが、そうした姿勢でいるとアピールすることで民衆の指示を集めそれを権力基盤とします」
独裁状態だったテュポーンが余裕を奪い取っていたことで、その実態を指摘できたりシルヴィア以上に『上手にお菓子の絵を描ける』知識層も国内に多くはあるまい。
だからこうして『国民を顧みなかった機竜王』とは対照的なイメージを積極的に浸透させ、民衆が自分達の生活改善を実感して『自分達の恩人』を引きずり下ろすことを嫌がるようになればこちらの勝ち。
――――その段階になれば、大将が神竜族であるティアと公になっても致命的にはならない筈だ。
「………分かったわ。それで行きましょう」
参謀が打ち出した指針を大将が吟味し承認する、そしてそれを
…………。
けれど、ティア・エリーシス個人として気に掛かっているのは。
「本来の計画通りアスタを頭に据えたなら不要だった苦労を、シルヴィアにさせてしまっているわよね……ごめんなさい」
ベヒモスの方の管理に顔を出してくるとアスタが退出して二人きりになった執務室で、青の竜姫は物憂げな顔で俯く。すぐ近くの机で書類を捌いていた白の少女はそれに優しい苦笑を返した。
「何を言ってるんですか。そもそもティア姫とザハークさんが来なければ、テュポーンを倒せる機会があったかすら分かりません」
「でも………」
アスタにその気があるかは別にして、今後の大将の立場を彼女に譲ることは十分に可能な筈だ。だがそれはできない――――神竜族の大神官であるガシェルに復讐する為、ティアには自前の軍勢が必要だから。
しかしその為の、神竜族のティアが魔族領で立場を得るにあたっての莫大な苦労を今実際に支払っているのはシルヴィアだ。こういった政治関係では自分は彼女程上手くやれないのが分かってしまうのが歯がゆくて仕方なかった。ただでさえ産卵母体という精神的にも肉体的にも多大な負担を負ってもらっているというのに。
そしてこれが『いつもの』泣き言であることも自覚している。
「言った筈ですよ、ティア姫。私は全身全霊で貴女を肯定します。
何があってもあなたの味方ですから、私が出来ることがあったら頼ってください」
シルヴィアが暖かい笑顔でこういう風に赦してくれることも分かっているのだから。
だからティアは彼女に言葉を重ねる。
∵∵∵演算分岐点∵∵∵
【無理はしないで】ロウ+1
【甘えさせてもらうわ】カオス+1
【なら私だけの味方でいて】破滅+1
→【なら私だけの味方でいて】
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵
何かが罅割れ落ちる音がする。
「なら私だけの味方でいて」
それを気にすることもなく、シルヴィアに詰め寄りその手を取って吐いた言葉は、冷たく石のように硬い声に乗せられていた。
喉を焼きながらこみ上げてくる不快感、先ほどアスタとシルヴィアの絆を見せられて蟠った澱み、その感情の名は嫉妬。
「その智謀、今後は全て私の為だけに振るいなさい。」
「ティア姫……?」
そう、姫だ。少し前までティアは、優しい母と可愛い弟と自分を慕ってくれる民達が居る幸せな日々が続いていくと信じて疑わなかったお姫様だった。でも今彼女を姫と思ってくれるのは、たった一日だけの恩を大事にし続けてくれたこの純白の少女しかいない。
全てを
そんなシルヴィアが他の人を優先するようなこと―――ああ、想像するだにユルセナイ。
我ながら醜いとは思う。浅ましいのも自覚している。
ザハークは自分の復讐に付き合ってくれているし、荒野で拾ってくれて以降協力してもらっているアスタ達にも大きな恩義がある。
それを無かったかのようにシルヴィアに独占欲を燃やすのは、恥じ入って然るべきと理性は告げている。
けれど。
「分かりました。誓いましょう、我が知略の全ては貴女に捧げると」
「~~~っ、貴女は本当に、もう―――!」
仕方ないなあ、と微笑んで。でも僅かな時間の逡巡すらもなく受け入れてくれるから。
あの裏切りの日以来砕かれた心を他人のピースで歪に埋め合わせていることを、復讐姫は止めようとも思っていなかった。
『アスタのシルヴィア像が破られてもなお、この程度で裏切られたと恨むような関係ではない』
→大丈夫?清楚姫だよ?
『躊躇いがちに何かを告白しようとするアスタを遮って』
→「アスタさんレベルの機械工学の知識を勉強できる環境って・・・ネフティス本国出身ならテュポーンの下で扱き使われるのはおかしいし、滅んだディアボロスの生き残りでしょうか。しかも相当な高等教育を受けられる境遇の」
あとは日常会話でさりげなくカマかけして微修正。原作知識なんぞなくても頭脳チートは普通に情報を抜いてくる。
『産卵母体という精神的にも肉体的にも多大な負担』
→大丈夫。清楚姫だよ?