ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
まだ原作二章~三章なのにぜんっぜん話が進んでない……!
(まあ掲示板回とか脳破壊で遊びまくってるせいだけど)
しかも今回分量が半端なので前後編。
デルピュネ首都エトナに設置された巨大駅舎。
アーチ状の天蓋まで設けられており大陸中に一台しか存在しない魔導列車ベヒモスの為の施設としては大がかりではあるが、逆説的にその輸送力がどれだけ国に利益を齎しているかを示していると言えるだろう。
何せ建造されたのは効率のみを判断基準としていたテュポーン統治下でのこと。ベヒモス自体もそうだが、機械の彼女の思考でも投資に見合うと計算された上で製作が進んだのだから。
そしてそんなテュポーンは今。
「はははっ、あははははっ!!何故だ、ボクの全身のモーターが今猛烈な速度で回転している!
明らかに無駄なのに、何故かもっと強くとボクの制御回路が叫んでいるんだ。これはなんだ、シルヴィア!!」
「それはねテュポーン。―――魂です」
「魂!?」
明らかにおかしいテンションで機関も制御装置も全てが集約している魔導列車の最重要部、指揮車輛の改装工事の陣頭指揮を執っていた。
ついでに言えば横で彼女に真面目くさった顔でふわふわしたことを吹き込む軍師シルヴィアもそうだし、彼女の隣にやる気のない二つの目が描かれた大きな布………をすっぽり被った二足歩行生物が佇んでいるのもシュールとしか言いようがない。
上司の狂態を一切意に介せず淡々と部品を運ぶゴーレムと
半裸サングラスの青肌筋肉ムキムキ男があろうことかその恰好で溶接作業をしていたりその横でにぃにぃ言いながら眼鏡白衣姿のダークエルフが図面を引いていたりと、魔神の眷属達の混沌ぶりの縮図がそこには顕現していた。
その光景を母親のような暖かい目で―――実際自分が産んだ子も中に混じっているが―――眺めるシルヴィアは、隣でテンションのままにまくし立てる機竜に自身の見解をつらつら述べている。
「馬鹿な、機械のボクに魂など。ありえない」
「……あ、えっとごめんなさい、霊魂とかの意味での魂じゃないんです。
愛でも心でも、情熱でも夢でもいいんですけど。一途に籠められた想いは時に鋼の巨躯すら動かします。それにテュポーンも当てられたのでは?」
「想いなんて不確かなものが?そんなことが在り得るのか?」
何やら深い話をしているようにも見えるが、ガテン系コボルト達の熱い叫びとマッドエルフの狂気染みた笑い声が作業音に紛れて聞こえてくる喧騒の中である。隣で同じように疑問なのを体で表しているのか左に傾いた布生物を真っ直ぐ立たせつつ、やはり落ち着き払った様子で答える少女は何かを悟ったような深さを纏っていた。
「死者の怨念が何かを壊すなんて“この世界”ではよくあること。なら正の方向の感情が何かを動かすことがあっても不思議ではないと思いませんか?
実際私の回復と支援の業は祈りによって発動するんですが、普通に機械の子達にも効いてますよ」
「あの
なるほど、納得はしづらいが君の言うことにも一理はある」
だが、と言葉を切ってテュポーンはその輝く翠眼でベヒモスの外観を視界に収める。骸獣をはじめとする対障害物用の正面装甲が取り外され、内部に新たな機構が埋め込まれているところである。進捗はまだまだで、完成図も今の状態からは予想することも難しいだろう。
「想いを籠めるも何も、まだ形にすらなっていないぞ。これでボクに影響するほどの魂があるとでも言うのか?」
「現物というよりは、信仰というか浪漫ですかね…男の子の?」
「む?」
普段の彼女からはらしくない抽象的で曖昧な物言いだったが、テュポーンもそれ以上は追及しなかった。
まるで千行以上に及ぶ不毛で脱線しまくった論争を読み終えたかのような疲れに濁った眼をしているシルヴィアを気遣った訳ではないが、そこを突ついたところで有益なものは何も出ないということに予想が付いたからである。
それよりも今自分達が作っているモノが完成する、その瞬間を待つこの時間に湧いてくる暖かいもやもやの把握の方を優先した。
(自己診断ではエラーはない。シルヴィアの言い分では、これも魂とやらの影響なのか……?)
気付かず笑顔のモーションを表情に浮かべている機竜は、シルヴィアとの雑談を切り上げて作業現場の見回りに向かうことにした。一日でも早い工事の完了のために、創意工夫を模索して。その楽しみを待ち侘びるような姿が“機械らしさ”とかけ離れていることに自覚を持つこともなく―――。
…………。
「やほー、シルヴィ。今空いて……るわね」
「あ、アスタさん」
『~~~っ』
そしてテュポーンと入れ違いに現れたのはベヒモスの車長―――今ではデルピュネの流通の総責任者とも言える魔女アスタだった。
科学者でも錬金術師でもある才女は、布お化けに頭?をぐりぐり押し付けられているシルヴィアに苦笑いしながらその逆隣りに陣取って改装されている列車を見上げる。
深紅の長髪をくるくると弄りつつ、ふと感慨深そうに彼女は言った。
「こうしてると思い出すわね、ベヒモスを作ってた時のこと」
「あぁ……なんだか懐かしいですね」
「私が図面引いて、機械組み立てて、実験しては失敗して……その間にシルヴィがテュポーンから予算もぎ取って、人足や資材の手配に駆け回ってくれて」
「内装や外観についてああだこうだ話し合ってたら夜が明けてたこともありましたね、ふふっ」
苦労は大きかったけど毎日が楽しかった昔の思い出。まだベヒモスなんて形にもなってなくて、仲間もアスタとシルヴィアの二人だけだった頃の。
ジャンク市を漁っていたアスタと、彼女が性質の悪い店主に騙されかけていたところを散策で通りがかったシルヴィアが指摘して助けたのが出会い。
当時は一介の技術者とエトナに駐留していた部隊付の治癒術師。琴線に触れるものがあったのか二人はすっかり意気投合し、アスタの魔導列車計画に日々邁進していた。
「完成したらしたでテュポーンにこき使われる毎日だったけどねー」
「二十年計画で借金を返上して独立する契約はしてましたけど、テュポーンがそれを遵守する性格じゃないのも把握してしまっていて」
「で、各地の反乱勢力と組んで独立する計画も立ててたと。本当可愛い顔して凄いことするわよね、あなた。このこのっ」
「あうう、アスタさ~ん……」
楽しそうに長身のアスタが小柄なシルヴィアの頭に腕を回して優しくぐりぐりする。困ったような声を出しつつも同じように笑顔の妹分は、甘んじて為すがままになっていた。
ひとしきりじゃれ合うと、優しい声で告げたが。
「―――『世界の果てを見に行きたい』。いつだったか語ってくれましたよね、アスタさんの夢」
「シルヴィ……」
「借金が帳消しになってもまだ戦争でそんな余裕もないですけど、いつか平和を勝ち取る日が来たなら、きっと。
その時には私にもその景色、見せてくださいね?」
「この子は、もうっ」
健気な言葉に不意打ちを受けたように菫色の瞳が潤んだ。
少しだけ震えた声で、竜魔女は素直な想いを返す。
「私だって一緒よ。ベヒモスの車長として、貴女が行きたいって言ってた場所に連れてってあげる義務がある」
「え、私の……?」
「『神竜族も魔竜族も関係ない、みんなで笑い合える国』」
「それは――っ」
分かっている、二つの種族が滅ぼし合うこの世界にそんな場所はどこにもないことは。シルヴィアの顔が辛そうに歪む。違う、そんな顔をさせたい訳じゃなくて―――。
「シルヴィ。貴女はベヒモスの家族で、私の可愛い妹分。
たとえどんなことがあっても貴女は一人じゃないの、忘れないでね」
「ぁ………」
腕に抱いたままのシルヴィアの頭をぎゅっと抱き寄せる。肩が震えるのには気付かないふりをした。
ティア軍の軍師にしてデルピュネの宰相。公私に渡りティア=エリーシスに献身的に尽くすこの少女は、どれだけの辛苦をこの小さな肩に背負っているのだろうか。
ティアが彼女に依存して寄りかかっているのはアスタも感づいている。だが、ならシルヴィアは誰を頼ればいい。
疲れたらいつでも帰ってきていい。自分は、魔導列車ベヒモスはそういう場所なんだと、伝えたかった。
既に魔神に全てを委ねる悦楽を知ってしまった女であることに、気付いた訳もなかったから。
「ありがとうございます、アスタさん」
顔を上げて見せた笑顔に籠められた親愛だけは、紛れもなく本物だった。
※百合シーンに見えますが背景は代わらずカオス作業現場で隣には布生物が居る中お送りしておりましたが何か。
『指揮車輛の改装工事』
→そこにアルトンから
『千行以上に及ぶ不毛で脱線しまくった論争』
→リボルビングステークとギガドリルブレイクで真っ二つになってたらしい。ついて行けずにあわあわするおかんや面白半分で混ぜっ返す幼女とかも居たけども。どっちが勝ったかはお楽しみ。
『たとえどんなことがあっても貴女は一人じゃない』
→はい言質取った。悪堕ちルートはアスタが離脱する危険があるので、シルヴィアのことを絶対に見捨てられないような仲になってもらいました(汚い笑顔
『既に魔神に全てを委ねる快楽を知ってしまった女』
→傍から見たら、ザハークとのアレより早くこのイベントが入っていればシルヴィアの末路も変わっていたのかも知れない、みたいになるんだろうか…。