ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 一人、よりにもよってORSが竜姫じゃないけどそこはまあ。




激突の竜姫達

 

 数百年に渡る神竜族と魔竜族の絶滅戦争、その中で文字通りの難攻不落を貫いたアルトン公国の滅亡。むしろ魔竜族にこそ困惑が広がったその粛清劇だったが、本来の目的からすれば『ついで』でしかないことがメスキアという“宗教”の本質と言えただろう。

 特に何も知らぬアルトンの民衆など、姫公主や将軍達を皆殺しにすれば宗主国に叛意を抱く可能性があるから……という理由で虐殺されている。

 

 あまりに(おびただ)しい量の血に塗れた教えだが、ティアと親友だったピアサが同調してメスキアに反旗を翻した、とでも『エデン様の名の下に』言えばそれだけでファフネルの行いは正当化される。

 故にひと仕事を終えた大将軍はその勢いのまま残る四天将のニヴェルネ公ヴィーヴル、クシナダ公ヤマタ旗下の連合軍を従えて堂々魔族領へと進軍した。

 

 本懐である『魔神ザハークを復活させエリーシスを滅ぼした魔女』ティアの抹殺。次いで忌まわしき機械文明を復興させつつある機国デルピュネの殲滅。その為に幾千幾万の魔族を屠ることこそ『エデン様の為に』一点の曇りもない正義の行いであると、エリーシス滅亡の真相を唯一知るファフネルも含めた全員が確信している軍勢がエトナに迫る―――。

 

 

 そして、アルトン虐殺を唯一生き延びたピアサの証言からこの動向を読み切った軍師シルヴィアが打ち出したのは、敵の進軍路でも起伏の激しい丘陵地帯に布陣しての迎撃だった。

 

『敵は圧倒的多数です。故に最も防備の整ったエトナに籠城しての防衛戦で凌ぐことが安全策となります。

………ですがそうすると、向こうからしてみればこちらを包囲する片手間に軍を分け、各地方を順繰りに攻めて焦土にしてしまえばいいだけのこと。

 その場合、この局面だけ乗り切れても、いずれデルピュネも私達も終わりです』

 

 故に緒戦に出せる限りの戦力を投入して相手に痛打を与えるというのが彼女の構想。分の悪い賭けだが、ここまでまとめて来た国を再度滅ぼされることなど到底許せない大将ティアはこの積極策を採用した。

 

 それが意味するのは―――この戦いは、両軍が総力を結集した正面決戦で幕を開けるということだ。

 

 

「はっ、子蠅共め。同士討ちしてボク達に勝とうなんて、舐めるのも大概にしろ!」

「遅い、トロい、ノロい、ヌルいッ!くひっ、くひひひひっッ!!

 その程度で空戦部隊気取りなんて―――嗤わせるなメスキアのゴミめらがぁッッ!!!」

 

 

 全長十メートルにも及ぶ巨大な機械兵器ライドギアをはじめ、機人(エンブリオ)やオートマタに鉄の弩や機銃を満載させて高地に陣取る機甲部隊。機竜テュポーン率いるエーテルの血潮流れる鋼の軍団は、最精鋭であるアルトン兵を欠いた神竜軍側の不完全な航空戦力を機械の精密さで次々撃墜していく。

 

 かろうじて回避行動を取れた、あるいは運良く火線の雨を逃れた竜騎士達も、翠色の疾風が駆け抜ける度に竜翼か首を切断されてぼとりぼとりと荒野にその身を叩き付けていた。

 空を支配する死の風妖精と化した翼竜姫ピアサ。細剣イヴェレンを手に飛翔するその姿は、戦場にあってなおあの闘技場での扇情的な衣装そのままだ。鎧など重石でしかない、誰も捉えられない速度だけを突き詰めた今の彼女は、敵の返り血すら置き去りにして天空を舞う。

 

 だが当然神竜軍側もされるがままというのは有り得ない。射撃陣地を崩すべく突撃を仕掛けるのは、麗しき黒髪の龍乙女を先頭に反りの入った刃をかざす武人達。

 

「総員抜剣!!我らクシナダ武士の勇猛さ、エデン様に捧げる時です!!」

「来るか、ヤマタっ。蜂の巣にしてやる!」

 

 呪札を触媒に自然を操る陰陽師と呼ばれる術士が張る結界と、従える式紙と呼ばれる使い魔が盾となって坂を駆け上がる独特な鎧姿の戦士達を護る。

 だが陣地に備えられているのはこの日の為に改良・増産して来たデルピュネの最新鋭の火器の山だ。中でも異彩を放つのは、地面に据え付けられ大量のコードが接続されたふたかかえほどの大筒だった。

 

「ウルティマカノン、ファイヤーーーッッ!!」

 

 白いヘルメットにゴーグル、そして青いボディスーツの男がトリガーを操作し、砲口から放たれるのは空間すら歪ませる高出力エーテル砲。閃光の柱が戦場を貫いた時、射線上の武者達は術盾も肉盾も鉄鎧もまるで意味を為さずに消滅する。

 

「くっ……怯むな!あれだけの攻撃、そう連射はできません!」

「弾をケチるなよ!!どうせどこに撃っても当たるんだ、一発でも多く叩き込め!!」

 

 龍姫の鼓舞に応え突撃を続けるクシナダ部隊。それを歓迎するのは鉛と榴弾とエーテルの雨霰だが、ものともせずに着実に機兵達の陣地へと迫りつつあった。

 

「邪悪な機械文明の兵器など……全て斬り刻んでくれましょうッ」

「ふん。ボク達魔竜族が邪悪というなら、貴様ら神竜族は知識の探求を捨て去った蛮族じゃないか。

―――そら踊れ。知恵遅れの猿は猿らしく、なッ!」

「こい、つ……ッ!!?」

 

 だが距離が近いということはそれだけ弾幕の密度が高くなるということ。特に大将のヤマタにはテュポーンが徹底マークしてオールレンジ攻撃で翻弄している。

 長年の鍛錬により直感に長けた炎龍の四天将は砲弾を巧みに切り払い、あるいは周囲に浮かせた炎の刃を光線と相殺させる。しかし彼女の竜装である幾重も枝分かれした刃を有する七支刀・斬焔(ざんえん)は、超高熱の火炎を自在に操るとはいえ完全に接近戦用の武具。翠眼機竜の重砲エキドナ/自律砲台アルゴスを遠距離から相手取るには具合が悪い。

 

 嘲笑うテュポーンと歯を食いしばるヤマタは、しかし懐に斬り込むことに成功しさえすれば立場は真反対となるだろう。耐えながらその機を伺う龍剣士だが、彼女のその判断は一つの前提を完全に抜かしている。

 

―――機械の殺戮兵器相手に『途中で油断や慢心して攻撃が雑になる』ことや『疲労で判断ミスなどを起こし隙が出来る』ことを期待するのは、果たして賢明と言えるだろうか。

 

 本人の言通りエデンの教えに従い機械に関する知識を遠ざけていた模範的な神竜族であるヤマタは、AIの思考速度の裏を掻けるだけの機知も、あるいはごり押しで火線の雨を突破する隔絶した実力も持たぬまま、ジリ貧の立ち回りを踊り続けてしまうのであった。

 

 

 

 一方射撃の勢いがクシナダ部隊に向いたからと言って、空戦部隊が勢力を持ち直したかと言えばそんな筈もなかった。

 ピアサらに散々に陣形を崩され最大の強みである機動力を殺されたところに、猛禽類の眷属らが甲高い咆哮と共に襲いかかる。

 

「くひひっ、餌はよりどりみどり。さあヴァイキングの時間よ、メスキアの狗共は一匹残らず喰らい殺してっ!!

―――みんないい子だから、食べ残しなんてマナー違反、しないですよね?」

 

 幻鳥サンダーバードが雷の網を張り、神鳥ガルーダが乱気流を起こして敵群を空の檻へと閉じ込める。抜け出す方法は二つ………地に墜ちて荒野の染みになるか、魔神の眷属達の胃袋に収まるかだ。

 

 自らも引き続き細剣を振るってかつての同胞を躊躇なく屠りながら、ピアサは道化師のように不気味に笑っていた。

 

 なんて可愛い子供達。魔神の戦いを援けることを遺伝子に刻まれて生まれる眷属達は、メスキアへの復讐を誓う彼女を全肯定して力になってくれる。

 現在率いている空戦師団はピアサが産んだ子もそうでない子も等しく、己の翼同然の愛しい“眷属”達だった。

 

 だから。

 

「くそっ、仲間の仇―――ぐぁふっ!!?」

「なんで私の可愛い子供達を殺そうとしてるの?大人しく死んでくださいよ」

 

 必死で応戦しようとする敵兵に理不尽な言葉を浴びせ、反論など許さぬとばかりに喉を貫く。

 蹂躙以外あり得ない、奪われない為に奪い去る。

 

 まっとうな母性など初めての我が子を失った時に、涙と共に枯れ尽くしてしまった翠の復讐姫。

 その歪んだ妄執は、戦場の空に血染めの華を咲かせては散らし続けるのだった。

 

 

 

 その一方で。

 

「冥戒十三騎士が十の指し手、『白の賢姫』が未知を(ひら)く。風は空に、星は天に、逆巻く因果を貫いて。

 抜錨(パンツァーフォー)暁の水平線に勝利を刻め(アクセスフラッシュ)

――――『月天の雫(セレスティア)』!!っぽい☆!!」

 

「……っぽい?」

「戦場でふざけているのですか」

 

 機国デルピュネが機械化部隊による射撃部隊を擁するように、氷国ニヴェルネにも神官達による術撃部隊が遠征軍に帯同している。

 広々とした荒野で錯覚するが地形のせいで見通しの悪いことを利用して、戦場を迂回して側面から襲い掛かる伏兵―――それを読み切っていた祈祷師姿の四天将ヴィーヴルが配下の彼らと共に待ち構えての一斉詠唱。青白い燐光を曳いて飛来する死のシャワーを光輝く結界で完全に遮断してみせたのは、更にその裏を掻いた軍師シルヴィアだった。

 

 一息に壊滅させるつもりで放った攻撃がまるで威力を発揮しなかったことに、しかし口元一つ動かさずにその理由を見極めようとした紫髪の竜姫が確認したのは、シルヴィアだけでなく彼女が引き連れた部隊が対術・対砲撃結界の構築に秀でた妖精種に偏っていること。そして水と霧を操るヴィーヴルの宝玉竜装ラーベラ・カルクスに対して、それを凍らせる竜装・氷刃シャリートを有する魔竜姫レヴィアと組んでいること。

 

「私をここに釘付けにする―――それが貴女の狙いですか」

 

 明らかに自身への対策を意識した陣容に、長い紫苑の前髪の下で盲目の竜姫は如何なる表情を浮かべたのか。

 少なくとも声は平坦だったが、巧みな布陣でこの状況に持ち込んでみせた謀略姫もまた落ち着いた口調で宣告した。

 

「フリーにして一番面倒なのは多分貴女なので。ここでは撃っては防いでの単純な根競べに終始してもらいましょうか」

 

 術師としてだけでなく、策士としても名を馳せる四天将ヴィーヴル。その冷静沈着で徹底した用兵にはかつてレヴィアも苦渋を舐めさせられたことがある。

 その本領を発揮させない為に、また奇策で切り抜けようとしてもそれを即座に読み切る為に、軍師シルヴィアは己というカードをこの場に切ったのであった。

 

 

 

 そして。

 

 多くの可能性(演算過程)と同じように、両軍が激突する正面での戦線では大将軍ファフネルがティアとザハークにアスタを相手取り、その剛力と頑健さで圧倒していた。多くの可能性(演算過程)と同じように、三人の狙いは自分達を囮にして、彼女を魔導列車に轢かせること。

 だが四天将を束ねる最強の将はベヒモスの大質量の突撃を素手で受け止める程の規格外。乾坤一擲の奇策はここに潰える―――わざわざファフネルへの復讐に燃えるピアサを説得して別の戦線に当ててまでこの状況を再現したどこかの誰かの事前準備がなければ、そうなる筈だった。

 

「――――ッ!!?」

 

 青の竜姫と紅の魔女が魔力(マナ)を限界まで注いで強化した魔神の触手拘束を強引に引き千切り、迫る列車に対し咄嗟に大剣ヴォルスングをかざす。果たして戦場の四方半里に届く戟音と共に、螺旋に捻れた巨大な槍は神剣の刀身で強引に受け止められた。

 だがそれも事前に想定していた者が居る以上、この奇策はこんな半端で終わらない。

 

「ソーマエンジン、グラインドモーターに直結!イミテーションアンカーはリフトレールに固定完了。ムムル姉、行けるぜ!!」

 

 

「はい、じゃあちくっとするのですよー」

 

 

「ティア、ザハークっ。耳栓!」

「分かってるわ!!」

「こんなもん付けるの初めてだぜ、ったく!!」

 

 

「ッ、ジークフ……!?」

 

 

 本能的に危機を察したファフネルが大技を放つよりも早く、ベヒモスの先端に組み込まれた『文明と英知と浪漫の結晶』は猛烈な回転を始め―――戦場どころか地平線の彼方にまで届きかねない切削音が、当然だが最も至近距離に居た竜将の鼓膜を(つんざ)いた。

 

 





『あの闘技場での扇情的な衣装そのまま』
→脱げば脱ぐほど速くなる!

「ウルティマカノン、ファイヤーーーッッ!!」
→浪漫枠にして師団編成で結界役の防御力調整に困った時の紙装甲デストロイヤー。G以外では一人だけ明らかに世界観間違えてる恰好なのはご愛敬。そして男の癖に触手悪堕ちして最強アタッカーの一角になるという。

「なんで私の可愛い子供達を殺そうとしてるの?大人しく死んでくださいよ」
→ちょっと何言ってるか分からないです。
 復讐者ピアサ書いてて超楽しい。メンタルやられまくってて原型ないけど。

「戦場でふざけているのですか」
→安価†詠唱†に対しメカクレロリの熱いマジレス。実際ふざけているのは否定できない。

「ムムル姉、行けるぜ!!」
→なんか熱血ロボ系の台詞を吐くアインくん。脳破壊されるだけのキャラじゃなかったのか…(ぇ

「はい、じゃあちくっとするのですよー」
→弟が恋愛敗者なら姉は歯医者だった……?(激ウマギャグ

『竜将の鼓膜を(つんざ)いた』
→ファフネル、下手に耐久ゴリラなもんで、血の目潰しに続いて今度は耳に被害を喰らうの巻。

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