ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
こういう話は展開上入れる必要があるけど、そうするとノリの関係で掲示板回に突っ込めなくなるパターン。
デルピュネに侵攻してきたメスキア遠征軍の撃退は、緒戦の華々しい勝利の勢いのままに成功に終わった。
だが、当然ながらティア軍に被害がなかった訳ではない。もともと戦力規模では圧倒的不利だっただけに、勝利と言っても『こちらが殺されるより遥かに多くの敵を殺した』上で、大将ファフネルや魔術師部隊、空戦部隊という戦力の中核を優先的に撃破できたからこその判定勝ちだったのだ。例えばあの状態からでも、ヴィーヴルが後先考えずに兵の損害を無視した全軍特攻を命じれば国が落ちる可能性は十分にあった。
魔神解放戦線発足以降かつてない規模の戦いに、薄氷の勝利。故にデルピュネ側の戦場で散った兵士や眷属の数も今までの比ではない。機竜王テュポーンへの反逆と革命、ピアサを欠いたアルトン近衛師団との偶発戦闘、これまでの局地的な戦闘でも当然犠牲は出ていたが、此度の戦いでは部隊単位で壊滅するなど比較にならない数の戦死者が計上されている。
だから首都に凱旋し戦勝の式典を催すより先に、これは区切りとしてやっておかなければならなかった。
「ねむれ、ねむれ―――」
荒野の風にエーテルウィスプの唄う
彼女もまた弟や妹を失っている分哀切の
共に肩を並べた同僚、酒を酌み交わした友、愛を育んだ異性。もはや物言わぬ骸となり火葬されている彼ら彼女らの誰一人として縁がない者などここにはいない。
「ぐす、ぐすっ……みんな……」
「顔を上げて。せめて見送ってあげましょう……」
魔神解放戦線の幹部達に至っては、それこそ自分の腹を痛めて産んだ仔達だ。狼少女ムムルは泣きじゃくっているし、その肩を抱く魔女アスタも目が赤く腫れている。
死者を弔い悼むという行為を非合理的と評価する魔神ザハークや機竜テュポーンも、この場に足を運んだ上で葬送の炎を神妙な顔でずっと見ていた。
あるいは姿の見えない翼竜姫ピアサこそ、最も思うところの多い母かもしれない。
一方で静かに、粛々と葬儀の手配をしていた女達も居る。神竜族と魔竜族の絶滅戦争という地獄を、一人は前線指揮官として、もう一人は従軍ヒーラーとして数多の死を見届けてきた。
感情を殺した顔で式に臨む大将ティアの後ろに控えるレヴィアとシルヴィアは、果たしてティアが気を使わない相手として傍に置いたのか、それとも二人がティアを気遣ったのか。
復讐姫はサファイアの瞳に炎の残影を焼きつけながら、誰にともなくただ呟いた。
「私は…自分の子供を戦わせて、死なせている。あまつさえ貴女達や、アスタ達にも同じ想いまでさせて」
「後悔しているの?」
「違う」
肯定しようものなら許さない、そんな険の籠ったレヴィアの問いに即座に断言したティアは、向けられたそれよりも深い怒りを秘めた声で続ける。
「憎いのよ―――かつて私の大切だった全てを奪ったガシェルが。その為に新しく得た“大切”を失って、なのに後悔している暇もないくらい、憎くて……っ!」
自らの命令に従って戦場に散った者達に対して、そのことに後悔を覚えることなどあってはならない。だが、その後ろめたさを呑み込む以前に感じることすら出来ないことに怒っていた。
自分に―――それ以上に、自分をそうさせた仇敵に。
だからティアは涙を見せない。見せられない。酷薄であることを自覚しつつも、毅然とした大将として振る舞うことを言い訳にして。
「泣きたい時に泣けないなら、今はそれでもいいんです」
「シルヴィア……?」
「死者を弔うのは、今を生きる者がその死を乗り越えて前に進むため。
今日兵達を弔うためにこうしているように、貴女がガシェルを殺すことでしか『エリーシスの弔い』ができないのなら―――」
「……っ!!」
「―――それが終わったら、思い切り泣いていいんです。」
そんなティアを優しく肯定するのは、やはりシルヴィアだった。
全てを喪って、その辛さにこれまで何度も泣いて来たけれど―――まだ母や弟、エリーシスの民達の死を乗り越える為の涙は一度も流していない。元凶たるあの男を殺すまでそんな涙は流せない。
ティア自身自覚していなかった想いを言い当てた言葉はいつも通り耳に優しくて。
「その時が来ても、ずっと私は貴女の
「………ありがとう、シルヴィア」
振り向かないまま返した感謝の声は、少しだけ震えていた。
『エリーシスの弔い』をガシェル討滅まで取って置くというなら、その為の戦いで死んだ者達への弔いは別のものと整理が出来たから―――ティアは子供達を素直に涙で見送れるから。
同時に改めて決意する。復讐を果たす誓いを新たにする。
∵∵∵演算分岐error!
【前を向く為に】ロウ+1
【奪われない為に】カオス+1
【何を犠牲にしたとしても】
→【何を犠牲にしたとしても】
「私はもう一度誓うわ。ガシェルへの復讐は必ずやり遂げる。
何を犠牲にしたとしても、私はもう止まれないのだから」
「――――そう、ですか」
僅かな間を置いて目を閉じ応えたシルヴィアだが、果たして自覚はあっただろうか。
『本来』であればもっと立ち塞がるジレンマに悩み葛藤し、敵の兵士を殺すことすら躊躇いを覚えるのがティア=エリーシスだというのに。
もはや青の竜姫に迷いはない。
自分勝手に産み落とした子供を戦力にすることも、新しく出来た仲間達を自分の戦いに巻き込むことも、全てガシェルが悪いのだから。
だから復讐はもう何かの為にやるのではない。義務であり、使命であり、己の竜生における前提条件だ。
今この瞬間完全に固まったロジックに彼女を導いたのは、弱音を吐く度に暖かく受け止めながら優しく肯定してくれる“誰か”。善意と献身の積み重ねが『優しいお姫様』を完全な復讐鬼へと誘導してしまったことを。
軍師シルヴィアの頭脳がそれを理解できていない可能性など―――果たしてあったのだろうか。
…………。
一方で。
(ティア=エリーシス。貴女のその『犠牲』に、何が含まれているか―――果たして自覚はあったのですか?)
後始末が一通り終わり、後は首都に凱旋するのみとなったティア軍の陣幕。開戦から今日まで多忙さに圧殺されていたシルヴィアが自分の天幕に戻り一人きりになったところで。
彼女は啜り泣いていた。
「ごめんね、ごめんねジュデッカ………弱いお母さんで、ごめんなさい……っ」
「そんなことっ、ある訳がないわ。母様は私の、自慢の―――」
護衛の愛娘がすぐに駆け寄って慰めにかかったが、本当ならそれすら避けたかっただろう。
軍師として、事前の部隊配置から戦闘終了後の再編成まで取りまとめていたから。誰の子供がどこに居て、自分の子供の内誰が帰って来なかったか、詳細まで把握して仕事をした。自分の作成立案した作戦の結果何を失ったのかをまざまざと突き付けられながら。
―――戦闘には勝った?大戦果?
もっと犠牲が少なくて済む方法があったかも知れない。
―――ヒーラーとして知った顔を看取ることは何度も経験している?
自分の子が死ぬことに慣れる母親など居るものか。
なのにシルヴィアは人前では必死に表情を取り繕っていた。それこそ、自分の作戦に従って死んだ我が子を想って泣くなど誰にも許されないと言わんばかりに。
母が愛情深いことなど、一番の娘を自認するジュデッカが誰よりも知っている。全員自ら名前を付けて、産まれたことを祝福して、どんな異形だろうと優しく抱き締めて母の温もりを惜しみなく与えていた。
その一部だろうと、亡くして痛くない訳がない。辛くない訳がない。
それでも精一杯強がるのは―――ティアへの余計な心労をかけさせないという献身でもある。自分が戦いを決めたせいでシルヴィアが傷ついてると知れば罪悪感を覚えると思ったからと、平気な振りをして。
だからジュデッカは涙に震える母を抱き締めながら、歯痒い心で問いかける。
『何を犠牲にしたとしても』と言った。切り捨てたのは、踏みつけにしたのは何?
『何か』―――シルヴィアの心が、罅割れ落ちる音がしていた。
『善意と献身の積み重ねが『優しいお姫様』を完全な復讐鬼へと誘導してしまった』
→ 曇 ら せ タグのお仕事。ヤバいと分かってても全肯定ペンギンを今更止められる筈もなく(止めたらそれはそれで依存してたティアの精神がぶっ壊れる)、母性溢れる笑顔の下でいい感じに苦悩していた模様(愉悦)。ザハークさんといちゃいちゃしてた回とか、フラストレーション滅茶苦茶溜まった結果なんでは……?
『誰の子供がどこに居て、自分の子供の内誰が帰って来なかったか、詳細まで把握して仕事をした』
→なお原作ではこの仕事、客将のレヴィアがやっていた模様。
『母が愛情深いことなど、一番の娘を自認するジュデッカが誰よりも知っている』
→名前安価とか性癖とか締まらない部分もあるけど、まあそれだけで何十何百の子供の相手とか普通出来ない訳で。
『シルヴィアの心が罅割れ落ちる音がする』
→はい。演算分岐点での音の正体でした。
最初の全肯定ペンギン安価で本人が言ってた通り、清楚姫はティア姫が復讐鬼になることは全く歓迎してません。一度決めたスタンスだからティアのやることは否定しないし甘えてきたら全力で甘やかすけど、それも『優しいお姫様』が本当に大事な心の聖域だから。
なのにここのティアってば全力で自分が不幸になりそうな選択肢連打するんだもんなー。
という訳で清楚姫の鋼の清楚力もそろそろ限界でみしみし言ってるので。次回あたり、さくっと逝かせちゃいます。
ていうかこの作品、掲示板回を全部飛ばすと相当暗い鬱物語になってない・・・?