ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
どうでもいい話として、気が付いたらブィーブルとかヴィーブルとか打ち間違いすることがちょくちょく。二次創作書いてみて初めて分かるこの紛らわしい名前。
ヴィーヴル=ニヴェルネは思い悩んでいた。
『竜の賢者』と異名を持つ祈祷師姿の四天将に、その優秀な頭脳を以て長く思考を裂かせるような事柄などさしてありはしない。かつて肉を捨て去り躰を石に変えたことがある程にエデンの教えに深く殉じている彼女は、一日の大半を瞑想や祈りに費やしている。だがここ数日の彼女はそんなルーティーンを乱す程に深く思案していた。
口数少なく、表情も動かず、ましてそれすら盲目故に長く伸ばした前髪で覆い隠している北の公主。
神秘的な佇まいで配下の尊崇を集めていると言えば長所だが、その分彼女が何かを相談できるような相手もいないという意味では間違いなく短所だった。彼女が如何に知恵者であろうと、判断基準の外にある事象をその秤に掛けることなどできよう筈もないのだから。
(なぜ魔神解放戦線は攻めてこないのですか……?)
先の遠征で精鋭の術撃師団を失ったのはニヴェルネにとって明確な痛手だった。成長の遅い神竜族で熟練が求められる術師の補充は容易ではなく、また国土の七割を万年雪に覆われ食糧資源に乏しいニヴェルネで屈強な肉体の戦士はなかなか生まれない。
軍事力の弱体化を思えば今がこの国を攻める好機というほかないのだ。ヴィーヴルとてそれを見越して、アルトンが陥落する前は敵の進軍ルートとしてあり得なかった場所を中心に防衛拠点の見直しと要塞化を進めている。敵の軍勢を運搬する長大な機械の箱は驚異的だが、その移動速度を見切ったヴィーヴルからすれば十里先からでも魔術砲で狙い撃てる。迎撃の準備は万全―――裏返せば、万全になるだけの時間があってなお相手に動きがなかったということだった。
ヴィーヴルが戦場で指揮官として対峙し崩せなかったあの魔女が攻め時を逃す程愚鈍とは思えない。氷と山岳の国であるニヴェルネより攻めやすいクシナダ方面を優先しているのかとも思ったが、情報収集した結果違うだろうと見ていた。
今かの国は全域が
だがその侵略に秩序だった統治方針は見られない―――やっているのは『戦争』ではなく『破壊工作』なのだとヴィーヴルは看破していた。それでクシナダが滅べば万々歳だが、国外に対処できる余裕がなくなるだけで目標達成、もしかしたらヤマタと戦うつもりすら作戦開始時点では持っていなかったかもしれない。
「ヤマタ殿では、ミズチ殿ほどの器ではなかったということなのでしょう……ですがクシナダの民よ、耐えてください。私達がここを凌げばメスキア本国と連携して必ず救いに往きます」
戦争では往々にそういった『意図とずれた戦果』が戦局を左右するとはいえ、そんな相手に敗れたのだろう炎龍姫に少なからぬ失望を覚えた。だが同じ教えを奉ずる教徒としてクシナダの国民の苦痛と屈辱は心から憂いている。
魔神の眷属に“汚染”された彼らをメスキアが救うなどと、ピアサが聞けば鼻で嗤いそうな盲信だが、少なくとも本人は信仰心と義憤に溢れた心でそう誓っていた。
だからこそここでニヴェルネまで陥ちることなどあってはならないというのに、相手の攻め手がまるで見えないことに賢竜姫は不安と焦りを覚えている。
【祈って解決する問題かよ。おめーはいっつもそればっかだな】
「………姉様?」
深夜もうまく寝付けず気持ちを落ち着かせる為に聖堂に籠り、聖女像に祈りを捧げていたヴィーヴルに不機嫌そうな声が届いた。こんな時間でも律儀に入口を護る近衛達には聞こえないその声に氷の公主は僅かに言葉尻を跳ねさせる。幻聴に困惑したのではなく、寧ろよく知った声だった。
よりにもよってこの場所で『彼女』が積極的に話しかけてくることなど滅多にない。その意図を訝しみながらも瞑想に集中しようとして、何故か背筋がざわつくのを感じていた。
【ああ、とんでもねーバカ共が来てやがるぜ。お前の石頭じゃ一生計れねえなこれは】
「………私が魔竜族の軍師に劣ると?」
【今の時点でも気付けてない時点で一杯食わされてるのは確定だよ。けけっ、いい気味だぜ】
「何を―――?」
何かに確信を持ったその口調にヴィーヴルは訝しむ。『彼女』が持つ情報は己のそれと同一の筈だ。なのに頭脳に秀でた自分だけが気付かない何かなど果たしてあるのかという無意識の傲慢。
【おつむの良さを笠に着るより先によォ、お前はその出不精をなんとかしときゃ……ちっとは違ったかもな?】
その具体的な“何か”が見えなくても、何かを見落としていると確信できる嫌な予感が脳裏に囁き掛ける。先ほど『彼女』は「いい気味だ」と言った。ならば起こり得る事態とは即ち―――。
「………っ!!?」
【へっ、来た来た!】
劣っていたのは頭脳ではなく感覚。『彼女』に遅れて感じた震え―――否、揺れがヴィーヴルを襲う。地面そのものが振動するなどという正しく驚天動地の事態に、華奢な盲目の竜姫は受け身も取れずに上体を床に叩きつけた。
「一体何が……!」
「ヴィーヴル様!!」
駆けつけて来る近衛に助け起こされたヴィーヴルは、眩む意識をなんとか引き戻して事態を把握しようとする。目が見えない代わりに
「馬鹿な―――!!?」
【ああ、超の付く大バカだぜ。あはははっ、どうしようオレこういう奴ら大好きだわ!!!】
まず理解しそして自分の正気を疑ったのは、厳寒の気候に耐えうる分厚い城の内壁の一面が派手に壊れているという事実。その破壊の跡は“城内の”地下からぶち抜かれた深い風穴から延びて、中心街の広場に祀ってある始祖龍の巨大な骨に潜り込むようにしてその凶手たる『機械兵器』への道を指し示している。
「穴を掘るなら、天を突く!墓穴掘っても掘り抜けて、突き抜けたら私達の勝ち♪
魔導穿孔列車グランベヒモス、鈍行運転でただいま惨状です♡」
「シルヴィア=ハマルティアぁ……っ!!」
深夜寝静まった城と街を悲鳴によって叩き起こす蹂躙劇。兵舎と武器庫と魔術施設を優先的に制圧していく手際の良さ。一方凶暴なデーモンやサイクロプスは暴れるに任せて街の家々を破壊し、人々を捻れたオブジェか挽肉に変えて行く。
先端の巨大なドリルを始めとして大幅改修が施された列車?を中心として市街地で凄惨な破壊を振り撒くのは、熱線と光線を最大効果を出す射角で振り撒く
どちらも邪悪な魔神の眷属を引き連れ、信仰を随所に刻み込んだ静粛な祈りの場を無惨に破壊する。
こうも己は怒りの籠った声を出せたのか。獣のような唸りに外の様子を知らない近衛達がぎょっとするが、構っていられるほど余裕がない。卓越した知謀を以て外道を働く敵の軍師と、それに裏を掻かれた己の至らなさに歯を噛み砕かんばかりの怒りを感じていた。
読めなかった。完全に奇襲を許した。
万端整えた要塞の防備と、そして何よりも軍勢の進撃を阻む厳寒と氷雪という自然の防壁。それら一切合切を無視するために敵が選択したのは『地中からの侵攻』だということを。
魔神解放戦線とニヴェルネの戦いは、首都強襲という最高潮の熱で以て火蓋が切って落とされるのだった。
『地面そのものが振動するなどという正しく驚天動地の事態』
→浮遊大陸メスキアに地震とかなさそう。
『大幅改修が施された列車?』
→魔導列車ベヒモスは今日も
先端にドリルが付いた乗り物が何をするかって、そりゃ初代ウルトラマンの時代から、ねえ。
『慌てて動き出す兵達に何もさせずに刺し貫き斬り刻んでいく
→なお当然痴女スタイルのまま。寒くないの?
『隠れ潜む非力な民衆を近くに寄るだけで白い灰に変えて回る
→竜装名が『濁杯ミュステリオン』とかになってそう。本来はアスタ自身の生命力を使って霊薬を作る盃だけど、彼女が『最初の世界』で竜杯の再現を何を元にやったかって考えると………。
『選択したのは『地中からの侵攻』』
→ぶっちゃけSLGとしてはいきなり敵の本拠地にワープ戦闘仕掛けるようなもんで、アウトな手段もいいとこだけども。ちなみにベヒモスは地脈を利用して浮いた線路作りながらその上を走ってる設定だった筈で、つまり地中だと運動効率が激しく上昇して地上とほぼ変わらない速度で掘り進めそうな気がするというこじつけ理論。