ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
戦闘シーンは書いててテンション上がるんで気が付くと文量伸びる、んだけど。
凄惨姫のお披露目補正掛かってたとはいえ、ヤマタとの扱いの差ェ……。
儀式場の補助を受け、視界を埋め尽くす弾幕と言っていいほどの水流がザハーク達を襲う。エトナの闘技場のアリーナに劣らぬ広さが確保されている儀式場内にて飛沫が撥ねる。しかもその一滴でも触れようものなら纏わりついて動きを鈍らされ、間隙を縫って閃光の殺意が魔弾となって急所を射貫こうとしてくる。
殺し間と化したこの空間、並の使い手では数秒持てばいい方だろう。不意を打たれてたった一人追い詰められた側とは思えない魔導の乱舞―――これが四天将、竜の賢者ヴィーヴル。
凡百の兵では彼女に触れることすら叶わない、だが謀略姫はそんなことは百も承知。こうした状況に至る可能性も事前に読み切っているからこそ、最強の札二枚のみをコールしている。
「
「この程度、凍りなさい!!」
状態変化を受け付けない
氷刃の竜装シャリートに凍らされた水は彼女の支配に下り、逆に六華の盾となって魔術を阻む防壁に使われてしまう魔竜姫レヴィア。
魔術殺しと氷使いというただでさえ一騎当千の上非常に相性の悪い相手が同じ空間の中に居る。寧ろその二人には秒を数える間に首を落とされかねない距離で四半刻を耐える巧みな弾幕捌きをこそ称賛すべきだろう。
更にその向こうに控えるシルヴィア達にも魔弾を届かせてみせている。
「同胞よ、輝ける星の加護をもたらさん!
聖盾アンシェラ、我らが運命拓く竜の礎となれ!」
だがこれまでにテュポーンやファフネルら強敵との戦いを経験して成長したティアの盾は、四天将の竜装より格落ちでありながら片手間の砲撃程度では小揺るぎもしなかった。
蒼の竜姫は大事な大事な堕姫に他者が傷痕を付けるなど許さないと言わんばかりに、迫る賢竜の魔導を一縷の漏れなく弾き続けている。
教えを盲信し
そんな中で。
ティアの盾に守られたシルヴィアは…短杖を構えたままの体勢を維持していた。ザハーク達への強化回復を行うでも魔に目覚めてから扱えるようになった攻勢魔術を放つでもなく、ただそこに佇んだまま挑発するように小首を傾げる。
「霧は出さないのですか?」
「答えの分かっている問いを……くぅっ」
複雑な魔術操作で疾走する魔神と飛翔する魔竜姫の牽制を続けながらも、祈るような姿勢で俯く賢竜姫は歯噛みした。
彼女の持つ竜装である二対一組の青い宝珠。うち水を操るラーベラはとうに
相手の視界を惑わすだけでなく、取り込んだ敵の
それでも盲目のヴィーヴルなら霧の中でも相手の
「ヘーイっ♡ピッチャーびびってますー?」
「………っ」
意味は分からないが妙にイラっとする口調で煽ってくるふざけた女だが、自分の裏を掻けるような軍師が一度場に切られた札の対策をしていない訳がない。というより地中からの強襲という奇策それ自体が拠点防衛に最大の効果を発揮するカルクスへの対策の一面もあると見ていいだろう。土の下に霧は出せないのだから。
そして策士が状況への対応策を一つしか用意していないというのはあり得ない。シルヴィアの待機行動は『あなたが霧を展開した瞬間カウンターを撃ちますよ』と宣言しているようなものだった。ブラフの可能性もあるが、少しでも気を抜けばザハークとレヴィアに肉薄されかねないこの戦況で試すのはとても賢明とは言えない。………だがもしもの可能性ないし希望的観測がある分誘惑が発生して、堪えるヴィーヴルの精神を磨り減らしている。
何もしないで立っているだけで相手を追い詰める、非常にいやらしいやり口だった。
「なんという性格の悪い……!」
【いや、お前が言うなよ】
それでもヴィーヴルは魔術を操り続ける。地脈を利用した儀式場のバックアップがあればこそだが、それは裏を返せば彼女のキャパシティを超えた
来るはずもない援軍を期待して耐え忍ぶ為ではない。ピアサは裏切り、ヤマタは囚われ、エアは生死不明―――最後の四天将としてエデンに仇為す魔神らをこの場で仕留めることを諦めていないから、来るかも知れない逆転の一瞬を求めて足掻き続けているのだ。
「しつこいわね、もうっ!」
「ええ。でもそろそろじゃないかなーと」
信仰心を通り越してもはや妄執か。どこまでも教えに殉ずる彼女は、信じるものさえ間違えなければ聖者たり得ただろう。だが彼女がここまでして守ろうとする教えが彼女を守ることは終ぞなかった。
「まだ、まだ――――くがっ!!?」
「な、なにっ?」
「攻撃が止んだ……?」
突然弾幕が止む。大量の水は全てその場でばしゃりと散って儀式場の石畳を浸す。
困惑しながらも警戒し続ける三人を前に脱力したままただただ奇妙な痙攣を繰り返すヴィーヴル、後ろでそれを眺めながらにんまりと嗤うシルヴィア。
「あーあ。ベヒモスで掘り返してぐちゃぐちゃになった地脈から力を吸い上げてれば、すぐに出力ミスってそうなりますよ。むしろよくもった方です」
「そん、な………」
傷ついた地脈を平常通り利用しようとしたのがそもそも罠だったと。出力の安定しない、弱いならまだしも強過ぎる
次善―――否、ヴィーヴルが打てる範囲での最善手を打ったからこそ、これはシルヴィアが事前に想定していた蓋然性の高い筋書きの一つ。
「今度こそ勝ち切らせてもらいましたよ、ヴィーヴル=ニヴェルネ」
「あはっ、流石シルヴィアね!」
「本当食えない女……」
「けっ」
シルヴィアの勝利宣言に嬉しそうに破顔するティア、こうなるまでに自分の実力でケリを付けられなかったことに微妙な顔をするレヴィアとザハーク。
だがレヴィアはすぐに切り替えると、項垂れたままの賢竜姫まで歩み寄り首筋に刃を当てる。
「言い残すことは?」
「―――――」
この頭が切れ、ついでに宗教で精神もキレている女は回復する時間を与えればまた何をするか分かったものではない。この場で殺す……そう判断した魔竜姫の竜装が鈍く光る。
軽く引き斬るだけで首半ばを裂いて絶命させるだろう刃を当てられながら、『その女』は掠れた声で呟いた。さりげなく、そっと、眼前のすらりとした脚に手を添えながら。
『その女』は、覚醒めた。
「あんにゃろう。てめえの体でもないくせに無茶苦茶やりやがって、よォ!!」
「―――ッ、ぐふぉぅぇっっ!!?」
唐突に激しい脱力と倦怠に支配され、意識の眩んだレヴィアの腹に拳がめり込む。
くの字に折れた後吹き飛ばされた彼女は、その途上にいた魔神に受け止められた。
咄嗟に“自分の女”を懐に抱えたせいで襲いかかる機を逸したザハークから遠ざかるように『ヴィーヴル』はふら付きながらも立ち上がって儀式場の奥へと進んだ。そして顔の血を袖で拭いながら振り返る。
「よお、色男に天才少女。あんたらにしたらそろそろしつこ過ぎるだろうから悪いんだが、オレまでヴィーヴルのクソ石頭に心中するのはごめんなんだわ」
「てめえ―――一体『何』だ?」
「オレの名はメルジーニ。間違ってもニヴェルネ、なんて付けてくれるなよ?反吐が出るからな」
粗暴な口調と態度は先ほどまでのヴィーヴルとは正反対。まるで、どころではない二重人格ぶりだった。当然体を蝕む深刻なダメージは何も回復していないのだろうよたついた足取りだったが、すぐに壁までたどり着いた彼女は壁面に薄く描かれた魔法陣に
ごごご、といかにもな音と共に建物全体が振動する。
「ここはとんずらさせてもらうぜ。じゃあな!」
「あらあら、お約束……」
「く、崩れる!?」
「なめやがって、この借り絶対に返してやるぜ!!」
取り残されたティア達の姿は崩れ落ちた天井に遮られてすぐに見えなくなるが、今メルジーニが立っている場所だけには瓦礫が降り注がないようになっている。公主だけしか知り得ない地の利を生かし、突如人格の豹変した四天将は窮地からの脱出を成功させてみせるのだった。
「ヘーイっ♡ピッチャーびびってますー?」
→悪堕ちして清楚ぶる必要がなくなったからっていい加減ふざけるの自重しよ?それとも今までの反動?
『あなたが霧を展開した瞬間カウンターを撃ちますよ』
→原典のVBHでヴィーブル単体で発動するものより何倍も強力であろう、霊峰の力を利用して大人数で張られた霧の結界を無力化している『シルヴィア』(イベント消化状況によって悪堕ちしていようがやれることも実証済)。なので霧の対応策があるというのは当然ブラフではない。仮に霧を発動した瞬間無効化されて一手損でザハークらに詰められジエンドだったという按配である。まるで将棋だな!
「なんという性格の悪い……!」【いや、お前が言うなよ】
→ちなみに立ってるだけで相手にプレッシャー作戦は原作メスキア侵攻時のファフネル戦でヴィーヴルがやっている。つまり巨大なブーメランっていうか多分同族嫌悪。
「ぐふぉぅぇっっ!!?」
→凄惨姫「●REC」
腹パンしながら現れる実は乙女な盗賊竜。痴女経由で存在は知ってたけど事前に明かせる訳もないのでとりあえず録画スタンバってた凄惨姫。
まあ彼女が表に出て来ること自体はシルヴィア達にとって悪いことでもないし。
ただしドM(のお腹)は死ぬ。原作での被害者は公式ネタ枠ピアサ。
という訳で次回は便利な掲示板回で謎の声の主について解説します。いつもの痴女が。