ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 原作でも迷子の魔族の子供を国境まで送り届けた的な話を母の美談としてティアは話してるけど、世界観を考えると実際はこーいうオチな気が。別にエアが悪い訳じゃないけども…。





抱擁の清楚姫

 

『わあ……っ』

 

 腕の中で幼女が綻んだ笑顔を見せる。肌に心地いい風と共に眼下を流れ過ぎる、瑞々しい草原や森。そして点在する街や村に覗く民の営みは、ティアに取って慣れ親しんだ自身の国の光景だ。

 

『これが私達のエリーシス。母様が治める平和な国……』

『………ティアひめ?』

 

 だが彼女がこれを見るのは最初で最後になるかもしれない。

 それを思うと、己が白翼の羽ばたきもどうしても鈍くなる。

 

 翼持たぬ魔族の幼女にしてみれば空からの景色自体がきっと遠いもの。だがそれ以上に、エリーシス公国は神竜族の領土。国教であるエデンの教えに魔神の眷属たる魔族を受け入れる法はなく、たとえ迷い込んだ親のいない幼子でも国に置いておくことはできない。どころかこれが他の国だったら、容赦なく殺されていた可能性すらあった。

 

―――否。これから自分がするのも同じことだ。いっそ一思いに楽にしないだけ、余計に酷いことをしているのかもしれない。

 

 景色が少しずつ灰に染まり、風に交じる生命の息吹が衰えていき、そんな国境の端でティアは大地に降り、懐の幼女を立たせる。

 これより先の緩衝地帯を挟んで魔族の領土―――始祖龍の慈悲が届かぬ死の大地に彼女を放逐する為に。徘徊する骸獣に見つかれば命はない、そんな荒野に子供を放り出す為に。

 

『ごめんなさい。結局私はこんな―――こんなことをするために……』

『………』

 

 神竜軍四天将最強とも目される母の娘として、またエリーシスを継ぐ者として日々精進している……つもりだった。その母ですらどうにもできない神魔の溝は、今ティアの虚栄心をばらばらに砕いている。

 顔がくしゃりと歪むのが自覚できていた。何を馬鹿な、泣きたいのはこの子の方だろう、どうせこの子を放り出した後は暖かい家でぬくぬくと幸せな暮らしに戻るのだろうティア=エリーシス。そう自分の安い偽善を叱咤しても、涙が零れ落ちる。

 

 

 

『あなたは、わるくない』

 

 

 

 その涙を小さくか細い指が拭った。

 

『わたしにごはんを食べさせてくれました。いっしょのおふとんでねさせてくれました。

 そんなティアひめがまちがってるなんて、あるわけない。だからあなたはただしいんです』

『それは母様が用意したものでっ。私はただ、あなたを無責任に拾ってきて、今こうして無責任に捨てようとしているだけよ……』

『それでわたしはえがおになれました。じゅうぶんです。

 だからティアひめも、わらっていてください。わらって「ばいばい、またね」―――そうじゃないと、その方がかなしいです』

 

 優しい子だと思った。そしてそれ以上に、強い子だと。自分が彼女の立場だったとして、果たしてこんなことが言えるだろうか。きっとみっともなく泣き言を吐いて……ああ、まさしく今の自分じゃないか。まったくもって立場が逆だ。

 

『ティアひめは、すごいんです。えらいんです。わたしにとっては、それだけがぜったいです』

『ぁ―――』

 

 そう言ってシンプルな言葉で自分を励ましてくれる子供の―――その声が震えているのを、瞳が濡れているのを、気付かないふりをして。最後に深くお辞儀をして荒野に旅立つその背中を見送るティア。

 

………魂の奥底で囁く声がする。

 

 これでいいのか。あの子に見せる最後の姿が、こんな惨めな自分でいいのか。

 

 いいわけがないだろう。そう竜姫は心で吼える。

 砕けた虚栄心を燃料に、確かに灯った炎があった。

 

 

『約束する!私は神竜族も魔竜族も関係ない、みんなで笑い合える国を作る!』

 

 

 二度とこんな想いはしたくないからと、喉に刻めとばかりに精一杯の大声で叫ぶ。あの子は振り返らないけれど、絶対に聞いてくれている。

 

 

『その時はきっとあなたを迎えに行くから……だから生きて待ってて!!』

 

 

 捨てた身で何を勝手な―――そう自分を責めることは、もうするまい。そんなことより、あの子に胸を張れる自分で居られるように。

 決意を込めて、最後に彼女の名を呼んだ。

 

 

 

「―――――シルヴィアっっ!!!!」

 

 

 

 そう、一晩経って夢に見て思い出した。

 自分を恩人だという白のお姫様は、確かにあの時の子供だったのだと。

 

 それが分かって、ティアはあの悪夢の日以来初めてすっきりした目覚めを体験していた。

 

 生きていてくれた、また会えた、すぐに判らなかったことは本当に申し訳ないけれど、向こうはそれでも自分を慕い続けてくれていた。

 躍る心を抑え切れず、ティアは寝起き姿も構わずシルヴィアの部屋まで列車内を走っていく。

 

―――途中、気だるげに欠伸をしながら歩くザハークとすれ違ったことにすら気付かずに。

 

 その勢いのままノックも忘れて医務室のドアを開け放ち。その青い竜眼に映ったのは。

 

 

 

 乾いた濁液に全身を塗れさせ、時折小刻みに震える卵を膝に抱え、焦点の合わない目で虚空を見つめたままベッドの上に座るシルヴィア。乱れてしわくちゃのシーツには傷跡のような赤黒い染み。

 

 

 

「え、あ……っ?」

 

 からからに乾いた声は、限界まで引き攣ったままに漏れ出ただけ。

 

 なにが?なんで?―――そんなことを一瞬でも思ってしまった自分を、ティアは深く深く呪った。

 

 なんという愚鈍さか、あの日から何一つ成長していないどころか、退化している。

 シルヴィアが何をされたのか、同じ目に遭った自分に分からない筈がない。そして自分は復讐のために魔を孕むというおぞましい行為を受け入れ―――ティアを恩人と慕うシルヴィアは、同じように純潔を穢した。

 

 いつか迎えに行くと約束し、その時は最初にできなかった分まで精いっぱい幸せにしてあげるんだと誓っていた。そんな少女が触手凌辱の苗床になった理由が分からないなんて言える訳がない。

 

 

 ティアの為……それ以外の理由なんて想像ができない。

 

 

「わたしの、せい。わたしが、シルヴィアを―――?」

「……?ぁれ、ティアひめ……?」

 

 ザハークの行動をきちんと見張っていれば。好色なザハークの悪意にちゃんと頭を回していれば。シルヴィアに会わなければ。この魔導列車に拾われなければ。魔神と契約しなければ。――――復讐なんて、考えなければ?

 

 彼女と再会できたこと、それは荒んだティアの心を慰める慶事だった筈なのに。目の前の光景が物語るのは、真っ当に生きていた彼女の現在(イマ)をぶち壊したのは紛れもなくティア自身だという現実。浮き立った心を更に深く抉り落とすような事態に、傷ついた竜姫の精神が軋んでいく。

 意識がショートし、思考が意味をなくしていく。ただ金物を切るような奇声が叫びとなって溢れ出る―――その直前だった。

 

 

「あなたは、わるくない」

 

 

「―――。シルヴィア?」

 

 それはいつかとまるで同じ流れ。ぎこちない笑顔に震える声で、深い海の色をした瞳で受容を示してくれている。違うのは、穢された躰でティアに触れるのを厭い伸ばしかけた指をもう片方の手で押し止めている痛々しい仕草。

 

「愛する人を奪われて、それを為した者に復讐したいと願うことは当たり前の感情です。

 勿論その過程が万人に受け入れられることは有り得ないことも、その結果が更なる復讐の連鎖の呼び水となることも、言われずとも分かっていることでしょう。

――――でも、だからこそ。他の誰もがそんな当たり前の正論でティア姫を否定しようと、私だけはこう言います」

 

 

「あなたが間違ってるなんてあるわけない。あなたが正しいよ。ティア姫は頑張ってるよ。すごいんだよ。生きて進み続けているの偉いね。って」

 

 

「………っ!」

 

 自己嫌悪に崩れ落ちそうなティアの心を掬い上げる肯定の言葉が、優しく魂に染み込んでくる。孕み落とさせられた忌まわしい筈の魔の卵、それすらか細い腕で持ち上げて語ってくれる。

 

「―――私は全身全霊であなたを肯定します」

 

 これがその証だと。全身全霊とは文字通りに、産卵母体の苗床として心身を捧げても後悔していないのだと。

 

「あなたって子は、本当に…!なんでそこまでっ」

「……だって、寂しいじゃないですか。辛い目に遭ったあなたに、傍で一人くらい甘い言葉をかけたって―――」

 

「シルヴィア、シルヴィアぁ……っ!~~~っ!!」

「わっ!?」

 

 燃え落ちた城を追われ、二度と得られないと思っていた優しい想いと言葉に涙が止まらない。全てを奪われた夜に流し尽くした筈のそれは、しかしあの時とまるで違う暖かさを頬に伝えてくれた。

 

 たまらずティアはシルヴィアににじり寄って抱き締める。滲みついた精臭も脇に除けられて不満そうに震える卵も気にならない、ただただ健気な年下の少女が愛おしかった。

 清めてもいない肌の触れ合いに最初は固まっていたシルヴィアも、やがて優しく抱き締め返してくれた。その温もりを感じながら、ティアは―――。

 

 

 

∵∵∵演算分岐点∵∵∵

 

 

【決意を新たにした】ロウ+1

【その抱擁に溺れた】カオス+1

【喜悦を押し殺した】破滅+1

 

→【喜悦を押し殺した】

 

 

∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵

 

 

 

 何かが罅割れ落ちる音がする。

 

 抱擁に溺れながらも、ティアはほの暗い喜びが胸の奥に湧き上がるのを気付かない振りをしていた。

 なんて可愛い子なのだろう。幼い頃の一宿一飯の恩、ただそれだけの為に彼女は穢れた自分と同じところに堕ちてきてくれた。これからも堕ち続ける自分を、ずっと傍で甘やかしてくれるという。

 

 美しく清楚な少女が自分の為だけに一生を泥濘に沈ませる決断をした―――その姿と、やがて行き着く果てを想うとこみ上げる粘ついた熱さ。

 

「んぅ……!」

「ひゃあっ!?待っ、そこくすぐったいです…!?」

「くすっ、ごめんなさいね。―――あなたを守るわ。まだ私の手には、残っているモノがあったのだから」

 

 

―――そう、この子は私のモノ。もう絶対に離さない。そして私の為にもっと穢れて、もっともっと堕ちて……。

 

 

 昨晩まで忘却に沈めていたことすら都合よくなかったことにして、腕の中で桃髪の少女を優しくしっかりと拘束する。それほどまでにシルヴィアがかけてくれた言葉はティアの救いだった。

 

 そんな彼女の暖かい心が自分の所為でこれからどんどん黒ずんで変質していくのかと思うと、背筋が震えるような気持ちになる。

 

 

「………ティア姫?」

「お願い。もう少しだけこうさせていて?」

「それは、はい。えっと……お気の済むまで、どうぞ?」

「ありがとう。(―――ふふ、ふふふ。本当にいい子ね)」

 

 

 愛おしさに細めるティアの青い竜眼。瞳が縦に裂けたそれは多少色が奇麗なこと以外、蛇のそれとどこに違いがあるのだろうか。

 まだ『ティア姫』でいられたこの時の彼女は、シルヴィアを見つめる視線に籠めた感情を自覚すらしていなかった―――。

 

 

 





 悪堕ち直前のティアの歪んだスマイル大好き。

『ティアの為……それ以外の理由なんて想像ができない』
→うん、だろうね。

『乾いた濁液に全身を塗れさせ、時折小刻みに震える卵を膝に抱え、焦点の合わない目で虚空を見つめたままベッドの上に座るシルヴィア。乱れてしわくちゃのシーツには傷跡のような赤黒い染み』
→ORS掲示板閲覧中なので目の焦点がおかしいだけ。「至福でした…♡」とか「触手調教ゲームに転生して原作主人公に凌辱されたORSですが何か質問あります?」とか書き込んでるところです。

『あなたが間違ってるなんてあるわけない。あなたが正しいよ。ティア姫は頑張ってるよ。すごいんだよ。生きて進み続けているの偉いね。って』
→安価遂行中。

『全身全霊とは文字通りに、産卵母体の苗床として心身を捧げても後悔していない』
→むしろご褒美だし……。

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