ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 竜公女メルジーニは悲劇の少女である。高潔な父を持ったが強欲な領主に疎まれ奴隷に堕ち、過酷な日々に視力と空を飛ぶ力を失う。その後伝説の竜装に選ばれ公主として返り咲くが、邪悪な魔族の襲撃に遭い首都を脱出することとなった。最後には全ての民が奴隷になるか否かを賭けて独り魔神との決闘に挑むが敢え無く敗北。その代償として魔神に処女を捧げその眷属を孕み落とすこととなったのだった―――。


 うん、何一つ嘘は言ってない。




明暗の双竜姫

 

 魔神ザハークとの決闘に敗れ、首都ジュラに連れ戻されたメルジーニは宣言通りザハークに『ぶち犯され』ることとなった。当然のように産卵母体ともなり、魔族の子供を産まされた彼女は―――。

 

「ぎゃるぅ?」

「おーよしよし。こっちだこっち」

「ぎゃるるっ!!」

「よっ、と!いい感じに冷たくて気持ちいいなお前。にへへ……」

 

 ベヒモスの飼育車輛にて掌サイズの竜の幼体がじゃれついてくるのを、邪気のない笑顔で躱したり持ち上げたりして戯れていた。邪気のないというか、歯に衣着せぬならしまりのないというか。横目で観察するシルヴィアからは、盲目とは思えないほどその仔竜に向ける眼差しは暖かく、我が子が可愛くて仕方ない母親そのものの姿に見える。

 

「ぐるる……」

「ふふっ。その様子だとザハークさんにはいっぱい気持ちよくしてもらえました?」

 

「っ!!~~~っ、ホントぶっこんでくるなお前……」

 

 自分も我が子の邪霊竜(ファントムドラゴン)を抱いてあやしながら悪堕姫が昨晩のことを話題に振ると、青の仔竜を胸元に抱えながら母親が乙女に変わった。白い顔を恥ずかしそうに紅潮させていたが、やがてぽつりぽつりと小さな声で呟き出す。

 

「いっぱい可愛いって言ってくれたんだ。前髪くしゃってして、間近で覗き込みながら何度も何度も。

 オレ自身自分の顔が今どうなってるか知らないのに、そういうもやもやとか気付いたらどっかいっちまってた。ひたすら幸せで、思い返しても現実感ないくらいで……」

「よかったですね♡」

 

 思い出すだけで夢心地になったのか、誰かに話したくてしょうがなかったのか、聞き役のシルヴィアがひたすら柔らかい空気で接するから気が抜けたのか、おそらく全てがあてはまるだろう。

 自分が愛する男と結ばれる未来があるなど想像すらしたことがなかった悲運の娘は、それだけ自分が優しく愛してもらうことに耐性が全くなかった。それが好色魔神の肉欲から来る女を篭絡させる手管だと分かっていても、全然構わない、自分を抱きたいと思ってくれるのが嬉しいとなっているのだから症状は相当深刻である。

 

(オーダー完璧ですね。さすがザハークさん♡)

 

 そうなるように吹き込んでおいた自分の所業はおくびにも出さず、芽吹いてから即成就した初恋に浮かれる乙女の惚気を楽し気に聴き続けるシルヴィア。仔竜達がすっかり飽きて寝入る程度にはだらだらと脈絡なく話が延びていくが、彼女も始終にこにこしながらそれに付き合っていた。

 

「――――、と。あ、悪い。話長くなっちまったな」

「お気になさらず。ごちそうさまでした♡」

「……調子狂うなぁ」

 

 熱に浮かされていても、トーンダウンして冷静になってくると長話が鬱陶しいということには思い至れるメルジーニである。しかも話題にしているのはシルヴィアにとっても抱かれて子供まで作っている相手。なのに。

 

「おめでとうございます。同じ男を愛して子供を産んだ者同士、これからは一緒に頑張っていきましょうね!」

 

 嫌々な気配を全く出さずに付き合ってくれて、好意的な言葉をかけてくれる。嫉妬する気にすらなれないくらいにするする心に入ってくる。差し出された手を握り返してしまう。

 

「おう。………ま、よろしくな」

 

 レヴィアが『喰えない女』と評する所以―――思惑はあってもそれはそれとしてメルジーニを新たな仲間として歓迎する善意に全く曇りがない。

 彼女の化かし合いに長けたところを知っている紫の竜姫をして「まあいいや」と思わせてしまうのだから、ある意味で最強の策士と言えるのかもしれなかった。

 

 

 一方で、一層警戒と憎しみを募らせてしまう存在も居るもので。

 

 

「それですみません、ちょっとヴィーヴルさんにもお話があるんです。

 場所、移しませんか?」

 

 ここからは悪だくみの時間。生まれたばかりの子供達が居る場所はよろしくないと二人は飼育車輛を出る。残される昼寝中の眷属達。安らかな午睡の一時。

 

 

 生後一日でしかない少女の掌に乗るサイズの仔竜相手に、他の魔物達が全てひれ伏すような体勢になっていたことに、大人達は誰も気づいていなかった。

 

 

 

…………。

 

「私は話すことなど何もありません」

「やだー、そっけない♡」

「ふざけないで……!魔神と共に姉様を誑かして、あまつさえあのようなおぞましい―――ぅぷっ」

 

 人格を交代したヴィーヴルは、信仰する教義に真っ向から反する魔神との性交、そして眷属の受胎という冒涜に思い出すだけでえづき始める。普段表に出ていない方は厚い布越しのようにしか世界を感知できていないが、それでも『自分が使っている』体でそんなことをされたという事実は彼女にとって狂いそうなほど悍ましい出来事だったのだろう。

 

 その無意識の傲慢を―――本来ヴィーヴルはメルジーニの体に間借りしているだけの筈なのに―――鼻で嗤いながら、悪堕姫は単刀直入に切り出した。

 

「ヴィーヴルさんには各地のニヴェルネ残存勢力に降伏を呼び掛けて欲しいんです」

「私が従うとでも思っているのですか」

「あれあれ?ショックでご自慢の頭の回転鈍っちゃいました?

―――別にいいんですよ?あなたが彼らに『最後の一兵になるまで抵抗しろ』って言うのなら、お望み通り無意味に擦り潰して差し上げます♡

 折角メルジーニさんとの約束で従えば底辺の奴隷として生かして使ってあげてもよかったのに、この国の神竜族代表のヴィーヴルさんはそういうこと言うんですね?」

「………っ!!」

 

 敗残の公主は憎々し気に歯を軋らせるが、間近で煽ってくる軍師姫に攻勢魔術の一つも浴びせることが出来なかった。

 かつてメルジーニを封じる為に行っていた儀式を、尋問された側近が漏らしたせいで今はヴィーヴルに対して使われている。今の彼女はメルジーニの意思がなければ表に出て来ることもできず、こうして出て来たとしても体に宿る魔力(マナ)を勝手に使うことを許されていない。ただの無力な少女霊に戻った―――出来ることはかつての偉ぶった肩書を使って、部下達を奴隷として敵に下るよう説得するだけという惨めさ。

 

「勇敢なエデンの信者達は魔神様相手にゲリラ化して命の限り戦うんですね、めんどくさいですねー。

 面倒なので―――いちいちゲリラと民間人の区別付ける気なんてもちろんないですよ?」

 

 拒否するなら民も含めて皆殺し。そう示唆されていることを理解できる自分の頭脳が、今だけは恨めしかった。覚悟しているべき兵だけならともかく、普通の民にまで『魔族に従うくらいなら死ね』とは言えないだけの理性をヴィーヴルは残している。

 

「………ッッ!!!分かりました、従います―――その代わり、どうか降伏した者達に惨いことは」

「交渉できる立場にあると思っているんですか、と言いたいところですが……まあいいでしょう」

 

 屈辱と憤激を必死に飲み下しながらの嘆願をシルヴィアはあっさり受け入れた。

 

 崖下で足掻く彼女を少しだけ摘まみ上げてから、更なる深みに突き落とす為に。

 

 

「かつてソーマ鉱山で奴隷として働かされてた魔族や異端の皆さんと同じ程度の扱いに留めてあげます♡

―――許して恨みを捨てろ、と言える程度にはヌルい扱いだったってことなんでしょうし、さぞ彼らはメルジーニさんにいいお手本を見せてくれることでしょうね♪」

 

 

「――――ぁ」

 

 それは決闘に赴く前のメルジーニにも言われた言葉。

 自分が公主となっても、同体の片割れの苦しみを知りながら尚『エデンの崇高な教えを信じない屑にはお似合いの扱い』としてそのままにしていた。それが巡り巡って今、護り導いていた民達に降り掛かるという。

 

 だが最早敗れたヴィーヴルにそれ以上を望む余地はない。信仰の下自分を絶対の正義だと確信してきた彼女の信念に、この瞬間小さくも深い罅が入った。

 そしてよりましな道が望めなかったとはいえ、彼女はこの時自ら国民を奴隷として売り払うという選択をした。『自分で選んだ』。

 

 

「お見事な決断です。それではヴィーヴルさんも、これからは一緒に頑張っていきましょうね♡」

 

 

 それを見届けたシルヴィアの笑みは教典に描かれる悪魔のイメージそのもののような邪悪に満ちたもの。だが盲目の賢竜姫に相手の表情を窺うことは当然不可能なのであった―――。

 

 

 

――――その前夜。

 

『ザハークさん。メルジーニさんのこと、あまあまらぶらぶえっちで蕩かしてあげてください』

『あん?自分の女の抱き方をなんで指図されねーといけないんだ』

『一つ、折角メルジーニさんがザハークさんにべた惚れしたんだからとことん骨抜きにしてあげた方が後々素敵だと思います。長いこと恋愛経験ないまま(こじ)らせた女の子は、上手く扱えばどこまでも尽くす娘になってくれますよ♡』

『お前みたいにか?』

『さあ、どうでしょう♪………究極まで拗らせた方も知ってますし』

『誰だよそいつ』

 

『もう一つ。ヴィーヴルさんにもただ封印するより私達の力になってもらえればなーと』

『あいつが?あのイカれ信者、徹底的にぶっ壊すまで調教しないと心変わりとかしないように思うんだが。

 メルジーニと同じ体のあいつにそこまでするほど興味湧かねえしなあ』

『はい。だから徹底的にぶっ壊すんです♪教えに従って正しいことをしている筈なのに何一つ上手くいかない自分と、教えを冒涜して魔神に尻尾を振って幸せの絶頂を掴む姉という現実で』

『そう上手く行くか?………まあ、実現したら面白そうだし乗ってやるよ』

 

 

『大丈夫ですよ。とある近所の子供が言ってました。

―――詐欺師やエセ宗教家に一番カモにされるのは誰かって、「自分は頭が良いから騙されない」と思ってるエリートさんなんだそうです♡』

 

『どこの近所の子供だよそいつ』

 

 





『生後一日でしかない少女の掌に乗るサイズの仔竜相手に、他の魔物達が全てひれ伏す』
→メルジーニに産ませる青いドラゴンって言えば、うん。

『究極まで拗らせた方も知ってますし』
→一体何住殿なんだ……。

『メルジーニと同じ体のあいつにそこまでするほど興味湧かねえしなあ』
→ヤマタの時と同じ。結果的に自分が倒すまでもなくシルヴィアに嵌め殺された女はザハークさん的に関心薄め。少なくとも自分の力で屈服させたメルジーニの方が優先度が上。

『どこの近所の子供だよそいつ』
→一体何ファーなんだ……。

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