ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
前回ヒモライダーの話を投下してみたら本編はよと言われたので恥ずかしながら再開。
更新に間が空いてしまったのでストーリーのおさらいがてら。
ティア=エリーシスは苛立っていた。
神魔を冠する竜族が覇権を争う浮遊大陸メスキアを舞台にした、魔神と契約せし亡国の姫君の復讐劇。
神竜族勢力のうち北国ニヴェルネを制圧し、武国クシナダは
祖国を滅ぼした憎き仇である大神官ガシェルを擁するメスキア本国までもはや障害はなく、復讐の達成まで着実に駒を進めている現状。またかつてない程の魔竜族優勢の現状を作り出したティア率いる魔神解放戦線の支持は厚く、機竜テュポーンからデルピュネを奪った時からは考えられないほど国内外からの援助も多く集まっている。
ティア自身復讐を志した時点でこうまで早く道筋が整うとは思っていなかった。百年掛けてでも少しずつ怨敵に届くだけの牙を身に付けていくしかないと覚悟していたのだから、二年も経たない内にここまで来れているという事実は彼女を満足させこそすれ文句を付けることなどどこにもない。
………その最たる要因がティアの暴走によって対話に来た親友ピアサ=アルトンを不意打ちで仕留めて捕虜にしたことというのは、仇に頭を下げろなどととんでもないことを言われたせいだしピアサも今ではそれを理解して納得しているとはいえ、今振り返ると流石になんだかなと思わないでもないが。
だがその椿事を利用した軍師シルヴィアの謀略の結果、メスキアのティア討伐連合遠征軍はアルトンを滅ぼした足で行われ、復讐に燃えて寝返ったピアサらの手痛い反撃でクシナダとニヴェルネの兵力が大きな被害を受けた。苗床となる母体から産卵されて数日で補充されるというザハークの眷属最大の脅威、それを活用して被害を回復させる間もなく両国を陥落させた現状の起点は、間違いなくあの暴走だっただろう。
(そうよ、シルヴィアとザハークよ!)
微妙にむずがゆい気持ちになるのを振り切るようにして、ここまでの快進撃の立役者達に内心不満をぶつける。
ニヴェルネ制圧後アスタら魔導列車のスタッフと一緒に戦後処理で暫く現地に留まった彼女らとは別に、ピアサやテュポーンと一足先に空路で帰還していたティア。現在の国主として長くデルピュネを留守にする訳にもいかない為それは仕方ないのだが、この戦いを始めてからずっと傍にいてくれた存在が両方ともいないせいでひどく落ち着かない気分になっていた。
幼い頃の恩と約束をずっと大事にして献身と抱擁と優しい言葉を惜しみなく与えてくれて、当のティアが怨恨に染まることでそれを踏み躙られてなお心を壊してまで尽くしてくれる堕姫シルヴィア。男を知らなかった自分に触手を交えた凌辱の味を刻み、魔の眷属の卵を孕み落とすという悍ましい行為にすら快楽を覚えさせた魔神ザハーク。
復讐に逸る焦り、湧き出で続ける仇への怒り、国主として民の命と生活を預かる重圧、戦いの中で散った我が子達への哀悼、自分勝手に戦いの道具として産んでなお母として慕ってくれる眷属達への後ろめたさ。それらの独りでは折れていただろう心の痛みを、時に甘やかされる悦楽で時に抱かれる快楽で散らしてきた―――故にその両方が長期間失われた今のティアにはまるで禁断症状のような苛立ちと焦れったさが襲い掛かっているのである。
(ああ、早くシルヴィアがザハークの触手に嬲られて喘がされるのを見たい………って、違う違う!?)
だから両者を求める気持ちが混線してこんな倒錯的極まりない妄想をしても仕方ないのだ。たぶん。めいびー。
それはともかく。
苛立ちを紛らわすように溜まっていた政務に没頭して時を過ごした彼女だが、待ち侘びたベヒモス帰還の日が遂に訪れた。
ニヴェルネ攻略の凱旋とも言える彼らの到着はエトナ市民達から熱狂的に受け入れられるため、大通りをパレードさながらに鈍行で進みながら主要メンバー達が魔導列車の上で手を振っている。
「シルヴィア様ぁーーっ!」
「アスタ姐さ~んっ!」「レヴィア様ッ!!」
「ザハーク!!」「チャンピオン!!」「きゃー、ザハーク様~♡」「ザハークの兄貴ー!!」
華やかな女性陣より圧倒的に声援を集めているのが灰髪褐色肌の男というのもある意味力を貴ぶ魔竜族らしい光景ではあった。彼の傍に寄り添う女達が既にザハークのお手付きで、もう数え切れないほど眷属を産んだ経産婦なのが公然の秘密という面もあるだろうが。
「オラ野郎共、声小せえぞ!!」
「「「「ザハーク(様/さん)―――ッッ!!!」」」」
「………変わらないわね、ザハークったら」
ともあれ気分を良くして盛り上がる観衆に応える彼の姿にくすりと笑みがこぼれる。粗野で強姦魔で父親としては育児を全く手伝おうとしない完全無欠のダメ親父だが、自分を慕う目下には妙に懐が深いというか気前がいい側面もある。
最早数え切れない程抱かれた男だ。始めは純潔を無理矢理奪われた怒りもあったけれど、もともとティアは無念のうちに殺された家族と民の為に絶対の復讐を誓うほど情の深い女。
無意識に肌を重ねた男の欠点を全て許容して精一杯の美点を探そうとするくらいには―――仇討ちの成就までは有り得ないことだが、彼の為に花嫁衣裳を着られるくらいには絆されていた。
「あの新しい
「ピアサに続いてまたコマしたのか、流石ザハークさんだぜ!!」
「な、なあザハーク。流石にこれはちょっと恥ずいっていうか」
「抵抗すんな。これだけの大勢に俺の女だって見せつけとけばちょっかいかけようとする馬鹿も出ないだろ。あとは単純にいい女を侍らせてんのを見せびらかすのは俺の気分がいい」
「俺の女、いい女……。分かった、我慢する。………えへへっ」
「それでいいのかしら…」
「いいんです♪」
「………ほんっとーに変わらないわね、ザハークったら」
だからアイスブルーの髪の魔竜姫の呆れた視線とブラッドレッドの髪の軍師姫の微笑ましげな視線を浴びながら、それにも気づかない様子で嬉し気にザハークの腕の中でぎゅっと縮こまる紫髪の蛮竜姫の存在に嫉妬だって覚える。
とはいえ美女・美少女と見ればそれこそ機械人形であるテュポーンすら触手の餌食にする彼のことだからもう今更といえば今更のこと。
政庁から大通りの光景を遠目に見ているだけのこともあり、それだけであれば呑み込むのに然程の苦労が要る話でもなかった。それだけであれば。
「姉様、シルヴィア姉様ー♡」
「もー、歩きづらいですよヴィーヴルさん。部屋につくまで我慢してください、めっ」
「はーい♪」
「―――――は?」
ティアを全肯定してティアの為に堕ちてくれる最愛の少女、ティアにとって我が女神とすら言えるシルヴィアに纏わりつく紫色の塊。
髪の色だけの話ではなく、毒々しい黒紫に染め抜かれた祈祷師の法衣は関節部を中心に切り刻まれていて、腰や股はおろか肩・腋・肘裏・膝裏など倒錯的な情欲を煽るような部分で雪国の女の白い肌を妖艶に覗かせている。近接格闘を主体とする裏人格メルジーニの動きやすさを考えていちいちはだけなくともいい仕様にしたのだろうが、本来エデンに仕える者としての聖なる装束を染色したり裁断したりしている時点で教条主義の見本のような宗教家だった賢竜姫ヴィーヴルの豹変が見て取れた。
勿論報告は受けている。
自らがティア軍に敗北したことによる国民達の失望と怒りと、そして守ってもらえていた恩も認識していない身勝手さ、あるいは末路。それらを逐一見せつけられてずたずたに裂かれた心にシルヴィアの甘言が吹き込まれ、彼女の信仰は歪んだ。
弱者救済と節制がエデンの教義である筈なのに、『殲滅すべき魔族』という弱者を作りその殺戮の蛮行に酔うことを止めもしないメスキアのガシェルは異端である。正しい教えを歪める罪深き異端も、それに染まってしまった哀れな邪宗の徒も、これを討つことが真の信仰であると。
………一周回ってなんだかまともなことを言っているように思えるが、己の正義を己だけが一片の曇りなく信じているという意味でまさしく狂信者であることに何ら違いはない。具体的には、必死に守ってきた神竜族の民を過酷な鉱山奴隷に落として平気な顔をしたり、それに反対して彼女を翻意させようなどと『邪悪な教えを口にする』かつての自らの忠臣を何の躊躇いもなくその手で処刑したりする辺り。
だがまあその変遷はメスキア侵略を目標とするティア軍にとって歓迎すべきものだ。宗旨替えの過程でシルヴィアに手懐けられどっぷりと依存しているのも、ひいては魔神解放戦線への忠実さを意味するのだからメリットしかない。理屈の上では。
「姉様。ニヴェルネから搬送してきたソーマ鉱石の積み下ろしが滞りなく終わりました。こちらがテュポーンのサインになります」
「ありがとうございます♪ヴィーヴルさんが手伝ってくれるようになってから凄く捗ってます。助かります♡」
「いえ……。なんでも言ってください、シルヴィア姉様の為なら誠心誠意努めます。
代わりと言ってはなんですが、その」
「なでなでですよね?ふふっ、遠慮しないでください。頑張り屋のヴィーヴルさんは報われるべきですものね♡ほら、いいこいいこー♡」
「あぁ……姉様ぁ……♪」
「―――――(ギリィッッ!!!)」
これまで賢者として一方的に縋られながら国を導いてきた反動か、蕩けきった顔で堕姫シルヴィアに頭を撫でられる氷の公主。以前の鉄面皮からは考えられない変貌ぶりは、およそ数百年間絶えて無かった『自分を甘やかしてくれる相手』が出来てしまったせいなのかもしれない。
だがそんなことはどうでもいい。ティアにとって全然重要じゃない。
(誰の許しを得てシルヴィアにべたべたしてるのそこは私の場所私の楽園ついこの間まであの子を目の敵にしていえ魔族としてゴミ同然に思って殺そうとしてたくせになんて浅ましい卑しい恥ずかしい烏滸がましい大体それが竜の賢者って顔なのだらしない緩み切った顔してプライドとかないの鏡見てるのかしらああ
シルヴィアの帰還早々欠乏していたママニウムとか肯定エキスとかそんな感じの成分を補充しようと彼女の執務室を訪ねたティア。しかしヴィーヴルに先を越される形で、扉の隙間から怨念を脳内に充満させつつも様子を窺うことしかできなかった。
割って入る選択肢もあるが、今のティアの精神状態では感情的に喚き散らしてしまいそうで、そんな姿をシルヴィアとヴィーヴルに曝すのを
加えてデルピュネ宰相としてシルヴィアしか決裁できない案件がニヴェルネ遠征期間で随分溜まっている。神魔両軍に名の知れた賢将であるヴィーヴルが執務の補助をしてくれるのは軍師姫にとって大助かりで、かつつい先日まで敵だった彼女の信用を考えるとシルヴィア直々の監視下以外で内政に関わらせることはできない。
つまりただでさえ激務を買って出ているシルヴィアの仕事を楽にしてくれる存在を、ティア個人の悋気で排除する訳にはいかないのだ。
――――そういう理屈でシルヴィアの公務の時間の大部分で一緒に居る大義名分を確保した狂信の竜姫は、盲目故の鋭敏な
故に。覗き見ていたティアと頭を撫でられるヴィーヴルの“目”が合って。
「……くすっ」
――――お可愛いこと。
ぶちっ。
ご丁寧に魔術の
(ふふ。ふふふ。いいわ、この場は引いてあげる。どうせ夜になったらシルヴィアは私を最優先してくれるんだもの。
だけれど……このままで済むと思わないことね、ヴィーヴル=ニヴェルネ)
負け惜しみでしかない内心の捨て台詞だが、復讐の為に国を次々落とした蒼竜姫の言葉と考えるとなかなか洒落になっていない。
ティア=エリーシスは自分から祖国を奪った神竜族の大神官ガシェルを憎んでいる。確実に殺すことを魂に誓っている。
それはそれとして―――ティアが最も嫌いな神竜族は、この瞬間ヴィーヴルに確定したのであった。
『まるで禁断症状のような苛立ちと焦れったさ』
→まんまセックス依存症なのはまだいいとして、ママみ欠乏症……。
『倒錯的極まりない妄想をしても仕方ないのだ』
→そんな訳はない。
『我が女神とすら言えるシルヴィア』
→VBではかなりアレな単語である「我が女神」。そう言えばB、L、Sに我が女神枠って居たかしら。
『毒々しい黒紫に染め抜かれた祈祷師の法衣』
→メルヴィーヴル悪堕ち衣装。本当はプラスして胸元に双珠ラーベラカルクス(竜装)入れて『爆乳…!?』とかやろうかと思ったけどどう考えてもおふざけでしかないので自重した。
「ほら、いいこいいこー♡」」
→ORS必殺奥義、撫でポ。なお信じて守って来た民に何度も何度も何度も何度も失望や罵声浴びせられる状況に導き、心がぐちゃぐちゃに張り裂けたところでするっとマッチポンプした時のトドメ技だった模様。邪悪!!
『お可愛いこと。』
→天才竜姫の頭脳戦。なんかヴィーヴルにあの仕草似合いそう。