ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 よくよく考えたら、ここからメスキア攻略始まったらノンストップなんで最後のほのぼのタイム。

 ほのぼのだってば。信じて。




余暇の魔竜姫

 

 休日の昼下がり、エトナの商業区画。服飾店や雑貨屋が立ち並ぶ通りに魔王女レヴィアの姿があった。

 

 私用で買い物に興じている為いつもの藍色ベースのネフティス軍装ではなく開放的なパンツルックだが、母である魔竜王譲りの深紅の竜翼など特に隠してもいないので普通なら一発で正体がばれるだろう。

 しかしながらここデルピュネは魔竜族の国。目を引くという意味では獣人族から淫魔、果ては造魔に精霊と様々な外見の者が選り取り見取り。場所柄女性比率も多い。帽子とフレーム眼鏡で普段と違うお洒落をしていることもあり、宗主国の姫でかつ魔神解放戦線の主要幹部である彼女のせいで騒ぎが起こるようなことはなかった。

 

 流石に自分の産んだ眷属や直卒の部下なら気付く者も居るが、プライベートの彼女に声を掛けるような無粋を犯す者は居ない。娘であるデーモンレイダーとデーモンナイトの姉妹がすれ違いにウインクするのをひらひらと手を振って流し、隙間時間に読む書籍を補充しようと本屋の軒を潜る。

 

「いらっしゃいませ~。……あれ、お母様?」

「よく娘に会う日ね、今日は。というか何やってるのよアヤ」

 

 どこかのほほんとした顔の、やけに袖や裾の長い衣装を羽織った蓬髪の少女が出迎えた。

 文車妖妃―――敵国だったクシナダの文化に被れた奇特な娘だが、これでも幻術と結界に秀でており彼女に部隊を任せれば敵に何もさせずに完勝することも珍しくない。

 

 そんな頼れる部下であり娘が何故か店の会計机の向こうに座っていた。

 

「店番を頼まれてしまいまして~。待ってる間自由に本を読んでいいらしいので、ついお受けしちゃって」

「ここの常連なの?」

「はい。色々と刺激的な本が入荷されるので贔屓にしてます」

「ふーん、そう。何かおすすめはあるかしら?」

 

 娘と言えど余暇の過ごし方にまで口を出さないスタンスのレヴィアは、微妙に視線に呆れを含めつつも店員相手として尋ねる。

 それに気付いているかは不明だが、アヤは穏やかな笑顔ですぐ横のポスターを示した。

 

 

「『ヴィーナスブラッドガイア・インターナショナル 好評発売中』?」

 

 

「天轟聖竜バハムートを筆頭とした神獣達の支配に抗う、エーテル科学文明の都市のお話です」

「へえ。それはそれは、魔竜族で流行りそうな筋書きね」

 

 打倒神竜族を掲げるこの機国で売るにあたって、直球過ぎて逆に興味を惹かれる概要だった。

 元々乱読家であるレヴィアには大衆向けの娯楽小説に対する忌避などない。娯楽に(かこつ)けて民衆の思考を誘導しようとするどこぞの性悪軍師の意図が薄ら感じられるが特に思うところもない。棚に平積みになっているそれを最新刊まで取ると、受付代行の娘に渡した。

 

「まいどありです~」

 

 会計を済ませたレヴィアは本を鞄に詰めながら、呑気な声を背に店を後にする。商店街の雑然とした空気が休日の姫将軍を出迎えた。

 

「………平和ねえ」

 

 魔竜族にとっては夜こそ彼らの時間だが、まだ日が高い時間からこの賑わいだ。

 哨戒がてらピアサが訓練中の空戦部隊が時折空から影を落とすが、眷属ではない一般市民の子供は無邪気な笑顔で天空を飛ぶ兵達に手を振っていた。主戦に駆り出されるであろう重要戦力の一角ですらこうして余暇を気兼ねなく過ごしている。

 

 かつてこの国がメスキアの侵略に脅かされ、軍事力の増強の為にほぼ全ての市民が貧しいまま重労働を課されていたなど、この光景を見て誰が信じられるだろう。

 かつて虐げられるだけだった“魔族”達が望んだ自由で豊かな暮らし―――それをもたらしたのが誰かをレヴィアは知っている。その為に何を犠牲にしたのかも。

 

(『ザハークが好ましくない変化を遂げるようなら知らせろ』、ねえ。

 どっちかっていうとザハークよりティアやシルヴィアなのよね)

 

 魔神解放戦線幹部として席を置いているが、レヴィアは本来デルピュネの宗主国ネフティスの王女であり客将の立場だ。合流するに当たって母ヴァジェトから受けていた密命を思い出しながらもどうしたものかと思い悩む。

 

 デルピュネ空前絶後の発展の陰にはクシナダやニヴェルネの民の苦悶と絶望が山と積み重なっている。労働力となる眷属を産む為に若い女が次々と苗床になり、男は奴隷として日々生きるか死ぬかの瀬戸際で酷使されている。反抗する気にもならないよう、かつてのこの国よりも徹底した重税による搾取を課した上でだ。

 主導しているのは宰相シルヴィア。肯定寄りの黙認なのが大将ティア。最初に会った頃は両者とも寛容で甘い部分も有ったが、おそらくアルトンで同胞が同胞を殺戮した地獄の光景を見たのをきっかけにすっかり変わってしまった。

 

 戦争という極限状態で振り切れてしまったのだろう。ままあることだ。

 経験と常識的な思考でレヴィアの結論はそこに留まってしまう。

 

 そんな彼女らと比較して、ザハークは少なくとも母が警戒するような“魔神”とは現状思えない。いい気分で女を手籠めにするかいい気分で闘技場のチャンピオンしているかいい気分で酒場で管を巻いているかが奴のライフスタイルで、抱かれた女の引け目込みでもやっていることはただのチンピラ以上でも以下でもないのだ。

 

(ま、まあ?私はそれだけじゃないって分かってるけど?というかこのレヴィア=ネフティスを抱いた男が半端者じゃ困るし?)

 

………唐突に挟まるツンデレ思考はさておき。

 

 ティア達にしたって魔竜族の民に対しては温厚そのもの。むしろ彼らが少しでもいい暮らしが出来るように最大限の努力をした結果でもある。この国がネフティスの脅威になるようなことは現状想定しづらかった。

 

 しかし、だ。もし仮に。ヴァジェトの命令でネフティスとデルピュネが戦争状態になることがあれば。

 ザハークと子ども達のことがあるとはいえレヴィアは母国の側に立つだろう。相手取るのは闇堕ち四天将の二角と凶悪軍師率いる魔神の軍勢、さぞ心躍る闘争となりそうだ。そして万が一力及ばず敗将となれば、自分に待ち受ける末路はあのヤマタのような―――。

 

「………っ、ないない、色々あり得ないから!」

 

 知らず唾を飲み干した自覚のないまま、レヴィアは氷青色の髪を乱して首を振る。すれ違う民の怪訝そうな顔を置き去りに、紅潮した頬のまま歩みを速めた。

 

 

(――――。でも、テュポーンはどうなのかしらね)

 

 

 ふとティア達とは近いようで浅くない溝がある者同士として昔馴染みの顔が浮かぶ。

 

 元々彼女のものだったこの国は、簒奪されてから急速に発展していった。ヴァジェトの命令でティア軍の下に付けられた元機竜王はその様をずっと近くで見届けて来たのだ。

 普通に考えれば蟠りや悔しさ、嫉妬に苛まれることだろう。あるいは機械として全てを割り切っているのか。

 

 一度その辺りをきちんと訊いてみた方がいいかもしれない。丁度彼女も今日はフリーだった筈だ。そう思い立った魔竜姫は政庁の自室に戻って荷物を置き、テュポーンの部屋を訪ねた。

 

 

「たすけてください、レヴィアさま~~っ!!」

「こら、ファータっ!すみませんレヴィア様」

 

「………何事?」

 

 

 ノックしてドアを開けた瞬間、泣きべそを掻いた小さな眷属に背中を取られる。ホームとはいえ油断し過ぎだと自分を戒める暇もなく、混沌とした空気の中何やらジャンク品を床に散乱させている翠眼機竜に問うしかなかった。

 答えは果たして、えぐえぐと泣き続けている機械妖精(アルケフェアリー)から返ってきた。

 

「おかーさんが、私のこと改造しようとしてきて……」

「またぁ?」

「ち、違います、レヴィア様!ボクも前回の件の反省は忘れていません!」

 

 かつて戦闘能力の無さに悩んでいた人魚(マーメイド)の我が子にドリルアームを生やそうとしていたのをきつく説教したことがあった。

 親から貰った体を大事にしなさいという話は良く聞くが、親が喜々として子供をゲテモノ兵器に改造しようとするのはどうなのか。その辺り自らが機械兵器のせいか無頓着なテュポーンの制止役にされていることに頭が痛くなる。

 

 テュポーンも所有者の娘であるレヴィアには基本絶対服従なのでそこまで手間を掛けさせるほどではない筈だったが、慌てて弁解する金髪三つ編みの殺戮人形はまた別方向に暴走しているようにしか見えなかった。

 

「ボクもあれから考え直したんです。そして気付きました。

――――肉体(ハード)の改造がダメなら、頭脳(ソフト)の性能を向上すればいいんじゃないかと!」

「………それで?」

 

 もうこの時点で嫌な予感しかしなかったが、一応最後まで聞く。テュポーンだって善意でやっているし、これでも我が子が戦場で命を落とすことのないように少しでも強くしようという母心が働いていると思うから。命の代わりに尊厳を落っことさせるような真似をするから止めざるを得ないだけで。

 

「ちょうどメル=ザハーカの遺跡から集団統制プログラムと拡張回路の良品が発掘されたので。

 これをファータに組み込めば、ライドギア部隊の指揮精度に三割以上の向上が期待できる筈なんです!」

「ひぃっ!!?でも、でも~~~っ」

「両方とも落ち着きなさいな。テュポーン、この子こんなに嫌がってるんだけど、何か心当たりあるんじゃないの?」

 

 色違いだが親譲りの光の翅をぱたぱた震わせるぬいぐるみサイズの妖精の青髪を撫でて宥めるが、母親である機竜は怯える理由が分からないと言わんばかりに嘆息して………言った。なんでもないことかのように。

 

 

「何故だ!ちょっと言語制御機能を圧迫して『おおきに』と『ほんまでっか』と『せやかて工藤』しか喋れなくなるだけなのに……!」

 

「そんなの嫌です~~~っっ!!!」

 

 

「いやしかし、リンクネットワークを介せば器兵同士での意思疎通に問題は出ない筈だが」

 

「テュポーン、そこに正座」

「レヴィア様?いきなり何を」

「いいから正座」

「はい」

 

 子どもへの愛情の注ぎ方に関するお説教第二弾を始めながらも、レヴィアは確信していた。

 

 このポンコツ機竜に悩み事はない。

 ある意味非常に羨ましい習性ではあった。見習いたいとは決して思わないが。

 

 というかクドウって誰だ。

 

 

 

…………。

 

 ちなみに。

 

「官能小説じゃないの、これ……!」

 

 主人公が落とした敵国の巫女や女性の配下達を触手でぐちゅって産卵させる場面が詳細に描かれた物語。今日買った本を全刊徹夜で読み通しながら、よりによってこんなものを自分に勧めた娘を折檻することを決めたレヴィア。

 

 翌日彼女の部屋のベランダには、洗いたてのシーツが干されて風にたなびいていた。

 

 

 





 よし、完璧なほのぼの回だな!

『どこかのほほんとした顔の、やけに袖や裾の長い衣装を羽織った蓬髪の少女』
→シリーズが進んでも中盤で頼れる嘘2ユニット。可愛い。結界と活性持ちでなんだかんだ最高難易度でも活躍する子。可愛い。プロケル?知らない子ですね

『ヴィーナスブラッドガイア・インターナショナル 好評発売中』
→折角シリーズの二次創作を書いてるのでなんとなく宣伝してみる。一体どこの凄惨姫がどこの幼女から入れ知恵されてどこの痴女に教えられた話を書かせたんだ……。

『光の翅をぱたぱた震わせるぬいぐるみサイズの妖精』
→VBL一般ユニット人気投票2位のアイドル。可愛い。が、ひぎぃぼこぉはないんですかという問いに公式が残念ながら規制的に難しいですとか返しちゃうのがVBクオリティ。ちなみに名前がファータなのはF準拠。

『ちょっと言語制御機能を圧迫して『おおきに』と『ほんまでっか』と『せやかて工藤』しか喋れなくなる』
→あのテュポーンさん、それ多分ジョークアプリ……。

『今日買った本を全刊徹夜で読み通しながら』
→レヴィア姫=むっつりドスケベ。シーツを洗わないといけないようなナニをしてたんですかねえ……?

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