ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 インターミッションは重要情報をティア達とプレイヤーに開示する大事な回だけど、それだけに二次創作で弄れる部分があんまりない。

 次回掲示板回でさらっと触れて六章突入ですかね。我ながらほんと便利な構成。




軍議の凄惨姫

 

「メスキア攻略会議を始めましょう」

 

 魔神(ザハーク)黒魔女(アスタ)魔竜姫(レヴィア)機鋼竜(テュポーン)翼竜姫(ピアサ)蛮竜姫(メルジーニ)狂聖女(ヴィーヴル)。末席に控える狼人族姉弟(ムムルにアイン)も含めれば外見も出自もバラバラ。それでいて半数以上が正真正銘の姫君という面子。

 

 始まりはザハークとの二人きりだったことを思えば、彼女達が産んだ眷属を始めとするデルピュネ軍の陣容も含めここまで仲間が出来たことに感慨の一つも覚えるが。全ては滅びた祖国の無念を晴らす為―――いよいよ宿敵である大神官ガシェルの座すメスキア本国に兵を進める段階であり、ここからが本番なのだ。

 

 仄暗い高揚を胸に復讐の蒼竜姫ティア=エリーシスは参集した魔神解放戦線幹部の面々に軍議の開始を宣言する。進行を司るのは勿論、全幅の信頼を置く軍師シルヴィアだった。

 

「元四天将のお二方には当然の知識かも知れませんがまずメスキア軍の概要から。

 大将軍ファフネル率いるかの軍団は、信仰に支えられた高い士気と始祖龍信仰の総本山として資源と財力に飽かせた最高級の装備で身を固めた強兵であることが予想されます。

 先だっての合同遠征軍には一部のみの参戦に留まりましたが、打撃力・機動力・防御力全て穴がなく高水準という印象を受けました。勿論あれはファフネル直属の最精鋭ではあるでしょうが……」

 

「本国付の兵ともなると栄誉も待遇も段違い。前線で活躍した戦士が引き抜かれることもままありました。

―――まあ、アルトンがああなってからもファフネルに尻尾を振り続けるような屑が居るようなら、私が諸共全て殺しますが。くひっ」

「始祖龍様の恵みが最も溢れる地です。魔術による防御陣地は他国と比較にならない程堅牢、また大型骸獣にひけを取らない神獣を調教して(けしか)けてくることもあるでしょう。

 ああ、異端者がエデン様の眠る地で我が物顔に振る舞うことのなんと畏れ多いことか……っ!」

 

 殺意に満ちた顔で裏切りの四天将達が補足する。ネガティブな情報ばかりが増えるようだが、恐れを抱かないことと相手を過小評価することは違うのだからここは正確に脅威を見積もらなければならない。

 

「俺達勝てる……んすよね?」

「こちらの兵も着実に強化されています。油断は禁物ですが、一方的に当たり負けするようなことはないでしょう」

「なのですっ。みんな頑張って強くなってきたのです!」

 

 脅し過ぎたのか列車スタッフの顔に浮かんだ不安を解きほぐしながらも、シルヴィアはまだ整理しなければならない情報を共有しようと卓上に大陸地図を開く。

 

「問題は地形と進軍ルートです。国境は峻険な山脈に囲まれ魔導列車(ベヒモス)でこれを超えるのは現実的ではありません。となると進入路は実質3つ。

 北ニヴェルネ方面の渓谷地帯で抜ける場所を探すか、中央街道の聖門を正面突破するか、南エリーシス方面の湖から海路を取るか」

 

 兵駒を三通りに分散しながら紅血髪の軍師が示す道筋を各自が思い思いに検討する。

 

「北の渓谷は地脈の走るルートを探るところからね。当然神竜族も妨害してくるでしょうし、時間が掛かると思うわ」

「しかももし良いルートが見つからなかったら、結局別の方法でやり直しなのです……」

 

「海路もベヒモスの機動性が生かせないのが痛いわね……大型の水棲眷属を揃える必要もあるし、こちらも時間が掛かりそう」

「メスキアの連中も大人しく上陸を待ってくれる訳がない。対岸に大部隊を展開して集中砲火を喰らうのがオチだ」

 

「前ニヴェルネでやった時みたいに地面掘り進んで行く訳にはいかねーのか?」

「あの時はヴィーヴルの想定の外から首都強襲が成功したけど、実際はイカサマギャンブルの類よ。タネが割れていれば逆手に取られる可能性が高いわ」

「レヴィア殿下の言うとおり、橋頭堡(きょうとうほ)の確保もなしに突入に成功しても敵地で軍が孤立することになりますからね。

 いくらベヒモスの機動性があるとはいえ、補給は全て現地での略奪任せなんて博奕(ばくち)も同然です」

「勿論手札としては有用ですし、『後方拠点への直接攻撃の危険が常にある』というだけで敵に警戒と対策の手数を裂かせる効果も期待できます。選択肢の一つとして留めておきましょう、メルジーニ姉様」

 

「でも、それじゃあ街道のど真ん中をぶち抜くしかねえんスか……?」

「その場合仮にもエデンの棲家を守る聖門の関がありますからね。おそらくこの浮遊大陸全土で最も硬い城壁を相手にするのを覚悟した方がいいでしょう」

 

 ここまでティア軍の快進撃が続いたとはいえ、流石に大陸に覇を唱えた神竜族の本拠はやはり生半ではなかった。

 一部に躊躇いの空気が出たのを見計らってシルヴィアはもう一つの選択肢を提示する。

 

「ここで一度腰を据えてじっくり戦力を整えるという手もあります。

 クシナダやニヴェルネの“牧場化”を進めれば、まだまだ眷属を増やして維持する余地はありますから。ネフティスやバシュトラの軍事力もあてに出来れば、衛星国を全て失ったメスキアより魔竜族の方が強大になる未来だってこのままなら確実に訪れます」

 

 その時に改めて数の暴力で圧殺すればいい―――戦略の基本にして王道である。

 それに揺れる仲間も居るのを知って、その方が我が子等を含めた兵達の犠牲が少ないのを理解して。

 

 

 

∵WARNING!!∵WARNING!!∵

∵∵最終演算分岐点∵∵

 

 

「そうね…そうするわ」※ノ■シス■ム起動、ラグ■■崩■end

「認められない」

 

→「認められない」

 

 

∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵

 

 

 

 それでもティアは復讐姫だった。

 

「悪いけど時間稼ぎは認められないわ。少しでも早く決着を付けられる可能性があるならそれを探す。

――――慎重になっている間、もし万が一ガシェルが勝手に病気で死にでもしたらどうするの?

 自分の犯した罪の報いを受けることもなく、安らかに息を引き取るようなことがあれば。

 ここまでやって来たこと全てが無駄になるのよ……ッ!!」

 

「………」

「非合理的だな」

 

 個人の感傷で勝機を薄めかねない選択にレヴィアは眉を顰め、テュポーンは無感情に断言する。

 ベヒモスのスタッフ組も口にはしないが意見としてはそちら寄りだった。

 

「だが道理だ。なんもかも合理的にやりてえんなら、ハナっから復讐なんて考えねえよ」

「私もティアに賛成です。ファフネルに関して完全に以下同文ですから」

「一日でも早く正しいエデン様の信仰を取り戻さなければならないのです。妥協して異端者に冒涜の時間を長く許すなどありえない」

 

 魔竜族よりもむしろ元神竜族の姫君達の方がティアを支持する皮肉な事態。

 割れた流れを強引にまとめたのは、組織の旗頭として祀り上げられている灰髪褐色肌の男だった。

 

「戦争ってのは流れがあるんだよ。

 立ち塞がる障害を全部ぶちのめして遂に敵の本丸が見えた、よしここでいったん一休み――――んなことする奴に勝利はねえ」

「……ああ、そうよね。私もちょっと寝惚けてたみたい」

 

 獰猛な笑みで持論を語るザハークに、納得できる部分があったのかレヴィアの雰囲気が和らぐ。そしてすぐに似たような表情になった。

 

 結論がまとまったと判断した軍師姫は、妖艶に微笑みながらそれを宣言して締めとする。

 

 

「それでは、メスキア侵攻作戦は『聖門』突破を軸に戦略を策定します。

 通常の遠征に加え攻城戦に重きを置いた編成になると思うので、各自そのつもりでよろしくお願いします」

 

 

…………。

 

 その日の訓練を終え、気怠い体を押して私室へと戻るピアサ。

 

 彼女の訓練は魔神解放戦線でレヴィアと一、二を争う苛酷さと評判だが、当然それを課す翼竜姫にも相応の負荷が掛かっている。

 さらに言えば航空部隊を預けられている以上“倒れるまで”やれば墜落して死ぬだけなのでその限界を毎日見極め続ける、精神的にもギリギリの綱渡りだ。明確な終わりのない。

 

 だがそんなことはどうでもいい。強くなければ死ぬ。守れない。自分と同じ想いをしたくないなら甘えている暇はない。

―――その為ならこの身の労苦など如何程のものか。

 

「たとえ嫌われても、おかーさんだもの。ティアみたいに優しくなれなくても……」

 

 復讐の道具として戦力となる魔神の眷属を産む、それはティアもピアサも変わらない。

 だが子等に対する認識には相違があった。

 

 戦争をしているのだ、犠牲が出ない筈がない。自分の都合で産んでそして盾として散る命―――それに罪悪感を覚えるのは真っ当と言えば真っ当だ。神竜族への容赦を捨てたティアでも身内への情の深さは何も変わっていないのだから、幼馴染であるピアサからすれば復讐と愛情に板挟みになった彼女の心境は手に取るように理解している。

 

 けれど一方でピアサにそういった迷いは一切なかった。

 

 『汚らわしい魔神の仔』―――そうであるというだけで、眷属の子供達の存在自体を許さないのが御神体エデンや大神官ガシェルを筆頭とするメスキアの奴らだ。それはピアサが孕んだことを咎める為に何も知らぬアルトンの民ごと殺戮してきた大将軍ファフネルの行動が証明している。

 故に復讐姫の思惑とは関係なく、あの子達は自分が生きる為に神竜族を滅ぼす戦いをしなければならない。走狗に過ぎないファフネルを殺すのが本懐のピアサよりもこの戦いの当事者であるとさえ言える。

 

 だから強く鍛える。エデンの教えを駆逐し、生きる場所を自ら掴み取れるように。産まれたこと自体が過ちだなんて決して認められない。

 その未来は手が届くところに来ている筈だから。

 

「ねえ、もうすぐだよ。………」

 

 文机の引き出しに大事にしまっていた自分の髪色と同じ浅葱の羽根一枚。

 手に取って呼び掛ける、名前すら持たせてあげられなかった瞼の存在に。

 

「おかーさん頑張るから。あなたの弟達をどうか護ってあげてね」

 

 形見としてお守りにしようかとも思ったけれど、一度も愛を注がぬままあの子を死なせてしまった愚かな母にそんな資格はない。

 毎夜戒めとして刻み祈りを捧げる、どんなに消耗していても一日も欠くことのできない儀式としてのみ、ピアサはそれに触れることを己に許していた。

 

 

――――ぴい。

 

 

 最期の弱弱しく哀しげな鳴き声だけが、今でも耳に残響し続けているのだから。

 

 

 





「そうね…そうするわ」
→ここまで暴走しておいて今更常識ぶるのはやめましょう。投げっぱなし打ち切りエンドになります(一敗)

「私もちょっと寝惚けてたみたい」
→そりゃ夕べ一晩中官能小説読みながらサカっt(氷漬け

「幼馴染であるピアサからすれば復讐と愛情に板挟みになった彼女の心境は手に取るように理解している」
→ただしママみにオギャることでそのストレスを発散するようになったのは当然ながら予想の範疇外だった、というオチが付くけども。

「最期の弱弱しく哀しげな鳴き声だけが、今でも耳に残響し続けている」
→ぶっちゃけ四天将にやってきた死体蹴りの中で一番っていうか唯一罪悪感覚えてる作者。
 ここまで闇堕ちさせないと原作のふわふわ正義感でティアに初手裏切りかます子ではあるんだけど……。

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