ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

53 / 84

 虹の毒撃20+強制異常30+運命の輪20とかどうだろう。

………ラグーン未実装のスキルがある?気のせい気のせい。




戯言の凄惨姫・本番

 

「これはあくまで妄言ですが」

 

 言葉を弄じてエルの思考回路を散々に引っ搔き乱したシルヴィア。前置きしておきながらも実際に妄言だと片付けられない精神状態の相手に連ねるのは、どこまでも性質の悪い戯言だった。

 

「そもそも『本来の私』はティア姫に救われた魔族の子供という役どころじゃありません。

 楽園の守護者だった女神が殺され、地獄から這い出た魔王達が覇を競う修羅の巷と化した人間界。そこで不条理に抗う半人半魔の姫という“キャラクター”だった筈なんです。

―――はいそこ自称お姫様とか痛々しいって言わないで♡」

「へ?いきなり何の話を」

「それが今ここでこうしている。歴史に大きな影響を与えながら、機械神(システム)に粛清されることもなく。何故でしょうね」

 

 核心に触れ過ぎている。この演算世界(ラグーン)の根幹を為す事象を確実に理解している発言をしながら、しかしエルが認知していない情報と被って気味の悪い違和感だけが積もる。

 

「もしかしたらという仮説はありますが……いえ、よしておきましょう。

 私の勝手な憶測で貴女を混乱させたくない」

 

「そういうのいいですから!!もう十分混乱してますから話してください!」

「そうですか?では話半分に聴いてくださいね♪」

 

―――ちゃんと前置きしましたからね。貴女がどんな勘違いをしても責任取りませんからね?

 

 最低の副音声が被さっているのを、駆け引きもへったくれもなく混乱していると白状してしまう今のエルに気付ける筈もなく。

 

 

「世界の結末に辿り着いたとある女神が言いました。認めない。こんな終わりはユルセナイ。時を巻き戻してやり直せたら。

 女神は世界を壊して創り直します。歴史のifを演算し、女神の想う百点満点の結末が迎えられるまで何度でも。神魔が喰らい合い戦禍が満ちる大地で、幾千幾万の悲劇と惨劇が再演されたとしても。

 『最高の結末を迎える可能性がない』と判断された世界にどれだけの生命が生き残っていても、それら全てを新しい世界を造る為の資源として鏖戮(みなごろ)しながら」

 

「…………」

 

 

 修飾されたその御伽噺は、白の道化も知る最新の創世神話。

 あまりに馬鹿馬鹿しく救いようのない“この世界の真実”。何かのジョークであればなおタチが悪い。笑いどころは機械神のくせに成功確率の計算もせず、有効数字という概念も知らないあたりだろうか。

 

「そもそも女神自身が『百点満点の結末』というものが具体的に何なのか想像できていないという点でこの試みは不毛の一言でしかないですが。

―――ここで二つ疑念があります。

 

 一つ、いくら竜杯があるとはいえ、演算の為の時間とリソースは本当に無限なのでしょうか?永劫の年月で機械神が経年劣化しない保証は?たとえ“妨害”がなかったとしても、世界の破壊と創世なんてことをして本当に全くロスが生じない都合の良い永久機関なのでしょうか?

 

 そしてもう一つ。百点満点が欲しいなら、愚直にゼロからのリセットとニューゲームを繰り返すより、『七十点の世界』を参考に次は八十点を目指し、九十点を……とする方が確実に効率が良い筈ですが。機械神というのは、それすら判らないレベルで知能が消えた存在なのでしょうか?」

 

「流石にそれは……ない、ですかね?」

 

 一々真に迫った仮説だった。妄言と前置きされておきながら、矛盾がない為にエル自身も検証した上で納得してしまう。それこそ仮説であり根拠なんて何一つないのに、もっともらしいというだけで“真実”だと誤認してしまう。

 問いかけられればつい考えてしまうから。自分で考えて自分で得た結論を次の瞬間疑うようなことは、正気の思考回路では不可能だ。

 

 そんな、悪魔ですらもう少し可愛い詭弁の弄し方をするだろう悪堕姫は。

 

「思うんですよ。もし貴女とおじいさんが通り過ぎた世界に『七十点の世界』があったとして。

“天然素材だけで世界を再現するより、ちょっとくらいイレギュラーが居た方が高得点に近づくのかもしれない”

 

――――そう女神が判断したなら、私のような存在が生まれる理由にもなるのかな、と」

 

「………、ぁ、え?」

 

 

 その吐き出す戯言は、誰かにとっての猛毒以外の何物でもない筈だ。

 

 

「もしかしたら奇跡を起こす人造の生命なのかも知れない。

 無垢な少女の形を取った、轟雷を操る至高の聖獣なのかも知れない。

 星を蝕む外宇宙の神すら喰らった、最強の比翼連理の片割れなのかも知れない。

―――それが偶々この世界では私であり、ティア姫を全肯定する軍師シルヴィア=ハマルティアだった」

 

 どう思いますか?と。

 

 自然な笑顔で問い続けるシルヴィアに、エルは返す言葉を持たなかった。

 思考すら覚束なかった。だって。

 

 ソレを認めてしまったら、自分という存在はなんなのかという話になってしまう。

 

「ひぅ、ひっ……んくっ、ぷはぁっ!?」

「ここまでみたいですね。これも何かの縁です、愚痴か相談くらいなら聞きますよ?」

 

 呼吸すら上手く出来ない。

 無様に喘ぐ自分を、シルヴィアはポーカーフェイスに等しい笑顔で見ているだけだった。ありがたい、嘲笑や憐憫の目で見てきたなら殺したくなるところだった。

 

「はっ、…すみません、今はちょっと。また後日話させてください」

「いえいえ。お大事に~」

 

 社交儀礼で手をひらひらと振るシルヴィアに構わず空間転移の術式を起動する。

 一瞬で景色が塗り替わり、見渡す限りの荒野が拡がる。

 

 エルを餌としか見ない骸獣がわらわらと湧いてくるのも含め、今のエルの心境そのままの風景だった。

 

 

「…………。ふふ、うふふふ。あははははははははっっ!!!」

 

 

――――神造天使エル。シルヴィアの言う『女神』の被造物。

 

 製造目的は、演算世界(ラグーン)を移動しながらそれらを再利用不可能にして機械神の演算を妨害するイレギュラーである黒龍ヴェリトールの抹殺。

 だがもどかしいことに、憎らしいことに、恨みがましいことに……『女神』の限界なのだろう、エル自身にそれが可能なだけの性能は搭載されなかった。配下の造天使(フォージエンジェル)を操る能力と、演算世界(ラグーン)移動権限の付随である空間操作能力。そして筐体が破壊されても何度でも再構成可能な無限残機。そんなものあの化物には何の脅威にもなりはしない。

 

 何も出来ない、何にもならない。年月が過ぎ、自我が芽生え、代わり映えのない既知の歴史に飽いて。定期的に適当に彼に挑んでは敗北して使命を果たしているアリバイを作り、無聊を歴史を速める遊びで慰めた。

 それでも造物主に対し抗えない彼女は諦観と無力感を覚えるのみ。そのまま上っ面の笑みを貼り付けた道化として在り続ける……筈だったのに。

 

 

「あははっ、あはっ、きゃはははははっ!!

 

―――――ふっざけんなあぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

 ちょっとくらいイレギュラーが居た方が高得点?

 

 認める訳にはいかないのに、吹き込まれて誘導された結果もはやエルにとって“動かしがたい真実”になってしまった神の意向。

 だが、もしそうならこれまでの万を超える年月は何だったのだ。イレギュラー抹殺という出来もしない目的の為に生み出され、文字通り死ぬ程の苦痛と共に何度も挑んでは蘇り、挙句それはやっぱり必要ない目的だった?むしろイレギュラーを歓迎する?

 

 視界が赤熱する。感じたのは、産まれて初めての憎悪。造物主に対してあってはならない感情の捌け口として周囲の骸獣に八つ当たりするが、どれだけ無秩序に暴れても黒い感情は目減りしない。

 

「何なんですか。ホント何なんですか……ッ!

 意味が分かりません、馬鹿にしてるにも程があるじゃないですか。

 

――――なんか言えよ。答えろよメルトセゲルーーーッッッ!!!」

 

 金色の瞳から涙を流し、悲鳴とも慟哭ともつかない絶叫が寂寥の荒野に響く。

 

 

 

 壊れた機械神は、彼女の絶望に何一つ反応を返すことはなかったのだった。

 

 

 

…………。

 

 一方。

 

「よろしかったのですか?」

 

 急に話を切り上げて消えたエルに置いていかれる形になったシルヴィアと従者ジュデッカ。

 先ほどまでが嘘のように忽然と気配がなくなり、余韻もない。彼女が敵方の密偵と会談していたことは他の誰にも分らないだろう。

 

 埃臭い廃墟の探索を再開しながら、主の意図を汲んで沈黙を守っていた蒼髪の長女がその是非を問う。

 

 知恵の働かない自分では先程の話の半分も理解できていないが、何か重大なことを言っているのだけは伝わった。おそらくティアやザハーク達がまだ知らない情報であると思わしき話を、信用ならない神竜の密偵に伝えるのだ。

 母を尊崇するジュデッカでなければ内通や謀反を疑うところだろう。従者としてはそんな場に自分を同席させてくれた信頼に歓喜するのみであるが。

 

「いいんですよ。この情報は現時点、メスキア攻略完了までは大した意味を持ちません。ティア姫達にとって雑念にしかならないから伝えてないだけです。

 エル=メディーナに情報を伝えたということに関しては、ええっと、そーですね………」

 

 目的語の足りない問いをしてしまったが汲んでくれた母の回答は、一つは明快なものだった。

 確かに魔神解放戦線の第一義はメスキア攻略だ。世界の在り方がどうだのはその後の話でしかないのだから。

 

 もう一つについては、人差し指を唇に当ててなんと伝えたものかという具合の思案を一瞬して、これも答えてくれる。

 

 

「彼女のことはやってもやらなくてもどう転ぶか分からない案件です。

 サイコロを振るか振らないかで振ることを決めただけですよ。4以上がでればラッキーですかね♪」

 

 

 吹き込んだ戯言がエルの心にどれだけ刺さっているか、去り際の反応から察していながらこの言い草である。

 いとも簡単に行われる外道の所業であるが、魔神の眷属であるジュデッカにとっても神竜族の女の心情など関知するようなことではない。

 

「私の印象ですが大成功のように思われますわ。流石です、お母様」

「ふふっ、ありがとうジュデッカ♡」

 

 追従ではなく本音の称賛を述べれば、堕ちる前の頃と何ら変わらぬ愛情の籠った笑顔を返してくれる。そんな母親が本当に大好きな氷の乙女は。

 

(それにしても母様がお姫様だったなんて。当然よね、だって母様だもの!)

 

 都合の悪い部分はシャットアウトして、そこをピックアップして悦に浸っているのだった。

 

 

 





 つ「温度差」

 ちなみに本当に一応再度確認しておきますが、凄惨姫の発言は特に根拠もなくふわっと適当ぶっこいてるだけです。


『歴史に大きな影響を与えながら、機械神(システム)に粛清されることもなく』
→実際凄惨姫がこれまで好き放題やってデリートされてない理由は、凄惨姫(with幼女)がほざいたような深い理由があるのか単に見逃されてるのか、あるいはORS補正という身もふたもないものなのか。それこそ『神』のみぞ知るという話。

「私の勝手な憶測で貴女を混乱させたくない」
→リアルに言われたら確実にイラっとする台詞。悪堕ち後は誰にもツッコまれないの承知でネタ台詞吐くのなぁもー。

「この試みは不毛の一言でしかない」
→『女神』の正体を知っていてもセメントなマジレスする凄惨姫。まあ『ティア姫』を苦しませる要因ならたとえ■■■■■だろうと酌量しないママペンギンということで。

「偶々この世界では私であり、ティア姫を全肯定する軍師シルヴィア=ハマルティアだった」
→前三つはティティ、テリア、魔神アノーラ。全てシルヴィア同様他作品からLへのゲストユニット。ちなみに今でも触手服+鼻フックの竜魔王ジュリアの方が良かったなーとはちょっと思ってる模様。

「サイコロを振るか振らないかで振ることを決めただけ」
→悪堕ちヒロイン書くのたのしーなー。ちなみに当然サイコロを振るからにはファンブルする可能性もありました。その上で「そっちの方が面白そうだから♪」でぺら回したわけですが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。