ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 ティア姫の悪堕ち後お披露目……はシルヴィアが劇的ビフォーアフターしてるから仲間内だとあんまりインパクトなさそうなのが。
 なんならとっくにニチャ顔習得済だし凄惨姫の外道に加担しまくってて、悪堕ちで性格が急変した訳でもないから「シルヴィアリスペクトのイメチェンなの?」でさらっと流されそう……。




応報の凄惨姫

 

「馬鹿な、あり得ん……!!?」

 

「くすくすっ。目の前の事実が理解できないのは、単にお前のおつむの出来の問題じゃなくて?」

 

 緑豊かなメスキアでも西部に拡がる大森林。鬱蒼と広がる湿気の多い一帯は自然(エデン)の恵みを尊ぶ神竜族でもあまり心地良い場所ではなく、下層民である人間達の集落が点在している地域でもあった。

 樹齢を重ねた太く高い木々が不規則に連なり、竜翼で飛翔するにも難儀するという種族としての実利的な理由もある。――――だがこの区画だけはもうその心配もないだろう。

 

 灰燼。

 

 竜唱(ロア)も解放していない槍の一振りで部隊の過半ごと緑の景色を抉り取った闇翼の竜少女は、目を剥いて慄く歴戦の神竜部隊長を小馬鹿にした笑みで嘲笑していた。

 

 貴重な戦力である傀儡の四天将を私的な事情で持ち出し、あまつさえ軍に無断で脱走した人間の偵察兵イルダーナフの粛清とエアの回収を彼は大神官から命令されていた。

 場合によってはこちらに敵対する四天将エアを取り押さえねばならぬ状況も想定された為、作戦目的の関係上大神官の手駒でも選りすぐりが派遣されている。

 

 長年の鍛錬と実践を経て陶冶された精神はその分凝固し切っていてガシェルの所業の是非を問うという発想すらなく、最も忠実かつ優秀な戦力として大変重宝されていた。

 

 今日、この日までは。

 

 

「くっ……レッド5、9は即時撤退!ガシェル様に脅威を伝え―――「がぶぁ!!?」「ごべっ!!」―――、なっ!!?」

 

「本当におつむが残念なのね?

―――私の前でガシェルの利益になるようなことをするなんて、そんなの挽肉になっても償い切れないのに」

 

 

 不意の遭遇で文字通り部隊が半壊したにも拘わらず即断でせめて情報を持ち帰らせようと指示を下し、それを言い切る前から彼の意を汲んで他の隊員達はそれを援護しようと動き出していた。だが虚仮にするように黒い影が突風と共に通り抜け、同じく既に背を向けて別々の方向に散ろうとしていた両者を無惨な肉塊へと変える。

 

 竜族の十八番とも呼べる高速での空中戦を、この場の誰もが一流以上に修めている。だが誰もティア=エリーシスの飛翔に反応できなかった。その事実に、ほんの二年前まで実戦経験すらなかった小娘との間に横たわる絶望的な戦力差を悟らざるを得ない。

 

「――――みっつ、よっつ」

 

「っっっ!!待っ……」

 

「いつつ、むっつ、ななつ」

 

 戦慄と動揺の隙を狙った訳ではないだろう。そんな必要さえなく、悲鳴を上げることも出来ないまま自慢の配下達が命を狩られる。闇炎の翼が羽搏く度に禍々しい黒の牙槍が斬って抉ってぶち撒ける。作業のように血と脳漿と臓物の華を咲かせる灰髪の復讐姫は、不快そうに首を振るだけ。

 

「ぐぉふっ」

「やっつ。―――馬鹿にしてるのかしら。これじゃ慣らし運転にもならないじゃない。

 ほら自慢の翼はどうしたの?飛べない竜なんて、ただの豚よッ!?」

 

 逃げようとしたのかは自身も分からなかっただろう、無意識に上空に飛び上がった兵士の更に上に現れて兜を掴んで地面に投げ落とす。竜殻(ぼうぎょ)の硬さが自慢だったその男は、耕された森の土に埋まりながら全身を複雑骨折して歪極まりない肉塊と化した。

 

 圧倒的。蹂躙と称することすら生温い。戦うことも逃げることも出来ずに狩られる獲物。悪夢のような光景はしかし終わりまでそう待たないことだろう。―――もう殺されるべき命すら残っていないのだから。

 

「ふ、ふふふ……忌まわしきエリーシスの魔女め。呪われろぉぉぉ~~~~っっっ!!!」

 

 魔神そのものになったかのような災厄の竜姫に対して最期に挑みかかったのはせめて戦士としての矜持だった。その心意気に対して、ティアはつまらなさそうに黒の大盾をかざすだけだったが。

 

 

 そしてその盾に対して鋭く重い斬撃を叩き付けた部隊長は、衝突の瞬間盾に触れた箇所からそのまま黒い塵と化して跡形もなく消し飛んだ。

 

 

「ああ。馬鹿にしてるんじゃなくてただの馬鹿だったのね?

 死に際の怨嗟ですら陳腐で単純。間抜け過ぎて笑えたから覚えておいてあげるわ。三秒くらい。あはははは、あっはははっっっ!!!!」

 

 

 その場に残ったのは邪悪な嘲笑だけ。神竜族の栄光を陰から支えて来た勇士達は誰知らぬ暗い森の片隅で無惨な屍となり、当然弔われることもなかったのだった。

 

 

 

………。

 

「三日後にメスキア首都アマルナを攻めます」

 

 エアとイルダーナフを待ち伏せていたティア組と各地の破壊活動を続けていたベヒモス組が合流した直後の軍議。そこで紅血髪の参謀シルヴィアが切り出した方針は唐突だったが、メンバーに動揺は見られない。

 

 主だった集落は粗方魔族への苗床供出か全滅かで態度を決めさせてあるし、最近ではメスキア軍との交戦も減っていた。魔導列車の機動力をまともな軍隊行進で追尾することなどどだい不可能であるし、少数精鋭で攻めかかってもそれがどうなるかは聖門での戦闘においてファフネル将軍の壊走という形で証明されている以上、首都の防備を固め決戦に及ぶ方針を取ったらしい。

 もともと対魔竜族の前線を長く四公国に依存していたメスキアは、そもそも軍事拠点らしい拠点すら持っていないのだ。国境の聖門を抜かれてしまえば迎え撃つ防衛地点などほぼ無きに等しく、首都決戦も致し方ない判断ではあるが……それはつまりティア軍に荒らされている国土と民を一端見捨てるということ。

 

 頼むに足りぬ―――信仰篤き民もこの期に及んではエデンはともかくメスキアという国に対する疑念と失望が蔓延している。これ以上破壊工作をせずとも最早毀損された信仰が正しく回復することはない。伝達結晶(トーカー)も配置されず情報が隔絶している小規模集落でも“何故か”両軍の動向は逐次伝わっていた。

 

(諜報機関として『事実を正確にありのまま共有する』ことは職務の一巻と言えばその通りですが………取引は誠実に履行するというメッセージですね。対価次第では追加でお願いも可能でしょうか)

 

 ディアボロスで交わした約定を律儀に守っているらしい、面白半分で口先で弄んだ白の道化に対する連絡方法を考えていることなど微塵も感じさせない澄まし顔の軍師姫。

 そんな彼女の見守る中、魔神解放戦線の幹部達は次の戦略目標に対し意見を述べる。

 

「最後の四天将っていう敵最大戦力の一角は落としたし、なんだか知らないけどティアが強くなってるし。確かにこれが契機かもね」

「エアと戦った消耗もないわ。いつでも行けるわよ、ふふっ」

 

 流石に母親を苗床にはしなかったのね、と様相が一変したティアを観察しながら魔竜姫レヴィアが同意。

 とはいえティアが持ち替えた漆黒の大盾は見覚えある始祖の竜装の名残が窺え、血塗られた継承をしたことは彼女の言動から疑いない。それによって未練を立ち切ったことも。

 

 つまりはここからが本当の地獄なのだろう。

 

「集落の雑魚共を脅すか滅ぼすかもあれはあれで愉しかったけどな、いい加減慣れと飽きが来ちまった。いよいよ神官共の巣に殴り込みか、腕が鳴るぜ!」

「はい姉様。有象無象一切の区別なく、エデン様を騙る異端者たちは皆殺しにしましょうねっ」

「うふっ、興奮して来ちゃった。いよいよと思うと待ち遠しいようなまだ焦らしたいような不思議な気持ちになりますね?」

 

 一角双竜が唇を三日月に歪め、娼装翼竜が火照った両頬を手で覆う。

 

「まさかあたし達がこんなところまで来るとはねえ。

 でもシルヴィの為だもの、神竜共の本拠地だろうと皆ベヒモスで運んであげるわ」

 

 赤毛の魔女が片目を瞑りながら艶然と笑う。

 

「決まりね。決戦は三日後の夜明けよ!」

「ククク……ッ!ぶちかましてやるか!!」

 

 大将ティアと魔神ザハークの号令と共に、神竜族との最後の戦いに臨む為それぞれが動き始めた。

 

 

………ネフティスの王女レヴィアはそんな現況を母ヴァジェトに通信で報告する。当然決戦の日取りも、神竜族に完全勝利した記念日になるのだから誇らしさと共に伝える。

 

 翌日配下二名が本国からの極秘命令ということで離脱し姿を消したのを、訝しがりながらも深く追求はしなかった。

 

 

 そして決戦の日当日の払暁(ふつぎょう)。首都アマルナで爆音と狼煙が上がる。

 とある魔竜王の案内役になっていたその二名……に変装してすり替わっていた狸と黒ずくめの眷属が、戦闘が始まっていない首都の様子を訝しんでいたヴァジェトの位置を周りに派手に知らせるのも兼ねて上げた目晦ましとして。

 

 

―――ニンっ!!レヴィア殿から伝言でござる!『今まで兵すら出さずに玉座を尻で暖め続けた挙句の火事場泥棒とはいささか失望しました。今一度魔竜王としての武威を娘に示していただきたく』とのこと!!

―――ポンっ!!それでは魔竜王殿、健闘を祈るんだポン。しからばゴメン!

 

 

 一方その頃タチの悪すぎる離間工作を仕掛けられたとはつゆ知らぬレヴィアは、アマルナから数キロの地点で停止したベヒモスの指揮車輛でティアを膝枕しながらポップコーン片手に映像鑑賞しているシルヴィアに詰め寄っていた。

 

 

「シルヴィア、これはどういうこと?今日が決戦だっていうのに、こんな気の抜けた―――、」

「あ、レヴィア殿下。決行は三日後の夜明けだって言いましたよね」

「そう聞いてたわよ!」

 

 

「あれは嘘です」

 

「………、えっ?」

 

 

 そう言って嘲りと愉悦の籠った眼差しで設置されたスクリーンを示す。投影された映像の中で見間違える筈もない母が、黄金の髪にティアラを冠し長大な錫杖を握る竜少女と赤銅の大剣ヴォルスングを振るう将軍ファフネル相手に単騎で苦闘する様子が映っていた。

 

 

―――エル=メディーナから情報を受けた時はまさかとは思ったが。こんなところに単身で現れるとはな、ヴァジェト=ネフティス!!

―――何のつもりかは知らないが、貴様こそエデン様の最大の敵。ここでその首落とさせてもらう!!

 

―――おのれ、謀ったなレヴィアっ!!

 

 

 

「さあ、とくと見せてもらいましょうか。神竜王と魔竜王の実力とやらを♪

………そして存分に潰し合うがいい、それが望みでしょう?」

 

 

 





「飛べない竜なんて、ただの豚よ」
→いまだにディスられるヤマタさんかわいそす。

『情報が隔絶している小規模集落でも“何故か”両軍の動向は逐次伝わっていた』
→幼女「自称識者や自称心有る市民は煽動の応用編」
 現代知識チート(マスゴミの手口)とも言う。ディアボロスで凄惨姫がエルちゃんにしてたお願いもこれです。(他にも眷属を使って色々工作してましたが)

『狸と黒ずくめの眷属』
→自爆特攻シスターズ。レギオンバトルな上に砲撃が痛いLだとそこまで酷使されないけども。

『ティアを膝枕しながらポップコーン片手に映像鑑賞』
→凄惨姫「一方的に利用するつもりの相手に嵌められてピンチになる様を観察するのたのしいですねー♡」

「エル=メディーナから情報を受けた」
→社畜さんはちゃんと働いてます。自分の利益の為に。………ノリノリで協力してこの状況に爆笑してる可能性もありますが。

「おのれ、謀ったなレヴィア」
→レヴィア「冤罪です母様!?」

 魔竜族を興してティア軍の活躍する土台になったとか色々彼女のおかげではある。迂闊に触れれば世界が吹っ飛ぶ危険物を回収したかったのも分かる。
 が、それを差し引いてもここまでメスキア攻略に兵を出さずに竜杯だけくすねようとしたのはやり方が狡っからいですヴァジェト陛下。しかもその後温存してたネフティス全軍でティア軍に殴りかかるとか以前言ったとおりド畜生の所業。そんなん原作知識でそれを知ってる凄惨姫(with愉快犯ズ)からしたら、ねえ。


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