ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 対神竜族との決戦だから各員なんか喋らせようとしたら、皆してエデン様をレスバでフルボッコでござるの巻。




陥落の神竜王

 

 竜将軍が彼女を仇と憎むピアサによってエデンの為に戦うという生き甲斐を永遠に奪われていた一方で。

 魔神解放戦線の幹部達に対して主である神竜王は孤軍奮闘していた。

 

 神獣を召喚して数の不利を埋め、神杖から直接繰り出す全てを切断する刃は流石にシルヴィアでも掻き消し切れない為迂闊な接近を許さない。

 原理は同じなので個別に防御魔法を発動すれば防げるが時間停止を封じる役として他に手を裂く訳にもいかない以上、対抗する手段を講じるのは別の者だった。

 

 

「我が祈りは正義、汝が崇拝は堕落。いざ神前に、真理の天秤を掲げよ。

 宝珠カルクス、我は誓う。この世界に(あまね)く清浄を(もたら)すことを!」

 

 

 戦闘で次々と破壊されてはいるが、支配種族である神竜族の総本山はかくあるべしと言わんばかりの絢爛豪華な宮殿広間に充満する不自然な白い濃霧。

 策士が一度場に切られた札の対策をしていない訳がないというのは、かつて魔天の軍師相手に単身張り合ってみせた『竜の賢者』にも当然あてはまる

 

「ヴィーヴル、まさかお前が裏切るとはな……!」

「馴れ馴れしく呼ばないでくれますか紛い物。ロザリア様から本当のエデン様のことを聴いていたのに、愚かにも騙された私の浅はかさの象徴―――!」

 

 味方にも影響がある為魔力(マナ)吸奪の能力こそ抑えているが、霧に呑まれてはまともな視界を封じられる。盲目故に鋭敏な魔力(マナ)感知が可能なヴィーヴルだけが一方的に敵の位置を把握可能であり、エデンも召喚獣達も正確無比な魔術砲弾をただ浴びるしかできない。

 術に長けた四天将であるヴィーヴルにとっては砲撃の軌道制御など朝飯前。不規則な弾道と弾速で迫るそれに対して、どこから来てどこを狙われているのか当たりを付けることすら困難だ。

 

「ぐっ……!騙しただと!?」

「本物の始祖龍様はただ平和を願っていた。その為に弱者を慈しむ教えを残し、あの方自身もその為に自らの肉体を(なげう)って民が生きる為の糧を恵んでくださった。

―――魔族を排斥し同胞すら贄とする、ガシェルが歪めた教義を体現するお前は醜悪なレプリカでしかない!ならば断罪します、我が信仰に誓って。お前とお前達が作り上げたこのメスキアを!!」

「罪があるとしても、だからこそ……我は始祖龍として顕現し同じようにその身を捧げるつもりだった!」

 

「それが冒涜だと言っているのです。幾万の生贄を捧げて始祖龍様が降臨し再び豊かな恵みを取り戻す―――そんな血塗られた教えを既成事実化すれば未来はどうなることか。

 浮遊大陸の資源がなくなる度に同じことを繰り返すと?そんな国を始祖龍様が望んでいたとでも?」

「………っ」

 

「身勝手な理屈でエデン様を汚すな、贋作」

「つーか勘違いすんな、懺悔も贖罪も求めちゃいねえよ。

―――シルヴィアが言ってたろ?オレ達は結果で、お前らがてめえで育てた闇だ。だからよぉ……喰われて滅びちまいなァッ!!」

 

 氷双竜の魔術砲弾によって純白の体毛を鮮血に染めながら断末魔の鳴き声を上げて崩れていく神獣達。一方幼い少女のなりをしているとはいえ始祖龍の核であるエデンは被弾の瞬間に竜殻の時間を止めることで砲撃を防いでいるが、本国の宮殿内という最も力が発揮できる場所とはいえ魔力(マナ)が無限という訳ではない。

 

 まして霧の中で敵味方を認識可能なのは他にも居た。母親の魂を燃料として機械の躰を動かす禁断の生命が。

 

 

「我、聞くは鋼の駆動。我、視るはエーテルの輝き。唸り、(いなな)き、魂を燃やせ。

 其の名はZAN-ENハイパーネオマキシマム。叡智の結晶なりぃぃぃっっっ!」

 

 

「ヤマタ、お前も……!」

 

 竜角をあしらった全身鎧に、爆炎を吐き出して飛翔する鋼鉄の翼。エーテルの緑光に輝く七支刀から純白の炎を放出してエデンに斬りかかる。

 掠るだけで灰すら残らない、空気がプラズマ化してその場の磁場すら狂わせる極熱。この炎騎相手に接近戦をしようなどまともな神経をしていればとてもではないが不可能だ。

 

 だが距離を取ろうにも逃げる側だけが目隠しの状態で上手くいくものではない。戦場である広間は神獣達を何体も召喚できる程度にはスペースがあるが、竜族が自由に飛行するには流石に制限がある。まして鋼鉄の造竜はバイザーの下の薄赤に灯るセンサーで霧の中こちらを探知し、文字通りの爆発的な機動力で猛追してくるのだ。

 

「何故だ!四天将就任の儀の折、兄の後を継ぎクシナダを守ると誓ったお前の眼に嘘はなかった筈だ。それなのに何故魔神に与して神竜に仇なす!?」

Y-MAN(ヤマーン)!何か勘違いしているようですが、訂正の必要なしと判断。逆に疑問。何故抗う?」

 

「なに……、あづっ!?」

 

 魔竜王のマイナス二百度の凍結空間にも耐えたエデンだが、恒星の表面温度に達するY-MAN(ヤマタの子)の操る熱量は文字通り桁が違う。竜装に纏う時間停止の力を盾として凌ぐのが精一杯で、下手に攻めに転ずれば目の前の炎騎は斬れるかもしれないが代わりに神竜王の肉体は漏れ出た高熱に一瞬で溶かされるだろう。

 そもそも彼女の武具である『七支刀・斬焔』自体も始祖竜装である。時間切断といえど魔力(マナ)の籠った竜装同士の打ち合いとなれば生半可な出力で破壊できるものでもない。

 

「戦略的にメスキアという国はその目的を達成することが最早不可能です。たとえここで我々を撃退できたとしても、エデンの教義への盲信を利用して国民を都合よく誘導することは二度とできない。

 疑問。この場での抗戦は貴女にとって意味があるのですか?」

「それを……それをお前達が言うのかぁっ!!我が計画を、悲願を、存在意義を!悪意で壊したお前達が!!」

 

 

「理解。怨恨、復讐に類する動機と見受けました。ティア=エリーシスと同様ですね」

 

 

「………我がティアと同じ、だと?」

「違うのですか?」

 

 生まれて数か月の無垢かつ論理のみの所見に対し能面のような表情になるエデン。ことここに至りお前が戦っているのは大義ではなく私怨によるものだという指摘は、悪意なく図星の部分に深く突き刺さってしまった。

 

 

「学習完了。神竜という種の保全が第一義だが、追い詰められれば感情と衝動の優先順位が上昇する。認識をアップデートします」

 

 

「ヤマタァァァぁ~~~~っっっ!!!」

「Y-MAN!!」

 

 そのつもりは皆目なかったが覿面に挑発されたエデンに対し、兵器は兵器として与えられた指示を遂行すべく戦闘を続行する。

 因縁にも何が正しいかにも興味などない。学習の参考にする程度であり、造られた命としてただ己が為すべきことを果たすだけ。

 

 その生き方は、あるいは同じくガシェルに造られた命であるエデンにとって必要なものなのかも知れなかった。あるいはその正反対が。

 

 そして常識外の超高熱が振り回されていれば、いくら視界が閉ざされていようと鋭い直感でその位置と状況を把握できる者も居る。

 

「よおエデン。そろそろ沈んどけよ」

「魔神ザハーク……、がはぁっ!?」

 

 Y-MANへの対処でさえ全神経をすり減らしていたというのに、闇の炎を纏った拳闘の乱舞がエデンの小さな身体に襲い掛かる。

 

「きさまが、全てのっ」

「ああそうだ、俺が悪いな。甘ちゃんだったティアが俺の力を使って神竜共をぶっ殺しまくるようになり、そのせいで聖女みたいだったシルヴィアが今じゃ悪魔以上の性悪に変わった。他の女達もその悪意に染まってお前らメスキアに殺意剥き出しだ。全部俺が元凶だ。

――――最高じゃねえかッ!!いい女達が揃いも揃って俺の手で俺好みに堕ち切ってやがる!」

「下衆めが…!!」

「この侵略はいい仕上げになったぜ。見たろティアのあの有様。こいつらの変貌ぶり。

 だがお前やせむし野郎のおかげでもあるな。お前達が撒いた憎悪の種が最高の花を咲かせたんだぜ?」

 

 凶暴な笑顔とぎらついた瞳。揚々と語る魔神の褐色肌にはいつしか紫の紋様が走り、闇の炎が背に翼となって現れていた。調教の成果として女達が起こした惨劇と叛逆、破壊と暴虐を喜々として語る狂奔の魔神。

 暗く滾る欲望を満たし、更に溢れさせ、無限に進化する旧文明の最終兵器は語られる伝承の姿へと回帰し、そしてそれすら超越しようとしている。

 

 

「だがそろそろ用済みだよ。古臭え国と教えにももう価値はねえって判ったろ?

 いい苗床にしてやるから、安心して退場しやがれ負け犬偽エデンさんよぉ~っっ!!」

 

「うああああぁぁぁぁっっっ!!!?」

 

 

 闇の翼が剪断するように左右から迫る。疲弊したエデンに躱す術も防ぐ術もなく、玉体を犯すように暗黒物質(ダークマタ)が全身を蹂躙した。

 竜殻は完全に破壊され、法衣が無惨に引き裂かれて黄金の王は墜落する。

 

 助けになる配下はいない。

 贅を凝らした絨毯だけが、彼女の躰を優しく受け止めたのだった。

 

 

 

…………。

 

 では側近ガシェルはどうしていたか。

 

(私だけでも脱出せねば。竜杯さえあれば、やり直しは必ず―――)

 

 

「シルヴィの読み通りというか、あの娘いわく『お約束』らしいけど。本当にエデン置いて逃げ出すとかね」

「“エデン様”すら自分の為の道具。そういう男だなんて、ずっと分かってたことじゃない」

 

 

「な……っ」

 

 大神官の権力で極秘に作らせていた宮殿の秘密通路―――当然作業員は終わったら全て生贄にした―――を通り、玉座の後ろに供えられていた濃紺の盃を抱えて脱出を図ったガシェル。

 信仰する対象すら不利と見切ればあっさりと見捨てて囮にした、全ての黒幕にして諸悪の根源。

 

 神竜の傲慢と数々の殺戮を生み出した陰謀の化身はしかし、出口も来た道も完全に塞がれ逃げ場をなくす。

 単独で移動する生命力を探知して先回りしたアスタ=ディアボロス。エデンとの戦いを仲間に任せて最大の標的を追跡したティア=エリーシス。

 

 邪悪かつ妖艶な装束を纏った少女達は、いずれもガシェルによって祖国を滅ぼされた憎悪の魔姫だった。

 

 





「本物の始祖龍様はただ平和を願っていた」
→実際初代エデン様は争いとかもう懲り懲りだっただろうし(魔神と敵対したのすら当時の人間達の権力争いの結果)、二度と竜杯が悪用されないで平和な世界が続いて欲しいと願いながらその身を捧げてた感じに見えたからなあ。その辺ヴィーヴルイベントでロザリア様もちゃんと証言してるし。
 なのでガシェルと現エデンに一番言いたいことがあるのは初代様なんじゃなかろうか。

「断罪します、我が信仰に誓って」
→発言だけ切り取ったらこの子だけロウルート。この狂信者は本当にどうしてこうなった。

「幼い少女のなりをしているとはいえ始祖龍の核」
→神魔体躯50、称号で巨神体躯50。カンストでダメージ98%カットにも拘わらず特攻と巨人狩りが刺さるから『妥協』ガーダーなんだよなあこのエデンちゃん。最終的には時間停止の戦術スキルで拠点防衛のお留守番役という(戦術妨害されない限り絶対落とされない凄い子だけど)。

「其の名はZAN-ENハイパーネオマキシマム。叡智の結晶なりぃぃぃっっっ!」
→色々おかしい。ヤマタは我が女神枠だった・・・?
 なお、魂を燃やすは文字通りの意味である模様。

「ティア=エリーシスと同様ですね」
→Y-MANちゃんゼロ歳、悪意ゼロで煽りまくるの巻。

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