ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
ティア姫にとって念願の待ちに待った瞬間に辿り着きました。
楽しいお料理の時間だいえーい。
………グロ注意です。
「体が、動かぬ……っ!?」
元々神竜でありながら病で翼を失っていることといい、背に虫が入ったような曲がって縮んだ上半身といい、同じくらい根性が曲がって陰険かつ残忍な本性といい、それを信仰篤き大神官の外面で覆い隠す狡猾さといい、まるで蛇を思わせる男。
それが前門の竜、後門にも竜という状況に追い込まれた訳だが、それだけで怯え竦むほどガシェル=べリングスは神経が細くない。
「
アスタの操る重力魔法により立っているのがやっと―――否、わざとそう調整された“ほどほど”の加重を負わされたことで逃げることを封じられていた。身の丈数倍のオーガから全体重で踏み潰される程度には負荷が掛かっているが、前傾姿勢にも拘わらず踏み止まるのは魔族に“頭を下げる”ことを断固拒否する彼なりのプライドなのだろう。
だが当然ながらこの男によって家族も国も奪われた魔姫達には、そんなくだらない自尊心を発露するだけの余裕が彼にあるというだけで癪に障る。
「そういえばお前は邪眼でエリーシスの皆を石に変えたのよね?ならその眼、危ないから外しておかないとダメかしら♪」
「ぐ―――ぎゃあああぁぁぁっっっ!!?」
近づくことで同じだけの重力が架せられるが、ティアは愛する男と同じ褐色肌の顔貌を愛する男と同じ邪悪な笑みに歪めたまま、無造作にガシェルの右眼窩に指を突っ込んで引き抜いた。
視神経がぶちぶちと千切れる音と苦痛に喘ぐ絶叫。それを心地よく鼻歌に合わせながらも、取れた目玉は数回手のひらで弄んだ後ゴミ同然に放り投げる。
何の前振りもなく行われた灰髪の災厄姫の暴虐を見咎めて、赤毛の魔女は不機嫌そうに細い眉を顰めた。
「ちょっとティア、独り勝手に始めるなんてずるーい」
「そう言わないでよアスタ、もう片方はちゃんと残してあるじゃない。はいっ」
「~~~っ、ぐ、ぉぉぉっ??」
「なーる。じゃあお目々ぱっちり開いてー、ほら染みるわよー?」
悶絶するガシェルの尻を文字通り蹴飛ばして、重力場そのまま宙に浮かんだ強烈なティアのシュートを乱雑に受け取ったアスタ。彼女は一転好奇心に満ちた笑みを浮かべると、乱雑に引っ掴んだ銀髪を数房引き抜きながら大神官に上を向かせ、残された左目に腰のポーチから取り出した瓶の薬液を垂らす。
「ぐげぎがぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!?」
「ぷっ、あはははははっ!!なにその鳴き声、どこから出したのっ!?」
緑の
苦痛と熱痛と激痛、そして視界を失う絶望を脳に最も近い部位から送られ、魔術の心得があろうとそれを使って反撃する発想すら出てこない。のたうち悶絶する蛇男だが、アスタの繊手はこの数分でばさばさに乱れた銀髪を強く掴んだまま更に横を向かせた。
「じゃあ次は鼓膜逝ってみよっか♪」
「や、やめ―――ぶぎぐぃぃぃぃぃっっっ!!?」
「ぷぷ、ちょっと、豚のような悲鳴ってこういうのを言うのね。
うふふふっ、勉強になるわぁ」
融解された左目の反対側、右耳孔から再び酸を注ぎ込まれる。
生物の持つ最も繊細な部位と言ってもいい聴覚器官は当然のこと、ドロドロに焼けただれて穴ごと癒着して塞がる惨事を耳元に刻まれるのはただの人間ならば絶命する程の衝撃だった。
進化した強靭な肉体を持つ神竜族だから耐えられる。気絶すらできずに耐えられてしまう。
「それじゃ次ティアの番かしら。はいどーぞ」
「うーん……正直この男には呪いの言葉を幾百吐いても飽き足りないから、それが聴こえなくなるのは困るわね。もう片方の耳は無事に残してあげないといけないか」
「ぁ………」
最早重力制御は解除され、物理的にも軽々しい扱いでバトンパスされた大陸最大宗教の頂点に立っていた男。酸が僧服に飛び散って襤褸切れになった無様極まりない仇敵の首を折らない程度に圧迫しながら、ティアは思案の呟きを漏らす。
喉を抑えられ乏しい空気を必死に吸いながら、掠れる意識でそれを聞いて条件反射的に安堵した。あの衝撃がもう一度来ることはないと、
「代わりにその伸びた鼻っ柱、折ってあげましょう♪」
「あぎゃあああああぁぁぁ――――っっっ!!!」
物理的に、紙切れを引き裂くような気軽さで骨ごと削がれる鼻。
陰気さと神経質な空気はあったものの十分整っていると言えた目鼻立ちはこれで全滅。手っ取り早く外面的な尊厳を磨り潰した次はどこを行こうかとティアは舌なめずりをし、アスタも唇を三日月に歪ませる。
ガシェルが殺した民の一人一人全ての恨みを晴らすと言わんばかりに交代
爪。指。皮膚。関節。腱。骨。神経。生殖器。内臓。生物の構造と仕組みに詳しいアスタが居るからこそ死なない限界まで効率良く苦痛を刻める。
喉を嗄らし血を吐いてなお上げ続ける悲鳴が止むことはない。猜疑心の塊であるガシェルが作った秘密通路に命の叫びがこだましても、助けなんて絶対に来ないのに。
………自らが選ばれし最も優れた種族であるという傲慢さ。悪と断じ蔑む相手には躊躇なく攻撃する狭量さ。浮遊大陸で最も豊かな国の長い歴史の中で醸成されてきた神竜族を犯す病魔でもある負の精神性を最も強く有するのは、民衆のそれを利用して権力の座に立ち続けたガシェル自身である。自らが強く体現するからこそ他者の共感を呼び、また他者の心理を理解できるのだから。
それでも。原型を留めない手足、剥き出しになりながら脈打ってまだ繋がっている臓器、元が誰か百年以上最も近い場所にいたエデンですら判別できない猟奇的な有様。そこに至るまでの凄惨な破壊を浴び続けて保ち続ける自意識なんてある訳もない。
「許して………許して………」
歯や舌はわざと無事なまま残されているから命乞いの言葉が喋れる。己の非と敗北を受け入れ全面的に屈服するのを躊躇うことなど、今のガシェルには不可能だった。
その言葉を聞いて、ここまでアスタと一緒に愉悦と高揚のままに
「――――絶対に許さない」
心臓に牙槍を突き立て、黒塵にして消し飛ばす。
この世界に肉片一つ残すこともできない、それが数多の生贄を捧げながら永遠なる箱庭の管理を目論んだガシェル=べリングスという男の末路だった。
かくして。
「俺たちの…… 完 全 勝 利 だぁぁーーーーっっ!!」
メスキア首都アマルナ陥落。ザハークの勝鬨に眷属達は思い思いに歓喜の仕草で騒ぎ、兵達は早速略奪や捕虜の強姦で昂ぶりを鎮める。
秩序を説く神竜の教えは魔族の自由の法に塗り潰され、格調高い街並みは蓄えた財貨を根こそぎにされる。酒蔵を見つけた兵士達の幾らかは裸に剥かれた神竜の娘を肴に早速宴を始め、乱痴気騒ぎに興じていた。
そのいささか
「シルヴィア。私やったわ。やったのよ……!」
「はい。本当によく頑張りましたね、ティア姫っ」
ティアのせいで心を壊しティアの為に如何なる悪辣非道も躊躇わない少女軍師はいつだってティアには無条件で優しい。
その暖かさを堪能しながらも………ふと涙がこぼれた。
「―――あれ、なんで」
エリーシスの、弟の無念を晴らせた。宿願がようやく叶った。達成感と悦びしかない筈なのに、ぽろぽろと溢れ続ける涙。
「私、わたしは……!」
「いいんですよ。ティア姫。今は、いいんです……」
袂を分かった母と、産んで手駒にして戦場に散った子供達と。そしてここに至るまでに歩み続けた道程での疲弊。
復讐の炎に心が焼き焦げていたせいで燻っていた感情に苛まれながらも。
魔神の契約者にして亡国の王女ティア=エリーシスの復讐譚は、仲間達が思い思いの感慨に浸る中―――この日確かに成し遂げられたのだった。
…………。
一方で魔神解放戦線の戦いがこれで終わりかと問えば、軍師姫は否と答えるだろう。
「―――レヴィア殿下。ご気分はいかがですか?」
「なんとか、ってところかしらね。勝ったんでしょ?おめでとう」
早速産卵祭りを始めたザハークを筆頭として面々の浮かれっぷりを見るに丸三日は略奪と宴に明け暮れるであろうティア軍だが、残念ながら軍師としては一緒になって戦後処理を始めとした残務を放り出す訳にもいかない。断腸の思いで触手乱交の参加を諦めて一足先に魔導列車に戻ったシルヴィアは、まず飼育車輛の『おしおき部屋』に入っている魔竜姫レヴィアのもとを訪ねていた。
ティア軍を都合よく使い潰そうとしたことが発覚した母のせいで首都攻略戦に参加できなくなった客将の王女。
やんちゃをした眷属を反省させる檻と鍵付きの暗い一室が独房としても使用されているものだが、簡易ベッドに腰掛けてその母を罠に嵌めた謀略姫の挨拶に応える彼女の機嫌は一旦落ち着いているようだった。
ここまで聞こえてくる魔竜族の凱歌や雄叫びによって、外の戦いがどうなったかは察しているのだろう。
部屋に二つあるベッドのもう片方には機能停止したままのテュポーン。そして何故か置いてある水槽に浮いている、まりもに身を包んだ謎のネズミ。
会話は出来ないまでも孤独に過ごしていた訳ではないから必要以上にネガティブになることもない。考えを纏める時間はあった。
あの後魔竜王が神竜王に討たれた場合、または魔神解放戦線に捕えられた場合、切り抜けてネフティスまで帰還できた場合………今回の一件で関係の悪化するデルピュネに対しどのような科学変化が起きるのか。王がシルヴィアの縁者であり今回のメスキア攻略にもちゃんと援軍を出したバシュトラの反応は読めないし、ヴァジェトのカリスマと実績故に纏まっている祖国の国内勢力も果たして団結したままでいられるのか。
「それで、私が今一番欲しい情報を持って来てくれたのかしら?」
「はい♪流石レヴィア殿下、サービスのし甲斐があります♡」
そう言ってシルヴィアの後ろから現れた蒼の侍従が抱える武具に八割がたそうだろうと思っていた予想が的中したことを悟る。
紅紫の刃が特徴的な長刀アンドルディース――――母の竜装をシルヴィアが持っていることの意味など考えるまでもない。この策士が事前に情報を察知して絵図面を引いていた以上、余程のイレギュラーがなければ今後の脅威を取り除く手筈は整っていた筈だからだ。
「母様もこれで産卵苗床行き、か。
―――ちょっと待って、サービスってどういうこと?」
筋論で娘としては怒りを覚えて然るべきだが、戦争の一番いいところで無粋な邪魔立てをされた母への蟠りは全く解けていない。そもそも産卵自体はレヴィア自身もやっていることであって、思う事は実母と竿姉妹になるのかとか母が産んだ眷属は自分の弟妹になるのかとかそういった部分がメインになる。
しかしそれを口に出すより先に策士の言葉尻に違和感を覚えたレヴィアはそちらに言及する。意を得たり、とばかりに謀略姫は妖艶な笑みで誘惑するように応えた。
「言葉通りの意味です。差し上げますよ、それ。
――――『魔竜王レヴィア陛下』と呼ばれることに興味はありますか?」
「―――っ!!」
もし、
レヴィアが考えていた通りに状況が推移したとして、ここで娘の自分が『母の形見』を持って帰国したら。ネフティスという国を維持する為に選択肢は一つしかなくなる。
バカな。娘としてもネフティスの将軍としても、この状況でまず行うべきは母であり王であるヴァジェトの救出だ。………だが不可能だろう。テュポーンがここで眠っている経緯を考えれば、アスタあたりが捕えたヴァジェトに対し『ベヒモスから一定以上離れると脳が爆発する』程度の仕掛けはしている“筈だ”。
(だから“仕方ない”。母様を見捨てることになるけど、仕方ないわよね………♪)
無意識に締まりなく口元が緩んだ。
大好きな戦争を邪魔した母親より『サービス』してくれるシルヴィアに寧ろ好感を覚えている精神状態で、悪魔以上の悪辣な魔女の取引に乗ってしまう。
――――『我慢すること、耐えること……その理由がなくなれば、世界はそれはそれで楽しくなるんですね。レヴィア殿下もどうです?』
「そっちのメリットが読めないけど、いいわ。都合よく踊ってあげる。
………本当に食えない女ね、貴女」
レヴィアは本当に愉しそうに、堕ちたティアを見る時のシルヴィアとそっくりの邪悪な笑顔。それに対して返ってくるのは。
「お互い様ですよ、『同志』レヴィア♪」
いつもの謎の好意に満ちた親しげで毒を抜かれる笑み。
その思惑に自分の利益というか趣味だけを考えて相乗りする訳ではあるが―――何故だかとても心が躍る。
斯くして共犯者達の共謀は成立し。
独房で監禁されていた客将レヴィア=ネフティスは、保管されていた魔竜王の竜装と共にこの日魔神解放戦線から姿を消した―――。
という訳でティアの復讐は終わったけど戦いはまだ続くのじゃ。
だって仮にこれでめでたしめでたししようとしたら世界リセットボタン押しちゃう女神様が血を求めてるし………(雑な原作タイトル回収)
あとヴァジェトとファフネルとエデンの末路書かなきゃだし()
『手っ取り早く外面的な尊厳を磨り潰した』
→目だ!耳だ!鼻だ!!
『ガシェル=べリングスという男の末路』
→原作ではなかった徹底的に恨みをぶつけられた結果の死に様をちょっとやってみた。ロウでもカオスでもガシェル視点だと道半ばであえなく敗北、みたいな感じがあるし折角なので完全にへし折られてその上でぐさっと。
『断腸の思いで触手乱交の参加を諦めて』
→自分の性癖よりもティア姫の為を優先するの本当徹底してるっていうか、悪堕ちしても変わらない部分は全然変わってない元清楚姫。
『まりもに身を包んだ謎のネズミ』
→可愛いコスト1組。なお裏ステージにすら通用する超凶悪アタッカーである。