ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
ムムル視点でのこれまでのおさらいと、メスキアの戦後処理。いいおねえちゃんですよね。
随分遠いところまで来てしまったのです―――
元々骸獣被害で操業停止した鉱山街から弟のアインと共に出稼ぎに来たいち魔族労働者。当時のテュポーン執政下のデルピュネでは自分の日々の暮らしがやっとの賃金で明日も見えずにもがき続けるだけだった。
魔女アスタと癒術師シルヴィアに拾われ、魔導列車ベヒモスの車掌を任されて故郷の仲間に仕送りが出来るだけの給料がもらえるようになった。………後で知ったのだが、シルヴィアがテュポーンから命じられた物資輸送の裏で非正規の運び屋をやったり横流しをやったりして『副業』で稼いでそこから出ていた給料だったらしいが。優しい医務室のお姉さん然としておいて冷徹なる機械人形相手に数字の誤魔化しを平然とやり
そしてある日伝説の魔神ザハークと敵である神竜の姫ティアという今聞いてもよく分からない組み合わせの男女を拾った、と思ったらその魔神に犯されて産卵苗床にさせられた。初めはショックだったが、元々子供は好きだし自分の仕事を手伝ってくれる眷属達は可愛い。強くて守ってくれるという一番大事な点でザハークは
恩のあるアスタやシルヴィアも同じ様にされてしまったが、自分の意思でそうなったらしいし母親仲間になって嬉しくて心強かったのが正直なところだ。
―――弟の様子がおかしいとはこの時点で気付いていた。原因を知ったのはこれも後での話だったが。
そして眷属達と共に戦ってテュポーンに反逆し、ティアが王座を奪取。シルヴィアが宰相になってデルピュネはどんどん良い方向に変わっていった。故郷の鉱山は魔神解放戦線が力を貸してくれて骸獣を追い出して操業再開できたし、ベヒモスで巡る各地の街も税率や法制が改められて活気が出るようになった。
まさかの魔竜王との謁見に自分も同席出来るとは思わなかったし、彼女に承認されたことで
一方でピアサ=アルトンという敵の将を捕らえて公開凌辱に掛けたあたりで、あるいは前兆があったのかも知れない。多数の眷属や兵を犠牲にしてメスキアの合同遠征軍を凌ぎ、神竜内部で粛清され惨劇の跡地と化したアルトン進駐を期にシルヴィアは豹変した。引きずられるようにアスタも気性が転じ、クシナダ・ニヴェルネという神竜の公国二つを蹂躙する。ムムルにとっては優しいお姫様とお姉さんのまま接してくれるから、どうしていいか分からないまま今までどおり仕えるしかなかった。
―――弟が変態になってしまっていたと気付いたのはこの頃だった。『救いようのない』が頭に付くと知ったのはさらに後になってだったが。
苗床、奴隷、果ては魂すらも道具。敵国の民への容赦ない仕打ちに、純朴な感性を残すムムルの良心は痛んだ。だがそれを喜々としてやっているのがどこまでも着いて行くと決めているアスタとシルヴィアなのだ。『仲間を守るために』という理由で、守られている自分がどうして止められようか。“仕方ない”。
しかも同時に『こいつらのせいで自分達は貧しい暮らしをしていたんだ、ざまあみろ』という仄暗い愉悦が確かにあった。全ての魔族の始祖は魔神ザハーク。ムムルにも薄く流れている血の本能が神竜の犠牲に高揚している。
外道がエスカレートしていく中、遂にメスキアに突入する。自分が操舵を握るベヒモスが主砲で関を砕き、かの魔竜王ですら為し得なかった神竜本国への侵攻を行っているのだ。興奮しない訳がない。
自分達の棲家であり縄張りである魔導列車が、メスキアの精兵すら機動力で引っ掻き回して敵の巣穴を好き放題荒らしているのだ。沸き立たない訳がない。
いつしか蹂躙される敵の民衆への慈悲と憐憫は掠れるように薄くなっていた。繰り返される蛮行を目撃することへの慣れ、敵も同様に外道を働くのだからという理由付け、色々原因はあるが―――最大の理由は“失望”だった。
虐げられる魔族を救うために立ち上がった英雄だった筈の魔竜王が、神竜族への勝利を最優先にしないで自分達魔神解放戦線を使い潰そうとしていたこと。ひいてはかつてムムル達の故郷が苦しんでいた貧しさの理由であった筈の、『神竜族の暴虐に対抗する為』が嘘っぱちでしかなかったこと。
そして何より、そもそも『虐げられる
『や、やめろ!何故お前達が……ぎゃぁっ!?』
『うるせえっ、こうしないと俺達が皆殺しになるんだよ!』
『魔族に屈しようとする不届き者だ、処刑しろ』
『やめろぉ、僕の妻まで!?』
『!?何をする―――ぐはっ』
『ああ、あとはこいつの娘を捧げれば私達は助かるのよ…っ』
『くく、今まで偉ぶりやがって、いい気味だぜ。最後くらい俺達の役に立てよクソジジイ』
絆も労りもあったものじゃない。醜い。いくらシルヴィアの姦計とはいえ、身内同士で罵り傷つけ時に殺しすら厭わない姿は紛れもない“別種族”であるとムムルの認識には刻まれた。
貧しくても助け合い、互いを尊重していた故郷の皆とは比べることすら失礼だ。こんな奴らを可哀想と思うなんて、なんてばかばかしいことか。
勝利後も占領政策の為に各地を回るベヒモスの乗組員として現場を見る中で、その認識は最早確信に変わっていく。
かつて神竜族絶対主義でメスキアに敷かれていた身分制度は謀略姫が歪めて創り直した。首都陥落前からティア軍に従順だった者達は一級市民。宗教上の禁忌だった機械文明に染まり積極的にティア軍の為に働く者達は二級市民。宗教や選民意識を捨てきれない、反抗的な者達は三級市民。当然持てる財産や権利には露骨な差があり、三級市民はある日突然殴られ嬲られ奪われ奴隷にされても何も文句は言えないような身分だ。
結果彼らがどうなったか。二級は落ちぶれる三級を蔑む一方で、上手く取り入っていい思いをしている一級を妬む。三級は誇りや信義を捨てて敵に下った奴らを激しく罵る。一級は他を見下しながら自分は違うと積極的に勝者にアピールする。かつて身内同士だった筈の者達は分裂し、敵であった魔竜族よりも互いをこそ憎悪するのだ。
密告
奴隷にしたかつての同胞達を土下座させながら、
―――ムムル自身は自分が変わったとは思っていない。家畜を屠殺することを躊躇うような育ちではないのだから。その証拠に、身内は絶対に見捨てない。たとえ救いようのない変態であろうとも。
だからシルヴィアがザハークに抱かれる日、僅かに開かれた扉の前でムムルは弟の耳元で囁くのだ。
「今日も、なのですね。お姉ちゃんをどれだけ悲しませれば気が済むのですか?折角お母さんに頑丈に産んでもらったのに、その図体で腰も振らずに右手を振るだけ。どうしたのです、なんで手を止めるのですか?続けたらいいじゃないですか、気持ちいいんでしょう?へたれて別のオスに取られたお姫様が幸せそうに喘いでるのを見て盛ってるんでしょう?どうしたって訊いてるのですよ自分のをツッコむ妄想すら出来ない雑魚へたれ軟弱弟、お姉ちゃんの質問に答えることも無理なのですか?………はぁー、本当に良かったのです。え、何がって。だってシルヴィアさんのことは大好きですし、義理の姉妹になれれば私は嬉しいけど、でもこんな雑魚オスのお嫁さんなんてもったいなさすぎるじゃないですか。ほら見てください。見なさい。シルヴィアさんあんなに蕩けて喘いでるの、すっごく幸せそうなのです。可愛らしい声が下品にお腹から出て低い唸り声になっちゃってるの、あれオホ声っていうらしいですよ?オ・ホ・ご・え。聴いてるだけで私もお腹が熱くなっちゃうくらいえっちな声だよね。ねえアイン、もし、もし万が一、何かの間違いで、本当に酷い間違いで、あなたがシルヴィアさんとつがいになってたとして、シルヴィアさんにあんな声出させてあげられるのですか?ずぅっと同じ列車の中に居たのに、ザハークさんはたった数日でモノにしたのに、彼女をまともにご飯にすら誘えなかったへたれアインくんが、あんな風に快楽の絶頂って感じのやらしい声を聴けたと思いますか?答えてください。答えなさい。答えろ。何を固まってるのです。一言、『違う』って言えばいいだけじゃない。それか首を振るか。………はい、よくできました。頭なでなでしてあげるのです♪あ、別のところは自分でなでなで続けてね。……何を泣いているのですか?泣きたいのはお姉ちゃんだって分かってるでしょう?こんな惨めなこと言われてもずっと右手でなでなで続けてるようなのが弟なのですよ?でも仕方ないからこうして世話を焼いてあげるのです。お姉ちゃんですから、アインは見捨てないのです。見ていてあげるから、ほら続けるのです。この変態マゾ。へんたい、ざこおすっ。ざこざこざこざこ、ざこざこざこざこざこっ!」
「あっあっあっあっ」
「あ、でも。――――明日は私がザハークさんに抱かれるのです。その間はアインのこと本当にどうでもよくなっちゃうけど、許してね♡」
「~~~~~~っ」
………。
「―――。なあシルヴィア、あれなんなんだ?」
「はぁ、はぁ、…ふふっ。アインくんもこのところ機関士として頑張ってるからたまにはご褒美もいいかなと思って。やめさせます?」
「………………。ほっとけ」
手の届かなくなった憧れの女性が作った台本を姉がちゃんと暗記して読み聴かせてもらえる弟。神竜王すら容易く陥落させた色欲の魔神すらも、その絆に手出ししようとは思わなかったのだった。
原作でもこのタイミングだったと思うので久々に脳破壊タグのお仕事。(物理)じゃないから原作カオスルートより救済されてるよ、やったねアインくん!
ダークで重々しくなっていくばかりだときついので、一服の清涼剤的な脳破壊で中和。……清涼とは。
あとやっぱりふとした瞬間に正気に戻ってちょくちょく手が止まるASMR文……。
『冷徹なる機械人形相手に数字の誤魔化し』
→原作Hで化け物ジジイ相手に体裁整えてみせた(見逃されてる感もあったけど、生半可な手際だったら多分容赦なく潰しに来てた)のに比べればポンコツ機竜相手はまだ楽だったとも言える。
『こんな奴らを可哀想と思うなんて、なんてばかばかしいことか』
→競い、妬み、その身を食い合う!……本当にクルーゼ名言集があてはまってきた神竜族に草。まあ元々人間だしね。
『これが一番早いと思います』
→現代知識チート(ブリカス式統治術)
ただし現地からしたら当然地獄になります。生半可に人権とか民主主義とかの知識を吹き込まれて独立なんてした日にはさらにドン!(地雷)
『憧れの女性が作った台本』
→お前そんな暇どこにあるの状態の凄惨姫。ふざけるのも全力。
『その絆に手出ししようとは思わなかった』
→流石のザハークさんもドン引きして関わり合いになりたくなかっただけともいう。ある意味最強説?