ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

70 / 84

 色々触れないといけないことが多いんでナレーションの割合が増えるんだけど、ネット小説的にはあんま良くないんですよねー。
 なんとか工夫……できたらいいなあ。




合流の造天使

 

「それで、どういうことかしらシルヴィア」

 

 ネフティスのデルピュネに対する宣戦布告。それを受けた首都エトナでは、すぐさま参集できる魔神解放戦線幹部を政庁の会議室に招集し緊急の軍議を開いていた。

 ピアサとヴィーヴル達は不在、奇しくもテュポーン打倒前の初期から居る面子での会議となっている。

 

 自主的にとはいえ軟禁されていた筈のレヴィアが魔導列車に運び込まれたばかりのヴァジェトの竜装を奪って逃走し、ネフティスの王となってこちらに戦争を挑んでくる―――いささか出来過ぎた流れに作為を疑う程度には、ティア軍の面々は皆鬼謀奇策に慣らされている。

 当然、ザハークやアスタ達も含めた全員の視線はこの流れを作り出したと思われる軍師シルヴィアに集まっていた。

 

 表面的な事実をなぞると明らかにティア軍に不利益をもたらしているが、別段彼女達もシルヴィアを疑っている訳ではない。これまでのティアへの献身に疑念の余地が一切ないという正の信頼と、兆が一この謀略姫が裏切るのであればこんな粗雑なやり方ではなく一発で致命的な死地に墜としてくるだろうという負の信頼両方の意味で。

 

 

「弁解させていただきますが―――これ以外のやり方だと“詰んで”いるんです」

 

 

「何だと……!?」

 

 詰んでいる。これまで数多の戦いで敵軍を翻弄し、賢竜ヴィーヴルや陰謀家ガシェルですら“詰まして”きたシルヴィアに似つかわしくない言葉に魔神ザハークですら動揺した。

 面々が驚きを呑み込むのを待つまでもなく、紺眼の魔姫はいつものように筋道立てて分かりやすく現状に至る流れを説いた。

 

「今回のネフティスの動きですが、おそらくティア姫のデルピュネ統治を承認した時点から国としての既定路線です。怨敵神竜族の本拠地であるメスキア侵攻に際してすら属国のバシュトラ軍を牽制に動かしたのみでネフティス軍をずっと温存してきたのは、戦後間もないデルピュネを後ろから殴って豊かなメスキアの土地を奪い取る為。

 よしんば私達が志半ばで壊滅しようと、その戦力は魔神の眷属なのだから自分達の懐は何一つ痛んでない。弱った神竜軍を叩いて戦線を押し上げられる。――――そんな感じの筋書きだったんでしょう」

 

「ふ、ふふふ。本当嘗め腐ってくれるじゃないあの紫豚……ッ」

 

 催眠が完全に馴染み、女性としての慎みも恥じらいも皆無な下劣極まる言動で夜な夜な兵士達の性欲処理をしている便器女(ヴァジェト)に改めて災厄姫(ティア)は怒りを募らせる。毎日一時間、強制的に正気に戻されて自分の現状を顧みさせられるという更なる地獄が追加された瞬間だった。

 

「ヴァジェトの思惑はともかく、それだけで国の方針が全部決まる訳はないですからね。寧ろ即物的な欲望という意味でなら配下達の方が強いでしょう」

 

「はん。神竜どもの土地は全部俺達の手で奪い取ったモンだぜ。せこい真似する三下共にくれてやる分け前なんざあるかよ」

「ザハークの言うとおりよ。眷属の子達が血を流して勝ち得た私達の(いばしょ)、欲望に塗れた薄汚い手を伸ばそうって言うのなら………容赦はしない」

 

―――元神竜族として信用してもらえると思っていた訳ではない。その上で誰に何の思惑があろうと、ガシェルへの復讐の為に戦うと決めたのは己の意思だ。

 だが王となった以上魔竜族は守るべき民として遇してきたし、復讐を完遂した今彼らが戦乱で理不尽に死ぬことのないよう手を取り合うことだって視野に入っていた。

 

 それを。こんな形で悪意を返されてにこにこしていられる程、今のティアは温厚ではない。

 

「はい。そういうことなのでこちらとしてもネフティスとの敵対は既定路線。

 だから最高効率で潰します―――と、言えれば良かったのですけれど」

 

「………シルヴィ、あなたのことだからまたエグい手段考えたんでしょうね。でも実行できなかった?」

「勝つだけならシンプルですよ。ネフティスはヴァジェトが一代のカリスマでまとめた国、でも彼女の身柄はこちらの手に落ちている。残ったのはそれぞれ見ているものがバラバラな派閥勢力ばかり」

 

 元々バシュトラ軍の視点から魔竜族の内部事情には詳しいシルヴィアである。ヴァジェトに心酔する者、野心を抱いて成り上がろうとする者、己の立場の維持に執着する者、真に魔竜族の未来を考える者、それらがこの局面でどう動くか見通すことなど容易い。

 

「適当に調略を掛ければ勝手に騙し合いや抜け駆けを始めて疑心暗鬼で空中分解します。

 そこを個別に磨り潰していければむしろ今までのどの国を相手にした時よりも楽勝です。でも」

 

 それをシンプルだの楽勝だのと言えるのは彼女だからではある。しかしその手段を選べない凄惨姫は珍しく苛立たしげに眉を顰めながら溜息を吐いた。

 

 

「楽勝、先が見える―――『ティア=エリーシスがガシェル=べリングスへの復讐を達成した』状態でその盤面を作ってしまったら、終わりなんです」

 

 

「………終わり?何のこと?」

 

 どこか焦りと胸騒ぎを感じながらティアは問い返した。これからシルヴィアが語ろうとしていることは、己にとって致命的な何かを孕んでいる。そんな予感を抱いて発した問いに、彼女の全てを肯定する軍師は躊躇を呑み込んで一瞬沈黙した。

 重い空気が閉ざした中、紅血髪の堕姫が告げる―――前に。

 

 

 

「話は聞かせてもらいました。この世界は滅亡します!」

 

 

 

「「「「………、…………」」」」

「な、なんだってー」

 

「………あれ?えっと、なんですかこの空気。エルちゃん超スベったみたいじゃないですか」

「みたいっていうか完全にスベりましたけど」

「酷っ!?セリフだってこれ貴女の指定―――、」

「あ、エルさん後ろ後ろー」

 

「神竜族ね。とりあえず死んでくれるかしら」

「のうわあああぁぁぁ~~~っっ!!?」

 

 掠めただけで黒塵と散る災厄姫の牙槍を必死の形相で躱し切ったのは、かつてディアボロスでの列車砲発掘時ティア一行に意味深な情報を示唆して消えた密偵エル=メディーナ。髪も肌も衣も真白の『全知の巫女』は、何の前触れもなくデルピュネ中枢の会議室への侵入を果たして、そして突然襲い掛かる必滅の一撃から逃げ回っている。

 

「あー、シルヴィア。なんだコレ」

「コレ扱いってなんですかザハーク―――危なっ!?本当容赦ないですねここのティアは!?」

「一応亡命希望者です。メスキアの民衆を引っ掻き回す時に風説の流布をやってくれたり、ヴァジェトを嵌めた時にエデンに情報を流してもらったりしたので、取引する分にはある程度誠実だと思います」

「ふわっとした表現やめ―――うひゃい!?頑張って始祖龍の心臓の場所の裏取りまでやってきたエルちゃんにこの仕打ち酷いと思わないんですか!?」

 

「………二重スパイってわけ。信用できるの?」

 

 『とりあえずぶち殺す。話はする気がない』だったティアだが、シルヴィアの取引相手と知って槍で追い回すのをやめる。部屋の備品や壁に被害がない辺り加減はしていたのだろう。もし部屋が破壊されたら頑張って片付けようとするムムルを気遣って。

 

 一方、全集中力を回避に費やして疲労困憊だったエルは行儀悪く机の上でへたり込み―――その両腕がいつの間にか魔力の黒鎖にじゃらりと拘束されていた。

 

「ふぃあ~~。死ぬかと思いましたー……あれ?あれあれ?」

 

「信用できるかは、ザハークさん次第です。エデンと同じようにしてこませれば彼女の居場所は私達の陣営以外に存在しなくなるので」

「ククッ、言ってくれるじゃねえか。いいぜ……ディアボロスの時のようにはいかねえってカラダに教え込んでやるよ」

 

 エルを最初に凌辱した時は変な夢を見せられ、その隙に姿を眩ませていた。だがティアでやり方を知りエデンで要領を掴んだ、肉体に暗黒物質(ダークマタ)を侵蝕させて存在そのものを『魔神の眷属』に書き換える邪法で屈服させればそんな小賢しい手管でザハークから逃れることは不可能になる。

 

「ちょっとシルヴィアさん、うそでしょ……?嘘って言ってくださいよ、ねえ!?」

「がんばっ♡」

「うわあ超イラってしました今の――!!」

 

 両手をぐっと握って可愛らしいポーズと笑顔で煽―――もとい応援してくるのに見送られ、嗜虐的ににやつきながらザハークは触手空間を展開してエルをその中に放り込む。そして自分も乗り込む、その前に。

 

「なあシルヴィア。まさかこの俺を便利扱いできると思ってないよな?

 覚悟しとけよ、こいつ躾けたら次はお前だ」

 

「……ひぅっ!?」

 

 完全覚醒した魔神の凄み。犯し、喰らい、奪うのはザハーク自身の意思であり、それを好きに利用できると思い上がるのはたとえ自分の女だろうと許さない。後ろにいたムムルが反射的に縮こまるほどの威圧を受け、しかし凄惨姫は狼少女を背に庇いながら扇情的な笑みで応える。

 

「あはっ♡存分にどうぞ。愉しみに待ってますね♪」

「………ふん」

 

「ああ、シルヴィアさん……っ!」

「シルヴィアぁ……」

 

 鼻を鳴らしてそのまま触手空間を閉じるザハークを見送り、蒼銀の装束で柔肌を露出した肢体を期待でくねらせるシルヴィア。同性のムムルが頬を赤らめるほどに艶めかしい立ち姿を、息を荒げて血走った眼に焼き付ける狼男が居たが、この場の全員が無視していた。

 

 最愛の少女が他の男に完全に染められるのを心待ちにする姿を、同じく息を荒げて血走った眼に焼き付ける大将もまた見ない振りをしながら、アスタは珍客の登場で逸れていた話題を切り出す。

 

「それで結局どういうことなの?終わりとか詰んでるって、もしかしてまずいの?」

 

 シルヴィアに付き合って同じようにザハークに改造される未来を当然のように受け入れている姉貴分の問いに、困ったような笑顔で返す妹分。

 この後エルさんがザハークさんとティア姫に『最初の世界』の夢の続きを見せてくれるでしょうから、それからの方が話は早いんですけど……と前置きした上で続ける。

 

 

「とりあえずまずいかまずくないかで言えば、手は打ってるのでまだ大丈夫です。

 先の見えた消化試合に最後まで付き合ってくれる根気強さなんて、アレに期待するだけ無駄ですから。たとえヤラセ気味だろうと引き延ばし展開と言われようと、続ける以外にやりようはなかったのが悔しいところですが」

「何を、続けるというの?」

 

 

「『ティア=エリーシスの物語』。実現不可能な『理想的な結末』までを永遠に再演し続ける狂った脚本から抜け出すまでは、この血塗られた戦記は終わらせられません」

 

 

 その為に戦争を渇望するレヴィアを帰し、ネフティスとデルピュネの全面戦争を引き起こしたのだと、『凄惨姫』は告げた。

 

 『百点満点の結末が迎えられない世界』は、次の演算の為のリソースとして分解再構築される定めにある。だが裏を返せば、『結末』を採点されるまでは今の演算(世界)は続行されるということだ。

 主役(ティア)が戦い続けている限り、物語は未完のまま。勿論限度はあるだろうが、少なくとも次の戦いが終わるまで『崩壊』が始まることはないと見ている。

 

 メスキアを陥として竜杯はアスタに預けた。核となるエデンはこちらに屈服した。完全に洗脳されたヴァジェトが口を割って始祖龍の心臓の所在も掴めた―――途上にあるネフティスを破ればこれも回収可能。

 あとは『鍵』を持つヴェリトールの協力が得られればやっと条件は揃う。

 

 

「私達が生き続けられる未来の為に、やらなければならないこと。

 この偽りの世界を脱出し、機械神メルトセゲル――――『オリジナルのティア=エリーシス』を撃破するまで、私達の戦いは続きます」

 

「オリジナルの、私……?」

 

 

 これまで仲間達に伏せていた世界の真実とその残酷な在り方を、遂に凄惨姫は開示した―――。

 

 





「本当嘗め腐ってくれるじゃないあの紫豚」
→パープルトンとは読まない。

「その盤面を作ってしまったら、終わりなんです」
→何も考えずにただORSが無双したら世界崩壊エンドになるVBL。散々好き放題やってきたように見えて、これでも凄惨姫的にはかなり打てる手筋が限定された縛りプレイ状態だったりした。

「話は聞かせてもらいました。この世界は滅亡します!」
→原作キャラを巻き込んでMMRごっこ。実際滅亡するからシャレになってないのだが。

『息を荒げて血走った眼に焼き付ける狼男/大将』
→ておくれですね。

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