ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~ 作:サッドライプ
モブの命が軽いVB名物の大規模戦争。
クリスマス更新がこれでええんか・・・。
「壮観、ね……」
草一つ生えない荒野。魔竜族領であればどこでも似たようなもので、慣れ親しんだというには複雑な想いを抱く骸獣さまよう不毛地帯。
だが今は獣程度では近寄ることすらない大軍勢が展開して、褐色の大地を埋め尽くしている。
家ほどもある魔獣が輜重隊の列を為し、鎧兜で武装した魔人族が脇を固める。飛行可能な竜翼持ちや悪魔族が蒼穹を頻繁に飛び交い―――というのも、直系の魔神の眷属の多種多様性を見慣れたレヴィアからすれば魔竜族の多彩さとて一歩譲る感はあるが。
もともと神竜に迫害され荒野に追いやられていた集団だ。森や水と共生するエルフや精霊、打たれ弱い小人や妖精などの種族は苛酷な環境に淘汰されて記録にしか残っていない。
だからこそ、この軍勢に弱卒は皆無。補給や連絡要員ですらそこらの神竜兵を一対一なら容易に討ち取れる。建国のカリスマであるヴァジェト=ネフティスが一から創り上げた軍団は伊達ではない―――在りし日のメスキアと四公国が総力を挙げても潰し切れない、と判断されたからこそ神魔の拮抗は成り立っていたのだから。
勿論往時に比較するにはデルピュネの機甲師団は丸まま敵に回っているし、先のメスキア侵攻戦でエデンの動きを見事に封じたバシュトラ軍はと言えば。
「ヴェリトール将軍は本当に何を考えているのか……この一大決戦に兵を出さないなどと」
(それ、
憤慨した表情で語る赤髪の女騎士マキュリアに対し混ぜっ返す言葉は内心のみに留め、今や目下の軍勢全てに号令を掛ける立場の魔竜皇レヴィアは部下となった幽騎将の矜持をくすぐる言葉を発した。
「あれは母様も持て余していたもの、母様の弔い合戦で頼りにする相手じゃないわ。
そういう意味であれば、母様の信任していた貴女達
「レヴィア様……勿論です!あの男が居なくとも、裏切り者のティア=エリーシスの軍勢など我々が打ち砕いて見せましょう!必ずやこの槍であの神竜女の首を奪り、ヴァジェト様への手向けとしてみせます」
「期待しているわ」
死にやすい人間族と屍がなければこの世に転び出ることの出来ないアンデッド達が盟約を結び生まれた特殊な一族の者達。人間はアンデッドの庇護を受け、その代わりに死後を捧げるという生き方は、しかし力を貴ぶ魔竜族の中で見下されがちではあった。
脆く弱い人間と昼の太陽の下ではそれ未満になる不死者達が弱者同士群れただけのこと。哀れなものだと、暗く湿気った地下要塞ガンダルファを護るだけなら似合いだと嘲笑され。だがヴァジェトに見出だされたマキュリアは屍竜に騎乗して昼夜問わず戦場を駆け、その武功で自分達の存在の証を立てることが出来た。
自分達を引き上げてくれた恩ある偉大な魔竜王を害した相手を許せる訳もない。神竜族でありながらデルピュネ統治を認めたヴァジェトの恩に後ろ脚で砂を掛けた主君の仇ティアへの憤怒を滾らせる騎士を、はいはいと煽ててその気にさせつつ氷髪の皇は別のことを考えていた。
(魔竜族からも『裏切りの姫』扱いか。ティア、貴女ってつくづくそういう星の下に生まれたのかしらね?)
一方的な都合で利用した挙句大切なものを取り上げてくる相手に必死で抵抗することが悪逆となるのならば、歪み狂っているのはこの世界そのものなのかも知れない。戦争がしたいという邪念だけで流れに乗っかっている自分もまたその一部であることを自覚するからこそ、より一層そう思う。
ただティアの下にはザハークもシルヴィアもアスタも居る。どん底から最強のジョーカーとなり得る者との縁を三つも掴み、そして戦いの果てに裏切りの四天将すらも集っている。今となってはこの浮遊大陸の覇権に最も近い位置まで駆け上がっていると言っても過言ではない。
だからまあ、悪いとはちょっと思ってるけど―――遊んでもらっても構わないわよね?
勝手な言い分で戦争を吹っ掛けるという意味では、自分と部下達のどちらがタチが悪いのだろうか……手慰み程度の思考を弄ぶ紅翼の皇に、一旦落ち着いたのかマキュリアが別の話題を振ってきた。
「全軍を投入して開けた平野での正面決戦……これでよろしかったのですか?」
「平押しが一番勝率が高いと踏んでのことよ。心配は無用」
「はっ。僭越でした」
(勝率が高いっていうか、下手に戦略を練ろうとした瞬間に勝ち目がゼロになるんだけど。ティア軍のこれまでの戦いの分析すらしてないのこの脳味噌アンデッド)
脳筋戦法に見えてこれ以外にないやり方で軍を進めているのだが、それを脳筋に脳筋と言われているようで多少イラっときた。すっかり演技上手になったレヴィアはそれを一切顔に出すことはなかったが。
まずもって前提条件として、魔神解放戦線の謀略政略戦略全てを司る
更には魔導列車という数日で国を横断する機動力で一軍を好きな場所に投射できる反則的な輸送手段が向こうにはあるのだ。部隊を分ければ引っ掻き回されて各個撃破か遊兵にされるだろうし、奇襲強襲はむしろティア軍の常套手段。常に先手先手で神竜の国を陥落させてきた彼女達を相手取るには、大軍勢を結集させての進撃で守勢に回らせ正面決戦に持ち込む以外に道はない。
事実として魔神解放戦線が今まで最も被害を受けたのは、まさにその状況だったメスキア三か国合同遠征軍迎撃戦だ。ましてあの時は丘陵地帯に陣取っていたが、今回ネフティスとデルピュネの間にある不毛な岩砂漠地帯を進軍路としている為正真正銘野戦での激突に持ち込める。戦争がしたいのであって自殺がしたい訳ではないレヴィアとしては、これ以外の選択肢など一顧だにする価値もなかった。
………ついでに言うと、下手に高度な軍略を練るということはイコールで戦が長引くということ。
一心不乱の大戦争がしたいレヴィアの嗜好はさておくとしても、ヴァジェトの仇討ちに燃えるマキュリア達とティア軍の戦果である旧メスキア領を掠め取る利益に目が眩んだ俗物達とここでティア軍を叩くことがメスキアの国益になるという持論を唱える者達と難しい事は特に考えずただ暴れたい者達とエトセトラ、そんなそれぞれ戦略目標が異なる者達が集っているのが今のヴァジェト亡き(死んでないが)ネフティス軍である。
連戦を重ねる程に足並みが揃わなくなって味方同士足を引っ張り合い始めるのは容易に想像できるのだが、ひょっとしてマキュリアは友軍全てが本心からヴァジェトの仇討の為に一致団結している―――つまり自分と同じ動機の味方しかいないとでも思っているのだろうか。
(思ってそうね)
「………?」
少なくとも娘として母親の死を本心から嘆いて仇討ちに燃えていると思っているから、張り切って自分を魔竜王の後継として支援したのだろう。庇護者だったヴァジェトはもはや居ないのに、雑な演技に乗せられる幽騎将の将来が心配になるところだが。
(まあ、どうせ先の短い付き合いだもの。
ささっ、パッと始めて………せいぜい派手に咲き散りましょうか、お互いね)
この戦いが終わった後にお互いが生きて再会する可能性が極小であることを認識しているレヴィアからすれば、自分の騎士道に酔ったまま絶望的な戦場に挑もうとしていることをいちいち指摘してあげる義理もない。
ただ己が欲望の為に母の遺した国と将兵達を掌中に収め。氷華の魔竜皇は浮遊大陸最後の戦争の端緒をその手で開くのだった。
そして。
「きひひひひひひ、きゃははははははっ!!!さくさくざくざくばらっばら!裂かれる為に飛ぶのねあなたたちッ!!」
「Y-MAAAAAAAAANッッっ!!!」
「悲しいです、貴方達もエデン様の教えに触れたら幸せに暮らせたでしょうに……」「ま、メスキアの奴らよりは幸せなんじゃねーの?墜ちて一瞬で死ねるんだからな♪」
天空に地獄が顕現した。
神魔の竜族達の戦いは如何に制空権を取るかだ。
空を切り拓き翔る竜と地を踏みしめ駆ける虎と、相搏つとすればどちらが勝者になるかなど考えるまでもなく前者に決まっている。重力を振り切る者と囚われる者、まず以て出力が違う。空中を三次元に踊る者と地面を二次元に這う者、与えられた自由が違う。落下すら己の加速に利する者と地の摩擦で減速を喰らう者、渾身の突撃を行っても悲しい程威力が違う。
携行武器や魔術を撃ち合うとしたらなおのこと、射程も命中率も
故に当然の判断として、空の奪い合いに勝敗の行方が掛かってくる。ならば当然の理屈として互いに最精鋭を投入する。その結果――――一方的な蹂躙が曇天を血と肉の雨に変えた。
神竜族最強の大将軍ファフネルを一騎討ちで瞬殺した風雷の翼竜姫ピアサ。
四天将最優の盾公女エアを殺さずに制圧可能だった業焔の鉄騎Y-MAN。
始祖龍の御子エデンを翻弄してみせた双魂の狂聖ヴィーヴルとメルジーニ。
聖者や猛将の魂を封じて燃料にする禁断の古代兵器タクティカで武装した闇に堕ちし姫君達は、神竜に名だたる実力者をも超越する理不尽へと既にその存在を変貌させている。メスキアに抗うことができる“程度”のネフティス空軍など彼女達からすれば撃墜スコアを稼ぐ為の餌にしかならない。
雷鳴轟く暴虐の嵐に呑まれた
決して雑魚ではない。十把一絡げの三流役者などではない。神竜族と魔竜族の浮遊大陸の覇権を駆けた戦いの中、いずれも歴代の四天将のいずれかを敵にして生き延びた経験のある猛者達だ。武勇を鳴らすネフティス兵達の憧憬を集める、魔竜族きっての精鋭……だったのだ。
だがそれらが魔神ですらない、かつてティア軍に敗れて下った元四天将に理不尽な暴力を叩き付けられて一方的に散る様はまるで悪夢のように残酷な現実。
地上部隊は己の百分の一も生きていないような魔神の眷属達の猛攻を凌ぎながらも、空より降り注ぐ変わり果てた彼らの骸を視界に映す度、大地に墜ちて飛び散る凄惨な音を聞く度、絶望にその身を凍えさせていく。
魔竜族は魔神解放戦線に与する存在を己の同胞から除外した――――故に、浮遊大陸の空はこの日より神竜族は勿論魔竜族のものでもない。
今日この日を以て、魔神の軍勢が支配する空になる。
メスキア相手じゃなくても普通に楽しそうなピアサちゃん達。
不吉なフラグが立ちまくってる幽騎将さんの結末までと思ってたら案外そこまで進まなかった。
なんだかんだ言って無双シーンは書いてて楽しいね。
(この脳味噌アンデッド)
→ひっどい言い草である。
レヴィア様の性格わるわるな感じはあるが、まあマキュリアが自分をヴァジェトの代わりとしてしか見てないのを見透かしてるからっていうのが結構でかかったりする。
『
→歴代シリーズでやれるとしたら、やっぱロキ坊ちゃまくらいだろうか。あとはシルヴィアの師匠のじーさん。