ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 そういや去年最初の更新の時に『本年も読者の皆様が心あたたまるようなほのぼのした小説を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします』とか書いてたらしい。


(去年分の書いた内容を見直す)


…………………どこからどうみてもほのぼの!!(愚者の嘘)


 というかなんで未だに完結どころか最終章にもなってないんですかねこの作品()
 もう後日談込みのあいペドに話数並んだんですが。




吶喊の魔竜皇

 

 

 

「馬鹿な……!我が軍がああも簡単に……!?」

 

 かつて神竜族と浮遊大陸の覇権を争った魔竜族が誇るネフティス空軍。それが紙細工同然に破られ千切られ燃え墜ちて行く悪夢の光景を、ネフティスの参謀達は誰も事前に想定していなかった。

 

 四公国を攻略しメスキアを陥落させたとはいえその過程の殆どが奇襲奇策頼りで、しかも連戦で疲弊しているティア軍が相手なのだ。そんな軍隊に自国の精鋭が真正面から激突して一方的に敗北するというのを想像するのは確かに難しかったかも知れない。

 奇襲奇策を使った方が効率的だったからシルヴィア達はそれを採用していただけで正面戦闘が弱いとは誰も言っていない。まして連戦して部隊が被害を受けても魔神の眷属による補充速度が常識の範疇を遥かに超えている。そういった事情を故意に皇から伏せられていた彼らが、自軍の優位に戦況を進められると思っていたことに対して愚かと評するのは流石に酷であろう。

 

 だがそのツケを払うのは現場の兵士だ。上層部の判断ミスを恨む暇もなく散って逝く者達のことを知りながら、事前に見積もりの甘さを指摘できた己以外の智者を自分の欲望の為に粛正した女皇は意を得たりとばかりに嗤う。

 

 

「―――問題ないわ。全軍、更に前進よ」

 

 

 皮肉にも幹部達が眼前の惨事に狼狽する中余裕の笑みを浮かべるレヴィア=ネフティスはこれ以上なく頼りがいのある大将に見えた。

 母譲りのカリスマによる威圧を放ちながら、長刀の竜装を腰から抜きつつ近衛を引き連れて出撃しようとする彼女を誰も止めようとすら思えない。

 

 

(空の戦場が決したと言っても、そこから制空権を活かして空陸連携でこちらを潰しに来るまでにはタイムラグがある。完全に掃討されるまで向こうの戦力を釘付けにしてくれるなら、十分役目は果たしているわ)

 

 

 自軍を使い捨ての駒にする悪意に満ちた思考など、自身が最前線に身を投じる勇猛な姿から読み取れはしないのだから。

 

 レヴィアは自分がネフティスの総大将になって魔神解放戦線相手に戦争するなんて楽しいに決まっているからなんて理由でこの場に立っているだけで、魔竜族の未来なんて二の次にしか考えていない。風雷の翼竜姫ピアサを筆頭とした最凶の空戦師団相手に勝てる可能性なんて最初から切り捨てていて、故に自軍の空戦しか出来ない部隊はハナから全て壊滅前提でぶつけていた。

 

(騙して悪いなんて言わないわ。戦場に立ってから相手が強過ぎるなんて泣き言、誇りある魔竜族なら言わないでしょうし?

――――前線の兵士の尊厳とか誇りとかどうでもいい、それが『魔竜王』だもの。そうでしょ?ねェ、母様ッ!!)

 

 勝算の低い戦場に投げ出されて皆殺しにされた兵達からすれば地獄から這い出てでも呪い殺してきそうな思考だが、嘲る女皇に一切の悪びれはない。

 

 責任感が強く面倒見のいい、慕われる前線指揮官だった以前の彼女なら決して考えもしなかったやり方。だが母親であるヴァジェトの裏切りによってプライドを踏み躙られた怒りが彼女を変えた。

 魔神の狂奔の力によって表出しようとしていた戦争への渇望。その箍が外れ、何を犠牲にしても我欲を叶える為に暴走する闇堕ちした女として。

 

「狙うは敵本陣!ティア=エリーシスと魔神ザハークを討伐すればこの戦いの勝利よ!!」

 

 その勝利が果てしなく遠いことを理解しながら、残る予備兵力を含め全て地上での特攻を命じる氷華の皇。別に空軍に限った話ではなく、命をベットしているのは自身を含めこの戦いに参戦した全員が平等。

 生き残りたいなら話は単純、勝てばいい。それ以外にない。我が身を以てそれを体現するレヴィアの鬼気に悟らされ、将も兵も関係なく背水の境地に突き落とされる。

 

「私が斬り込む!総軍、勝ちたいのなら、道を拓けェェーーーっっ!!!」

 

 麗しき竜皇が咆哮するかのように、腹の底からドスの利いた号令を戦場に響かせる。

 オオオ、と鬨の声がそれに応えて前線に殺到し地上の攻防が熾烈さを極める。

 

 瞬きの間に両軍とも名もない兵士が幾十幾百と荒野に倒れ血溜まりに沈んでいく。

 何体も敵を屠った剣も、何も出来ずに白いままの爪牙もへだてなく。積もりゆく屍は目にした者を更に狂気に駆り立てる。

 レヴィアの狙っていたとおり、当初の楽観が一気に消え失せた反動で一切の躊躇なく凶暴さのままに敵に襲い掛かる魔竜族達が、より一層理性を失くして殺し合いへと突き動かされていく。命が激しく燃え上がりながら消費される地獄の一丁目一番地、これが望んでいた光景。

 

 その只中を母の竜装を血に染めながら斬り進むは修羅そのもの。アイスブルーの髪が、ワインレッドの角や翼が、潤う若々しい柔肌が、凛々しい将軍服が、シャワーのように鮮血を浴びてどす黒く塗りたくられながらもまるで恋する乙女のようにうっとりとした表情で敵陣を翔る。

 

 切る、伐る、斬る、KILL、斬り進んで斬り結んで斬り(まく)って斬り殺して斬り拓く。竜装は刀としてしか用いない、この先に待つ戦いにおいて消耗した魔力(マナ)で勝てる相手などいないから。

 だが有象無象を一掃する氷獄の権能を使わないということは、レヴィア自身の命が常にそれらの手の届く距離にあるということだ。数えるのも馬鹿らしいくらい敵を屠りながらも、死の予感が鳴らす本能への警鐘が止むことはない。近接戦闘はなんとかなっても、回避や攻撃後の硬直の隙に魔術やエーテル砲を撃たれ部下に救われたのももう一度や二度ではない。

 

「グォッ!?レヴィ、アさ…ま……ご武運を……」

「まったく。先に逝って待ってなさい、地獄でもう一回呑みましょう」

 

 魔神解放戦線参戦前から付き従ってくれていた彼らが一騎また一騎と脱落していく。暴走した大将の本音を知りながらここまで相乗りしてきた特級の馬鹿共。戦場の悦楽を覚えてしまって平和な世界に身の置き場のない忌子達。

 

 骸となった彼らを置き去りに更に突き進む。たとえ何の生産性もない愉悦と欲望の為でも、それこそが彼らの望みと知っているから。

 だから後ろは顧みない。この絶望のロードに退路はない。だって、ほら。

 

「イレ・カラミティ!!」

 

「イレ・カラミティ!!」

 

 

「――――イレ・カラミティ!!!」

 

 

「………ふふっ!ちょっとは遠慮しなさいよ、あの性悪軍師―――!!」

 

 

 もとより知略合戦で勝てると思っていない以上、この突撃とてあちらが読んでいるのを織り込み済だ。対抗策としてえげつない手口の一つや二つ繰り出してくるとは思っていたが、『軍団全体に対する蘇生魔法の連打』なんて大陸最強ヒーラーと呼んで何一つ遜色ない個の性能の暴力は逆に予想外だった。

 

 戦場に無数に転がる屍のうち、ティア軍に属するものだけが起き上がって再度こちらに対する殺意を剥き出しにしてくる。単純に戦力としては勿論、倒しても倒しても蘇生される軍勢など反則そのもの。ネフティス軍の狂乱の勢いは衰え、士気が乱れ、突撃しているレヴィア達は逆に足を僅かでも緩めれば数瞬前に殺した筈の相手に逆に殺される立場になる。

 ごり押しと言えばごり押しだが、それがもたらす効果を思えばやはりえげつないやり方だった。

 

 戦争で最も重要なのは数だが、一度死んだ兵が蘇る度に単純計算で数が倍になるようなものだ。手段を選ばない策士の癖に正攻法が効果的なら容赦なく真正面からこちらを詰ましに来る相変わらずの苛烈さが、袂を分かってから大して経っていないのにひどく懐かしい。

 だがそれでこそだ。どのみちレヴィア=ネフティスのやるべきことは一つ、理不尽な戦闘力で計算され尽くした戦術を食い破る―――それができないなら呑まれるだけ。

 

 前へ。前へ。進み続けて新たな敵と対し続けるなら後ろで敵が蘇生していようとそこまで致命的にはならない。嘘だ。背から撃たれ何度死を感じたことか。その度に腹心達が身を挺して先に散る。敵である眷属達への恨みはない。自分だって親しい女の誰かが産んだであろう仔を数え切れない程斬り殺しているのだから。これが戦争。これが、私が望んだ戦争―――!

 

 

「 ぶ っ 散 斬 れぇぇぇぇぇぇ――――っッッッ!!!!」

 

 

 獣人を輪切りにし機兵をスクラップにしゴーレムを両断し精霊を叩き斬る。刀は勿論足で蹴り殺し尾で打ち据え角ですら時に刺し穿つ為の凶器にする。無我夢中で闘争本能に身を委ね、自分が負傷しても自覚すらない。全身返り血を浴びていない場所なんてどこにもなく、故にどこに自分が流した血が混じっているかも判別不可能なレベルだ。

 

 臓物も髄液も一緒くた、腹に溜まっていた汚物ですら浴びているかもしれない。悪臭も汚濁も一切思考の外に置き、わき目も振らずにただ戦い、ただ殺し、ただ進む。

 どこまでも凄絶な生き様を体現する今の彼女は―――何故だろう。美しい、と表現してしまっても否定が難しい魅力を放っていた。だからこそ。

 

 

 

「よお。相変わらずいい女だな、レヴィア」

 

「………逢いたかった。逢いたかったわ、ザハークぅぅっっっ!!!!」

 

 

 

 いつしか敵も味方も周囲にはいなくなって、戦場の荒野にぽっかりと空いた空間。遠巻きに囲われる氷皇の目の前に降り立つは闇の双翼にて舞い降りる魔神。

 

 やっと辿り着いた、待ち望んでいた『敵』に叫んだのは心の底から湧き上がるマグマのような熱情。

 

 

 言い繕うことも叶わぬ、純粋そのものの愛だった――――。

 

 





 モブを突破するだけでまるまる一話。そりゃ長くなるってもんですけどね。

 戦闘狂キャラはバトルものだと展開を操作しやすい分どうしてもチープになりがちだけど、レヴィア様はそういうのあまり感じさせない魅力。


「イレ・カラミティ!!」
→敵からすればこれ以上ないくらいタチの悪いゾンビ戦法。絶神乱舞バサ6では非常にお世話になりました。

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