ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

75 / 84

 闇堕ちレヴィアの詠唱だけは好き過ぎていじれなかった……。
 いや、今までいじってきたのはティア以外闇堕ち版の詠唱が原作になかったからだけど。




死闘の魔竜皇

 

 ある日、気付いた時から戦争が好きだった。

 

 

 生誕の時期で言えば魔竜姫レヴィア=ネフティスは神竜軍四天将の娘だったティア=エリーシスやピアサ=アルトンとほぼ変わらぬ(よわい)であるが、親の急死まで城で大切に護られていた彼女達と異なり、実戦を経験したのは今の半分も生きていない頃からだ。

 もともと力を尊ぶ魔竜族にあって、唯一の子として母の後を継いで王になることが定められていたレヴィアは戦いで己の存在を示すことが必須事項だったし、それに対して拒否しようなどと思うこともなかった。魔竜王の竜装のレプリカである氷刃シャリートを手に携え戦場に赴くことに迷いも躊躇いもなかった。

 

 何故と問われれば理由ならいくらでもあっただろう。母の役に立って助けたい孝行心であり、王女として生まれ育ったことによる国を想う心と責任感であり、戦いから逃げる臆病者でいたくはないというプライドであり、長きにわたり魔族を虐げてきて今でも隙あらばこちらの民を殺戮する神竜族への義憤であり。

 

 

 けれど今なら分かる。“そうじゃない”。――――戦争がしたいから、戦争をする。それだけなのだ。

 

 

 一度、話は逸れるが。

 レヴィアの性の目覚めは捕虜になった神竜の女将軍が魔族兵士達に輪姦されている場面だ。下等種族と蔑んでいた相手に、しかも名前すらろくに憶えられていない一般兵に群がられ、下手に頑丈な身体なせいで擦り切れ死ぬまで慰安婦―――否、精液便所として使われ続けていた。そんな女に自分を投影し秘所を濡らしてしまったのである。

 

 自覚した当時は拒絶し否定しようとした被虐趣味と破滅願望は、時間を経て治るどころか根源と言えるまでに深く強くなり、己を慰める時の妄想はそればかりになってしまっていたほど。

 だから闘技場の観衆の前でザハークに敗れて触手に嬲られ苗床にまでされたあの処女喪失は、後から思い返して見れば少なくともレヴィアという女にとってはそう悪いものではなかった。寧ろ理想に合致したとても喜ばしいものとして思い出に刻んでいる。

 自分の純潔を奪った魔神にしても、粗暴だが野卑ではないし妙に思考の波長が合うものだから、睦言を交わす相手として収まったことに後悔はない。

 

 けれど今では。自分の本質を理解した今だから………更なる贅沢を望んでしまう。

 

 

「足りない……嗚呼、足りないのよ」

 

 

 被虐趣味と破滅願望の更に根本にあったもの。戦争だ。戦争に負ければ敗者は全てを喪う。戦争の結果として一切の尊厳を奪われることにこそ惹かれたのだ。敵と分かれた存在と全てを懸けて吐き出し尽くした末に勝者が敗者を蹂躙する、勝者になれば戦果は勿論次の戦争が楽しめるし、敗者となりどのような末路を辿っても絶頂モノの快楽を味わえる。

 

 レヴィア=ネフティスという女の本当の(ゆが)みはそれだった。

 

 だから足りない。今度は闘技場なんてルール内のちゃちな試合じゃなくて、不平等で理不尽で何より真剣な戦争とその結末を、愛する男(ザハーク)と紡ぎたい。

 

「さあザハーク、殺し合いましょう!!真っ赤な華を咲かせるまで、踊り狂うわ!!」

 

 戦場の瘴気を切り裂くように張り上げた声に載せて叩き付ける狂気。包囲する眷属達がそれを聴いて動揺の内に後ずさる中で、渦中の魔神が返すのは……狂笑だった。

 

 

「クククッ、アーハッハッハッハッ!!!傑作だぜ、ああそうだ、戦争の愉しみ方ってのをよく分かってるじゃねえか。

 それでこそ、それでこそ俺の娘だ!!」

 

「――――、ッ!?」

 

「頭パーになったヴァジェトが言ってたぜ。レヴィア、お前は封印される前の魔神(おれ)の種で孕んだ娘なんだと。苗床じゃなく純粋な意味の母体として産んだ、眷属じゃない血族ってのがどんな奴かと思えば、まさかまさかだぜ。

―――俺の本能をそっくりそのまま受け継ぎやがって。最高に親孝行な娘だな、ええ!?」

 

 

 ガツンと殴られるような衝撃の告白、父親の名乗り。それは娘にとってすとんと胸に落ちる話だった。ああそうだ、ザハークの相手を蹂躙し己の色に染め上げる趣向、闘争で以て相手を屈服させることに歓びを感じる嗜虐性、それは戦争の結末としての勝者が得るものだ。敗者の側面を強く希求するレヴィアの願望と表裏一体で、どこまでも近しい性癖ではないか。

 運命の相手としか言いようがない。そんな相手に処女を奪われ苗床にされたこと、近親という禁断の関係になったこと、今こうして最高の敵として相対していること………その全てが至高の昂揚と幸福を与えてくれる。

 

 今まで居ないと思っていた父親の存在を、愛し育ててくれた母なんて思考の埒外に消し飛ばす程に強く強く想い―――娘としてどうするかなんて決まっていた。

 

 

「じゃあご褒美頂戴、パパ♡わたしがんばったでしょ?だから、ねえ。

 全力で殺し合っ(抱きしめ)てよ。血反吐が出る程に!圧し折れる程に!!捩じ切れる程に!!!」

 

「上等だぜ、来やがれじゃじゃ馬娘――――!!」

 

 

 愛しい父親の懐に慕情のまま飛び込む童女の心境さながらに。竜翼を羽(ばた)かせながら魔竜王の竜装を振り上げ、温存していた魔力(マナ)を解放する。

 

 

「響かせるのは断末魔、眼に刻むのは鮮血の華。絶対零度の傲慢よ、私を喰らい、高みへ至れ……!絶刀アンドルディース!砕け散るまで、死の舞踏(トーテンタンツ)を踊りなさい!!」

 

 

 ここから先は父娘の心温まる交流だ。無粋な横槍なんて許さない。

 

 狂気に満ちた竜唱(ロア)により氷点下二百度の死滅氷獄が魔竜皇の周囲を包み込む。

 不変不壊の暗黒物質(ダークマタ)を操り温度変化と魔力(マナ)干渉を防ぐ魔神はともかく、眷属達では為す術もなく凍り付くしかない。軍師(シルヴィア)の指示で退避させられたのだろう、潮を引くように気配が遠ざかるが彼らが留まったところで氷像になるだけだった。

 

 有象無象の区別なく、そしてそれは術者のレヴィア自身も例外なく。

 ぴきぴきと透き通るような音を立てて水分が結晶化していく。彼女の返り血も穢れも傷ですらも氷の華として散っていく。どす黒かった全ての色彩が元の色ごと剥がれ落ち、真白に染まる。

 

 肌も角も翼も、竜装も髪も瞳ですらも白一色へ。将軍服も砕け散り、可憐な少女の肢体は雪結晶の散りばめられた単衣のドレスだけを纏う。超局地的な吹雪に溶け込むような装いは、死装束かはたまた花嫁衣裳か。

 音すら消える静寂の雪景色に、銀の殺意が(ひらめ)く。

 

「シィッ!!」

「おらぁっ!!」

 

 小手調べなど笑止、一撃目から必殺の水平斬りは黒炎の爪に弾かれて天に向かう。敵の得物を弾いてその勢いのまま獣のように身を低くして間合いに踏み込もうとする魔神―――だが、泳いだ筈の長刀がその頭蓋目掛けて振り下ろされる方が速かった。

 攻撃に移ろうとする一瞬の溜めを狙いすました斬撃。神魔の将軍クラスだろうが何が起こったのかも判らずに絶命する殺意の刃を、研ぎ澄まされた魔神の本能が咄嗟に察知して背の黒翼で迎撃する。防がれた筈の唐竹割は、一瞬の間に黒羽根の隙間を縫う暗殺の一刺しへと姿を変える。身を翻して逃れるザハークが向き直るより前に更なる追撃が襲い、それを彼は体の回転の勢いのまま見もせずに勘だけで爪を合わせた。――――以上の攻防、たった一秒の出来事である。

 

 同等の応酬が更に続けて十四秒。翼にて飛翔し三十一秒。もつれ合って墜落しながら三秒。追随出来る者など大陸中見渡しても五指にも満たぬだろう超ハイクラスの攻防が、観衆の存在しない死の銀世界で熾烈に繰り広げられる。互いのことしか目に入っていない両者はそれを惜しむ筈もなく、腕に纏った黒爪と真白の長刀をぶつけ続ける。

 

 衝突。両の爪と白刃が真正面からの押し合いになり、至近距離で褐色肌の凶漢と白雪の女皇が狂暴な笑顔で至近距離にて睨み合った。

 その表情はどこまでもそっくり似通った笑い方で、愉しげで誇らしげで憎たらしげで、互いに互いを想い合っている。

 

「嬉しいわ、素敵よ!私の踊りについて来れるのはやっぱり貴方なのね!!」

「嘗めんなカキ氷女!その程度の手品で、この俺が殺れるかよ!!」

 

 レヴィアの竜装はコピー元であるアンドルディースもシャリート同様、究極的には氷を操る竜装だ。だから今の彼女は己の肉体も冷凍し、“自分自身という氷を傀儡として操っている”。

 生物の枠組みを超えた異様な機動。肉体の限界を超えた反射速度と剛力。そして何より、氷結晶の集合体である今のレヴィアの躰は、物理的な破壊を受けても一瞬で再構成してしまえる――――などという油断をしていたつもりはなかった。なかったのだが。

 

 気に入った相手を氷像にして愛でる残虐な雪女さながらに、肉薄した父を暗黒物質(ダークマタ)ごと氷漬けにしようと竜装に籠める魔力(マナ)を高めたところで、逆に膨れ上がった黒炎に圧し返される。

 侵食した暗黒物質(ダークマタ)魔力(マナ)干渉を弾く為、その部位を切り離すまで制御が乱れる。素早く立て直そうとするものの、

 

「ドラァッ!!!」

 

 魔神が今更そんな隙を逃してくれる訳もない。

 飛び退きながらも封じられた左腕に引き摺られた肩を黒爪が抉った。砕けた氷片が飛び散る音―――それが埋められることは終ぞなかった。ご丁寧に創傷に黒炎の残滓をべったりと残していかれたせいで。

 

 魔力(マナ)による再生操作を阻害され、治す為には同じ個所を根こそぎ破壊してやり直すしかない。当然、そんなことをやっている暇などないが。

 皮肉にも彼女が捨て駒にしたマキュリア達デスドラグーン部隊がテュポーンにやられたのと同じ窮地に立たされる形になる―――というよりは、その機竜の改造兵器を着想にした手管で再生封じを喰らった。

 

「――――まだまだまだまだああぁぁぁっっっ!!!!」

 

 だが、たかが片腕が使えない程度。生物の枠組みにはなく氷の塊でしかない今のレヴィアにとって大きな被害ではないし、仮に生身だったとしてもここまで熱くなった戦争の一番おいしいところで怯む理由には全くならない。

 

 凶悪、狂暴、殺意を全開に刃を振るってじゃれ付く娘を―――ザハークはどこまでも楽し気に迎え撃ち続けるのだった。

 

 





 ふう。ヤンデレ娘が常人には理解できないロジックで愛をぶつけて来るのっていいよね……。
 なんか自分の二次創作作家としての原点っていうか(物騒)

 どうでもいい話ですが自分が初めて買ったエロゲは魂響(リメイク版)とゴア・スクリーミング・ショウでした。どっちもヤンデレ娘が主人公の最愛の人を喰らって平然と成り代わっていちゃいちゃちゅっちゅする純愛があるので個人的に最高でした(手遅れ並感)


「俺の本能をそっくりそのまま受け継ぎやがって」
→ただしドMの側面が強いのは、ザハークに触手孕ませ機能を搭載したヴァジェトの血だと思われ。

「上等だぜ、来やがれじゃじゃ馬娘」
→実はレヴィア相手なら淫紋発動で一発でカタが付いたりするんだけど、律儀に娘とのじゃれ合いに付き合ってくれるザハーク兄貴はこういうとこずるいよね。

『肌も角も翼も、髪も瞳ですらも白一色へ』
→そういや全く別の作品だけど、オサレ漫画の袖白雪最終形態ってあれ物理的なデバフ無効+氷攻撃ってだけなんだろうか。解除直後に一発でも不意打ち喰らったら即死とかいう超ハイリスクの割に合ってないような……。でも凶悪な初見殺しの氾濫するあの漫画だと逆に超有用なのか。

『氷結晶の集合体である今のレヴィアの躰』
→あれか。氷単種族で、称号付けて最高レア法衣着せれば神魔体躯98と矮小体躯80に出来るとかか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。