ORS白き皇女は悪堕ちしたい~安価は原作ヒロインの肯定ペンギンでした~   作:サッドライプ

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 この辺一番設定がごちゃごちゃしてるから、理解や説明が微妙に原作と違ってるかもだけどスルーしてください……ちゃんと触れようとしたらガチでストーリーの進行が止まるの。

………え、お前これまでは正しく原作設定に忠実に書いてたかのような言い草だなって?ごめんて(ガバ二次作者)




顕現の神竜王

 

 世界の終わりに予兆はなかった。

 

 

 昏い空に灰の雪が降る。

 ネフティスで、メスキアで、ニヴェルネで、クシナダで、アルトンで、そしてエリーシスで。

 

 草木も水も動物も空気すらも隔てなくその内包する魔力(マナ)を吸われ、その瑞々しさを失って灰の彫刻と化す。『白骸』と呼ばれる僅かな衝撃で砕ける脆い石灰の塊と化したその破片は風で容易く舞い上がるため、天蓋の青は容易く塗り潰されて全てがモノクロに沈んでいった。

 

 浮遊大陸において古の戦役の名残として一部にのみ遺されていた死の大地が、一気に増殖して他を侵蝕したかのよう。

 始祖龍の献身すら奪いつくされた終末の楽園に生命の息吹く余地はなく、動けるのは分厚い外骨格の奥にソーマ鉱石を溜め込む生態によって魔力(マナ)吸奪を耐えた骸獣達と、魔力(マナ)を主動力としていない古代の殺戮兵器達。

 

 心持たない命だけが営みを謳歌する絶望の光景は、この泡沫の世界が開闢(かいびゃく)した時からの予定調和だった。もともと『理想的なティア=エリーシスの物語』の舞台としてのみ創られた以上、彼女の復讐譚が結末を迎えれば用済み。アンコールも最早ネタ切れ。終わった演劇に対して無慈悲にして理不尽な審査員が僅かにでもケチを付ければ、それだけで劇団ごと潰して新たな幕を再演する為に片づけられる。

 

 分かっていたことだ――――だからこそ。デルピュネ首都エトナ、ある意味でもう一つの『全てのはじまりの場所』周辺だけは唯一その彩りを残していた。

 

 発展した工業都市としての清濁混淆した灯りと濁り。旧神竜族領から資源を根こそぎにして注ぎ込んだ集約農地と用水池。予め避難させておいたデルピュネの地方民達が暮らす巨大キャンプ。

 灰の世界の中に浮かび上がるようにして魔神解放戦線の根拠地だけは揺るがず健在を示している。

 

「システム・ブラッドグレイル―――稼働率35%。安定閾値(いきち)を維持」

「………ふぅ。そのまま監視を続けなさい、テュポーン」

「メルトセゲルが分解した魔力(マナ)を横取りして結界領域に還流、更にその機構自体をノアシステムからの防壁にする。うまく行ったみたいですね、アスタさん」

 

 機械神が仕掛けた世界崩壊(ノアシステム)だが、その根源である竜杯は複製とはいえ彼女達の手にもある。魔女竜アスタがその解析を進め、またそもそも同様の現象は彼女の竜装ミュステリオンで再現済だったこともあり、魔力(マナ)吸奪への対抗手段はネフティスとの戦争で稼いだ時間で無事開発を終えていた。

 メルトセゲルの竜杯が世界再構築の前段階として物質の分解と吸収を行うのに対して、こちらの竜杯は吸収“だけ”を行うように設定してある。工程がシンプルな分だけ速度と効率は当然にあちらより遥かに上回るため、ノアシステムにより世界から抽出された魔力(マナ)のほぼ全てを“横取り”するような状態になっていた。

 

 他国から奪われた魔力(マナ)は全てデルピュネが掠め取り、地下の霊脈に還流し資源化。ただしその一部は暗黒物質(ダークマタ)を織り交ぜて敷かれた防衛ライン外縁にわざと撒き餌として溢れさせ、敵に分解させては再度こちらで回収することで拮抗状態を作り出している。

 

 

 つまりどういうことかと言えば―――他国を犠牲にデルピュネだけ生き残るどころか、それで発生したエネルギーを独占して丸儲けしているのが現状な訳だが。

 

 

「苗床やタクティカの材料として優秀な素体は各国からあらかた回収し終えた後で良かったわ。漏れはあるでしょうけど、惜しむ程ではないわね」

「今頃ニヴェルネのクソどもも、奴隷として散々こき使われた後は魔力(マナ)を抜かれてお揃いで砂の像ってか。

―――はははははっ!!!ざまあねえぜ、最高だなおいっ!!?」

「ちゅっちゅ。んぷっ、触手おいちいの……♪」

「こんなとんでもないことをやらかしてくる馬鹿が相手の戦争なんて、今からわくわくして仕方ないわ……っ♡」

 

 

 まあ今更良心の呵責を覚えるような集団では当然ない。

 特に自分の国が一夜にして滅びたというのに我関せずで性癖に没頭している神竜王と魔竜皇がトップクラスの酷薄さを発揮していた。

 

 

「―――とはいえ、だ。メルトセゲルは暴走しているが戦術的な思考が出来ない訳ではない。俺に対してエルを生み出して派遣したように、魔力(マナ)が回収できない現状必ず対抗策を講じてくるぞ。それが効果的かはともかくな」

「一言が余計ですよヴェリトール。でも私も同意見ではあります。おとなしく手を引くようなメルトセゲル様じゃないんですよ、残念ながら」

「そうよねえ。一応他の保険も用意してるけど、竜杯の扱いにかけては向こうに圧倒的な年月の差があるのが痛いわ」

「えぅっ、困るのです!?故郷の皆だってなんとか説得してここまで避難して来てるのに、彼らを神竜族や魔竜族みたいな目に遭わせる訳にはいかないのです!」

 

 世界の滅びに巻き込まれるという危機は今のところ脱しているが、これで安泰と楽観することは当然できない。元々苗床も含めた魔神の血を継ぐ眷属達は竜杯の分解に耐性があるが、食糧を生み出す為の土地を枯らされたらどのみち全滅するしかないのだから。

 死にたくないなら元凶を叩いて滅ぼすしかない―――ある意味いつも通りではある。復讐という目的はあったにしても、もともと彼女らはそうやって自分達を殺そうとしてくる神竜族や魔竜族を捻じ伏せて大陸の覇者となった。

 

 

 というわけで。

 

 

「じゃあとっとと起こすもの起こして、殴り込みに行くぞてめえら!!」

 

 自分の性癖を満たす為だけに戦争を起こしたレヴィアのおかげで、準備期間は既に十分なほど確保できていた。

 

 古代文明の滅亡と演算世界の興亡、その諸悪の根源たる竜杯はティアとアスタとシルヴィアの三重認証で起動する制御システムを組み込み、衆愚や一個人の願望で暴走したかつての過ちがないよう改良済。

 万物創造の力を持ちほぼ無限のエネルギーを供給する竜杯とヴァジェトが秘匿していた始祖龍の心臓の時空間干渉機能が揃えば、魔竜王が計画していた通り演算世界(ラグーン)を形どる次元の殻に孔を穿って機械神(メルトセゲル)の座す現実世界に国一つを転送することが可能。―――ヴァジェトはネフティスをこの箱庭から避難させるつもりだったようだが、敗者にその権利はない。デルピュネの為に有効活用させてもらう。

 転移先の座標は演算世界(ラグーン)移動を繰り返してきたヴェリトールとエルの情報があれば移動先を見失うこともない。

 

 更に言えば心臓に設計図が残っている始祖龍を復活させれば、心臓単体より正確かつ大規模に―――それこそ大陸ごとでも―――転移が行える。

 その核である御子エデンはザハークの触手調教により完全に堕ちているとくれば、戦力強化の意味でも確保しない手はなかった。

 

「行っきますよーっ♪よみがえれ、どらごーん!!」

 

 

『GYAAAAAUUU!!!!』

 

 

「………わあすごいすごい。メスキアの連中が何をしてでも再誕を待ち望んでいただけのことはあります。

――――で、救うべき民はどこに居るんでしょーか?くひひひっ」

「ガシェル、地獄の底から見てるかしら。お前が待ち望んだ始祖龍復活の時よ。

 あのエデンは神竜族なんて一匹たりとも救う気はないけどねェ!うふふふふっ!!」

 

 

 全長数キロに及ぶ超巨大生物『始祖龍』を、世界崩壊システムからの横取りにより大量に確保した魔力(マナ)を竜杯で物質化して再構築。ジズ、ヒルディス、テスカトリポカ―――優良苗床から産まれた比喩抜きで山を砕く巨獣の眷属達ですらも見上げるしかない威容に一同は一瞬目を見張るものの、シルヴィアの気の抜けた掛け声同様すぐに生ぬるい視線に変わった。

 

 絵画に残された姿と比較して白と金の体毛は蒼と銀に染まり、御子同様に魔神の眷属として堕ちた姿を曝してしまっている。その降臨を待ち望んだ神竜族と人間達が絶滅した世界に復活するという最上級の皮肉さと併せ、強大であるからこそ嘲笑の的にしかならない。

 何より胸部にある中枢核のクリスタル、その中に制御ユニットとしての神竜王エデンが収められているが………その体勢は絡みつく触手と戯れその粘液を口で啜りながらボテ腹を揺らす苗床兼用である。

 

『ハァん、しゅごい♡始祖龍のカラダすごいの♡これなら強い眷属いっぱい産めるのぉ~~~ちゅばっ、じゅるるるっ!』

 

「知性も品性も見られたものではありませんが、所詮は贋作です。精々真のエデン様の教えが拡がる新たな世界の為、礎にでもなってもらいましょう」

 

 エトナ市民全員が聴こえる思念波で嬌声を垂れ流す堕落幼王の実態を知っていて、畏怖など持てよう筈もない。

 最も信仰篤かったヴィーヴルですら冷たく唾棄する程度の存在でしかない。

 

「………あははっ、冒涜極まれりじゃないですか。『ティア=エリーシスの復讐劇』としては満点あげたいですけどね、エルちゃん的には」

「ふん。まあ余興としては珍しいものを見られたな」

 

 どの演算世界(ラグーン)でも最も神竜に信仰され魔族に憎悪されてきた始祖龍という存在が地に落ちた有様。

 何百ものティア軍の末路を見届けてきた白の道化は金眼にどこか爛々とした嗜虐的な輝きを湛えて手放しに称賛し、同じく黒龍は新鮮さを感じながらもこの後の戦いに意識が逸る。

 

 とはいえぞんざいな扱いにしかならずともこの始祖龍が最後のピースであり、条件は遂に整った。

 

 

「それじゃあ準備はいいですね?目標、現実世界プライマルラグーン」

「狂女神メルトセゲル討伐の為―――これが魔神解放戦線最後の戦い。みんな、行くわよ!!」

 

 

 大将ティアの号令の下、テュポーンのカウントダウンと共に始祖龍が咆哮し、その眼前の空間が裂ける。

 シルヴィアの従える狂天使が開く次元の裂け目、その規模を何万倍にも拡大した赤黒い(ひず)みが世界を震わせ、カウントがゼロになると同時に極点へと収縮―――。

 

 残ったのは静寂と虚無。

 滅びた大陸を置き去りに、機国デルピュネだけが偽りの世界から脱出した。

 

 





 説明が固有名詞だらけなのすまない………でもラグーン脱出だけで一話掛かってる時点でこれ以上詳細にするのはゆるして

『ネフティスとの戦争で稼いだ時間』
→カオスルートでガシェルが竜杯の完全制御までに掛かった時間を考えたら、現物が手元にある状態なら実はネフティス戦争中一言も出番の無かったアスタえもんが技術的な問題は大体解決してくれてそうではある。ヴェリトールとエルの持ち物や知識とかもあるし。

「彼らを神竜族や魔竜族みたいな目に遭わせる訳にはいかないのです!」
→特にアインくんが脳破壊(物理)された訳ではないが黒いムムルちゃん。
 群れの仲間以外がどうなっても興味ないのです。

『ティアとアスタとシルヴィアの三重認証』
→ザハークを入れると竜杯が強制停止するので彼は噛ませてない。というか竜杯にザハークが触れた時点で世界崩壊始まるから厳重隔離してた。
 ついでに言うと、アスタにとっては自分とシルヴィアが将来的に切り捨てられることがないように保険の意味合いもあったり。

「ガシェル、地獄の底から見てるかしら」
→エリーシスもディアボロスもアルトンも、大本を辿れば始祖龍復活の為の犠牲だった。
 その生き残り達の手で嘲笑されながら再誕した、もはや救済すべきものを持たない始祖龍という皮肉。

『市民全員が聴こえる思念波で嬌声を垂れ流す堕落幼王』
→友好映像大好評配信中!!
・・・映像っていうかリアルっていうか。

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